「オーカム マイアイ2」 日本での普及目標

岩下恭士氏(以下、岩下):ありがとうございました。時間がそろそろということなので、会場の方で質問したい方がいらっしゃったら。

司会者:私からまず質問させていただきます。柳平さんにうかがいたいのですが、先ほどのお話で、ハードはごく普通のもので、アルゴリズムがポイントであるというお話でした。そうすると、(価格が)60万するというのは、あの小さい製品につぎ込んだ開発費などということなんですよね。そうすると、世界中に何十万台、何百万台と広がった場合に、価格は相当安くできるということなんでしょうか?

柳平大輔氏(以下、柳平):はい、そうなります。もちろんハードの部分に関しては量産することですね。あとはユーザーが増えていくにあたって、開発費を回収できるということもありますので、最終的には我々の目標としては、価格を下げていくということが非常に重要なことだと思っております。

司会者:日本での普及目標はあるんですか? どのくらいの期間で何台くらいなのでしょうか。

柳平:これは海外の実績をベースに算出したものですが、年内には1千名以上のユーザーに使っていただきたい。2〜3年目に関しては、各自治体の協力というのも出てくると思います。日常生活用具給付制度がありますので。2年目には2千名、3年目に関しては3千名から4千名という目標はあります。

司会者:ありがとうございます。会場のみなさん、どうでしょうか?

何百人ものユーザーをモニターとして開発を進める

質問者A:主に視覚障害者支援などの仕事をしておりまして、企業の理想の内容の中に「売り良し、買い良し、世間良し」というのがあります。

「買い良し」というのは、視覚障害の方にとても素晴らしい商品だということ。「世間」というのは共生社会の実現に向けた素晴らしい取り組みであるということです。「売り良し」の部分で、さきほどの売上のことなんですけれども、世界を意識すれば赤字ではなく、収益があるということでよろしいでしょうか?

柳平:そうですね。その答えとしては「はい」となります。やはり、日本だけとかアメリカだけとなってしまうと、はっきりいって会社としては厳しいですね。開発の人間だけで120名ほどいますので、それだけでもかける12ヶ月の1年でかなりの金額になりますので。

質問者A:ありがとうございました。

柳平:はい。ありがとうございます。

質問者B:オーカムを使いたいと思っている視力ゼロの視覚障害者です。さきほど体験させていただいて感じたこととして、音声のユーザーインターフェイスがよくできているなと感心させられました。これはイスラエルで、実際に視覚障害者の人にテスターになってもらってUIを開発されたのか、あるいはもっと別のやり方でUIを練って仕上げていかれたのか、というのを教えてもらえるとありがたいです。

柳平:基本的に、イスラエルに限らず各国の視覚障害者の方の協力を得て、ユーザーインターフェイスに関しての開発をしております。

岩下:ネットで読んだ話だと、日本だとせいぜい数人くらいの人にモニターしてもらって開発することが多いんですが、オーカムは何百人と書いてあったんですよね。すごいなと思って。それだけ力を入れて、きちんとユーザーの声を聞いた上で、これだけのことができたんだなというのをすごく感じました。

質問者B:ユーザー調査をやる場合に問題になるのは、そういうものを使い慣れているというか、技術に精通している人にお願いする場合と、そうではない一般の利用者にお願いする場合で、お願いの仕方や意見の集め方を変えなくちゃいけないかな、と感じているところもあるんです。

今回はかなり技術的限界を意識しながら、その中でどれだけユーザーインターフェイスを工夫するかということで、非常に考えられているなと思い、感心させられたのでうかがいました。どうもありがとうございました。

柳平:ありがとうございます。

アルファベット以外の言語に対する弱みと、苦手な分野

質問者C:個人で参加しております。私の妹がもうほとんど視野が欠けているような状態で、朝、新聞を読むのにも苦労しているんですね。いろいろ治療はしていますけれども、これからだんだん視力がゼロに近くなっていくだろうという感じで。今日も一緒に来ないかと言いましたら、外出すること自体が怖いということで、私が参加しました。

先ほど(オーカムを)体験してみましたところ、英語に関しては、もう本当に自由に読めるような感じですけれども、日本語のものに関しては、まだ、これでは使うこと自体がストレスになっちゃう段階かなと思いました。例えば、さきほど郵便物とおっしゃっていたように、短い文字に関しては可能かもしれないけれども、1冊の本を読もうとすると、意味をなさないような。

アルファベットの言語に関してはずいぶん進んでいると思うんですが、日本語に関しては改良の余地がだいぶあるように感じました。いかがでしょうか?

柳平:そうですね。オーカムのデバイス自体に、得意なものと不得意なものがありまして。とくに新聞などは、まだまだ改良しないといけない部分もあるのかな、と思っています。ただ一方で、本やドキュメントに関してはかなり精度が高く、他社製品との比較にはなってしまいますが、非常に高い精度だとユーザーの方からは評価いただいています。

質問者C:英語に関しては、そんなに問題なかったです。日本語に関しては、本もダメだったし、新聞もダメでした。

柳平:たいへん失礼いたしました。

質問者C:言語学の助けを得ての改良というようなことをわかっておられるのか。それから日本語以外の翻訳でも、アルファベット以外のものについては、難しい段階にあるのかなと思いました。いろいろとクリアしていかれる姿勢でおられると思うので、早く解決していただきたいと思います。

柳平:わかりました。開発の改良をがんばります。ただ、活字の読み上げに関しては、我々もかなり自信を持っている機能でして、逆に顔認識の部分やカラーディテクションの機能に関しては、正直まだちょっと弱い部分はあります。

これは我々も2019年に改良して、ソフトウェアのアップデートを行っていこうと考えております。あと英語に関しては、英語を認識すると自動的に切り替わるようになっていますので、そのあたりは非常に便利な機能になっております。

スマホゲームの感覚で、楽しみながら使いこなしていける

ケイツ顕氏(以下、ケイツ):補足させていただきますと、どんな機器でも同じように、練習と慣れというものが必要になりまして。オーカムですと認識できるのはカメラの中に入る範囲なので、カメラの向きがずれたり、読み上げたいものを持っている位置が真正面じゃなかったりすると、読み間違いが起こりやすいという場合もあります。そのために我々は、トレーニングを製品の中に含めておりまして、やはり練習ということも重要でうまく使いこなすために必要になってくるのは事実です。

ただ、他の機器と比べますと、練習することによって、逆にやりこめばやりこむほど、スマホゲームみたいな楽しさも生まれるんじゃないかなとも考えています。もちろん、言語の部分はまだ修正・改良の余地はありますが、ユーザー本人の練習も、どうしても必要になってきます。

柳平:岩下さん、実際のユーザーとして(どうでしょうか?)。

岩下:僕はさっきも少し言いましたが、すごいなと思ったのは、教育機能といいますか、「もう少し頭を右に向けてください」とか「下のほうに文字がまだあります」などと、この機械が非常に熱心に教えてくれること(笑)。そういうデバイスって日本にこれまでなかったので、これはすごいなと思ってけっこう感動したんです。そういうものを使って、自分一人でできるトレーニングというんですかね。そんなこともできるのでいいなと思っています。

ケイツ:本国イスラエルの英語版でも、オーカムのAIはまだ子どものようなものだと考えてほしい、という考え方でおります。まず、できることをして、なにかができないからと幼稚園児を責めるのではなくて、これからできることが増えてくるということですね。

AIというのは深層学習で、覚えれば覚えるほど精度もよくなりますし、さらにいろんな機能もつき、それがどんどんスムーズになります。ただ、今は教育期間まっさかりというのがありますので、そこはなるべく迅速に済ませて、みなさんにお届けしたいと考えております。

岩下:ちなみに、これイスラエルの会社なので、当然ヘブライ語があるんですが、今、Amazon Echoにも、Google Homeにもヘブライ語がないんですね。ヘブライ語って聞くと「まだ私はヘブライ語を勉強していません」と言い訳をされるわけですが、そのへんがさすがにすごいなと思います。じゃあ、あとお一人か二人ですかね。

日本にいる160万人の視覚障害者を救いたい

質問者D:今日は岩下さんにイベントを紹介していただいて参加しました。都内の総合病院で眼科医をしております。私、実は2年前にイスラエルのテルアビブで参加させていただいて、テルアビブ証券取引所でこちらのオーカムの製品を見て、参加したメンバーのほとんどが感動していた記憶があります。

当時、まだ日本には知られてなかったので、日本語に対応するのはまだ先のことだろうなと思いました。日本語の解読ってすごく難しいので、そういった印象を持っていたのですが、こんなにも早く日本に上陸して、すごくびっくりしています。

そこで質問が2つあります。まず1つめが、なぜ日本に参入されたのか。もしかしたらお話の中であったのかもしれないですけれども、なにかきっかけなどがあれば、教えていただきたいのが1つ。

もう1つが、今、活字に対応されているということで、例えば、手書きの文字に対応できるようなこととか、今後どこかの会社さんとコラボレーションして、そういった機能を追加するといった考えやニーズがあるのかどうか、聞かせていただければと思います。お願いします。

柳平:まず、日本進出のきっかけについては、私、前職がベンチャー企業に勤めていたことがありまして、その際に東南アジアからアメリカ、中東に行っていて、最後に行った出張はテルアビブだったんですね。そのときに、いろんな企業を訪問して知った中で、実は私自身も当時オーカム社を紹介されたんですね。

そのときに「なぜこれを日本でまだ販売しないのか?」という質問をしたら、オーカム側が「まだ日本人がそもそも事務所に来ていない」と話していたのもありまして、じゃあ、これは絶対に役に立つものだから、日本に持っていきましょうと。

そのタイミングで、私自身もスカウトされたというのもありまして、それが日本進出のきっかけになります。そこで、本社の人間を説得して、日本にもこれだけの視覚障害者がいるんだと。今だいたい160万人いると言われている。厚労省は約30万人と発表しておりますが、それだけの人数ですので、ぜひ持ってこようと言って、説得して始まったのがスタートになります。それが1つめですね。

2つめですが、手書きに関しては現在対応していませんし、今後する予定も残念ながらありません。どうしても活字になってしまいます。

質問者D:ニーズがあまりないかんじですか?

柳平:はい、そうですね。たまに要望はあるんですが、ただ、やろうとしても難しいと思いますし、時間がかかることなのかなと思っております。