若者が不幸を被る日本社会の問題

前田恵一氏(以下、前田):余語さんにちょっとおうかがいしてみたいことがあります。ご自身が大企業にいらっしゃいまして。経営をされて、建て直しをされている経験が多いじゃないですか。一方で、今横に二方、ちょっと毛色の違う若手ベンチャーの経営者がいます。余語さんは圧倒的にいろんな方を見てこられていますが、このお二方をどう見られているのかを率直に聞きたいんです。

僕では計り知れないんです。とくに平尾丈は計り知れていなくて。学生時代からの友人なんですけれど、ぜんぜんわからないんですよ。

余語邦彦氏(以下、余語):それは、僕に聞かれたってわからないな(笑)。

前田:人柄を知りたいとかという話じゃなくてですね。

余語:僕は先ほど言ったように、とにかく老後の長い人生をいかに若い人に遊んでもらうかですから、もう「遊んでください」とお願いしにきた感じです。

平尾丈氏(以下、平尾):今日、ご連絡先を交換させていただきたいです。

余語:お願いします。やっぱり、若い人と付き合わないとどんどん老けちゃいますからね。今日のオーディエンスは若い人ばっかりだけど、やはり僕くらいの年代になるとみんな寂しいんですよ。会社からは疎まれて、家族からも疎まれて。

前田:丈くんみたいになっていますね。友だちいないのがうつっていませんか(笑)。

余語:制度が追いついていかないので、今日のみなさんへのメッセージじゃないけれど、そこらへんは日本の社会の大きな問題です。医学もITも進歩する中で、そこの問題が日本では大きいんです。それに対して若い人たちの数が少なくて、みなさんの肩に年金がドンとかかって、若い人が本当に可哀想だと思うんですよね。

若い人にがんばってもらわないといけないので、そういう意味では一生懸命そういう人たちに、我々、私みたいな人が少しでも知恵を付けていきたい。うちの会社は、さっき言ったフレセッツというんだけれど、28歳の社長の会社で、僕以外はみんな若い人ばっかりだけど、ときどき「おじさんパワーはすごいな」と言ってくれますよ(笑)。

最初からサラリーマンのレールには乗らなかった

前田:十分すごいと思います。私の率直な感想は、ここに登壇していただくこと自体が本当にサプライズだったんです。私も勝手な思い込みがあって、余語さんはゴルフがお好きだからされていらっしゃいますけれど、こういう教育の場や、実際に若手の方々と関わることを、そんなに積極的によく思っていらっしゃらないと思い込んでいたんです。

よく思っていないことはないにしても、こんなに積極的に若い人と関わるとは思っていなかった。そういった、余語さんみたいな方はけっこう多いんでしょうか?

余語:それは僕に聞かれてもね……。

前田:僕はけっこう、周りにいらっしゃるご友人たちとゴルフを3、4回ご一緒させていただいたことがあるんです。

余語:僕はすごく特殊で、過去に転職を11回もしているし、いわゆる普通のサラリーマンのトラックレコードを外れていて。サラリーマンで階段を昇る人生は最初から嫌で辞めているんです。僕みたいな人はちょっと特殊ですよね。親分の大前研一もそういう人だし、そういう人はけっこういますよ。

平尾:ありがたいですよね。僕は20代で外れて、今36歳なんですけれど、若い部類に入れていただけるのかがちょっと心配です。アラフォーと言いましたけれど、まだ30代です。

余語:まだ英語も大丈夫ですから。

平尾:大丈夫ですか? 余語さんに見捨てられないように、お仲間に入れていただきたいなと思いながら、残り何分で仲良くなれるか考えてしゃべりたいなと思います。

余語:困ったら出資してください。

平尾:ぜひぜひ。ありがとうございます。

余語:これは冗談です。

平尾:これ冗談ですか!

(会場笑)

その気になっていました。

前田:どこまでカットすればいいか、ぜんぜんわからない。

(会場笑)

「寝ているものは親でも使え」の精神

前田:率直な感想として、僕個人として、まず先輩の方々があんまり好きじゃないんですよ。先輩の方々はいらっしゃるんですけど、どの方々が嫌いというよりは一般的に好きじゃないんです。話が通じないケースも多いですし、僕は逃げ続けてきたんです。だから……。

平尾:大丈夫ですか?

前田:大丈夫、カットでお願いします。

(会場笑)

逆にいうと、自分でやりたいと思うことを自由にできる環境は、上の方々に相談しないほうが進みやすいという勝手な思い込みがあったんですね。でも、最近ゴルフを始めたり、他の関わりを上の方と持たせていただくようになったりして、その思い込みが消えてきた感じがあるんです。

とくに、5周年の記念に際して、余語さんほどの年齢の離れた方をご登壇にお呼びすること自体がファーストセッションで。そのファーストセッションも含めて、僕の中でけっこうチャレンジな部分があるんです。それに非常に好意的に関わってくださる方々が、最近の私の友だちの中で多いんですよね。その熱みたいなものを、みなさんにもお伝えしたいと思っています。

そういう場をつくりたいと思っているんですけれど、ただ、僕は元々「近づいていいのかな」みたいな思い込みが強かったので、「そんなことはない」という方はけっこう多いのかな、というのが率直な疑問としてあったので投げたんです。

余語:「寝ているものは親でも使え」と言いますから、ぜひおじさんも一生懸命利用してください。みんな寂しい思いをしていますから。

(会場笑)

みんながこれから伸びていくために。日本も伸びていかないと困るからね。ボーダレスでいいんだけれど、会社と起業家はあまり国籍にこだわらなくてもいい。そういう意味ではあまり国籍を気にする必要はないと思います。

俺はとにかく情報格差をなくしたい

前田:もはや経済圏と関係ないんですけれど、ちょっとおうかがいしてみたいことをいくつかみなさんに投げたいと思っています。率直に丈くんに関してちょっと斬り込ませていただきたいんです。今回のイベントに際して、記事をたくさん読ませてもらったんだけど、一番印象的だったのは「俺はとにかく情報格差をなくしたい」というもので。

平尾:おお、いいですね。そうなんですよ。

前田:今は違う?

平尾:今もそうです。前を見ています。リーダーが前を見ていかないといけないし、うしろを見ながら走ったら遅いじゃないですか。まっすぐ見ながら前を向いています。

前田:丈くんはすごく強いと思う。とくに、前のセッションでもあった「志」という文脈で言うと、それは丈くんの過去や、憤りみたいな話なのか。たぶん丈くんの中で「これを絶対達成したい」というものは、情報の格差だけじゃないと思うんです。聞いていいですか?

平尾: 僕はほぼ母子家庭に近くて、祖父が社長でその会社が潰れたんです。

これにけっこうコンプレックスがあるんです。人間の喜怒哀楽はすごいんです。今はじげんという会社を上場もしていますし、社会的なところに対してもビジネスで社会の問題を解決する事業家集団であると思っています。

でも元々の根っこは、世の中、平等や民主主義だと言っていても、そんなに平等じゃないなというのを、わりとタブーかもしれないけれど幼少期から感じ取ったことなんです。

たまたま中学校は私立に行かせていただいて、やはり周りに教育レベルが高い方々、裕福な方々が相関して多くなってきたんです。うちの親父はぜんぜん働かないし、周りはみんなお医者様だったり、社長の息子が多かったので、「なんでうちだけ貧乏なんだろう」とすごく思っていました。

自己実現の先にある、自己超越欲求

平尾:起業したときは今みたいに「ソーシャルビジネスで世の中を変える」みたいなことよりは、「お金に振り回されない」人になりたくて生き急いでいました。みなさんの目の前に座ってまっすぐ見て、偉そうに語れることではまったくないんですが、10代、20代はけっこう突っ走ってきました。

マズローの欲求5段階説というものは本当によくできていて、生存欲求から始まって、そこが社会的欲求や自己実現に上がっていくんです。自己実現も起業家でしているし、お金は稼ぎに稼いでしまったところもあるんですけど、マズローの説には、5段階ではなく6段階め、いわゆる自己超越欲求というものが実は隠れているんです。

年を取ったこともありますが、そっちに向かってきているところがあるんですよ。元々の根っこはコンプレックスがすごく強かったし、学生時代と変わってきました。

前田:「カミソリ丈でーす」とか言っていたからね。

平尾:ちょっと間違ってる。それはちょっと突っ込みたかった。「尖ったナイフ、平尾丈です」というのがあるんですよ。なんでカミソリにしてるの。

(会場笑)

前田:変わらないよ。

平尾:今なら「愛情・友情・平尾丈」というものがあります。あと「丈マジック」というものもあったんですよ。

前田:丈マジックって!

平尾:喜怒哀楽で怒りとか、悲しみとか、ディズニーのでありますよね。

前田:『インサイド・ヘッド』?

平尾:『インサイド・ヘッド』。さすが一番教養あるね。

(会場笑)

困ったら頼りますよ。『インサイド・ヘッド』みたいな喜怒哀楽の感情を爆発させて、10代20代を走ってきたと思いますね。コンプレックスは人間を動かします。ただ、コンプレックスでは他人は動かなかったんですね。なんでシーンとなるんですか? はは、じゃないよ(笑)。

(会場笑)

自分は動くけど、他人は感情だけじゃ動かなかったりします。「他人と過去は変えられないけれど、変えられるのは自分と未来だ」という名言がありますけれど、それで自分が変わっても、こんなやつにかまってくれる人なんかあまりいないですよ。

ポスト資本主義社会に生まれる「新しい経済圏」

平尾:そんな感じで学生ベンチャーをやっていたんですが、(今田氏に向かって)それを見てたわけですか?

今田孝哉氏(以下、今田):(うなずく)でもそれは見てないです。

平尾:それ「は」見てない。

(会場笑)

そういう修正をしながら今まできていますけれど、5段階欲求を昇りきって、6の上はなんだろうというのを、30代、40代で味わいながらやっていきたいなと思います。そして経済圏が今日のテーマなので、戻していきたいなと思います。

やはり資本主義の構造の中で、ポスト資本主義で語られはじめて久しいと思います。今は、それこそfeverみたいに新しい経済圏でお金がコモディティ化していくタイミングかもしれません。

QRコードの決済やキャッシュレス経済がきているし、ベーシックインカムやAIが出てくると、今後の働き方や生き方も大きく変わってくるのではと思います。

もしかしたらあと数十年遅く自分が生まれていたら、貧乏だったけれど貧乏が恥ずかしいことじゃないと思っていたかもしれないし、みんな、なんでここで笑わないの?

(会場笑)

ちょっとしんみり話をしているわけじゃないんですよ。大丈夫ですよ、笑ってくださいね。