「早期審査」がシード期の会社を救う
スタートアップにおける知的財産の価値

Session6 会社に眠る知的財産を覚醒せよ! #2/5

IVS 2018 Winter Kanazawa
に開催

2018年12月17日~19日、石川県立音楽堂にて「Infinity Ventures Summit 2018 Winter Kanazawa」が開催されました。19日のセッション「会社に眠る知的財産を覚醒せよ!」には、特許庁長官・宗像直子氏、iPLAB Startups中畑稔氏、エアロネクスト田路圭輔氏、FiNC Technologies溝口勇児氏が登壇。Drone Fund General Partner千葉功太郎氏をモデレーターに、特許などの知的財産の重要性や可能性について語り合いました。

若いスタートアップが特許ランクに名を連ねる

千葉功太郎氏(以下、千葉):では、本編にいきたいと思います。「会社に眠る知的財産を覚醒せよ!」ということで、知的財産の定義は非常に多岐にわたります。その中で一番みなさんに馴染みがあるのが、商標・特許かなと思いますが、それ以外にもたくさんの知的財産があります。

我々スタートアップは、それを早いうちからうまく取得し、使いこなして会社の武器にし、レバレッジをかけてベンチャーキャピタルから資金調達をしていく。あるいは、事業の提携で大きな会社とのアライアンスの基本としていく。そして、将来大きな会社から訴えられた時には、戦う武器になることもあります。

(スライドを指して)1つご紹介したいのが、11月28日の記事です。びっくりしたので、自分もツイートしました。これは情報通信業界全体で、2017年4月1日から2018年3月末までの1年間に登録された特許ですね。

個別特許の注目度を得点化する「パテントスコア」という方式で、世界中の情報通信の会社の特許に対して、右側に件数と、それの価値を示しています。

特許はゴミ特許的なものからスーパーキラキラ特許まで、S・A・B・C・D・E・Fランクと、特A・特Bみたいなものがあります。それを点数化したものだと思っているんですが(注:パテントスコアの数値の高さ=市場からの注目度の高さ)、ご覧のような順位なんですね。

見てほしいのは、昔在籍していたコロプラが6位。特許件数が136件で、得点が8408.4。その下にKDDI、Microsoft、そして9位にGoogle、日本の楽天。

NTT、ヤフー、XIAOMIを含めて、納得のメンツと思うわけじゃないですか。そこにコロプラが入っている。コロプラは社歴が10年の若い会社なので、一応スタートアップと言えます。その若いスタートアップがランクに入っているという事実が、すごいなと思ったんです。

これは予想もしていなかったので、本当に驚きました。これが今日のテーマなんですよ。つまり知財をしっかり意識すると、大企業レベルの法務部や知財と肩を並べられる可能性が出てくるんです。

そうすると、当然提携などの話も出てきます。あるいは会社の価値全体にも大きく影響してくると思うんですよ。

FiNC Technologies、知財の取り組み

千葉:最初に、各社の知財に対する取り組みを簡単にご紹介いただきたいなと思っていて。今回気になったのが、2018年10月に社名変更までしたFiNC Technologiesです。

溝口さん、「Technologies」と入れたということは、相当、知財や技術を意識したのだと思います。どんな知財の取り組みをしているのか、簡単に知識をシェアしていただけると。

溝口勇児氏(以下、溝口):そうですね。まず私たちは、創業期から非常にテクノロジーに関しては強い会社だったと自負しています。例えば、FiNCの初期から一緒にやっているCTOの南野は、現在ディープラーニング協会で最年少の理事をやっており、東大在学中にはスマートグリッドエリアテクノロジーの論文で世界一の賞を取った方です。また、言わずと知れたディープラーニング・AIの権威の松尾豊先生もいらっしゃいます。

私はテクノロジーの「テ」の字もない人間なんですけれど、社内には非常にテクノロジーに強い人たちが多くいます。一方で、経営陣はシニアが多いので、どちらかというとテクノロジーの色がない。

千葉:確かに見えないですよね(笑)。

溝口:私たちは、明確に解決したい課題があるので起業という手段をとりました。とくに起業したいと思っていたわけではありませんが、前の会社だと課題解決が実現できないと思ったので、起業に至りました。

その解決したい課題とは、ヘルスケアをお客さまに対面で提供する際に、健康行動を続けていく上で、実はボトルネックになっているものがいくつもありました。

1つはデータの入力。例えば、トレーナーとしてお客さまをサポートする際には、カルテを書いてもらわなければなりません。しかし、カルテを書き続けてくれる人はめったにいません。

それをお客さまと共通の場所に保管して、それを取り出して過去データを見て、さらにそこからデータに基づいて、最適な指導をする。これは非常にボトルネックになります。

お客さまに提供する価格は、パーソナルトレーニングならもともと1時間6千円くらいで指導していました。努力を重ねるうちにお客さまの需要は出てきましたが、対面でサービスを提供できる人数に限界があります。また、自分一人でやれる範囲が限られることによって、価格帯が1時間3万円くらいに高騰してしまったので、需要と供給のミスマッチが起きました。

また、時間と場所の制約の問題もあります。例えばカルテの保管も、特定の場所に置かないといけないという制約もありました。生活習慣を正しくしたくても、これらがボトルネックになって難しかったという背景があったんですね。

知的財産が武器となる

千葉:その中で、今日のテーマである知的財産は、経営のどのタイミングから意識しましたか? 

溝口:まず、私が創業したのは2012年4月です。2010年に、GoogleとAppleが特許戦争をしていましたよね。2011年は、GoogleがMOTOROLAを特許目当てで買収したというニュースが出ていました。そして2012年はGoogleとMicrosoft、Nokiaとかがまたもや特許戦争をしていた。

ですから、私が起業した前後の年は、メディアでも比較的大きく特許で揉めている会社がいっぱいあったんです。個人的には「揉めたくないな」というのもありました(笑)。

また、私自身はトレーナーをやっていた中で、インターネットが好きでHPを作るのにHTMLやCSSを使っていて自分でイラストレーターやフォトショップなどでイラストを書いていました。ですから(IT方面に)けっこう関心があったんです。

そんな時にBot・AI・ディープラーニングなどに触れ、今のCTOの南野に出会い、「この技術を使えば、今までの課題を解決できる」と思ったんです。

それに対して、世の中の人たちがあんまり気づいていない印象を持ってたので、「これは特許を取れるのかな?」という考えで、ほとんどノリで出願してみたら、すごくデカい特許が取れたんですよ。

千葉:それは何年ですか?

溝口:2014年のタイミングで……。

千葉:創業の2年後?

溝口:そうです。

千葉:早いタイミングです。その時に特許を出願したんですね。

溝口:そうです。

千葉:それは、いつ取れたんですか?

溝口:2015年ぐらいのタイミングで取れました。

千葉:まぁ、そんなもんですよね。

溝口:中畑さんにも同じくらいのタイミングで出会いまして、「すごい特許を持っていますけど。これ、すごいですね」と言っていただいて(笑)。そこで無理を言って、参画していただいたんです。

FiNCの知財に大きな可能性を感じた

中畑稔氏(以下、中畑):僕はスタートアップに入る時、この会社が絶対に成功するかどうかを判断するために、知財を見たんですよ。その中に「なんだ、これ?」という基本特許があったんです。

千葉:転職の時に、勝手に知財デューデリをしたんですか。失礼なやつですね(笑)。

中畑:いえいえ(笑)。「溝口さん、ぜひ一緒にやらせてください」と。

千葉:そんなにすごい特許だったんですか。ちなみに、どんな基本特許なんですか?

溝口:簡単に言うと、お客さまのあらゆる生体データを基に、お客さまにBotかAIがアドバイスをするといった……。

千葉:今のFiNCアプリの?

溝口:そうです。

千葉:へぇ〜。

溝口:その生体データとは、例えば血圧・体重・歩数・食事・血糖値・睡眠などのあらゆるデータとお客さまの悩みや目標を基に、BotやAIがアドバイスをします。つまり、今まで人間がお客さまの個人情報やデータを基にアドバイスしていたところを、AIやBotでやるんですね。それを「こんなの無理だろうな」と思って出願したら、取れたんですよ。

千葉:なるほど。ちなみに2012年に初めて出願して、2015年に成立したと。

早期審査がシード期の会社を救う

千葉:例えば、今までに特許だけで見たら何件、商標で何件ぐらい出して取れているんですか?

溝口:特許は100件以上出願しておりまして、取得しているもので41件です。

千葉:すごい打率じゃないですか。

溝口:(2018年の)年末まで行くと、52件に膨らむ予定です。(注:2019年1月現在、52件取得済み)中畑さんにかなりご尽力をいただいて、進めてきました。

千葉:商標に関してはどうですか?

溝口:商標に関しても、記憶にないぐらい取っていると思います。

千葉:例えばここにいるみなさんでいくと、普通は社名やメインサービス名を取るじゃないですか。「FiNC」「FiNC〇〇」みたいなアプリの名前とか。商標はどのレベルで取っていくんですか?

溝口:意匠とかもそうですし、あとは本当にUI・UXみたいなものも含めて取っていますね。

中畑:初期の頃に「ダイエット家庭教師」の商標を取得したんですよ。商標は、サービス名称そのまんまとか、内容そのままみたいなものは、基本的に取りにくいだろうと思っていたんです。

でも「『ダイエット家庭教師』だと、つまりダイエットの家庭教師でしょ?」と思ったら、その当時は新しかったこともあって、けっこうスルッと通ったんですよ。

会社名以外にも、主要なサービスやジャンルもありますよね。「チーフウェルネスオフィサー」「ウェルネス経営」とか。そういうところもきちんと手当てをされていたので、「この会社はすごいな」と感じました。

千葉:なるほど。100件出願して100分の41(を取得した)。僕も前職で特許はかなり意識していましたけど、相当打率が高いなと思いました。一方で、やっぱり時間がかかる大きなテーマだとも思っていて。

特許といえば、普通は感覚的に3年ぐらいですよね。最近は早期審査の制度も出てきて、多少は短くなる。でもスタートアップに対して3年は……。我々は、3年あったらもう十分会社として死んでいるじゃないですか。

会社が生まれて死ぬのに十分な期間なので、とてもシードの段階で特許を出して待っていることはできないし、3年待っているうちに資金調達はもう終わっていますよね。なので、早期審査はすごくよかったと思っています。

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IVS(Infinity Ventures Summit)

IT業界の一流企業の経営者や経営幹部が一同に会し、ディスカッションやスピーチが行なわれる豪華イベント。普段は見ることのできないクローズドな経営者同士の会話や経営裏話など、日本のIT業界の最先端情報がここに集まっています。
IVSは、主に経営者向けに行なわれる通常のイベントのほか、学生向けに行なわれるワークショップも年に数回開催されています。ログミーでは、公式メディアパートナーとしてその中の人気セッションを全文書き起こし、全部で400記事以上のコンテンツをご覧いただけます。

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