2024.10.10
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安田純平氏、外国特派員協会で会見 2018年11月9日(全1記事)
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安田純平氏(以下、安田):本日は貴重なお時間を割いていただき、ありがとうございます。今回、私の解放に向けてご尽力いただいた日本・トルコ・カタールをはじめとする多くのみなさま方、ご心配いただいたみなさまに、お詫びしますとともに、深く感謝を申し上げます。本当にありがとうございました。
そして、今も行方不明になっている多くのジャーナリストたちの、1日も早い無事な解放を祈っています。
今回、私自身の行動によって日本政府を当事者にしてしまったという点について、大変申し訳ないと思っています。今回なにがあったか、可能なかぎり説明することが私の責任であると思っています。よろしくお願いします。
記者1:新月通信社のペンと申します。(11月2日の会見での)お詫びについて、謝罪についての質問を申し上げたいと思うんですけれども。
ご存じかどうかわからないんですが、先日、国境なき記者団が先日ステートメントを発表されているんですが、その声明の中というものは「謝罪をすべきではない。謝罪をする必要がいない」という内容のものになっております。「謝罪をするのではなくて、むしろその歓迎をされるべき、評価をすべきだ」というような内容の声明になっているんですけれども。
やはりその声明の内容、そして日本社会、日本の市民が期待していること、日本の社会の状況というのは、ある意味で異なった常識があると感じることがあります。
記者としてのジャーナリストとしての仕事は、やはり危険なところに行って、そこの現場で起きていることを取材する、そしてそれを伝えることが記者の仕事であります。政府やその利益のグループなどに管理される、コントロールされる内容ではなくて、現場での情報を伝えることがジャーナリストの本来での仕事になります。
ですので、これからが質問なんですが、やはり世界で活躍するジャーナリストとしては、本当に謝罪をする必要があると考えられているでしょうか?
日本は民主国家ではありますので、民主国家に、そして民衆主義な社会においては、やはりコントロールされる情報ではなくて、現場の直の情報を伝えることがジャーナリストの仕事だと思います。
もちろん日本政府はいろいろと解放に向けて働いていたということ、働きをしていたということはあったと思うんですが、それについて謝罪をするのではなくて、やはり帰国したことで歓迎をされるべきでしょうか? それについてのコメントをお願いいたします。
安田:この報道の仕事、ジャーナリストの仕事が政府であったり権力にコントロールされるものではないことについて、全面的に賛成いたします。
今回、謝罪といいますか、私自身の行動にいくつかのミスがあったということは間違いないので、この点について、みなさまのご批判をいただいて、今後に活かしていくために、まず、ご挨拶といいますか、ご批判をいただくにあたって、お詫び申し上げますということを申し上げています。
記者2:イタリアスカイテレビのピヨと申します。まず、おかえりなさいませ。
そして、公式ではないんですが、イタリアと日本は身代金を支払いをすることがあると報道されています。それについて、もちろんはっきりとしたイエスということは期待していないんですが、少し間接的な質問をしたいと思います。
もし、日本政府がそういったお金を支払ったのであれば、それは正しいやり方だと思いますか? それは正当なやり方なのか?
もしくは、自分の責任ではあるので、日本政府から支払いをされることを期待しない、求めないことになるでしょうか? それについてのご意見をまずおうかがいしたいと思います。
そして、2つ目の質問なんですが、イタリア人もシリアで拘束されているということも確認されています。ビデオの中でも彼の様子が報道されているんですが、アレッサンドロという名前の方です。
もし彼についての情報などがなにかありましたら、最後いつ見かけたのか、もしくは彼についてなにか最新の情報などありましたら、イタリアの政府、またはイタリアの国民などのためになるような情報があれば、ぜひおうかがいしたいと思います。よろしくお願いします。
安田:自分自身のケースとほかの人のケースでなかなか同じように考えるのは難しいんですけれども。
例えばほかの記者が人質になっているときに身代金を払うことによって解放されるのであればそういう方法も止むを得ないのではないかと思う一方で、では自分がそういった状況になったときにどうかと言うと、やはり自分がそれにふさわしいのだろうかとかいうことをおそらく考えるのではないかと思います。
もしも日本が身代金を払う国であることが確証の高い事実としてある場合、私に限らず現場に行くことをかなり慎重に考えるようになるのではないかという気はします。
日本政府が身代金を払うということはまずないということがあって、だからこそ現場には自分の責任、判断で入るという人が多いのではないかと。
それからアレッサンドロさんの話なんですが、今日の資料にもあるんですが2018年7月5日、私のいた施設に彼が運ばれてきまして、私がこの施設を出る9月29日まで一緒にいました。
彼は非常に元気な様子で、イスラム教徒に改宗したようでサイードと呼ばれていました。はじめは彼らと一緒に礼拝をしていたんですが、途中から彼の部屋で1人でやるようにと言われてやっていました。
ときどき彼は泣いていることもあって、2年間拘束されているということで、ときどき精神的に辛いときがあるのかなと思うんですけれども。
彼に対する扱いというのは、例えば暴力であるとか虐待のような状況というのはなかったように思います。それから彼自身が拘束者側の人間になっているとかそういうことも私が見る限りではないかなと思います。
直接話をする機会はなかったんですけれどもお互いに長い期間拘束されていることは、なんとなくわかりましたので、目線でなんとなくコミュニケーションを取るとかということをやっていました。
私の家族も長い間、非常に心配をしていましたので、当然彼のご家族が非常に心配されているでしょうから、帰国してしばらくしてイタリア大使館にはこちらから連絡をしまして、私の知っている限りの話をさせていただきました。
最後に会ったのは今年の9月29日、私がほかの場所に移されるときに見たのが最後です。
記者3:身代金についてのお話があったので、それについて1つ質問したいと思います。報道されたことの中で安田さんが奥様に秘密のメッセージ、コードの入ったメモのようなメッセージをお送りしたということが報道されていました。
そのメモの内容というのは「(身代金を)払わないでください。無事に帰国するので」ということだったんですけれども。そういったものをお送りしたかどうかをまず確認させていただきたいと思います。
もしお送りしたのであれば、それはどういった方法で送ったのか? またそのメッセージの内容はどういうような意味があったのかについて教えてください。
安田:まず拘束者の側から「個人情報を書け」と言われて個人情報を書いたのが2015年の12月7日です。このときに私は妻に対するニックネームに1文字付け足して、私は妻のことを「オク」と呼んでいるんですけど、そこに放置という言葉を付けて「オクホウチ」という書き方をして。
日本にいる間、常々自分になにかあったときには放置するように、騒ぎにならないようにしてほしいということを言っていたので、この表現で妻に伝わるだろうと。
この「オクホウチ」という言葉だけではインターネットで検索してもおそらくわからないだろうということで、そこに書き込んでます。
それから彼らの側から日本側から反応がないと言って家族に圧力をかけさせると言われて、妻の連絡先を教えたんですけれども。メールアドレスと電話番号ですね。
そのあと2016年1月6日に彼らが、「日本から送られてきた質問に答えろ」ということで書かされました。これは私の妻が日本語で書いてきた7つの質問ですね。
私でしか答えられないような、例えば先ほどの妻の呼び名であったり、私が使っている仕事用の椅子を「どこで買ったのか」とか、「日頃買っている焼酎の銘柄を書け」と言われて。彼らはイスラム教徒なので、これは何の質問かと聞かれて非常に困ったんですけど。そういった質問が7つありました。
それに対して同じように払わないようにと。この質問は2回きたんですが、1回目は前回と同じように「オクホウチ」というのだけを入れたんですけれども。
このあともう1回、1月19日に「同じ質問に答えろ」ということで、もう1度書かされました。おそらく送ったけれども反応がないということで、手違いがあって届いていないと思ったと思うのですが、もう1度書かされまして。
このときに付け足してメッセージを入れています。焼酎の名前のところに、つまり固有名詞なのでなにを書いても書きやすい場所ですよね。そこに払っちゃいかんという趣旨のことと、断固無視しろという言葉と、無事に帰るという3つのメッセージを入れました。
これは日本政府の側からそういった質問をするように相手から私が生きている証明を求めたということでは恐らくなくて、いろんな自称仲介者と言いますか、ブローカーのような人たちがたくさん暗躍していまして、実際に現地の拘束者とコンタクトが取れるのだということを示すために、こういった質問をしてきたのではないかと思っています。
安田:当然、秘密の質問に対する答えが私の妻の手に渡ったのが2018年になってからですので、この秘密の質問というのは生存証明ですよね。私にしか答えられない質問、それは私が生きているという証明ですが、その回答が2018年にきたことは、これは本当に生きている証明をとるためにやったわけじゃないわけではないのではないかなと思っています。
なぜそういったメッセージを送ったのかということなのですが、まず人質になっている人間が払ってほしいと言ったり、払わないでほしいと言ったりすることが政府の決定には何の影響もしないわけです。
払ってほしいと言った人だけ助けるとか、言わないような人は助けないということがあってはいけないわけで、政府の決定には影響しないわけですが、自分自身がどういうつもりで現場に入っているかということを改めて示しておいた方がよいであろうと。
これは2004年の拘束、当時私は人質になったわけではないのですが、相手から要求は一切出ていませんので、スパイ容疑で捕まったわけですが、日本政府が助けてくれると思って現場に行っているのではないかということを非常に言われましたので、どうしてもそういったことではないと。
政府による救出を期待して行っているのではなくて、自分の判断で入っていることを示しておく必要があるだろうと考えました。その結果私自身がどういった結果というか、帰ってこれるのか、これないのか、わかりませんけれども、そういったことを示しておくことが、日本にいる家族に対してもよいのではないかと。
自己責任という話が出ていますけれども、同時に家族の責任を追及するのが日本社会でして、家族の連帯責任という自己責任でありながら同時に連帯責任であることは経験していましたので、自分自身で責任を取るという姿勢といいますか、自分だけで責任を取れるわけではないのですが、そういった姿勢というものを示すことが家族にとってはよいのではないかも考えました。
それから相手とのやり取りの中で、彼らは組織名をずっと明かしてないのです。彼らは何者であるのか。それは日本政府に対してもそうしている、と彼らは言っていて、そうすると例えばイスラム国のような組織が映像を流して人質を殺害するというのは自分たちのアピールに使っているわけです。
組織名を言わないでいることは、殺害をしてもアピールにはならないわけでして、彼ら自身、「殺しても何の利益にもならない」ということをずっと言っていましたし、うまく対応すれば身代金を取れなくてもそのまま放り出すとかも可能性はあったので、家族を安心させるという意味も含めて、無事に帰るからというメッセージを入れています。
記者4:BBCワールドサービスのトルコ語版イルジンと申します。まず、お帰りなさい。安田さんが拘束されている間に日記を書いていたことが報道されているのですが、もしよろしければ日記の内容について教えていただくことは可能でしょうか。また、その日記の内容の一部を出版などというものも考えているかどうか教えてください。
安田:日記の内容は本当に自分が見聞きしたものをすべて可能な限り記録し、なおかつそういった状況での思考といいますか、考えているものが非常に特殊な環境における思考ですので、これは記録しておくべきだろうと考えて、すべて記録していました。
それから、公にするかどうかはこれからですが、なかには今後みなさんにとって役に立つ情報というのも入っているかもしれないので、それを公にするということもあるのかなとは考えています。
記者5:フリーランスの江川紹子です。お帰りなさい。
1つうかがいたいのは、安田さんが解放されてイスタンブールに向かう飛行機の中でNHKのカメラに向かって言ったことが、なにかすごい誤解をされて広まっていたような気がするのですが、それはあたかも日本政府が何か動いて解放されたように思う人がいるのではないかと、それだけは避けたかった、というのが、あたかも政府批判のように伝わって、反安倍・新安倍、両方が空中戦のようにいろいろ非難をしあっていることがありましたので、その真意を教えてください。
それからもう1つ。拘束されている間に女性や子どもの姿は見たでしょうか。もしご覧になったとすれば、何か印象的なことを教えていただければと思います。
安田:まず、私自身の希望として、日本政府から身代金が払われることは望んでいませんでしたので、これはこの政府の対応に対する不満であるとかではなく、私のためにこの身代金が払われることは避けたいと考えていましたので、そういったかたちであるならば、それは望んでいなかったということもありますし。
もし身代金が払われていなかったとしても、身柄を引き渡して解放するというかたちですと、身代金が払われたかのように受け止める人もいるでしょうから、これは私だけではなく、「身代金は絶対に払わない」という日本政府の立場から見てもこれはよくないことであろうと考えましたので、「これは望むかたちの解放ではない」という表現をしました。
安田:それから、女性と子どもの姿ですけれども、姿を実際に見ることはできないんですけれども、女性や子どもの声はたびたび聞こえました。
まず印象的だったのは、まだ声変わりをする前の少年が尋問を受けていて。彼はシリアの南部のダルアー出身だと。それがわざわざ1人でトルコまで来て、1人でシリアに入り込んでいた様子です。
彼らのこの尋問の様子を聞いていますと、スパイ容疑の尋問であろうと。つまり、政府側がそういった子どもを使ってスパイ行為をさせていることをうかがわせる内容でした。
これはおそらく政府側、反政府側はおそらくやっているのではないかと思うのですが、戦争というのは、物理的な銃弾が飛び交うだけではなくて、情報戦を同時にやっているわけですよね。そういうなかで、そういった弱い立場の人たちが利用されるのが戦争の1つの姿かなと。
それから女性ですが、例えば、シリアのあの地域、イドリブという地域に反政府側の組織で作ったイスラム法廷というものがあって、イスラム法をもとに人を裁くと。
というときに、例えば一家のお父さんが有罪になった場合、このシリアの今の社会の中で、父親がいない状況では家族の安全であったり生活であったりを維持するのが難しいので、家族全員で刑務所に入るということをやっていた様子です。
もう本当に赤ちゃんと言っていいぐらいの小さな子の声もしました。子どもが何人もいて大騒ぎしているような様子で。
その女性たちの様子を聞いていると、それほど深刻な様子ではないというか、そのイスラム刑で入ってくる人たちは、もう判決の出た段階で何ヶ月ということをはっきり言われているので、「その間はそこで過ごして」ということで、彼らについてはさほど深刻な様子ではなかったです。
それから、2018年3月31日~9月の29日にウイグル人の運営する施設に入れられまして。彼らはときどき自分の子どもを連れてきていまして。本当に小さな子どもなんですけれども。話を聞いていますと「妻が3人いて、子どもが8人いて」ということを言っていて。
例えば、イスラム教のこのラマダンの月、断食の月ですね、朝というか夜というか、日が昇る前の時間に、その拘束施設のすぐ近くにあるモスクから、大勢の女性の声で礼拝をしている様子が聞こえてきました。
それから、ウイグル人の食べるパンですね。「ナン」と彼らは言ってましたけれども、それとこのシリアのパンである「ホブズ」とはぜんぜん違うんですよね。シリアのホブスというのは薄い真っ平らなパンですけれども、このウイグルのナン、パンというのは厚みのあるまったく違うパンなんですけれども、彼らはそれを買ってくるんですね。
だから、ウイグル人が、女性とか子どもも含めてかなりの人数でシリアに移住していて、かなりのコミュニティになっている。そのウイグル人を中心とした武装組織もありますし、その彼らの家族もかなりの人数でいると。
中国からベトナムであったり隣国に密入国をして、偽造パスポートを使ってトルコに飛び、そこからシリアに入ってきて。「ジハードをしに来たんだ」ということを言っていましたが、そういう人たちがかなりたくさんいる。
今のこの中国の新疆ウイグルの状況を考えると、彼らが今後帰れるかというと、かなり難しいのではないかという気もしていまして。彼らはシリア人が難民として出ていったあとにここに住みついていて。では出ていったシリア人たちがそこに戻れるかというと、やはりそこでも難しいのかなという印象を受けて。
彼ら武装組織、男性たちだけでなくて、女性も子どももいるという、そこでの生活になっているという様子を見て、シリアのこの今の状況がかつてのような姿を戻すのは、非常に難しいのではないかなという印象を受けました。
記者6:無事に帰ってきたから、本当によかった。おかえりなさい。
私はインドネシアの新聞記者です。よかっただけではなく、奇跡だと思います。私のソースから聞いたら、元軍人、イスラム国の軍人なんですけれども、「えっ」て。「40ヶ月? マジかよ!」。これはすごいじゃないですか。奇跡だと思います。
40ヶ月、イスラム国の中でイスラムのことを勉強してたと思いますので、逆に嫌いになってしまうでしょうか? もしかして、もっとイスラムのことを知りたい、勉強したい、そういう気持ちがありますか? どうでしょうか? よろしくお願いします。
安田:拘束中に英語とアラビア語の書かれたクルアーン(イスラム教の聖典)を渡されまして、それから預言者ムハンマドの伝記も渡されまして、かなり何度も読み返しました。
イスラム教の中に、「宗教に強制というものはないんだ」という言葉であるとか、「人間は弱いものである。神は慈悲と許しを与えてくれるのである」とか、「それぞれの人間、自分の能力以上のことを神が求めることはないのだ」といった、いろんな言葉がありまして。
そういった言葉を勉強して、イスラムというのが……平和的な面を非常に持っている宗教であるということと、そういった言葉も引用しながら彼らと話をすることもできました。
イスラムは、非常によく勉強しなければ誤解してしまう。イスラム教徒以外だけでなく、イスラム教徒もイスラムを非常によく勉強しないと、誤解を受けやすいこともありうるのではないかという気も同時にしました。
イスラム教を嫌いになることは、まったくそれはないです。もっと勉強したいなと考えました。
記者7:NOBORDER NEWS TOKYO 上杉隆の『ニューズ・オプエド』という番組で記者をしております。乾真規と申します。
安田さんは前回の会見で、ご自身が今すごく注目を浴びられる一方で、シリアの現状がなかなか日本で伝わることがないことに対して、この先もっと関心を持ち続けてほしいということをおっしゃいました。
ただ、シリアのことが伝わらないだけではなく、安田さんは残念ですけど今回は取材に失敗されて帰って来られました。数は少ないですが、日本人ジャーナリストでシリアを取材して、たくさん情報を持って帰ってきたジャーナリストたちもいて。
その人たちの持ち帰ってきた情報というのが、残念だけれども安田さんより大きく伝えられることがない。それはお互いにとってものすごく歯がゆく思います。同じジャーナリストとして。
そういったちゃんと情報を持って帰られた人たちが、なかなか伝えられないということについてのお考えをうかがいたいと思います。
安田純平氏(以下、安田):記者の側は表現するというか伝える側で、これを見てくれないとか聞いてくれないとかいうことは受け手の側の問題であって。
貴重な情報なのにこれに関心を持たないのはおかしいとかいうことを考えるよりは、関心を持っていない人でも関心を持たざるを得ないようなスクープであったり、そういった場所の人間の姿であったり、今の世界の姿であったりをきっちりと描くのがジャーナリストのやる仕事であって。
受け手の側になにかを言うよりは、もっと良い仕事をとにかくすることを考えて、お互いに切磋琢磨することをまず前提とすべきかなと考えています。
司会者:最後に1つだけ質問なんですけれども。ワーキングプレスだけではなく、どなたでも最後に1つ質問をお願いします。
では七尾さん、ワーキングプレス外のところに座っているのを代表して言ってください。最後に、七尾さん。
記者8:おかえりなさい。ニコニコ動画の七尾です。人質に関する組織で安田さんの存在は知れ渡っていると思います。現地に入るとしたら再び狙われる可能性は現実問題として非常に高いと思います。
その一方で、今日の会見も先日の会見も拝見しました。全文書き起こしも見ました。これはやはり現地の状況やイスラムの今を知るうえで世界が必要なものだと思います。本当に正直に思いました。
一方でご家族の方も心配されております。今後リスクを若干でも軽減するかたちで、ジャーナリズムといっても、いろんなかたちがあると思うのですが、そういった多様な方法論をお考えになって貴重なジャーナリズム活動を行っていく可能性についてお聞きします。
安田:ああいった現場にまた行くかどうかについては先日も申し上げたとおり白紙です。今現在どうするということは考えていません。
ただ2004年のときもそうだったんですが、相手は誰だったのか捕まえた人間は誰だったのかという真相の究明というのは絶対必要だと思うんですね。
もしも日本政府が、もしもなにか対価を払ったとしたらそれは当然日本国民として絶対知らなければいけないことですし。真相究明というのは絶対やらなければいけないことで。
2004年に私は人質というふうに報道されましたけれども、相手は誰なのかはまったく報道されてないんです。その後まったくされてなかったんですね。
結局、私自身、何度かイラクに通って関係者を見つけて、当事者から「スパイ容疑で捕まえた。しかしスパイではなかったのでもてなして帰した」ということを言われていて。
結局そうやってしつこくやっているのは、真相究明しようなんていうのはどうしても当事者がやらざるを得なかったところもありまして。
今回非常に危険な状態である、それから自分自身だけではなくて家族だけでもなく、日本政府であるとかいろんなところに影響がありましたので、また現場に行くとは言えませんけれども。
いろんな方法もありますし、私よりも今日お集まりのみなさんのような優秀なすばらしいジャーナリストのみなさんがたくさんおりますので協力できることは協力したいと思いますし。
これ以上取材をしなくてよいということは絶対にないので、それを私自身がやるかどうかはまた別問題として、ジャーナリズムというものが必要ないとか現場の取材が必要ないとかいうことはまったくありませんので。
私自身ができなくても誰かがやるのであれば協力したいですし。ジャーナリズムというものがなくなるということは絶対にないように、そう願っていますし。自分のできることはやりたいなというふうに思っています。
司会者:ワーキングプレスからもう1つ質問があったので、これを本当最後にしたいと思います。
記者9:イラクで記者が拘束されたとき、私は当時パリで大学院生だったのでいたのですが。街中に、そしてすべての駅構内に大きなポスターがオブナさんの顔写真とその通訳の写真が貼られて、解放を求めるポスターが貼られました。
そして与野党を越えて解放を求める集会がずっと半年間続きました。ちなみに自己責任だと言ったのは、私がインタビューしたんですけれども、極右のジャン=マリー・ル・ペン、当時国民戦線の党首だけでした。
それでオブナさんが解放されたときに私は記者会見に行きまして、最後にオブナさんに歓迎の意味を込めて花束をお渡ししたらそれがフランスでニュースになったことがありました。
そこでうかがいたいのですが安田さんが解放されて……オブナさんが解放された2004年12月はシラク大統領はバカンス中でしたが、バカンスを切り上げて空港にラファラン首相と2人で空港に向かい歓迎をいたしました。
そこでうかがいたいのですが、安田さんは解放されて、常岡(浩介)さんとか寺澤有さんとかご友人がたくさんいらっしゃると思いますけれども、歓迎されたエピソードやご家族からかけられた言葉などをうかがえればと思います。ありがとうございます。
安田:今回、帰国してからすぐにメディカルチェックで病院に入ってしまって、そのあと出てきたのが記者会見というかたちで、なかなか友人、知人と会う時間がなかったのですけれども。
成田に着いて車に乗る前に、「純平」と声をかけてくださった先輩の記者であったり、そのあとメディカルチェックがあって病院に入って、取材に対しては会見まで勘弁してください、ということをみなさんにお願いしたのですが。
みなさん会見まで待っていただいてといいますか、表立って歓迎するというかたちではなくて、少し落ち着いてから話をする時間を持っていただくというかたちで待っていただいたというところが私はありがたいなと思っていまして。
わかりやすく歓迎というかたちではないですけれども、日本らしいというか、気を遣ってもらったなということでありがたいと思っていましたし、歓迎として私は受け止めていましたので、非常に感謝しています。
司会者:代理で最後に1つ質問をしたいと思うのですけれども、拘束されていた間に一番恋しかったものというのは何だったのでしょうか。ご家族が一番というのはもちろんあると思うのですけれども、その次に例えば食べ物ですとか物ですとか、何が一番恋しかったでしょうか。
安田:やはり日本食なのですけれども、何もできないという状態がずっと続くのです。そうすると本当に、例えば自分の好きなコーヒーを淹れるというだけでもできないわけです。
やりたいことをやるとか、好きなものを食べるとか、そういったちょっとしたことがかつては自分の好きなようにできた。やりたいことをやれるということが、いかに素晴らしい時間だったのかなと。そのことをもうずっと考えていました。
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