「自分はこんなに何もできない人間なんだ」と気付かされた学生時代

平尾丈氏(以下、平尾):こんな感じで、「新しい経済圏」に話を戻していきたいなと思ってはいるんですけれど、前田さんどうですか?

前田恵一氏(以下、前田):新しい経済圏も興味があるんですけれど、僕が興味あるなと思うのは、今回いろんな方々のセッションをご一緒させていただいて、すごく強いリーダーシップを持っている方が多いんです。その源泉はあきらかに自分の原体験というか、志・経験からきていることが多いんですよね。

僕も含めて、それを認識するかどうかみたいな話に近いことで、「ない・ある」という話ではなく、それをどのように認識して、どう繋げているかに焦点を当ててうかがっていたんです。

今田さん、よろしければ、なんでこういうことをされていらっしゃるか、とくに25歳からずっとコミュニティを作り続けたいと思ったところ、feverというプラットフォームを作ってまでやっていらっしゃるその理由はなにかございますか?

今田孝哉氏(以下、今田):そうですね、学生時代にいくつか事業をやっていた中で今の流れがあるんですけれど、コミュニティをやったときに、そのコミュニティで運営している課題を解決したいと思ってやったのが1つあります。

思い出して掘り下げると、学生時代にダンス部を作っていたんです。そのときに僕1人しかいなくて、先輩は1人いたんですけど、3年目に入って先輩が卒業してしまって僕1人になったんです。そのときに、半年間くらい1人で勧誘活動しても誰も入らなかった。

「自分は人を煽って巻き込めるんじゃないか」と思っていたんですけれど、意外と何もできなかったんです。その半年間で「自分はこんなになにもできないんだ」ということに気付いたんですね。

これはもっと変えないといけないということで、勧誘活動を180度変えて、もう「入ってください」じゃなくて「1日無料でダンスを教えるからやってみない?」みたいに変えたところ、「1日だったらいいよ」ということで、友だちが2人入ってくれたんです。

そこから、その2人に1日でも長く続けてもらうために、いかにコミットしてもらうかみたいな勝負がまた始まるんですね。1日でも長く続けてもらって、結局その2人がコミットしてくれて人が徐々に増えて、70人くらいまでいったんです。最大規模までいきました。

「自分1人で誰かに勝つんだ」「1人で一番になる」みたいなことが好きだったんです。でもそういう経験を通して「1人の一番」はちっぽけで、周りを巻き込む過程がものすごくおもしろいと思ったんです。

周りをたくさん巻き込んでいく過程に、「入ってくれてよかった」「入ってくれてありがとう」と思ってもらうために、どのくらいコミットできるのか。人を巻き込んで大きくしていく過程に人生を懸けたいとすごく思えたんですね。それが今にかなり繋がっています。起業原点という感じですね。

そこでいかに大きいサービスを作るかという自分勝負の中で、今はインターネット・ブロックチェーン・仮想通貨とかがものすごく広がってきていると思います。

インターネットの普及と、ブロックチェーンと仮想通貨の普及がリンクするところがコミュニティなんじゃないかと思っていて、ここは大きく変わるんじゃないかということで今やっています。

苦痛のない、楽しいことをやるのが一番

前田:ありがとうございます。余語さんもよろしければ……とくに早めに経営者になりたいとか、今は若い人に遊んで欲しいとか、これは志なのかどうかはわかりませんが、なぜそう思うようになったのかをお聞かせくださいますか。

余語邦彦氏(以下、余語):その質問にストレートに答えられるかどうかわかりませんが、やはり楽しいこと、自分がやりたいなと思うことをするのが一番だと思っているんです。

僕は経営するのが好きで、カネボウも再生局面で1万2千人の社員がいて、そのうちの60パーセントがビューティーカウンセラーの女性、比較的年齢の低い女性だったりします。女性かどうかは関係ないんですけれど、そういう人を引っ張っていくとか、経営が楽しいんですよ。

だから今までそういう会社の経営を何社かやった上で、ベンチャーの経営はやったことがなかったので、今回それに挑戦してみたいということでやっています。そういう意味では、みなさんのほうが先輩なんです。

とにかくあまり難しく考えないで、自分が苦痛じゃない、楽しいことをやるのが一番だと僕は思うんですよね。それはそれぞれの方に適性があって、僕は組織の頂点に立って引っ張っていくのが大好きなんです。

前田:いつぐらいから、どんなご経験でそう思うようになったのか、なにか心当たりはございますか?

余語:これは交通事故みたいなものなんですけれど、僕は最初に入ったのが役所で、科技省、通産省といて、それからMBAで海外留学して取ってきて、マッキンゼーに入ったんです。コンサルタントになって、そのあと独立していくつかシリコンバレーのベンチャーとかそういうところに投資家を紹介するような仕事をしていました。

そういう中で、たまたま光通信関連の仕事をするようになりました。創業者の重田さんは、有名なのでみんな知っていると思います。彼が1999年8月頃に一部上場でガーッと時価総額を上げて、翌年2月に急激にゴーンと落っこちたところにたまたま遭遇して、「手伝ってくれ」と言われて、売り言葉に買い言葉でジョインしたんです。

そのとき、コンサルタントから経営者にたまたまスイッチすることになったんですね。それは嵐のような中にいきなり飛び込んでいくようなものでした。

なんとか解決策を見いだしてどうにかなったのでよかったんですけれど、そこから「経営はおもしろいな」と思うようになりました。そういう経緯ですね。話すと長くなります。

結局のところ、大事なのは「やりたいことをやれ」

前田:ありがとうございます。今田さんはダンス部でのご自身の葛藤みたいなものがすごく強いですよね。おそらくすごく大げさなイベントとかではなくて、ちょっとしたものに対する憤りみたいなところを、すごく強く認識されている印象を持ちました。

さらに言うと、憤りを憤りのままにせずに、「それすら許さん!」みたいな感じのアクションが、足下の小さい火だったものがどんどん現象として変わってきた。その結果、会社を作る話になっていたり、巨額の投資をするということにまでなってきたりする。

根っことしては、単純に「俺は平等でいたいんだ」「いろんな人を巻き込みたいんだ」とか、純粋に「交通事故」とおっしゃっていましたけれど、「経営が楽しい!」ということに気付けて、それをやっているんですね。

余語:そうですね、チャレンジなら迷わず飛び込むことだと思います。

前田:第1部から第3部まで、長い時間、こういう場を持たせていただいていますが、平たく言うと「やりたいことをやれよ」みたいなことしか、みなさんおっしゃっていないんです。

(会場笑)

いろんな文脈でいろんな具体事例がたくさんありながらも、「いいからやれよ」「そう思ったんでしょ。やれば?」みたいな話しかたぶんしていないんですね。それを、どういうふうに今のご自身が形成されたのかという話に紐付けて質問させていただきました。ありがとうございます。

起業するのは簡単、続けるのが難しい

前田:第3部自体はこれにてお開きという時間に近づいてきていますが、どうでしょうか。働き方・教育・経済圏。すべてが新しい文脈でなにが起きるのか、なにが起きているのか。そして、どこが本質層なのかという話をずっとしてきました。

結局はだんだん過去の話になってきて、ご自身の過去やなにを感じたかというものが、たぶんみなさん方を突き動かしているということが、伊藤さんのセッションを含めて感じたことです。

5時間ほどやっているのですが、表を書いていただいたかと思うんです。このお三方を前にしてここで時間を取るのはなかなか勇気がいるんですけれど、改めて1分だけ時間を取っていただいて、今までのお三方のお話を踏まえた上で振り返る時間にしたいんです。

一方で、ご自身の経験の中で憤りを感じていたとか、実際はこういうふうにやりたかったとかを振り返る時間を取らせていただきたいと思っております。よろしければ先ほど書いた表、もしくは表がなくてもけっこうです。振り返っていただいて、そこを認識する時間だけちょっとわがままに取らせてください。

平尾:さっき余語さんもおっしゃられたけれど、感情が変わるタイミングはわかりやすいモチベーションの起点になりえるんです。 モチベーションスイッチです。スイッチにはなるんだけれど、どちらかというと難しいのは継続なんですよね。僕は若い頃から起業家を子役みたいにずっとやってきているので、年はまだ青二才ですけれど、だんだん慣れみたいなものが出てきます。これはよくないですけれど、やはり楽しいから続くんです。

起業は続けることが難しいとよく聞きますよね。本当に続けるにはポジティブフィードバックが続くかどうかが大事。やはり楽しいから続くんでしょうね。

でも起業家は大変なんですよ。ものすごく大変です。みなさんの中にも起業されたい方がいらっしゃるかもしれない。慎重に起業してください(笑) 。

生まれ変わっても起業家でありたい

平尾:今日はワークライフバランスの話ではなかったんですが、自分は本当に仕事と人生の境界線がないまま、ワーク・ライフ・インテグレーテッドできてしまったタイプです。でも、やはり楽しいから継続してきて、本当に生まれ変わっても自分は起業家でいたいと思うくらい天職に出会えたなと思っています。それはラッキーだったんですが、自分で……締めの言葉みたいになってしまっていますけど(大丈夫ですか)。

前田:どうぞ。

平尾:好きだから続くこともそうですし、継続していくことの難しさもあります。たまたま自分はそれに出会えたからいいですけれど、皆さん今日なにかに出会えたらいいなとも思います。

本当に学生時代から前ちゃんは、たぶんコネクターというのかな、ソーシャルキャピタルを体現している方です。今日も若い方が多いので過去に振り返っていただいたんだろうなというふうに、勝手に解釈しています。やはりコネクターみたいな人は希有な方だと思います。

今日はみんなおとなしいけれど、交流会も含めて今田さんや余語さんを囲むくらいの感じでバーンと行くんですよ。

それぐらいそういうところがチャンスなんです。自分も学生時代にそうやっていました。

できれば、「好き」をちゃんと見つけてそれを仕事にできてくると、最後はロボットに取られるかもしれないけれど、人間があがいて新しい経済圏ができる。それを作るほうもすごく素敵だと思う。でも、その中で人間ができることを本当に真剣に考えながら、自分はやっていきたいなと思いました。