2024.10.01
自社の社内情報を未来の“ゴミ”にしないための備え 「情報量が多すぎる」時代がもたらす課題とは?
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宮本淳氏(以下、宮本):ここでもう1つ、私から海外の事例をご紹介させていただきたいと思うんですけれども。今の赤星さんからのお話で、標準化みたいな世界だったりとか、媒体社として広告主にどう寄り添っていくのかが今後重要になってくるんだろうなと思っているなかで。ちょっと1歩2歩先に行っているアメリカの例です。
これは日本にも進出している媒体社さんなので、みなさんがご存知の方も多くいらっしゃると思うんですけれども。BuzzFeedさんですね。BuzzFeedさんが言っているのが、ミレニアル層、18歳から34歳までですね。アメリカだとそんな言い方をしたりするんですが。ミレニアル層の83パーセントにリーチできるメディアだということを言っています。
これは何を言っているのかと言うと、BuzzFeed.comのオウンドのサイトだけではなくてコンテンツとして見たときに、BuzzFeedさんのコンテンツが、さまざまなプラットフォーマーに拡散していくわけですね。拡散していったものも全部計測、ユニークな人ベースで計測して「うちのコンテンツは全米ミレニアルの83パーセントに見られているコンテンツなんです」ということを言ったりするわけです。
ここで媒体社さんとして見たときに、このあたりの数値感が揃ってくると、広告主さんからしてみても、どこに出すとどれだけちゃんとリーチが取れるんだろうかということがわかるようになってくる。
宮本:アドベリの文脈の中でいくと、例えば「ブラックリストやホワイトリストなどを活用しながら、PMP(Private Market Place)出してるから、大丈夫なんじゃないでしたっけ?」と言われたりするわけです。例えば、ある化粧品メーカーさんでは、スタンダードのラインナップとハイエンドのラインナップを、両方デジタル上でコミュニケーションしていきたい。
当然、スタンダードのラインナップとハイエンドのラインナップは、対象とするターゲット層がぜんぜん違いますので、本当であればコミュニケーションの設計は別々にしていくべきなんです。ところが、デジタルへと振り向いた途端に、同じホワイトリストを使って、同じPMPを使って、という配信になってしまうわけです。
そのときに、ターゲティングできるからいいじゃないの? となりますけれども、さっきのターゲティングはcookieベースですから、2桁もあるようなそういう識別子Basedのターゲティングしかできないということになってしまうわけですね。
これは僕はあまり健全ではないと思っていて、プレミアムな商品を展開するブランドさんからすると、「自分たちのコアユーザーであるF2・F3を狙いたいんですよ」というようなメディアにちゃんと出したいんだと思いますし。スタンダードなほうは、うちは広く出したいので、F1・F2メインでいきたいんですよっていうことなのかもしれない。
それがちゃんと叶えられる、コミュニケーションプランが考えられるメディアプランを設計できる。これは、媒体社様側が先ほど言ったような“比較できて差別化できる環境”を作っていかないと、たぶん無理なんですね。一番最初のテーマにもありましたように、People Basedで新しくデジタルメディアの価値が変わっていく。そういう世界だというふうに思っています。
宮本:ここで今お話したのはいわゆる量、どれだけのリーチができるのだろうかというのは量の話なんですけれども。実は欧米でもう1つ標準化……リーチは人ベースで標準化しています。もう1つエンゲージメントですね。エンゲージメントも標準化の方向に動いています。
ところがエンゲージメントというと、媒体社さんによって「うちはこういうことが言いたい」「うちはああいうことが言いたい」ということがそれぞれさまざまです。その中で動きがあるのが、とりあえず標準化するものはターゲット層の滞在時間。これだけは、滞在時間というデュレーションのところのデータだけはもうみんな揃えちゃいましょうよ、と。リーチとエンゲージメントが標準化されている。
それにプラスして、先ほどのリーチの話でも「うちは富裕層のユーザーを持っています」「うちはファッション好きなユーザーを持っています」というものがありましたように、エンゲージメントの表現もプラスアルファをして差別化していく。スタンダードで比較をして、自分たちのオリジナルの訴求で差別化をしていくような世界が始まってきていて。これによって、だいぶ健全化が進んでいると思っています。
さっき赤星さんからヤフーさんの取り組みでクラッター(広告が氾濫している状態)の対策の話がありましたけれども。ここも実はアメリカはけっこう進んでいて。一昔前、どうせネットワークに枠を投げてしまうんだから、死ぬほど作って広告だらけの面にしてしまえば、それが一番儲かるんじゃないのというような世界がありましたけども。
やっぱり、そこはもう脱却していて、自分たちはいいコンテンツを作って、きちんとした価値のあるユーザーを持って、その広告枠がコンテンツとして、きちんとレリバンシーのある表現で広告主様に高い単価で買っていただけるメディアになっていこうという動きがすごく起きています。なので、クラッターの議論は、たぶんメディアさんの業界の中でも、今後日本でも非常に重要な動きになってくるのかなと思います。
宮本:消費者を起点としたメディアと言ってますけれども、People Basedということになったときに、やっぱり消費者を意識しないメディア事業は成り立たないと思います。プラス、やっぱり広告主に寄り添った展開をしていかないと、当然やっていけなくなってくると思うんですけれども。このあたりは、ヤフーさんに、今後の取り組みといったところでどんなことがあるかお伺いしたいんですけれども。
赤星大偉氏(以下、赤星):そうですね。本日はPeople Basedのマーケティングがどういうプラットフォーム、どういうプラットを作っていくかという話がメインだったと思うんですけれども。我々ヤフーは、1つの広告プラットフォーム、メディアとしても基本は広告主さん、「クライアントファースト」です。社内では「クライアントファースト」「クライアントファースト」とすごく申し上げさせていただいています。
広告プラットフォームも、どうしたら有り体の収益というような主眼ではなくて、広告主さんのビジネスがちゃんと伸びて、それによって信頼されて僕らが出稿を受けるという健全なかたちにできるか。プラットフォームもそういうふうに変えていきたいと思っていますし、我々の何百人もの営業組織も、いわゆるクライアントファーストな組織へと、どんどん骨太にしていきたいと思っています。
もう少し具体的に言うと、実は我々4月からは12個のインダストリー、業種に営業組織を分けさせていただいていて。業種ごとにクライアントさんがどういう課題を持っているか、同じ業種の中であったとしても、A社さんB社さんC社さん、ぜんぜんマーケティングの課題が違っている。実は、そういったノウハウをしっかり蓄積しやすいような組織体系にさせていただいております。
今後は、エージェンシーさんと一緒にタッグを組みながら、その先にいる広告主さんがどういう課題を持っているのかを起点にして、その中でヤフーの提供するソリューションがどう活きるのか、ヤフーのアプリインストールソリューションがどういうふうに活きるのか。そういった観点でしっかりと広告主さんと向き合っていきたいなと思っています。
赤星:エージェンシーさんとも疎遠になるということは決してなくて、むしろ一緒にそうやって広告主さんのことを考えて売っていきたいと思っています。やっぱりインターネットがすごく伸びて、それに押し上げられてヤフーも伸びてきたときとは、ちょっと状況が違うかなと思っています。
1つのプラットを出して、それがバンバン売れるような世界ではないと思います。我々組織としては、愚直にクライアントさんの課題解決をしていくことで広告収益を得るような、健全な状態に早く持っていきたいなと思っています。
宮本:ありがとうございます。いろんな広告主さんと議論をさせていただく中で、最近本当によく出てくるもう1つのキーワードが、エコシステムですね。広告主さんと広告会社さんと、それからメディアさん。ここが三位一体になって、エコシステムを作り出していくことが非常に重要だとおっしゃられる広告主さんがすごく増えたなと思っています。
実際にこれもアメリカなどではそうした動きが起きています。媒体社さんも第三者に測られるのが嫌だというよりは、比較される土俵にちゃんと乗ったうえで、自分たちの計測データ、第三者の計測結果を見ながら、そこをもっと効率的にしていく。あるいは、オプティマイズをかけていく。媒体社さんと広告会社さんと広告主さんと、同じデータを見ながら協働していくような世界がもう始まっています。
やっぱり、みなさんご存知のようにデジタル系のメディアというと、ビークルの数を数えられる人はどこにもいないわけですけれども。かつ、実はメディアプランといって広告主様の側からすると、「今回はちょっとF1に広く当てたいんだよね」というようなことを言うと、出てくるメディアプランの提案がGさんだったり、Yさんだったり、YTさんであったり、Tさんだね、という(笑)。
だいたいもう決まったメディアくらいしか出てこないような世界になってしまう。本当は、山ほどいろいろなプラン、媒体があるのに、提案されてくるのはいつも決まったところだけというのが、みなさんもなんとなく心当たりのある世界なんじゃないでしょうか。
たぶん、このへんを突き抜けていくことで、広告主さんからすると、デジタルをきちんと理解したうえで効率的に消費者とコミュニケーションができる、というベネフィットが得られますし。それから、「ほかの広告代理店さんよりももっといい提案をしていく」という広告会社さんがいれば、そちらの選択がされていくようになっていくでしょうし。
メディアさんからしても、アドベリの対応はもちろんなんですけれども、広告主さんのコミュニケーションに寄り添うような動きをしていくメディアさんが増えてくる。これもメディアさんからしても、ほかとは違う差別化で選択されるようになる。こういうエコシステムが回っていくというのが、おそらく今後の健全なデジタルメディアの世界なのかなと考えています。
宮本:今日のまとめなんですけれども、冒頭でアドベリのお話をさせていただいて、ここで担保できるのは「安心」「安全」という、この2つのキーワードなんです。やっぱり広告コミュニケーションということを考えると、広告主に寄り添ったメディアデータが媒体社さんから出てこないと、「誰とコミュニケーションできるメディアなのかわかりません」という世界からは出られない。
もう1つのキーワードですね。比較と差別化ということで言いましたが。業界共通の指標があることによって、比較ができる。比較ができるから初めて、「あっちの媒体とうちはこう違うんです」ということが言える。差別化ができる。ここの差別化は、当然ユーザーの差別化でありコンテンツの差別化であり、あるいは、おそらく提案の差別化です。媒体社さんからすると、そういう3つの要素が考えられるんじゃないかなと思っています。
それから最後の1点、ここはあまり触れなかったんですけれども。昨今すごく危惧されているのは、デジタルメディアの信頼の低下や、透明性のなさ、アカウントアビリティが低いというようなことです。やっぱり、この状況をきっちり払拭していくことが、業界が安全なだけではなく、価値のある広告コミュニケーションメディアになっていけるところだと思います。
こういった業界への信頼をこれ以上下げずに、もっともっと上げていくためにも、やっぱりPeople Basedの指標、メジャーメントが大切だと考えています。最後になにか赤星さんからまとめとしてどうでしょう?
赤星:まず、主にデジタル領域でのPeople Basedの話を一緒にさせていただいたんですけれども。それこそUSなどではオフラインの領域のメディアプランにおいても、ソリューションをどんどんローンチされていらっしゃいます。これは「我々が」というよりは、業界全体を統一した指標で、デジタルに限らないでどんどんオフラインもそうなっていくべきだと思っていますので。
そういったものを、ぜひ日本の市場でも促進させていただいて、その中で、我々ヤフーの位置付けも、しっかりとクライアントのみなさんに訴求していきたいなと思っています。今後もぜひ引き続きよろしくお願いします。
宮本:ありがとうございます。いいんですよね? うちが(デジタルコンテンツ視聴率などのデータを)比較しちゃって。
赤星:比較したうえで、我々の味というのを出していきますので(笑)。
宮本:ありがとうございます。最後にちょっと宣伝なんですけども、少しサンプルデータなどもご覧いただいたデジタルコンテンツ視聴率、こちらの提供を始めています。もしメディアの差別化のような部分にご興味があったり、自分たちのPeople Basedをどうしたらいいんだろう? ということをお考えの方がいらっしゃいましたら、ぜひお気軽に声をかけていただればなと思います。
それでは本日はヤフーの赤星さんにゲストとして登壇いただき、わりと率直に「こんなこと言っちゃって大丈夫なの?」というお話も聞けたかなと思っています。赤星さん、どうもありがとうございました。
赤星:ありがとうございました。
(会場拍手)
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