ベンチャーが上場する、本当の意味とは?

長澤啓氏(以下、長澤):みなさま、本日は暑い中、そして平日の午後という大変お忙しい中にお集まりいただきまして、本当にありがとうございます。私はメルカリで執行役員CFOをしております、長澤と申します。本日はよろしくお願いします。

(会場拍手)

簡単に主旨を説明をさせていただきたいと思います。本日は「THE BUSINESS DAY」ということで、メルカリというサービスのイメージは、みなさまお持ちだと思います。今日は実際に会社を作っていくコーポレートの部門にフォーカスを当てて、メルカリの中身を紹介していきます。

さらに、いろんな視点を持っていらっしゃる外部のみなさまにご参加いただく中で、メルカリと他の会社とのやり方の違いであったり、メルカリの独特なやり方について、そして、他の会社がどうやっているかというのを見ていただきながら、よりメルカリの理解を深めていただきたいなと思っています。

今日の1個目のセッションということで、テーマは「ベンチャーが上場の本当の意味」。ちょっと仰々しいタイトルではあるんですけれども。我々メルカリはこの6月19日、東証マザーズに上場いたしました。なんで上場したのかというお話しなんかもさせていただきたいと思っています。後ほど自己紹介をしていただきますけれども、こちらは先だって上場されたラクスルの永見CFOと、シニフィアン株式会社の小林賢治さん、通称こばけんさんです。

DeNAで長らくかなり多岐にわたって経営を引っ張ってこられた小林さんのお話を交えながら、いろんなことをディスカッションしていければなと思っています。簡単にですけれども、永見さんと小林さんの方から、自己紹介をしていただいて、そこからお話ができればと思っています。よろしくお願いします。

ラクスル永見氏とシニフィアン小林氏の自己紹介

永見世央氏(以下、永見):長澤さん、イントロがめちゃくちゃ真面目な話ですね(笑)。みなさん、リラックスして聞いてください。ラクスルの永見と申します。

うちの会社は、メルカリさんよりちょっとだけ早く、5月31日に上場していまして。(今年で)上場してからちょうど1ヶ月半くらいになります。

簡単に自己紹介をすると、2014年に参画してから丸4年、当社を経営しています。ラクスルの前だと、一番長いキャリアがカーライルという外資系のプライベートエクイティファームです。会社を買収し、その後の会社の企業価値を上げるということをやっていました。

今も、これまでのキャリアでも、会社の株式価値や企業価値と向き合うような仕事をしてきました。今日は上場前後の話も含めて、ぶっちゃけ話ができればと思っておりますので、みなさんよろしくお願いします。

(会場拍手)

小林賢治氏(以下、小林):みなさん、こんにちは。小林賢治と申します。

前職ではDeNAにいまして、2009年に入社しました。今はDeNAというと、モバイルゲームと野球がみなさんのイメージにあるかと思いますけれども、私が入社した当時はどちらもありませんでした。モバイルSNSもアバターが中心という時代で、その事業が伸び悩んでいた時に入社しました。その意味では、上場後に大変苦しんでいた時期にジョインしています。

入社時はHRのヘッドとして入りまして、その後はゲーム事業に異動して、急成長期を経験しています。その後、急成長が止まった後の様々な難局を味わった後にコーポレート部門に移り、IRやコーポレート全般を管掌していました。

そういう意味では、会社の成長期と成熟期を両方見てきました。立場としても、コーポレートサイド、HR、事業サイドと様々な立場で見てきたので、多面的な観点からお話ができればなと思います。どうぞよろしくお願いします。

(会場拍手)

メルカリがあのタイミングで上場した理由

長澤:はい、ありがとうございます。先ほど永見さんがおっしゃったように、ざっくばらんにいろんな話ができればと思っています。Q&Aの時間をできるだけ作りながら、なかなか外で、あまり我々もしゃべれないようなこともしゃべりたいと思っています。ぜひいろいろ質問していただければと思っています。

最初のテーマなんですけど、まずはこれまでを振り返ってみてというところで、ちょっとメルカリのこともお話をさせていただいて、その後は永見さんにラクスルの話をしていただきたいと思います。また、外からご覧になられているこばけんさんから、メルカリやラスクルはどう映っているのかという話もしていただきたいなと思います。

まず私の方から、メルカリがこのタイミングで上場した意義とは何だったんだろうと改めて振り返ってみました。メルカリって過去にけっこう大型の資金調達をしていて、上場前の2016年の3月に84億円の調達を行った時、バリエーションが1000億円を超えたということで、日本で初めてのユニコーンだと言われて調達をしたんです。

非上場でも大型の調達ができるんだというのを初めて知って、そういうタイミングで、「上場する必要性が本当にあるんだろうか」という話はありました。USなんかでもUberやAirbnbみたいに非上場で大きくなった会社もありますし。

メルカリもどんどん大きくなっていく中で、さらに大きな資金調達の必要性もありました。もっと大きな資金にアクセスできるというのが、上場するメリットだと思っていました。また、メルカリがプラットフォームを提供していく会社として、社会の中での信用性とか信頼性を増やし、社会の公器として、より透明性をもってビジネスをやっていくことが大事なんじゃないかという話もありました。

上場会社としてある程度の責任も負ってやっていくステージに行きたいよねというディスカッションもありました。当然、上場すると開示義務だったり、四半期決算をしなければいけなかったりとコストはあるんですけれども、メルカリとしてはそういったこともやっていきながら、やっぱり先ほど申し上げたように、上場企業としてのメリットを獲っていこうというところでもあります。

中長期目線で大型資金調達を可能とするための施策

長澤:上場する先には、グローバルにより多くの優良投資家にアクセスできるということで、海外の有力な投資家を取り込むのが非常に大事だと思ったんですね。

その話もぜひ後で話したいんですけれども、弊社の株をどういう人たちが買っているかというと、IPO時点ではだいたい6割以上が外国人投資家の人たちが買っていただいていて、健全な流動性を作っているという状態になってきています。

それが1兆円、2兆円、そして10兆円を目指していくにあたっては、海外の有力な投資家にどれだけ株を持ってもらって、評価していただけるかということがより重要になるかなと思いました。そのため、今回スタートアップとしては初めて、海外の有力な投資家にも買ってもらえるようなやり方で行ないました。

これに関しても、後のセッションで出てくると思うんですけれども、そういったことをいろいろ思いながら、短期的ではなく中長期的な目線を持ったうえで、大型の資金調達ができる株主資本施策を作っておこうということで、メルカリは上場したという背景がありました。

では、永見さんにお話をうかがわせていただければ。永見さんにとって、上場の意義とか、上場してみてどう思われたのかという話をしてもらいたいと思います。

永見:話を始める前に、どんな方がいらっしゃるのか伺ってみたいんですけれども……いま未上場の企業で働かれている方とか、これから上場を目指そうとしている方ってどのくらいいらっしゃるか、簡単に手を挙げてみてもらっていいでしょうか。

(会場挙手)

永見:あ、大半ですね。あと、いわゆるコーポレート部門、具体的には経理財務、総務、法務、人事、IRなど、こういう仕事をされている方はどのくらいいらっしゃいますか? 

(会場挙手)

7、8割ですね。じゃあ、まさにピンポイントで、このテーマが当てはまると思います。

意志のない上場の問題点

永見:我々ラクスルは、代表の松本が2009年に創業して、私が入った2014年前後くらいからスケールフェーズに入り、累計約80億円くらいの資金調達をしています。上場の意義という話で言うと、逆に未上場でいることのメリットはなんなのかと常に会社で議論していました。未上場でいる一番のメリットって、成長投資を含めて、赤字を掘りまくれることですね。突き詰めて考えるとそうじゃないかと思っています。

僕らでいうと80億円の調達を行い、50億円くらい赤字を累損で出しました。直近の四半期は黒字化しているんですが、これは無理やりしたんじゃなくて、自然に黒字化されたんですね。つまり、既存の印刷事業においては赤字を堀り終わりましたと。

掘るのは大変な作業で、経営者としてけっこう精神的にきついんですけど、50億を使いきって、これ以上赤字を掘る必要がないというので、ある意味未上場であるメリットというのを取りきりました。「じゃあ、上場しましょう」というのが、会社の実態としてもそうですし、外部の方にも同じようなことをお伝えしています。

僕たちの上場を簡単にご説明すると、国内の上場ではあったんですけど、海外の投資家をカバーできるような上場をしていて。通常のマザーズ上場では全体のオファリングの内、80パーセントくらいを個人の投資家、20パーセントくらいを機関投資家の方に割り振るんですが、我々でいうと個人投資家の方が50パーセントで、機関投資家の方にも同じように50パーセントをオファリングで渡していて。

一方で、機関投資家のうち、70パーセントくらいを海外投資家の方に渡す結果となり、特徴的なIPOをあえて設計しています。さっきの長澤さんの話にちょっとあったんですけど、今や東証の売買は7割くらいは海外投資家という事実も意識しました。背景として、現在数千億とか1兆円クラスの時価総額の会社の資本構成・資本政策をかなり調べた上で、海外機関投資家がドライブして株価が形成されていることを理解して、上場時から意思を込めて資本構成を作りにいくことの大事さを痛感しました。

ここにいる方、もしくはスタートアップの経営者が、自分のプロセスで、我がものとして意志をもって上場するって非常に重要です。強い意志がなくても上場はできます。ちゃんと会社が伸びていけば、証券会社の人とか既存投資家の人にいろいろ言われながらも上場できるんですけど、それは意志がないんです。

意志がない上場って、その後、あの時こうしておけばよかったということがたくさんあると思っていて。特に資本施策って巻き戻しが難しかったりするので、やっぱり意志を重要視して、上場プロセスを自分たちで設計して、ある時は既存投資家の方にいろいろとお願いをしたり、ある時は証券会社とも熱い議論を重ねながら上場に至りました。したがって、かなり大変でしたというのが振り返りです。すみません、話しすぎちゃいました。