2024.11.26
セキュリティ担当者への「現状把握」と「積極的諦め」のススメ “サイバーリスク=経営リスク”の時代の処方箋
IBM Watsonが次に目指すもの(全1記事)
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吉崎敏文氏:みなさん、こんにちは。アイ・ビー・エムでビジネスのためのAI「IBM Watson」の責任者をやっております吉崎です。
実はソフトバンク様とは、日本での立ち上げからずっとご一緒してきました。昨年、やっと日本市場も立ち上がってきたなと実感したんですけれども、それまでいろんな研究もしてきて、現場でプロジェクトをやってみての自分のいろんな気づきについて、今日はお話をしたいと思っています。
私はエバンジェリストでもないですし、語りの専門家でもないんですけれども、ずっと現場を見てまいりました。そのあたりを含めてお話しできればと思っています。よろしくお願いします。
今日午前中のセッション。孫(正義)さんの(基調講演)はすごかったですね。AIに関する新しい戦略を発表されていました。
実はアイ・ビー・エムも、この3月にCEOのジニ・ロメッティがラスベガスの会場に3万人のお客様をお呼びして、そこでキーノートをやったんですね。その内容についてちょっと話をさせてください。「データを価値に変え、それを社会(の課題解決)やビジネスへと変えていく人が次の勝者である」という話をさせていただきます。
(スライドを指しながら)ちょっとコンセプチュアルな話から始まります。こちらは「Think 2018」というイベントで、日本からは600名のお客様に参加いただきました。私がラスベガスでそのお客様にどのような話をしたか。一部、日本のお客様向けに説明した内容も含んでいます。
我々は今、変節の真っ只中にいるという話から始まっています。変節とは何かというと、25年周期で起こる変化点のことです。我々はIT企業なので、ITにおける変化点のことを言っています。
では、その変化点とはなにか。ITに携わっている方は、(スライドを指しながら)1番左側の「ムーアの法則」についてはよくご存じかと思います。遡ること50年前に生まれてから、ずっと続いている法則なんですけれども。集積回路(上のトランジスタ数)は、1年半で倍になる。我々はある意味でずっとコストパフォーマンスを追い続けてきたんですけれども、そういった法則が今でも続いております。
その後25年経って、メトカーフ、つまりイーサネットを作った人ですね。(イーサネットは)インターネットと思っていただければいいと思います。ネットにつなぐと、その価値が倍になるという。これも同じく、インターネットを新しい技術でずっと伸ばしてきたわけですね。
(そして、)我々はWatsonをやっているので「Watsonの法則」と呼んでいるんですが、いわゆる「AIの法則」があります。今から起こることはAIの法則といって、これは指数関数的に価値が大きくなるということを言っています。先ほど孫さんもそのようなお話をされていましたけれども、AIによって劇的に世の中を変え、社会を変え、そして企業を変えていく。そのための1つが「AI」です。
(スライドを指しながら)この図が見えますかね? 「Watson’s Law」の後ろに絵がありますよね。これが本当に言いたかったところです。今までの経験からもそうなんですが、データは今後も1年半ごとに倍になります。そのデータから価値を生み出すもの、洞察を生み出したナレッジそのものが、指数関数的にその価値を高めていくということを言っています。
これはWatsonのある意味での「生みの親」であるDr. ジョン・ケリーが作っているんですけれども、彼が6月に日本に来た際、私はちょっとこの話をさせていただきました。彼自身がそういうような実感をしていて、指数関数的、英語でいうとexponentialですね。そういった指数関数的な価値が今後当てはまるだろうと。よって、そのデータをどう使うかが非常に重要だという話を、まずオープニングでさせていただきました。
では、そのなかでどうすればいいのか。これに対する答えは3つです。1つは、AIを使ってデータを価値に変えていくこと。
2つ目は、あらゆるプロセスにAIを組み込んでいくこと。後ほどお話ししますが、私が「日本で市場が立ちがったな」と実感したのは昨年なんですけれども、非常に多くのプロセスや現場にAIが入ってきました。そこでもって、AIというのは社会を変えていくために必要なものになってきたと感じました。あらゆるプロセスにAIが入っていって、学習したナレッジを使っていくということですね。
3つ目は、さきほどデジタルプラットフォームと言っていましたけれども、そういったプラットフォームを複数持つということです。こういったことから指数関数的に変化していきます。そして、そういったプレイヤーは今いるのかということですね。そういう話をさせていただきました。
一昨年とか昨年までは、やはり新規のプレイヤーが多かったですね。いわゆるディスラプターがいろんなかたちで今の業界に新規参入してきて、その業界を席巻するんだろうと思いました。ですが、実はアメリカでは、昨年スタートアップが40年ぶりの低水準となりました。若干踊り場に来た感じですね。
今は既存企業が変革者になることも多くあって、例えば「Think2018」の会場に来て話をしたのはMaerskという海運会社でした。100年続いている会社なんですね。その海運会社が自社のコンテナを全部IoTにして、荷物がいま世界のどの位置にあって、どういうかたちで送付されているかをトラッキングしています。それによって劇的にプロセスを変えたという話がありました。
カナダのRoyal Bank。こちらも100年以上続いている銀行ですね。ブロックチェーンを使ってお客様を新しく呼び込み、それで顧客数を3倍に増やしたというお話ありました。
これらはいずれも、老舗企業がデジタルプラットフォームやデータを活用して変革者に回ったという話です。私はそのグローバルイベントに3年続けて参加していますけれども、そういう意味ではちょっと変わってきたかなと思います。今までは外からの参入者が業界を席巻するって話だったんですけれども。
いずれにしても、重要なのはデータの活用です。ずっと一貫してIBMでは話をしているんですけれども、その「データの活用が1番のキーだ」という話をジニ・ロメッティからさせていただきました。
(スライドを指しながら)こちらは自分がどうやってナレッジを使うかを1枚にまとめたものです。「こういうことだろうな」って自分が考えて表現したものなんですね。
スライドの左側は、そのソースです。一般的には、まずトランザクションデータが入ります。そういった取引データであったりPOSデータだったりと、日々みなさんが使っているようなデータがあります。
それからAIにとって1番大事なのが専門家の知見ですね。場合によってはかなり属人的な知見であることもあるんですけれども、そういったものをベースに、スライドの真ん中にあります基盤プラットフォームでどんどんデータを進化させるんですね。もちろんこれはモデルなので、開発してどんどん変わっていくんですけれども。
最終的にはスライドの右です。自分は「ナレッジ業務アプリ」と(名前を)つけたんですけれども、AIを使って最終的にはこういったアプリを作ることが目標です。それは例えば、回答サポートとか、パーソナライズサポートとか、診断支援とか、査定判断支援とかですね。たぶん、これまでにないような新しいアプリが出るんだろうなと思います。
今日、孫さんが再定義という話をされていましたね。私も実は再定義をやっておりまして、AI時代における人材の再定義もやっているんですね。これから基となる人材って変わるんだろうなと思っていて、もうそれを定義し始めているんです。
それって、ある意味では業務アプリも一緒で。新しいアプリが出てきたときには、このようなナレッジ付きの業務アプリになるんじゃないかなと思っていて。ちょっとこの1枚(のスライドに注目してください)。すごくコンセプチュアルなんですけれども、最後の話でまたここに戻りますので、これをちょっと頭に入れていただいていいですか?
では、日本ではどんなかたちでWatsonが広まってきたか。先ほど申し上げたように、私は日本での立ち上げからずっとやってきております。事業の発足からやってきたんですけれども、(スライドを指しながら)こんなかたちで広まってまいりました。
こちらは一応、本番稼働で動いているものをベースに常に考えています。というのも、あまりにも数が多いんです。一応カテゴリーでまとめるとこんなかたちかなと思います。これを私はいつも頭の中に入れています。
(スライドの)縦のラインは、Watsonでは「フレームワーク」と呼んでいます。3つありまして、「照会応答」、それから「意思決定支援」、最後に「探求・発見(Discovery)」という適用領域です。
「照会応答」は漢字のとおり、質問に答えるんですね。これをどんどん学習でやっていくというアプローチをします。
(スライドの)横軸は、お客様から見た適用領域です。お客様の接点改革のところですね。先ほど冒頭でお話しした業務プロセスです。あらゆる業務に入っている。これは昨年ですね。
秋ぐらいから、お客様の製品とかサービスにもAIが入っていって、そのサービスとか製品に付加価値をつけるということです。本当はもっと細かい内容があるんですけれども、大きく内容を層別にすると、こんな感じになるのかなと思います。
実は2014年の終わりの頃から2015年のあたりって、こんな製品はなかったんですよ。私が自分で言うのもなんですけど、そもそも日本でAIをやろうとしても、正直言ってあんまり相手にされなかったんですよね。
それでまずは、孫さんと一緒に市場を拓くことからやってきたんですけれども、やっぱりAIというものは期待値が高いんですよね。期待値が高いというのは、ある意味でなんでもできるということです。最近はさすがになくなってきつつあるんですけれども、「魔法の杖」といいますか、「AIがあるとすべてが解決する」みたいな期待があったりするんですね。
なので、どのエリアにおいても、必ずしもすべてうまくいくというものではないということを言いたかったので。こういった、いわゆる「スイートスポット」というのを常に頭の中に入れています。
さきほど本番稼働と言いましたけれども、実は失敗もいっぱいしてきています。逆にそういった失敗がなければ、ここまで普及させることはできなかったと自分でも思っているんです。プラットフォームも進化していますけれども、我々もやり方を非常に学んできたかなと思っています。
(スライドの)ひとつには、左上にあります「お客様接点対応」ですね。日本ではこれが非常に多かった。コールセンターやコンタクトセンターなど、お客様と接するところにAIが標準で入りつつあるという状況です。
実は私、昔アイ・ビー・エムのコールセンター・コンタクトセンターのプロセスを担当していたことがありました。そのころの強い思いもあってこれをやりたかったということもありますけれども。ここではAIのスイートスポットについての話をします。
まず、明確な理由がありますよね。コールセンターというのはプロセスが明確なんですよ。「1通話あたりにだいたい何分」とかいうものですね。コールのフローを作っているので、どういった流れでプロセスに向き合うのかが比較的明確になっています。
それにデータもありますよね。(そういう部署で)データがないところはなくて。いわゆる日報だとかオペレーションマニュアルとか、それから音声系のデータが必ずあります。
我々は「非構造のデータ」と呼んでいるんですけれども、AIが出てくる前は、そのデータを実際に使うとなったら、例えば分析ソフトで線形解析モデルみたいなものを回すってことはあったかもしれません。けれども、それを使って品質を向上するのは簡単にできなかった。ここは、AIが出てきてから劇的に変えることができるようになったエリアかなと思います。
またチャットボットは、ご存じのように24時間365日動いているので、人がサポートしていないときのお客様のカバー率を上げられるということで広まってきたと思います。チャットボットは人間が眠っているときでも対応できるんですからね。
私も最初は気づかなかったんですけれども、(重要なのは)そのログなんですよね。そこでどういう反応があったのか、どのような対応を誰に対して行なったかがわかるんですね。それも大事なものだと今は感じています。
業務プロセスについてなんですけれども、先ほど言いましたように、(スライドを指しながら)私どもはタイでの本番事例を通じて、遠回りはしましたけれども「日本でも間違いなく普及するな」と思いました。
私は本当にぜんぜん想定してなかったんですよね。そりゃそうです、私はそれぞれの(部門の)専門家じゃないんです。みなさんそれぞれの部門で専門知識をお持ちになられている。私は全部調べないといけない。なので、いろんな方と話をして、なるべくいろんな実際の本番事例の話をしたんですね。そうすると、「自分はこのような知見を持っていて、知識やナレッジ自体をAIに活用しています」と。それによって適用領域がバーって広がっていったかなと思います。
人材マッチングも、2013〜2014年頃にはそんなになかったんじゃないでしょうか。でも、今はどうでしょう? ほとんど人材系の会社がAIをやっておられるんじゃないですかね。
私がまったく気づかなかったのは「バイアス」です。そこに投資しようと思ったんです。我々はどうしても主観的に物事を考えて判断しますよね。経験上、自分の好みの人がいたらどうしてもその人を選んでしまう傾向があります。
(AIは)「主観を排除し、客観的に、どのような人がベストケースかを出す」こと自体が1つの価値ではないかと、人事の人から言われました。私は人事のプロじゃないからまったくわからなかったんですけど、聞いてたしかに「なるほど」と思いました。
最終的には意思決定が必要ですから、それは人間が決めればいいんですよね。誰が決めるかといったら、人事部の方、もしくは人事の営業、人事の採用担当が、自分で判断すればいいわけですよね。それでまた、知識を入れていけばいいわけです。本当にこのエリアには、採用とか人材派遣の会社だけじゃなく、すべての会社が使えるんじゃないかなと思います。
(スライドを指しながら)次は検品です。これも私がまったく気づかなかったケースですね。工場の検品ですね。検品に限らず、人間の目で判断して意思決定を下す場面って、ものすごく多いんですね。今日も専門家がいらっしゃると思いますけれども、私は気づかなかったんです。実際にAIを導入してもらって本番稼働したものをここに載せています。
もちろんものによって違いますが、最終完成品は意外と人間が「これは出荷基準を満たしているので合格だ」と判断しています。でもこの判断って、カメラの角度とか位置とかが非常に重要なんですけれども、けっこうAIでもできるようになっています。
このAIがその人の仕事を奪うのではなく、AIが判定して学習し蓄積したものを、また人間が判断するわけじゃないですか。だからポイントは「AIをどのように使うか」ですね。
こんいった話をさせていただいていますが、これらはすべて、私がぜんぜん気づかなかった導入事例です。専門性がどこにあって、どういうところにAIを使うかということですね。
コールセンターは「話す」とか「聞く」とか、そういった世界ですね。それが工場では、(厳密には工場に限らないんですけど)、人間の目に代わるというので「見る」という部分ですね。そういったところにAIを使っているということです。これも業務プロセスのさまざまな領域への活用で、非常に多いですね。
(スライドを指して)この「新サービス」と「製品」というのは、すでに発表されているものにAIを組み込んで、実際にその価値を高めるというものですね。次にこのお話をさせていただきます。
(スライドの)1番下にあるこの国際通商課題っていうのは、難しい名前ですけど、つまり関税です。世界中の関税って変わるじゃないですか。例えばTPPもですが、知らなかったんですけれども1国抜けただけでも関税は変わるらしいんですね。
この変わりゆく関税を、Watsonが世界中の書類を読んですべて学習していきます。これも私は知らなかったんですけれども、この率が変わる影響って会社や製品によっては非常に大きいんですね。これは今、実際に活用していて知りました。
(スライドを指しながら)次は1番右下ですね。DiscoveryはWatsonのフレームワークの1番に「探求・発見」ってありますね。ここです。
このDiscoveryと呼ばれるこの領域は、まだまだこれからです。これからなのですが、やっぱりAIって、このDiscoveryの領域では非常に効果的なんですよね。Discovery=発見ですから、人間が想定していなかったような示唆やアドバイスをWatsonがするということです。
もともと医療の世界でのAIは、ドクターに対して「このような治療法もあるよ」(と提案するものでした)。例えばがんの話ですね。今日孫さんもDNAの話をされていましたけれども、がんの患者に対して「このような抗がん剤の治療の仕方があるよ」といったように、Watsonが世界中の新しい論文とか世界中の文献を学んで、それでアドバイスする。Discoveryはその隠れた相関を見るので、併せてアドバイスができる。
こういったことを医療の世界で4年半やってきたんですけど、その経験をベースに、実は今、あらゆるところにAPIでのDiscoveryを展開しているんですね。だいぶ変わってきていて、また1段、ギアというかステージが上がったかなと感じています。このDiscoveryをぜひこの日本でも普及させたいなと思っています。
というわけで、この1枚(のスライド)で長々と説明いたしました。非常に重要で言いたかったのは、どこに適用領域があって、まず(AIに)向いているかを見つけることができれば半分ぐらい、プロジェクトの成功かなと私は今でも思っているということです。
(スライドを指して)こちらはJR東日本様の事例ですね。最近になって本番稼働していただいています。いわゆるお問い合わせセンターでなのですが、こちらの場合、質問内容が非常に多岐に渡ります。だいたい1日8,000件ですね。月間だと16万件。非常に多いですね。しかも、Suicaがあったり、切符があったり、時刻だったりと、その種類も凄まじいんですね。
のちほど画面をお見せしますけれども、Watsonで使われているマニュアルと、今までのいわゆるFAQですね。質問に関して、オペレーターに対して瞬時に問題解決方法を出します。コールセンターやお問い合わせセンターでは、もうすでに3〜4年は本番稼働しているんですけれども。もともとコールセンターでは「今出ている質問に対してこう答えなさい」というような、1問1答のかたちが比較的多かったんですね。
しかも、オペレーターって復唱していくだけなんです。今はまったくそういうことはやっていなくて、瞬時にWatsonが理解して回答を出します。今はこういう形式で本番稼働していて、これにDiscoveryを使っています。ちょっと具体的に説明いたしますね。(スライドが)見えづらいかもしれませんが、オペレーターの見る画面は3つあります。
1つはFAQです。いわゆる「よくある質問」ですね。(画面の)真ん中の下に、今話している内容がバーっと出てきます。今しゃべっているお客様とのやりとりですね。そのやりとりを見て、瞬時に今のやりとりに関係するFAQが右上に出ます。それから(2つ目が)応対マニュアル。(3つ目の)タリフというのはキャンペーンものですね。キャンペーンってしょっちゅう変わるんですね。その週だけ、その月だけ、もしくはゴールデンウィークだけとか。
確度の高いもので「この答えになるんじゃないか」というのが、ほとんど瞬時にバーっと出てきます。今までのコールセンターにこういったものはなかったんですけれども、Discoveryを使った学習が、ほとんど自動〜半自動で行われています。半自動で今やっている内容を学んでいって、Watsonが瞬時にバーっと関係がある答えを見つけます。本当は現場の動画をお見せしたいんですけれども。こんなかたちで、コールセンター自体が変わってきているということです。
Discoveryを使っていると、例えば「いまお客様としゃべっている内容は、どうも東京フリーきっぷだな」といったことをWatsonが判断します。そうすると「東京フリーきっぷのことを聞くお客様は、だいたい次に都内のバスに関して聞く」という、いわゆる先読みをします。
もしかしたら今までも、ベテランの方だったらわかることなのかもしれませんけど。なんですけど、WatsonはそういったDiscoveryをして、次に来る質問を想定して答えを出してあげることができる。こうやってお客様への対応力を上げるということですね。
もうコールセンターの方はご存じだとは思うんですけれども、AIを活用していただいて1番いいなと思うことは、対応を均質化できるということですね。それにログも残るんですけれども、お客様への対応の質が上がるということです。通話時間も削減できますし、(品質が)総体的に上がります。
Discoveryって言ってますけれども、どんどん学習するんですね。人間は忘れるんですけれども、AIは忘れないでどんどん学習していく。そういったところが品質の向上につながるんですね。私自身もDiscoveryがいくつかあって、コールセンターにおける対応は変わってきたと思っています。
もう1つ、もしかしたら聞いていらっしゃる人もいると思いますけれども、オーストラリアにWoodsideという天然資源の石油とかを掘削する会社がありまして。そこでもう3年ぐらいやっているプロジェクトが、いまも拡張しています。
天然資源の会社でどうやってAIを使うのかなと思っていたんですけども、そこはエンジニアの会社なんですね。海底油田とか天然資源(ガスとか石油)を扱っている会社なので、プロジェクトが非常に長期に渡ります。そこでプロジェクトに携わっている間はコミュニケーションして知識が共有されるんですけれども、プロジェクトが終わった後、その知識がどこにあるかわからなくなってしまうんです。
こちら(のスライドに)海底油田の絵がありますけれども、そんな(知識共有の問題)をなんとかしたいと思っていました。潮目だったりとか、風だったりとか、天候だったり、状況次第で例えばこの先の作業を止めなきゃいけないとか、いろんな判断がありますよね。
先ほどコールセンターの専門家じゃないですけれども、こちらの場合もやっぱり、この道何年のプロがそういったあらゆる技術書を見て判断するわけですね。この先どう進めるべきか。もしくは、そのクリティカルパスにおいてどのようなリスクをヘッジするか。このようなことをベテランだったら瞬時に判断するんです。
そんなことをずっと(AIに)入れていったんです。3万3,000文書ですかね。65万ページです。これはけっこう大変ですよね。(専門家は)なかなかそういった、そういったナレッジとかを出さないですよね。
それで75パーセント減少したとか言っていますけれども、なんといってもベテランの方に聞かなくてもいつでも分かるようになったと。(スライドを指しながら)これはiPadで出しているんですけど、別に問い合わせをする端末はなんでもいいんです。パソコンでもiPhoneでもiPadでも構わないんです。
今までに4回のプロジェクト拡張がありました。今は(外部に)発表してないですね。本当は今日、中身をこちらでお見せしたかったんですけれども、なにせお客様が(関係する内容ですので、お見せできません)。
今はWillowという新しいインターフェースに変えていらっしゃいます。先ほど言いましたように、ベテランの方がなかなか新しい情報を入れられないなと思っていたんですけれども、それを解消するために(Willowでは)、自然言語なんですけど(情報を手入力で)入れなくてもいいようになっています。しゃべっちゃうんですね。それでWillowってアバターがあるんです。アバターに向かってしゃべるんですね。
例えば「この油田の上にいるヘリコプターはどのぐらい搭載できるの?」みたいな質問をするんですね。そうするとそのWillowが答えるんです。そうやってインターフェースを工夫して、さらに4回目の拡張をされています。
私もプロジェクトの経験(profession)を持っているんですけれども、あらゆるプロジェクトってそういうことがないですかね。みなさんのプロジェクトを支援するんですけど、続かずに終わっちゃうというか。そういったことにすごく有効だなと思っています。とにかく、1つのプロジェクトがずっと終わらない、先に進む、進化する。これが言いたかったんです。
(スライドを指しながら)こちらも新しいもので、最初に説明した、1番右の付加価値をつけるというものです。これは動画をお持ちしました。マレーシアとか海外で、(AIが)サービスに組み込まれている例としてベンツがあります。ダイムラーさんのベンツに実際に組み込まれて出荷されています。
ちょっとその内容を見てもらいます。これはいわゆるマニュアルとか、今起こっている車の中の部品というか、いったいどういうものなのかという説明ですね。実際聞いてみると、車についてよく知っている方は「そんなのいらねえ」と言いますし、あまり車のことをよくご存じない方は「非常に便利だ」ということを言います。ちなみにまだ日本では搭載されていません。でも、時間の問題かなと思います。ちょっとそれを見てください。
(動画が流れる)
これで終わりです。英語なのは、いまマレーシアと南アフリカで先行発売しているからです。これはたまたま車の話でしたけど、こんな話はどこにでもありませんか? 今までは情報をマニュアルで探していましたが、いまはもう(マニュアルって)あんまり見ないですよね。
(スライドを指しながら)ちょっと見ていただきたいんですけど、いろんな光るインジケータがあります。またそのベンツを持っておられる方は、実際のものがあったら教えていただきたい。ちょっと参考になるかと思ってお話しました。
というわけでいま、(スライドの)1番上のスイートスポットの、1番上の「照会応答」から、近いところより順番に、「顧客接点」「プロセス」、そして最後に「付加価値」。こういうことについてのいくつかの事例を説明しました。全部(説明したいん)ですけれども、まずはイメージを持っていただくためということで、一部をご説明いたしました。
次の段階の話をしますけれども、日本でもいよいよ(AIの)普及期に入ってきましたので、もっといろんな方にWatsonを活用いただけるようなものができないかなということで、実は昨年の秋、ソフトバンクさんと一緒に新しいソリューションにあたるものを作ったんです。
それはなにかというと、先行的に日本で大企業のみなさんとやってきたAIの事例をパッケージ化しようというものです。「パッケージで売る」のは最初に我々が日本でやったんですけど、(製品名に)「パッケージ」ってつけるのは古いので、一応「AI in a Box」という名前をつけて、これまでやってきたAIの知見と、導入までの一連のソフトウェアのサービスのコンポーネントを1つにパッケージングしました。
これをパートナーさんにいっぱい使ってもらおうということで、実は日本で最初に(スライドを指しながら)こういったカタログを作りました。ハードルをもっと下げて、もっと安く使っていただきたいという思いでやっています。
これはちょっと数まで把握してないんですけど、すごい勢いですね。ソフトバンクさんの営業の力がすごかったので、ものすごい勢いで使っていただいています。実際に出ました。(リリースして)たった7ヶ月なんですが、たくさんのお客様に使っていただいています。
パッケージの「TRY! Watson」スタートダッシュパックは初めて使うお客様に。「フロントオフィス」パッケージは接客業務。「バックオフィス」パッケージは社内業務。そして導入支援の「コンサル」パッケージ。この4つのカテゴリーに分けて行なっています。ソフトバンクのエコパートナーさんはいま100社以上あるんですが、そのエコパートナーのみなさんに活用していただいています。
企業の大・中・小に関係なく使っていただけているかなと思います。このあと展示会をやっていると思いますので、興味のある方はぜひ使ってみていただきたいです。
(スライドを指しながら)1つだけ内容を紹介します。この議事録作成はすごいなと思います。いま問い合わせをいただいだいているんですけれども、株式会社オカムラさんがAIで議事録を作成しています。
この議事録というのはなにをやっているかというと、話している内容をWatsonが理解して、それで議事録を取っていくんですね。実は私も直属の(部署の)会議で使っているんですけれども、翻訳ができます。例えば英語の会議がありますよね。英語の(話し手の)かたが入っていて、我々にはどうしてもわからない。それが翻訳されて出てきます。
そういった翻訳にも使ってもらえますし、どういうことを言っているのかざっくり7割程度把握したいときには非常に便利ですね。ちなみに(翻訳の精度が)100パーセントというのは、さすがにないですね。なぜかというと、新しい言葉やいわゆる固有の言葉を使った話ってあるじゃないですか。それはさすがにWatsonでも、急には全部理解できないですね。
ではあるんですけれど、このエリアもこれからみなさんの仕事を助けてくれるエリアで、音声入力のエリアはさまざまな企業で使われるんじゃないかなと思います。コールセンターもそうですし、どういった業務でもこういった音声でできるのは助かりますよね。
あと、ログが残るということはコンプライアンスの面で重要なんですね。最初は想定してなかったんですが、そういった理由で必要とされる際に使っていただけているかなと思います。
実は現在も、WatsonはクラウドでいわゆるAPIを、Programming Interfaceで12本出しています。もともとは40本あったんですね。それを統合していまして、今は12本です。サービス入れると15本のラインナップになります。
将来の話もということで、照会応答、知識探索、画像分析と一様に並べました。どうでしょうか。
よくWatsonは「日本語が得意じゃない」と言われるんですけど、ぜんぜんそんなことないんです。立ち上げのときには相当叩かれたんですけど、ソフトバンクさんのおかげで今は10ヶ国語をサポートしていて、日本語の優先順位は2番目です。1番多いのはやっぱり英語です。コンテンツが英語なんで、これはしょうがないですね。
それは別に重要じゃないんですが、あんまり理解されていないと思います。(スライドを指しながら)実は我々が目指しているのはマルチモーダルなんですね。例えば音声と自然言語は限りなく近づいていきます。今はまだ別々ですけれども、音声と自然言語は近づきます。
これはどういうことかというと、ボットがありますよね? これまでコールセンターの話をしてきましたけれども、しゃべっているのがボットか人間かというのは、だんだんわからなくなります。わからなくなるというか、要するにボットが自動的に人間に切り替えます。「この話をし続けると、どうもガバナンス上よくないな」といったときには(話し手を人間に)戻します。そういった機能も近日中に出てきます。
なので、マルチモーダルと言いましたとおり、自然言語処理の話だけじゃなくて、トータルで音声も画像も(やります)。ちなみに画像ではもちろん言語は関係ありません。
ちなみに日本語って、文法上の話なところがあるじゃないですか。AI的には日本語の問題というよりも、文法上の違いなんですね。そのところも十分わかっているんですけれども、全体的にエリアをどう使うか、誰にどのようなデータを(提供するか)というのが1番大事かなと思うので、それに合わせてみなさんが最適なものを組み合わせていただく(ことになります)。そのためには、画像も音声も自然言語も合わせて、どれだけ進化し続けるかですね。そこが重要かなと思います。
つまり一言でいえばプラットフォームです。プラットフォームは大変ですよね。お金もかかるし、そもそもアジャイルなものなんですね。よく「お前のところはAPIを何回変えた?」とか言われるんですけど、我々は変えます。アジャイルってそういうことじゃないですか。1番高い要求をされる市場に出しているんで、変わります。
それと継続性がないというのは別の話ですが、基本的にアジャイルなので(変わります)。今まではウォーターフォールじゃないですか。ウォーターフォールだと、しっかりお客様の要件を聞くことで、なるべく変えないでやってきました。
実は我々もそういうDNAをちょっと持っているんですけど。みなさんアジャイルアジャイルと言っていながらも、「何回コロコロ変えるんだ?」って(質問してきますよね)。実はそれって本質的な質問じゃないなと思っています。プラットフォームってそもそもそういうものなので。市場とお客様の要求でどんどん変えていくものなんですね。それは私も「なるほどな」と実感したところです。
すみません、ちょっと時間がないので(進めます)。プラットフォームに関して絶対に言っておきたいのはクラウド化です。実は私、今年からクラウドを担当することになりました。今まではWatsonの責任者だったんですけど、今はクラウドもやっております。
ちょっと続けて説明させてください。クラウドプラットフォーム。いわゆるインフラなんですよね。世界中にグローバルなプラットフォームってあるわけなんですけれども、AIをやっていると本当にクラウドは大事だなと思います。
(ポイントは)3つありますけれども、いかに「早く」「安く」使っていただくか。1番(大事なの)はコストですね。まず少額で試してみるフォームがないと、アジャイル開発のスピード感がやっぱりとても大事です。
(スライドを指しながら)最終的にはこの「トランスフォーメーション」というやつですね。ブロックチェーンとか新しいテクノロジー、AIは、最初からクラウドネイティブでやっていかないといけない。クラウドネイティブで最初から設計することで新しいプロセスの設計が始まると思うんですね。なので、この3つはクラウドでやっていて重要だなと思っています。
もちろんみなさん全員が、必ずしも最初からクラウドネイティブとはいかないです。現実は変えたほうがいいものと変えなくていいものがあって、変えたほうがいいものはクラウド上でまずやってみてもいいんですけれども、現実的にはクラウドに変えなくていいもの、アプリでそのままでいいものっていっぱいありますね。
物理的なサーバーを並べるよりも、もっと仮想化して安く使いたいというお客様もいるし、そうしたほうが確実に運用費が下がりますよね。そういったときには、まず「ベアメタル」で、そのままクラウド上に持っていっていただく。そのようなアプローチはやっぱりお客様によって違うかなと思います。
VMware様と一緒にやらせていただいている「VMware on IBM Cloud」。これは本当に今、ものすごい勢いです。先ほど言いましたように、変えなくてもいいもの、「別にアプリケーションそのものでいい」というものは通常「非機能要件」と言われていて。サーバー管理とかバックアップとか可用性って、本来変えたくないですよね。機能要件・非機能要件を含めてそのまま使えるというのは、本当に「VMware on IBM Cloud」のいいところかなと思います。
ぜひそういったトライをやってみたらいいかなと思います。その上で、AIですね。そう思います。
クラウドの話をさせていただいたんですけど、「じゃあお前のところのクラウドはどうなんだよ? いろんなクラウドがあるけれど、正直言って後発なんじゃないの?」という話です。AIでのWatsonはみなさんに幅広く使っていただいています。
ここでちょっと発表させていただきたいんですが、実は来年、日本で大規模な投資をいたします。「マルチリージョン」と呼んでいるものですね。クラウドの関係者はご存じだと思うんですけれども、ダラス、ワシントン、ロンドン、フランクフルト、シドニー。(そこに)東京も入ります。東京地区に3つのリージョン(を構えます)。
リージョンというか、このHigh Availabilityゾーンという、この3つのゾーンが非常に高速なネットでつながります。LANの環境でWANが使えるイメージでしょうか。非常に速いです。プロジェクトに関しては若干遅れた認識があるので、それを大幅に改善するためにも、1番速いこの新しいデータセンターを3つ構えるといったことを始めます。
AIを使っていただくためにはクラウドも非常に大事でして、こういったインフラ(整備)をやりたいと思ってます。当時に、当然我々も投資して市場に出すコミットメントがいると思っていて、最後にこんな話をお持ちしました。クラウドですね。あらゆるデータを活用していただくために、クラウドにAIを入れていきます。いまIBMのほぼ全ての製品にWatsonを入れているんですね。
実は「Watson for Cyber Security」というかたちでセキュリティに関するサービスも提供しています。いろんなインシデントが起こるじゃないですか。ワームもすごいですね。そういうところもWatsonが解析しているんですね。こちらも実はビルドインですね。Watsonが自社製品で入っている。このようなクラウドにAIを入れていきます。
ちょうど時間になりました。AIの話の最後にちょっとクラウドの話をさせていただきましたけれども、お時間のあるかたはぜひ、このあとWatsonのDiscoveryとか、チャットを含むアシスタント、それからクラウドに関する具体的な展示をさせていただいていますのでお立ち寄りください。
あらためまして、すでにAIを使っていらっしゃるかた、Watsonを使っているかた、たいへん感謝申し上げます。すぐに次のステージに行きたいと思いますし、ぜひともみなさま、逆にまたいろんな知見を教えてください。どんどんプラットフォームを進化させていきます。
最終的には、今の専門家のみなさんの知見による意思決定が大事だと思っています。それに少しでも貢献できればと思っております。ご清聴、本当にありがとうございました。
(会場拍手)
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