可能なかぎり説明することが私の責任

安田純平氏(以下、安田):本日は貴重なお時間を割いていただき、ありがとうございます。今回、私の解放に向けてご尽力いただいた日本・トルコ・カタールをはじめとする多くのみなさま方、ご心配いただいたみなさまに、お詫びしますとともに、深く感謝を申し上げます。本当にありがとうございました。

そして、今も行方不明になっている多くのジャーナリストたちの、1日も早い無事な解放を祈っています。

今回、私自身の行動によって日本政府を当事者にしてしまったという点について、大変申し訳ないと思っています。今回なにがあったか、可能なかぎり説明することが私の責任であると思っています。よろしくお願いします。

行動にいくつかのミスがあった

記者1:新月通信社のペンと申します。(11月2日の会見での)お詫びについて、謝罪についての質問を申し上げたいと思うんですけれども。

ご存じかどうかわからないんですが、先日、国境なき記者団が先日ステートメントを発表されているんですが、その声明の中というものは「謝罪をすべきではない。謝罪をする必要がいない」という内容のものになっております。「謝罪をするのではなくて、むしろその歓迎をされるべき、評価をすべきだ」というような内容の声明になっているんですけれども。

やはりその声明の内容、そして日本社会、日本の市民が期待していること、日本の社会の状況というのは、ある意味で異なった常識があると感じることがあります。

記者としてのジャーナリストとしての仕事は、やはり危険なところに行って、そこの現場で起きていることを取材する、そしてそれを伝えることが記者の仕事であります。政府やその利益のグループなどに管理される、コントロールされる内容ではなくて、現場での情報を伝えることがジャーナリストの本来での仕事になります。

ですので、これからが質問なんですが、やはり世界で活躍するジャーナリストとしては、本当に謝罪をする必要があると考えられているでしょうか?

日本は民主国家ではありますので、民主国家に、そして民衆主義な社会においては、やはりコントロールされる情報ではなくて、現場の直の情報を伝えることがジャーナリストの仕事だと思います。

もちろん日本政府はいろいろと解放に向けて働いていたということ、働きをしていたということはあったと思うんですが、それについて謝罪をするのではなくて、やはり帰国したことで歓迎をされるべきでしょうか? それについてのコメントをお願いいたします。

安田:この報道の仕事、ジャーナリストの仕事が政府であったり権力にコントロールされるものではないことについて、全面的に賛成いたします。

今回、謝罪といいますか、私自身の行動にいくつかのミスがあったということは間違いないので、この点について、みなさまのご批判をいただいて、今後に活かしていくために、まず、ご挨拶といいますか、ご批判をいただくにあたって、お詫び申し上げますということを申し上げています。

自分が身代金を払われるにふさわしいのだろうか

記者2:イタリアスカイテレビのピヨと申します。まず、おかえりなさいませ。

そして、公式ではないんですが、イタリアと日本は身代金を支払いをすることがあると報道されています。それについて、もちろんはっきりとしたイエスということは期待していないんですが、少し間接的な質問をしたいと思います。

もし、日本政府がそういったお金を支払ったのであれば、それは正しいやり方だと思いますか? それは正当なやり方なのか?

もしくは、自分の責任ではあるので、日本政府から支払いをされることを期待しない、求めないことになるでしょうか? それについてのご意見をまずおうかがいしたいと思います。

そして、2つ目の質問なんですが、イタリア人もシリアで拘束されているということも確認されています。ビデオの中でも彼の様子が報道されているんですが、アレッサンドロという名前の方です。

もし彼についての情報などがなにかありましたら、最後いつ見かけたのか、もしくは彼についてなにか最新の情報などありましたら、イタリアの政府、またはイタリアの国民などのためになるような情報があれば、ぜひおうかがいしたいと思います。よろしくお願いします。

安田:自分自身のケースとほかの人のケースでなかなか同じように考えるのは難しいんですけれども。

例えばほかの記者が人質になっているときに身代金を払うことによって解放されるのであればそういう方法も止むを得ないのではないかと思う一方で、では自分がそういった状況になったときにどうかと言うと、やはり自分がそれにふさわしいのだろうかとかいうことをおそらく考えるのではないかと思います。

もしも日本が身代金を払う国であることが確証の高い事実としてある場合、私に限らず現場に行くことをかなり慎重に考えるようになるのではないかという気はします。

日本政府が身代金を払うということはまずないということがあって、だからこそ現場には自分の責任、判断で入るという人が多いのではないかと。

それからアレッサンドロさんの話なんですが、今日の資料にもあるんですが2018年7月5日、私のいた施設に彼が運ばれてきまして、私がこの施設を出る9月29日まで一緒にいました。

彼は非常に元気な様子で、イスラム教徒に改宗したようでサイードと呼ばれていました。はじめは彼らと一緒に礼拝をしていたんですが、途中から彼の部屋で1人でやるようにと言われてやっていました。

ときどき彼は泣いていることもあって、2年間拘束されているということで、ときどき精神的に辛いときがあるのかなと思うんですけれども。

彼に対する扱いというのは、例えば暴力であるとか虐待のような状況というのはなかったように思います。それから彼自身が拘束者側の人間になっているとかそういうことも私が見る限りではないかなと思います。

直接話をする機会はなかったんですけれどもお互いに長い期間拘束されていることは、なんとなくわかりましたので、目線でなんとなくコミュニケーションを取るとかということをやっていました。

私の家族も長い間、非常に心配をしていましたので、当然彼のご家族が非常に心配されているでしょうから、帰国してしばらくしてイタリア大使館にはこちらから連絡をしまして、私の知っている限りの話をさせていただきました。

最後に会ったのは今年の9月29日、私がほかの場所に移されるときに見たのが最後です。

妻に届けたメッセージについて

記者3:身代金についてのお話があったので、それについて1つ質問したいと思います。報道されたことの中で安田さんが奥様に秘密のメッセージ、コードの入ったメモのようなメッセージをお送りしたということが報道されていました。

そのメモの内容というのは「(身代金を)払わないでください。無事に帰国するので」ということだったんですけれども。そういったものをお送りしたかどうかをまず確認させていただきたいと思います。

もしお送りしたのであれば、それはどういった方法で送ったのか? またそのメッセージの内容はどういうような意味があったのかについて教えてください。

安田:まず拘束者の側から「個人情報を書け」と言われて個人情報を書いたのが2015年の12月7日です。このときに私は妻に対するニックネームに1文字付け足して、私は妻のことを「オク」と呼んでいるんですけど、そこに放置という言葉を付けて「オクホウチ」という書き方をして。

日本にいる間、常々自分になにかあったときには放置するように、騒ぎにならないようにしてほしいということを言っていたので、この表現で妻に伝わるだろうと。

この「オクホウチ」という言葉だけではインターネットで検索してもおそらくわからないだろうということで、そこに書き込んでます。

それから彼らの側から日本側から反応がないと言って家族に圧力をかけさせると言われて、妻の連絡先を教えたんですけれども。メールアドレスと電話番号ですね。

そのあと2016年1月6日に彼らが、「日本から送られてきた質問に答えろ」ということで書かされました。これは私の妻が日本語で書いてきた7つの質問ですね。

私でしか答えられないような、例えば先ほどの妻の呼び名であったり、私が使っている仕事用の椅子を「どこで買ったのか」とか、「日頃買っている焼酎の銘柄を書け」と言われて。彼らはイスラム教徒なので、これは何の質問かと聞かれて非常に困ったんですけど。そういった質問が7つありました。

それに対して同じように払わないようにと。この質問は2回きたんですが、1回目は前回と同じように「オクホウチ」というのだけを入れたんですけれども。

このあともう1回、1月19日に「同じ質問に答えろ」ということで、もう1度書かされました。おそらく送ったけれども反応がないということで、手違いがあって届いていないと思ったと思うのですが、もう1度書かされまして。

このときに付け足してメッセージを入れています。焼酎の名前のところに、つまり固有名詞なのでなにを書いても書きやすい場所ですよね。そこに払っちゃいかんという趣旨のことと、断固無視しろという言葉と、無事に帰るという3つのメッセージを入れました。

これは日本政府の側からそういった質問をするように相手から私が生きている証明を求めたということでは恐らくなくて、いろんな自称仲介者と言いますか、ブローカーのような人たちがたくさん暗躍していまして、実際に現地の拘束者とコンタクトが取れるのだということを示すために、こういった質問をしてきたのではないかと思っています。

家族の責任も追及するのが日本社会

安田:当然、秘密の質問に対する答えが私の妻の手に渡ったのが2018年になってからですので、この秘密の質問というのは生存証明ですよね。私にしか答えられない質問、それは私が生きているという証明ですが、その回答が2018年にきたことは、これは本当に生きている証明をとるためにやったわけじゃないわけではないのではないかなと思っています。

なぜそういったメッセージを送ったのかということなのですが、まず人質になっている人間が払ってほしいと言ったり、払わないでほしいと言ったりすることが政府の決定には何の影響もしないわけです。

払ってほしいと言った人だけ助けるとか、言わないような人は助けないということがあってはいけないわけで、政府の決定には影響しないわけですが、自分自身がどういうつもりで現場に入っているかということを改めて示しておいた方がよいであろうと。

これは2004年の拘束、当時私は人質になったわけではないのですが、相手から要求は一切出ていませんので、スパイ容疑で捕まったわけですが、日本政府が助けてくれると思って現場に行っているのではないかということを非常に言われましたので、どうしてもそういったことではないと。

政府による救出を期待して行っているのではなくて、自分の判断で入っていることを示しておく必要があるだろうと考えました。その結果私自身がどういった結果というか、帰ってこれるのか、これないのか、わかりませんけれども、そういったことを示しておくことが、日本にいる家族に対してもよいのではないかと。

自己責任という話が出ていますけれども、同時に家族の責任を追及するのが日本社会でして、家族の連帯責任という自己責任でありながら同時に連帯責任であることは経験していましたので、自分自身で責任を取るという姿勢といいますか、自分だけで責任を取れるわけではないのですが、そういった姿勢というものを示すことが家族にとってはよいのではないかも考えました。

それから相手とのやり取りの中で、彼らは組織名をずっと明かしてないのです。彼らは何者であるのか。それは日本政府に対してもそうしている、と彼らは言っていて、そうすると例えばイスラム国のような組織が映像を流して人質を殺害するというのは自分たちのアピールに使っているわけです。

組織名を言わないでいることは、殺害をしてもアピールにはならないわけでして、彼ら自身、「殺しても何の利益にもならない」ということをずっと言っていましたし、うまく対応すれば身代金を取れなくてもそのまま放り出すとかも可能性はあったので、家族を安心させるという意味も含めて、無事に帰るからというメッセージを入れています。