武藤将胤氏、どん底で決意した“有限な時間”の使い方
「ALSの困難からイノベーションを起こす」

生命の本質 #1/2

SOCIAL INNOVATION WEEK 【DIVE DIVERSITY SESSION】
に開催

2018年9月7日~17日にかけて、日本財団「SOCIAL INNOVATION FORUM」と、渋谷区で開催した複合カンファレンスイベント「DIVE DIVERSITY SUMMIT SHIBUYA」が連携し、都市回遊型イベント「SOCIAL INNOVATION WEEK SHIBUYA」が開催されました。今回は「DIVE DIVERSITY SESSION」の中から、トークセッション「生命の本質」をお届けします。本記事では、一般社団法人WITH ALS代表の武藤将胤が登壇し、生きることの意味について語りました。

生きることの本質とはなにか?

金山淳吾氏(以下、金山):「SOCIAL INNOVATION WEEK SHIBUYA」の残すところ3日のうちの1日が、このセッションで終わります。今日は全部で6個のこういったトーク、プレゼンテーション、セッションがありまして、このEDGEofという会場で5つ、それからヒカリエという会場で1つだけセッションがあり、先ほど終わりました。

いろいろなテーマの本質というものを(語っていただくために)、さまざまな業界で活躍されている方 、がんばっている方、イノベーションを起こそうと思って生きている方に、来ていただいています。最後のセッションは、「生命の本質」と書いて、僕らは「『生きる』の本質」という想いを込めています。

ということで、WITH ALSの武藤将胤さんに来ていただきました。僕と武藤くんの最初の出会いは、2年前のサウス・バイ・サウスウエストですね。

武藤将胤氏(以下、武藤):そうですね。

金山:いろいろなテクノロジーがあって、ひときわ「なんなんだこの人は!?」というのが、実は武藤さんでした。日本人で、しかもALS(筋萎縮性側索硬化症)という。「アイスバケツ・チャレンジ」って、みなさんも聞いたことがあるんじゃないかと思うんですが、体の自由がどんどん利かなくなっていくなかで、むしろ武藤さんのやっている活動は、どんどん創造力の自由度が増して、できることが増えていくという。

もう涙が出るほど悔しいくらいの気持ちを持ち帰って、僕が司会をやらせてもらって「打倒! 武藤将胤」といった判子をついています。そんな武藤さんに来てもらいました。

武藤:どうぞみなさん、よろしくおねがいします。

(会場拍手)

金山:ここにいる人間はみんな生きているんですけど、「生命の本質」と書いて「『生きる』の本質」「生きるとは何か?」「生きる」という本質的な意味、そういったものを武藤さんからお話しいただきたいと思います。どうぞよろしくお願いします。

ALSを発症してからも多方面で活躍する武藤氏

武藤:僕自身、ALSという難病になったことで気がついた「生命(『生きる』)の本質」を3つのキーワードに分けてお話しさせていただきます。はじめまして、一般社団法人WITH ALSの武藤と申します。クリエーターとして日々活動をしています。

バックボーンといたしましては、広告会社で広告コミュニケーションの仕事をしていました。そんな広告マンとして働いていた時代に難病のALSになったことで会社を起業して、今はテクノロジーとコミュニケーションの力を使って、ALSの患者さんをはじめ、さまざまなハンディキャップを抱えた方の可能性を切り拓く企画、イノベーションの開発を行っています。

また、「J-WAVE」でラジオ番組のナビゲーターをしています。僕自身、六本木ヒルズで毎週ラジオの収録も行っているので、六本木界隈でこの乗り物(パーソナルモビリティ「WHILL」)で爆走している人間がいたら、それは僕です。なので、みなさん優しく声をかけてください。

ALSという病気を聞いたことがある方も多いかと思います。2018年にお亡くなりになってしまいましたが、スティーブン・ホーキング博士もこの難病とずっと闘っていました。音声合成や、さまざまなテクノロジーの力を使ってご自身の研究を全うされて、僕にとっては偉大な先輩にあたります。また「アイスバケツ・チャレンジ」。金山さんからもお話がありましたが、もう4年前になるキャンペーンで、これも聞いたことがある方は多いと思います。

改めて、「ALSはどんな病気なのか?」をお話しさせてください。「筋萎縮性側索硬化症」というのが正式な名称です。運動神経が老化し、徐々に動かなくなっていく難病です。こうやって手足を動かす自由や、声を出す自由、呼吸をする自由が徐々に奪われていきます。

それでも意識や五感、知能の働きはずっと正常のままです。僕自身、発症してから約5年経ちますが、平均的な余命は3年〜5年と言われていて、世界に約35万人、日本では約1万人の仲間がこの難病と闘っています。未だに、治療方法が確立されていない現実があります。

ALSになって突きつけられた「有限な時間」

武藤:今日の「生命(『生きる』)の本質」の1つ目のテーマのお話をさせてください。これは僕自身も、あたりまえのことに感じていましたが、人は誰しも「有限な時間」の中で生きている。そのことをALSになって目の前に突きつけられました。

僕は広告マンとしての仕事が楽しくて仕方がなかった2013年、ALSの宣告を受けました。「なんで俺なの?」「人生ここでもう終わりなのでは?」頭が真っ白になって、僕自身はALSになったことで、まさに「有限な時間」をつきつけられました。

それでもどん底のなかで、必死に前を向いて決意をしました。「僕はALSと生きていこう」「どんな状況になっても自分自身を大切に自分らしく生き切ってやろう」。そう思いました。

ALSやハンディキャップを抱えた方の未来の社会を明るくするアイデアをかたちに。それが僕の選択した時間の使い方です。みなさんであれば、今「『有限な時間』を目の前に突きつけられたら何に使うか?」を一緒に考えながら、お話を聞いていただければと思います。

「生命(『生きる』)の本質」2つ目のテーマを、僕が今やっている活動の事例を、ご紹介させていただきながらお話しいたします。やっぱり人は「困難なことを乗り越えること」を通して進化をしていく生き物だと思います。

僕は今「抱えている自分の困難や制約をアドバンテージに変えて制約から解決のアイデアをかたちにしていこう。むしろ、ALSの困難からイノベーションを起こしていこう」。そういった想いで活動しています。

1つ目の活動を、ご紹介させてください。僕自身、ALSになって、まず手の自由が奪われていきました。あたりまえのように、手で行っていたパソコン作業ができなくなったり、頭を掻きたくても自分の手で搔けないもどかしさを感じたりしました。

また、意外と辛かったのが写真を撮ることが好きだったんですが、今撮りたいと思った瞬間に、カメラを構えてシャッターを切ることすらできなくなりました。

あとは、ずっと音楽が大好きでDJ(Disk Jockey)をやってきたんですが、それもできなくなりました。でも、そういった実体験があったからこそ生まれたイノベーションの事例を、1つご紹介させてください。動画をご覧ください。

障害者と健常者の垣根を超えたテクノロジー

ナレーション(武藤氏):ALSを2013年に発症して、約2年が経ちました。手足の自由は徐々に奪われてきていて、本当に昨日までできていたことが、今日できなくなる怖さと日々闘っています。昔から音楽が大好きで、DJにチャレンジし始めたところで、このALSという病気になってしまいました。

もう今は手でDJをするということも、ほぼできない状態です。ただ、どうしても夢を諦めるということはしたくなくて。もう一度、自分の今感じている感情というのを、映像で表現したいと思って「目でDJ、VJをプレイしよう」というプロジェクトを始めました。僕のこのアクションを通じて、いろいろなハンディキャップを抱えた方や、すべての人に表現の自由を届けたいんです。

ALSという病気は、比較的最後まで、眼球の動きは残ると言われています。その動きに注目をして、今までは最低限の意思伝達ができればいいだろうと思われていた、補完的な使い方だったんですが、むしろ発症したすべての方に表現の自由を届けよう、そういったもので、メガネ会社「JINS」さんの「JINS MEME」のデバイスを活用した「JINS MEME BRIDGE」というアプリケーションを我々が開発させていただきました。

この動画自体は、2年前に公開したものなんですが、2年前はまだビジョンの段階でした。ですが、この2年間、試行錯誤と改良を繰り返し、今では、さまざまな音楽イベントでDJ、VJとしてライブに参加をさせていただいています。

またDJ、VJのシステムを作っていったことで、そのシステムを応用して、今では、まばたきでスマホのカメラのシャッターを切ったり、照明やエアコン、テレビなどのコントロールという日常的な動作を、眼の動きだけでできるようになりました。

僕の頭の上に乗っている眼鏡が実物の眼鏡なのですが、もう、ここまでくると「障害者用のツール」ではなく「(障害者と)健常者の垣根を超えたボーダレスなテクノロジー」だと僕たちは思っています。

誰もが快適にかっこよく着られる「01 BOLDERLESS WEAR」

武藤:2つ目の事例に移らせていただきます。ALSによって手の自由も、足の自由もどんどん奪われていきました。僕は洋服が大好きだったんですが、どんどん手足の障害が進むにつれて、着られる洋服というものが減っていきました。

例えばボタンが留められなくなったこと。広告会社時代は、どうしてもボタンを閉めてスーツを着てクライアントにプレゼンをしに行かなくてはいけない。そういった状況のなかで、もう誰にも頼ることができず、タクシーの運転手さんにお願いして(ボタンを)留めてもらったという実体験もありました。またデニムのジッパーなども、もう手であげることができない。

洋服が大好きな自分が着られる服がこんなに選択肢が少ないこと自体、これも社会課題の1つなんじゃないか? そういう想いがありました。そんな想いで生まれた2つ目の事例をご紹介させてください。まずはイメージビデオをご覧ください。

これは、「ないんであれば、自分たちで0から1を、ファッションブランドを立ち上げよう。すべての人が快適に、かっこよく着られる洋服というのがあってもいいな」といった想いとコンセプトで、去年ファッションブランド「01 BOLDERLESS WEAR」を立ち上げました。僕も今日着ていますが、スウェット素材でマグネット等を使っているため、手が不自由な方でも着やすい仕様になっています。

またボーダレスなバリューを探し続けたことで、右袖にICカードが入るポケットがついていまして、財布を出さずともキャッシュレスに改札や自販機などで活用ができるので、意外と健常者の方にも愛用していただいています。

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SOCIAL INNOVATION WEEK SHIBUYA

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このログの連載記事

1 武藤将胤氏、どん底で決意した“有限な時間”の使い方 「ALSの困難からイノベーションを起こす」
2 困難に直面したとき、本当に「信頼できる人」とは? 武藤将胤氏が挙げる3つの条件

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