2.5億人もの視覚障害者を救う「オーカム マイアイ2」の可能性
インテルに認められた自動運転技術による視覚支援

オーカムテクノロジーズ 講演

2018年12月21日、毎日ホールにて「AIビジョンはどこまで見えるのか?~『オーカム マイアイ2』体験会」が行われました。2017年にイスラエルで開発された「オーカム マイアイ2」は、最先端のAIテクノロジーを活用したデバイス。新聞や郵便物に記載された活字はもちろん、色や物、人の顔を認識して音声で知らせてくれることから、視覚障害を持つ人の間で話題となっています。このイベントでは、実機体験に加え、その技術について学べるセミナーを実施。本記事では、ORCAM Technologiesの柳平大輔氏、ケイツ顕氏による講演の模様をお送りします。

目の見えない人をサポートする ORCAM Technologies のビジョン

柳平大輔氏(以下、柳平):ORCAM Technologiesの柳平と申します。よろしくお願いいたします。

今、岩下さんから製品についてご説明がありましたが、私からは企業について、ORCAM社について、少しご紹介とご説明をさせていただきたます。

まず、我々はイスラエル企業であります。スタートアップ大国としてよく取り上げられていますが、そのイスラエルのエルサレム、宗教の三大聖地とも呼ばれているところに本社があります。

従業員は今350名ほどで、大半が技術の担当者になります。だいたい280名で、みなさんずっと開発をしています。私を含めて残りの70名が営業、マーケティング、PRを担当しています。

我々のミッションは、目の見えない方、見えにくい方の目となって、見えない方々の生活をサポートすることです。今世界で30カ国、20言語で販売をさせていただいていて、だいたい2万名以上のユーザーが世界中にいます。

オーカムは自動運転の技術をベースに開発されている

柳平:先ほど岩下さんからも説明がありましたように、実はORCAM社は自動運転のパイオニアでして、共同創立者(スライドの写真の)右側がアムノン(・シャシュア)で、左側がジヴ(・アヴィラム)です。彼らは自動運転技術の開発で有名なモービルアイの共同創立者でもあり、モービルアイは、去年インテルに1兆7千500億円で買収された企業で、イスラエル史上最も成功したIPOとイグジットといわれています。

このモービルアイは、衝突防止システムや逸脱防止システムなど、運転しているときに「何メートル先に人がいますよ。何メートル先が赤信号ですよ。ブレーキを踏んでください」などと、ドライバーに伝えてくれる衝突防止技術ですね。日本でも普及しています。日産、フォルクスワーゲン、BMWなど、実際にもう搭載されている技術になります。

(ビデオが流れる)

これはモービルアイのビデオです。実際に、カメラで周りの情報を読み込んで、ユーザーに、ドライバーに伝える。オーカムのデバイスも同じで、周りの活字、テキスト、誰が目の前にいるのか、というのを瞬時に読み込んで、ユーザーに伝えてくれる。オーカムは、基本的にすべて自動運転の技術がベースになっております。

今、(モービルアイは)インテルの会社になっているんですけれども、実はORCAM社も株主にインテルキャピタルが入っていますので、基本的にはインテルに認められた自動運転技術であり、視覚支援機器となっております。

ここからは、どのようなユーザーが世界にいるのかを、弊社のケイツからご説明させていただきます。

オーカムで人生の変わる可能性がある人は、世界に2.5億人いる

ケイツ顕氏(以下、ケイツ):みなさま、今日はお越しいただきありがとうございます。ORCAM Japanで、この見た目どおりに外国人の相手をしております、ケイツと申します。今日はよろしくお願いいたします。

普段はできない話なので、今日は時間を使って話せたらなと思っています。実際どういった人たちが使っていて、どう人生が変わっていくのかをお話させていただきます。

まずは、どういった層がいるのかというところから。一般的に目が見えない方やロービジョンと言われる方は、世界中に2.5億人いらっしゃいます。こういったみなさまが、オーカムを使って人生が変わる可能性がある方々です。

他には、あまり知られていないですけど、ディスレクシア(学習障害)という症状をお持ちの方々がいらっしゃいます。Virginのサー・リチャード・ブランソンという起業家や、俳優のトム・クルーズなどがお持ちの文字が読めなくなる症状です。この症状をお持ちの方は世界人口の10パーセントから、多くて15パーセントくらいいると言われています。こういった方々にとっても、オーカムはメリットがあります。

その他にも、目が見えないまでいかなくても、ちょっと顔が見えにくい、ちょっと物がわかりづらい、そういった方々も見立てで5〜7千万人います。そのなかから今回は3つほど、具体的なストーリーをお見せできたらなと思います。

事故で視力を失ったレーサーがオーカムで手に入れたもの

ケイツ:まず1人目です。(スライドを指して)目が見えない方々のために説明させていただきますと、タイトルが「世界最速の盲人」となっております。こちらの方はダン・パーカーさんといいまして、レーサーをやっていました。5年前ほどに、レース中に車が大破してしまい、2週間の昏睡状態のあと、目が覚めたら神経をやられていて、完全に盲目になってしまいました。

車が好きな方なので、もちろん車の雑誌も大好きでしたが、それが読めない。そのうえ、新しい仕事で整備士の先生をやっても、授業中に見えないから、生徒の質問に答えられない。そういったさまざまなところで苦労しました。

そこでオーカムに出会い、また車の雑誌を読めるようになり、そこで再び、自分の好きなものと向き合える喜びというものを噛みしめました。また、生徒から質問を受けたら、オーカムを使って、リアルタイムでその場で答えることができる。

しかも教員研修などの周りの人に手伝ってもらうことなく、1人で行えるということで、人生がどんどん上向きになってきている方の1人でございます。

1番すごいのは、バイクや車を自分で作れることです。バイクを自分1人で、目が見えないまま組み立てて、走り回ったという実績があるそうです。今はコルベットを自分の力で1から作っているとうかがっております。

オーカムが人の命を救うスピード上げた事例

ケイツ:続いて2人目の方です。1人目と比べたら少し地味かもしれないですが、ロービジョンの医学博士を紹介したいと思います。こちらの方はロービジョンであり、1人で旅行など自力で行動するのは大変という悩みをお持ちで、糖尿病の専門家をやっていらっしゃいます。

この方もオーカムと出会いまして、今では学会にも1人で行けるようになりました。前はシャンプーなどの備品がわからなくて苦労したり、学会や会議でもプレゼン内容が読めなかったり、相手がなにを元に説明しているかわからなかったりしたのが解決できました。73歳ながら、バリバリ現役で学会と医師の仕事をやっています。

なぜ、この比較的地味と思われる方を紹介したかといいますと、この方の専門が糖尿病でして、糖尿病の症状の1つに視力の低下、視力がなくなるというものがあるんです。ですので、この方は同僚や糖尿病をお持ちの方にオーカムをどんどん紹介しております。

オーカムを使用することで、電話番号を読めるようになり、同僚の医師からの緊急電話を逃がすことなく、一刻も早く命を救えるようになる。今もさまざまな方を救っていて、命を救うスピードを上げたのが我々オーカムだという事を、我々は誇りに思っています。

全米を感動させた元軍人とオーカムの出会い

ケイツ:最後の事例はタイトルから読み上げます。タイトルは「全米を感動させた元軍人」です。アメリカでは兵役から戻ってきた退役軍人を支援しておりまして、その中でテレビに出演し話題になったのがこの方です。

この方はスコットさんといいまして、イラクに派兵されて、自爆テロ攻撃に遭い、目をやられてしまったという経歴をお持ちなんです。目が見えなくなって、奥様の顔も見れなくなった。自分の子どもたちも見えなくなって、そのうえPTSDの影響で、家に帰ってからも戦争の記憶がよみがえるという症状により、うつ状態になってしまいました。そこで紹介されたのがオーカムです。

アメリカですと、オーカムの費用を政府が肩代わりしてくれるので、スコットさんは実質タダでもらったという感じで手に入れました。そこから自分の周りが見えるようになって、やりたいことをやれるようになり、その結果、『Dr.Phil』という全米中でやっている昼のトーク番組に出ることになりました。『Dr.Phil』は100週連続で視聴率1位という人気番組で、こちら(スライド)がそのときの画像です。

この生放送で、自分のこと(ストーリー)を語って、そこからもうアメリカで文字どおり全米が感動して、オーカムとしてもタイアップでセールスをやったりしました。その間にもどんどん露出が増えて、本当に人が救えるんだということを、お茶の間のみなさんに届ける、PRの成功事例としては、1番大きなものではないかなと思います。

オーカムで、その日、その時間を生きられるようになった

ケイツ:こちら、プレゼンのスライドが見えない方のために、改めて読み上げます。とあるユーザーの言葉で、僕の中で刺さったものです。今から読み上げます。

「視覚障害を持つ私は、みんなの10歩先を生きるか、日常の不便に手間取って出遅れるしかできない人生を送っていました。『オーカム マイアイ』のおかげで、その日、その時間を生きることが再びできるようになりました」

この言葉は、オーカムがなんのためにあるかというのを、本当にうまくあらわしていると思い、採用させていただきました。みなさんも視覚障害の方が身近にいる、あるいは自身がそうであるなら、おわかりいただけると思います。

日常のちょっとしたことが塵積もになって、できなくなってくると、人生そのもののやりたいことをする時間がなくなって、出遅れて、そこから悪い心のサイクルが生まれるケースが多いと思います。

そういった中で、我々のオーカムを使って、それを少しでも、むしろ大幅に和らげることができて、岩下さんがおっしゃったように、行きたいところに行って、読みたいものを読む。そういった自由を与える手助けをすることで、ユーザーの方一人ひとりがやりたいことをやりたいときにやる。その日、その時、その場で、そういう手助けをするのが、我々の使命だと考えております。

視力がないために埋もれていた才能を世に出していける

ケイツ:こちら最後のスライドで、私たちのビジョンである「あなたの力に」という言葉を採用させていただいております。ただのキャッチコピーじゃないかと思える言葉なんですけど、我々は本当に力になると信じております。さっきお話ししたように、他人に頼る視覚障害の方を1人でも多く減らすことですね。

私、岩下さんとお話しすることがたびたびありまして、毎日新聞のお仕事のことをおうかがいしたときにおっしゃっていたのが、「これを使えば目が見えなくても、普通の新聞を読む人と同じ土俵に立って、同じ土俵で勝負することができる」と。

視力がないために才能が埋もれている、才能を発揮できない。そういった方々の力を社会に広げて、社会そのものを変えていける。これがオーカムの使命だと、我々は信じております。ただ、これを実現するためには、やはり大きな行政や保険会社などの力が、どうしても必要になってくる部分があります。

この会をきっかけに、会場のみなさまや、この記事を見ていただいているみなさま、そういった方々にオーカムを応援していただいて行政を動かしていけば、より多くの方により安い価格で届けることができます。

そのために、これをきっかけにオーカムのファンになっていただければ、そして我々に力を貸していただければと思います。改めまして、今日はお集まりいただき、本当にありがとうございました。

渋谷区の助成制度・日常生活用具給付の活用

岩下恭士氏:ケイツさん、ありがとうございました。今のお話にちょっと付け加えたいです。さっき、アメリカでは、無償でオーカムを購入できるという話がありましたけれども、実は日本で、渋谷区で日常生活用具給付という助成制度があります。

例えば、杖や点字のプリンタ、車椅子というものは、市場が小さいので値段が非常に高いんですけれども。こういうものを国が、全額ではないですが、本人が1割負担で買えるような制度があります。今回、これを試しに利用してみたんですね。

そうしましたら、視覚障害者向けの文字を読み取る装置というのがありまして、それが10万円もしないと。9万8千円くらいの金額で政府が支給するいうものでした。なので対象の装置は1台、9千8百円で購入できるというので「これを適用してあげましょう」ということで、政府負担分の約10万分が今回適用されまして。

60万円するオーカムが、この制度を使って約50万円で購入できることになったわけです。あと今、「ケージーエス(株式会社)」が3万円引きのキャンペーン価格を1月までやっているので、さらに安く購入できて、50万円を切る価格で購入できました。

私はまだ1号目なので、これをもっと多くの人が使いたいと、みんなで声を上げてくれれば、もう少し安くしてくれる制度が可能になるかもしれません。ということで、ひと言付け加えさせていただきました。

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