人間は全員、見たいものしか見ていない

出口治明氏:みなさん、こんにちは。マイクは聞こえますか? じゃあ、話はできるだけ早く終わって、せっかくみなさん来られているので、ディスカッションを中心にやっていこうと思います。よろしくお願いします。

それから、僕の講演中は勝手に写真を撮っていただいてけっこうです。TwitterやFacebookをやりながら聴いていただいても、まったく構いません。被写体として自信があると思っているわけでは決してありません(笑)。

(会場笑)

僕は、学長になる前はスマホで商売をやっていました。スマホで商売をやっていたのに「スマホを使こたらあかん」と言うのは絶対矛盾なので、自由に使ってください。

「人間は見たいものしか見ない」といったのはカエサルですが、みなさんも世界を色眼鏡で見ています。例えば、安倍さんという総理大臣がいますが、好きな人も嫌いな人もいますよね。同じ人を見ていて、なんで好き嫌いが出るかと言えば、みなさんが安倍さんを色眼鏡で見ているからです。

つまり、人間は全員、見たいものしか見ていないので、ちゃんと世界をフラットに見るためには方法論がいる。それは、縦・横・算数の3つに分けられる。

データで見れば答えがわかる

まず縦は何かといえば、人間の脳みそは1万年進化していないので、昔の人がどう考えたかというのが縦ですよね。横は世界の人がどう考えているかです。

例えば、僕は中学校で、源頼朝は平政子、北条政子と結婚して鎌倉幕府を開いたと習いました。日本は夫婦別姓の国ですよね。

では、世界はどうかといえば、ものごとはApple to Appleで比較するので、OECDの35の先進国で比べるのが普通ですが。この35の先進国の中で、法律婚の条件として同姓を強制している国はどこにもありません。

縦横で見れば、「夫婦別姓のような考えは家族を壊す」とか「日本の伝統ちゃうで」とか言っているおじさんやおばさんは、厄介なことにけっこういるんですが、縦横に勉強してへん人か、イデオロギーや思い込み過多な人やな、ということぐらいはわかりますよね。だからどんな問題でも縦横で考えれば、簡単に答えがわかるということです。

それから算数、データです。これはもう何でも数字で考えたらわかりやすい。平城京と平安京は途中で作るのを止めています。未完の都です。

これも簡単で、当時の日本と中国の人口比は、だいたい向こうが10倍で、500~600万人対5,000~6,000万人です。1人あたりのGDPは向こうが先進国なので、向こうがだいたい日本の2倍です。ということは中学生でも、日本の国力は20分の1ということがわかります。そうですよね。

じゃあ、平城京や平安京の大きさはどれぐらいだったかといえば、唐の長安の4分の1です。20分の1しか稼いでいない人が4分の1の家を作ったらどうなるかといえば、途中でお金がなくなるのは目に見えているので、だから平城京や平安京が未完に終わったということは、算数できれいに説明ができます。

でも、こんなこと言ったら、平城京を作った持統天皇や藤原不比等は、そんなこともわからないぐらい愚かだったんですかという話になるんですが。

これはそういう解釈もできるんですが、そうではなくて、唐という世界帝国に見せるために、わかっていて背伸びしたんだという説もあります。この辺りは解釈になるわけですが、算数で考えたら未完であることはすぐにわかるわけですよね。

「all supporting all」の考え方へシフトせよ

だから、どんな問題でも縦横算数で見たらわかりやすい。日本の問題は少子高齢化と言われて久しいですが、若いみなさんに将来どうやと聞いたら、だいたいあまり明るくないという答えになる。

その原因は何か。「なんでそう思うんですか」と聞いていくと、だいたいこのグラフに行き着くんです。

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