全盲の人がITに期待する2つのこと
視覚障害者が待ち望んだ「オーカム マイアイ2」の技術

岩下記者 講演

2018年12月21日、毎日ホールにて「AIビジョンはどこまで見えるのか?~『オーカム マイアイ2』体験会」が行われました。2017年にイスラエルで開発された「オーカム マイアイ2」は、最先端のAIテクノロジーを活用したデバイス。新聞や郵便物に記載された活字はもちろん、色や物、人の顔を認識して音声で知らせてくれることから、視覚障害を持つ人の間で話題となっています。このイベントでは、実機体験に加え、その技術について学べるセミナーを実施。本記事では、冒頭に行われた「オーカム マイアイ2」日本語版のユーザー・岩下恭士氏による講演の模様をお送りします。

『日本版 オーカム マイアイ2』のユーザー・岩下氏の講演がスタート

岩下恭士氏:毎日新聞の岩下です。今日はちょうど忘年会のピークの時期に、こんなにたくさん集まっていただいてありがとうございます。

まず最初に今日の説明をしたいと思うんですけれども、ご紹介のあった『オーカム マイアイ2』の、私は日本でユーザー第1号という話なんですけれども、実際に使ってみて私があまりにも感動したのでハマってしまったという、そういうお話と実演を20分前後したいと思います。

オーカムの日本代表でいらっしゃる柳平さんとケイツさんの2人に、今日は来ていただいているんですけども、会社の紹介と製品についての説明を約30分くらいしていただきます。

残りの時間で、あともう1人、新潟大学の福祉工学の専門家でいらっしゃる渡辺先生に来ていただいています。(最後に)渡辺先生を交えて4人でパネルディスカッションをやって、最後にフロアの方から質疑などを受けて、8時に終わりたいと思っております。

開発元・イスラエルならではの事情

岩下:まずはじめに、2点ほどちょっとお詫びしなければならないことがあります。1つは、今日のイベントは駐日イスラエル大使館の協力をいただいていまして、実は頭にイスラエル大使のノア・アッシャーさんにメッセージをいただくというお願いをしていたんですけれども、あいにく今日は金曜日なんですね。

金曜日がなにかっていうと、ユダヤ教徒のユダヤ人にとってはシャバットっていう安息日なんですね。日本だと関係ないのかなと思っていたら、金曜日は仕事しないということで今日は参加していただけなかったという、そういう話がちょっとありまして。

私も1年ほどイスラエルといろいろコミュニケーションをとって、この技術についてずっと取材したいという話でやりとりしていますが、イスラエルという国はけっこうコミュニケーションが難しいなという、そう実感しました。金土日はほとんどコミュニケーションできないような感じなんですね。かなり時間がかかってしまうので、たいへんな国だなというのは正直ございます。そのお詫びが1点。

もう1点は、オーカムさんから柳平さんとケイツさんが来ていただいていますが、本当はエルサレムからインターナショナルデベロップメントマネージャーの方をお呼びする予定だったんです。これもシャバットで急遽来れないということでご参加いただけなかった、そういう事情がありまして、ちょっとアナウンスと違ってしまったようなことがありまして、この2点、お詫びしたいと思います。

全盲の人がITに期待する2つのこと

岩下:それではさっそく、このあと私の方から実際に製品について、ユーザーの立場からどう使えるのか、そういう話と実演をしたいと思います。

実際に製品を触っていただけた方がどの程度いらっしゃるかわかりませんが、(手元を指して)このように非常に小さい100円ライターくらいの機械なんですね。読み上げた音声の内容はセキュリティ面でも個人的に聞き取れるレベルの設定なので、音も非常に小さいんです。なので、マイクで音を拾って実演をしていこうと思います。

今、僕はストラップで首に下げていますが、ご自分のどんなメガネにも付けることができます。メガネのつるの部分にマグネットを付けて装着が可能になっています。実は昨年も似たような技術、日本製の『オトングラス』という類似の技術をメディアカフェのイベントでご紹介しましたが、私のような全盲の人間がITに期待することは2つありまして。

1つは、好きなところに自力で行けるようになること。そのための手段としては、例えば、GPSのナビゲーションで、最近はスマホのナビゲーション機能でナビしてくれます。

車のナビはみなさんご存じだと思いますが、今、スマホで人をナビしてくれるアプリもけっこうあります。それを使って1人でどこでも行けるようになってきたなぁと。目的地の方向がわかるだけでもすごい安心感に繋がるんですね。そういう技術を使って、行きたいところに行けるという、これが1つの全盲者の願いです。

もう1つは、文字を自由に読みたいということですね。点字ではなくて一般の活字、普通のみんなが読んでいるものを同じように読めるようになりたい。これについても、今、OCRという技術がありまして、スマホアプリなんかでも最近いろいろ出てきていますが、そういうものでスキャンすると読めるようになる。それを例えばiPhoneなんかですと、読み上げ機能Voice Overというのがあってそれが読み上げてくれるので、そういうもので文字を読むということができる。そういうふうになってきています。

利用にネット環境を必要としないのが強み

岩下:とくに、今回ご紹介するオーカムのなにがいいかというと、スマホにしてもナビにしても、ほとんどサーバーとアクセスして情報を得るという、いわゆるネットワーク環境がないと使えません。そういう制限がほとんどなんですが、『オーカム マイアイ2』のすごいところは、ネットワークがいらないんですね。なんにもなくても読み上げる。

この技術、実はインテル傘下の会社でモービルアイという会社があって、そこの会社の創業者とオーカムの創業者は実は同一人物でして、車の自動運転技術を活用して視覚障害者に使えるようにしたという、その発想がすごく僕は感動的にうれしかったので、さすがイスラエルだなということで、すぐハマってしまったんです。

実際に今から実演をしたいと思います。私、新聞記者なので、実際に自分が書いた記事を読んでみたく毎日新聞の記事を置いています。今、記者的な思いで話をしましたが、私の本来の思いとしては、別に記者でなくてもとにかく、「読みたいものを読みたい。行きたいところに行きたい」そういうことを実現してくれる技術が欲しい、そういう思いから今回のオーカム マイアイ2に飛びつきました。

今、はめているこの製品はオーカムさんから借りているものなんですけれど、今日、昼から実は体験会をやったケージーエスという会社が、日本の販売代理店の1つなんですが、そこに私、第1号で注文しまして、今年の冬のボーナスつぎ込んで、50万円で購入しました。

(会場笑)

まだ手元に商品は届いていませんが、ケージーエスさんにはすでに届いているそうなので、早くほしいなと思っているところです。

岩下氏によるデモンストレーション

岩下:では、実際にデモをしてみますが、なにがすごいかというと、殆どすべての機能を音声で説明をしてくれます。ちょっとやってみます。本体には電源ボタンが内側にあって、外側にタッチバーという凸状のバーが1本あり、その2つだけを使って操作します。

(手元のオーカム マイアイ2を指して)今、起動しました。起動するとポツポツポツという音がして、「立ち上がってますよ」ということを音で知らせてくれます。

(ポツ、ポツと音がする)

ちょっと1分くらいかかります。

(起動後のアナウンス音声が鳴る)

「バッテリー70パーセントです」こういうふうに音で全部教えてくれます。読み上げにはモードがありまして、自動読み上げモード。と手動モード。あ、もう自動的に読んじゃってますね。

あと、手動モードにするときはタッチバーを1回タップします。

自分で書いた記事を、読みたいっていうその一心で今試していますが……。

(アナウンス音声が流れる) 

今、アナウンスがありました「ページの一部がフレームに入っていません。頭をもう少し下げてください」と、注意されました。なので、頭を下げて……。

(文章を読み上げているアナウンス音声が流れている)

これ、別の記事ですね(笑)。

物体・顔・色・資源などの、さまざな認識のメニュー

柳平大輔氏(以下、柳平):今、岩下さんの記事を読み上げていますが、もう少し皆さんにも聞いて頂きやすい文字情報で、私の方でも実際にデモをやらせてもらいます。例えば、今ここにあるポスターですね。これを指をさすだけでカメラで認識し、ユーザーに対して読み上げてくれるというものになります。今、実際にやってみます。

(オーカム音声:「見えない、見えにくい方を対象にした写真デバイスです。小型カメラが捉えた文字や、目の前の人の顔……」)

柳平:これは今、ここに書いてある文字をすべて読み上げています。止めるときは目の前でパッこうすると止まります。

(オーカム音声:「時間は10時42です。今日は金曜日」)

柳平:今、私が時計を見るジェスチャーをしたので、それに反応して時間を伝えてくれました。実際時計は付けてはいませんが、すべてこのオーカムのデバイスがサポートしてくれるといったものになります。

岩下:柳平さん、ありがとうございます。

昨日、これを試しておもしろかったのは、文字だけじゃなくて物体認識と顔認識と色認識、資源認識などがメニューにありまして、これをオンにすると全部使えますが、僕がやったのは、顔認識と物体認識を立ち上げてたんですね。

(会場に視線を向けるとアナウンス音声が流れる)

今、しゃべったのは「若い女の人があなたの前にいます」。

(会場笑)

若い女の人かどうか僕には見えないけど、オーカムはそう判断してますね。僕が自分に対して向けてやったら、若い男の人って言ってくれるかもね(笑)。

(会場笑)

(アナウンス音声が流れる)

「若い女の人があなたの前にいます」っずっと言い続けていますね(笑)。

プライバシーを守りつつ顔認識を行なうオーカムの技術

岩下:本当に周りに誰がいるのかなというのがわかるっていうのが、僕ら、見えないものにとってうれしいことで。実は『Google glass』が出て話題になったときに、僕はまっさきにGoogle Japanの会社に行って、「僕らがやりたいのは前方から誰が来たか知りたいんですよ」と伝えました。

例えば、企業では下っ端の人間が先に挨拶しないといけないのに、僕はこれまで廊下を歩いていても自分から挨拶できなくて、部長とか役員が前から来て「おい、岩下くん」って言ってもらうと、非常に恐縮してたんです。そういうときにこちらから声がかけられたらいいなぁと思って。

そういう話をGoogleにしたんですが、Googleの人に、「Googleのプライバシーポリシーとして人の顔を撮ることはできません」というふうに言われてしまって、結局、Google glassはそれほど世に出ることはなかったんだと思います。

それが今回、オーカムの技術を使うことで顔認識ができるようになったというわけですね。顔を登録する必要はありますが、声で登録ができて、ボタンタッチして「登録します」と言ったときに、例えば岩下とか、山田と登録したい人の名前をいうと、それで顔を登録できるようになっています。

すごいのは、Googleはプラバシーポリシーって言いましたけれども、この『オーカム マイアイ2』の場合は画像ではないんですね。画像じゃないデータとして蓄積されるので、他の端末で画像に変換して再生するということはできないんですね。つまりプライバシーは守られるのです。

周りになにがあるのかが、リアルタイムにわかる喜び

岩下:あとで柳平さんが説明してくれると思いますが、これがオーカムの持っている独自の顔の写し方の技術なんだと思いますが、そういう技術を使って顔認識ができるようになっています。

あと、もう1つ言いたいのは、この技術を使って実際に道を歩いて、例えば周辺のお店の看板だとか、どういう施設があるかとか読み上げてくれると助かるなと思って。いわゆるシャッターを切る動作をして撮影するということをしなくても、自動認識モードで読み上げてくれる。これも事前にそういった情報を登録しておくと、視覚に入ったものを片っ端から読み上げてくれます。

例えば、横を見て店があると、ラーメン屋さんとか病院とかそういうことをどんどん言ってくれるので、1人で歩いていても非常に楽しい。どういうものが周りにあるというのがわかるんです。

これまで、僕は白杖を使って1人で歩くことはできますけど、周りに何があるのかわからなくて、ただ目的地に向かって黙々と歩いていていました。そういう砂漠の中を歩くような状態っていうのは、非常に無味乾燥な歩き方だったんですけれども、この技術を使うことで、周りになにがあるのかなっていうのがリアルタイムにわかるという、そういう喜びもあります。そんな技術でございます。

このあと、柳平さんに詳しく説明していただいて、企業についてもご紹介いただきたいなと思います。ありがとうございました。

(会場拍手)

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