遊びのような熱狂を世界中に

今田孝哉氏:Asobicaの今田と申します。よろしくお願いします。今日は「お金とコミュニティ」というテーマですので、僕らは「fever」というコミュニティ通貨の取引所を運営していまして、非常にドンピシャのテーマなのかなと思っています。なので、お金とコミュニティとどう考えているのかということをお話ししてきたいと思っています。

まず簡単に会社の説明なんですけど、株式会社Asobicaと申しまして現在「fever」というサービスを運営しています。

「遊びのような熱狂を、世界中に」というビジョンでやっていまして、今、AIやロボットが人の仕事を取っていくというふうに、いろいろなところで言われていると思うんですけれども、「じゃあ人間はどのようなことをしていけばいいか」と考えたときに、合理的な部分はロボットが取っていくので、人間は真逆の非合理的な部分をやるしかないのかなと思っています。

例えば「なんとなくやりたい」とか「好きだからやる」みたいな本当に非合理的な側面、いわゆる熱狂や情熱みたいなところの価値が相対的に上がってくるのではないかと考えています。

とはいえ今、趣味や好きなことを仕事にしている人がなかなか少ない中で、僕らがそのような熱狂や情熱を可視化できるプラットフォームを作っていって、相対的に熱狂の総量を増やしていきたいと考えてやっています。

その中の1つとして今、feverを運営しているというかたちです。

学生時代の原体験から起業の道へ

僕自身の個人的な経歴なのですけれども、ファインドスターグループという起業家を輩出する、(東京でいうところの)リクルートみたいな会社に新卒で入って、2年半ぐらい勤めました。

そのあとにAsobicaを立ち上げたんですけれども、ファインドスターグループ以外に、学生のときから個人でいろいろな団体を立ち上げていまして、その(活動の)1つとして、音楽フェスを数年間に渡って地元の福井でやりました。

隣の小学校が廃校になったり、小学校や中学校のクラスが10人ぐらいしかいなかったり、すごい田舎で育ったんですけれども、そういうところに都会の人を集めてこれるようなイベントができないかということで音楽フェスをやりまして、まさに地域コミュニティを作っていました。

(音楽フェスは)当時は福井で最大規模のイベントに成長しました。ただ4年目にちょっと失敗をしてしまって、50万ぐらい赤字を背負いました。学生でお金がなかったので借金をしたんですけど、その際に、応援してくれてる人はけっこういるのにもかかわらず、お金を集めるのって意外と難しいなと肌で感じたのがきっかけで、資金調達の仕組みに非常に興味を持ち出しました。

そのあとに、こちらもコミュニティなんですけれども、MOA大学という25歳以下の若手社会人を集める少人数のコミュニティを作りました。

ここに落合陽一さんやSHOWROOMの前田(裕二)さん、マネーフォワードの辻(庸介)さんなど、いろいろな業界のトップランナーをお呼びして、新しい学びの場を作っていました。

そこでクラウドファンディング等の仕組みをいろいろと活用させていただいて、「どのようにお金集めをしていけばいいのか?」ということを自分の中で考えていきました結果として、課題を継続的な資金調達(経済活動)が難しいなと感じた部分を解決できる方法はないかと考えたのがきっかけで、今のfeverを作っているというかたちです。

feverで作る独自の経済圏

feverはどのようなサービスかというと、コミュニティの通貨を発行して独自の経済圏を作っていけるサービスになっています。

ポイントは2つです。コインとチケット、要は商品を登録していくんですけれども、例えば、billage OSAKAさんのコインを発行して、そのコインでこの場所をレンタルするチケットを提供したり、「イベントプロモーションを手伝います」というチケットを提供したりして、そのチケットをbillageコインで買えるというかたちのシステムです。

イメージとしては、楽天ポイントで楽天の商品を買うというかたちに似ていて楽天が楽天経済圏を作っているように、コミュニティ単位でも経済圏をデザインすることができるというかたちです。

少し違うポイントとして、楽天ポイントはそもそも二次取引ができないと思うんですけれども、僕らのコインは仮想通貨のような形で二次取引ができます。あとは、コインをメンバーに付与できる仕組みがありまして、貢献度合いに応じてコインが付与されていくので、いわゆるインセンティブ設計ができるということが少し違うかなと思っています。

(2018年)1月26日に事前募集を開始し、それにもとづいて上場するコミュニティを決める投票所を開設したんですけれども、107のコミュニティからエントリーをいただき、合計約3万票をいただいて、Twitterのトレンド入りもさせていただきました。

反応としては、イケハヤさんや幻冬舎の箕輪さん、C Channelの森川さん、コルクの佐渡島さんなど影響力のある方々も話題にしていただいたおかげで、わりとユーザー数も増えまして、Twitterアカウントログインユーザーとメールアドレス登録全部含めて3万人を超えているというかたちです。

サービスの開始自体はまだなんですけれども、事前登録で比較的順調に来ているかなというところで、テレビでも話題にしていただきました。

持続可能なコミュニティの定義

どのようなコミュニティが上場していくのか、というところを説明したいと思います。

(スライドを指して)これは「黄桜すいプロジェクト」という、秋田県の小さな町の町おこしをしている団体です。

例えば、黄桜すいのグッズがいくつかあるんですけれども、そのようなものをfever上で販売し、それが黄桜すいのコインで購入できるというかたちです。

そのほかにも、「日本ドローンレース協会」というオリンピック種目の正式種目化を目指している、かなり本格的な団体がああります。

または名古屋のビル1棟をプロデュースしている「TOLAND」というコミュニティがありカフェをメインに運営しているんですけれども、そのようなコミュニティにも使っていただいいます。

ここからは「どのような世界を実現していきたいのか?」という話を少しだけできればなと思っているんですけど、ひと言でいうと、持続可能なコミュニティを作るための基盤をfeverを通して作りたいと思っています。

持続可能とはそもそもなんなのかという話なんですけど、僕らとしては「経済圏ができあがってる状態」と定義しています。いわゆる経済の循環ができている状態というのが「持続可能」なのではないかなと思っています。

僕がいくつかコミュニティを作ったり、所属している中で思ったことが、コミュニケーションのみのコミュニティがけっこう多いんですけど、わりと飽きられてしまって、持続的に続かないことが課題かなと思ったときに、コミュニケーションはもちろん必要なんですけど、経済の循環と両立させることが持続性を上げていくためには非常に必要だという答えが出ました。

コミュニケーションの領域は、FacebookやSlackなど、いろいろあると思うので、そこを活用させていただきながら、僕らfeverとしては、経済活動ができるようなプラットフォームを作っていくことをやりたいなと思っています。

それぞれのコミュニティがあって、そのコミュニティの中でもしっかりと経済が回っていて、お金やコンテンツが流通していて、かつ貿易もできるというようなイメージです。

日本とアメリカのようなイメージなんですけど、日本円で経済が回っていて、かつアメリカもアメリカでドルで経済が回っていて、2つのコミュニティというか、国に関しては貿易がされていてお互い流通をしていると。このようなイメージをしていまして、このようなコミュニティ、小さな経済圏を無数に作りたいなと思っています。

feverが目指す双方向のコミュニケーション

ではこのような世界観はfeverでしかできないのか。「既存のサービスではできないの?」という話を少しだけできればと思います。

(コミュニティは)4つに分けることができるのかなと思っています。

(スライドを指して)向かって左側はコミュニケーション活性化させるサービス、右側は経済を活性化させるサービスです。

経済のところでいうと、オンラインサロンがあるかなと思っています。左側のコミュニケーションでいうと、Facebookやメルマガなどがその位置に来るのかなと思っています。

縦軸で「双方的」か「一方的か」と記載したんですけど、下側はメルマガなど、わりと一方的なサービスでコミュニケーションを加速すると。

経済のところでいうと、オンラインサロンはどちらかというと一方的なお金の流れなのかなと思っていて、オーナーがメンバーからお金をもらうと。

僕らはどちらかというと、双方向的にお金の流れを回したいなと思っていて、メンバー同士でお金を交換するとか、お金を送り合うということを作っていくという意味では、このようなサービスは意外とまだまだなくて、そのようなところをfeverとしてやっていきたいと思っています。 イメージはこのようなかたちで、1:Nのお金の流れではなくて、N:Nの世界観を作っていきたいなと思っています。

「これからのお金とコミュニティ」を考える

「これからのお金とコミュニティ」というところを少し考えていきたいと思います。結論をいうと、僕は国を超えてコミュニティの力が相対的に大きくなってくると思っています。

例えば今、日本円やドル、ユーロなど世界の主要な通貨がいくつかあると思うんですけれども、これが世界中に無数にできてくる形で、その通貨を主体とした経済圏が無数にできてくるようなイメージをしています。

なので、日本円は持っていないけれども、ある一種のコミュニティ通貨は持っていて、そこではすごくお金持ちで裕福に暮らせているとか、いわゆる国や会社のルールに従わずに自分達の価値観やルールでいきていけるような多様な社会がより一層進んでいくのではと思ってます。 その背景として、少し前に経済圏づくりの民主化が始まるのではないか、というブログを書かせていただいたときに、ある方がその図式化をしてくれていて、それを持ってきました。

これまでは、インターネットができてから、あらゆるものが民主化されてきたと思います。

例えば、服を買う側だった者がメルカリを通じて服を売る側に回れたり、情報を一方的に新聞やテレビで取得していた者が、TwitterやFacebook、YouTubeを通じて発信側に回れたり。ココナラやクラウドワークス等のソーシングサービスの登場も全部そうですが、あらゆるものが「誰でもできる化」されてきました。

本当になんでもできるようになってきた先に何があったのが、ブロックチェーンという新しい技術なのかなと思っています。ブロックチェーンが信用を不要にしました。

これまでは信用がないと作れなかった通貨やルール。例えば、国の圧倒的な信用がないと通貨なんてものは作れなかったと思うんですね。僕が通貨を作っても日本中の信用なんで当たり前ですがないので浸透しなかった。圧倒的な第三者の信用がないと作れなかったものが、もうブロックチェーン上の乗せればそもそも信用がいらないと。

なのでこれからは通貨やルールすら誰でも作れるようになっていくと考えたときに、経済圏づくり自体が次の民主化されるものだと思ってます。

これフリーランスが増加した背景と少し似ていると思うんですけど、人は結局自由を求めているということだと思うんです。会社のルールに従うのではなくて、もう自分で自由に意思決定をしながらやっていきたいと。なので、結局人は自由を求めて結果的にフリーランスに流れていく。

これと同じ現象が経済圏づくりで起こっていくのかなと思っています。ブロックチェーンによって信用が不要になって、誰でも通貨やルールを作れるようになった結果、国や企業のルールに従うのではなくて、自分たちでルールを作って自分たちの国づくり(経済圏づくり)をしていく流れにいくのではないかなと考えています。

feverの今後の展望

まとめると、無数に広がる小さな経済圏が、フリーランスを含めて、個人を支えるインフラになっていくだろうなと思っています。

もう少し具体的なところは、またこれからのセッションでお話しできればなと思うのですが、最後に僕らfeverの今後の展開として考えていることを説明して終わりたいと思っています。

今はいろいろな分野のコミュニティに上場していただいているんですけどこれを今後はさまざまな分野単体で切り出していきたいと考えています。

地域創生やスポーツ、アーティスト、NPOなどいくつか切り出したい分野があるんですけれども、fever自体も分散化させえていきたいと思ってます。すでにいくつかの企業からお声がけいただいているのですが、その過程の中で、いろいろな会社と協業していくということも見据えています。

ただ、現状としてはトークンエコノミーのかたちを模索しながら、まず今はfeverというサービスをしっかりと定着をさせていくことに注力していきます。その後基盤が固まった状態で、これらの展開をしていくということを考えています。

fever自体は来週いよいよオープンとなりますので、もし興味ある方は触っていただければなと思っています。弊社からは以上となります。ありがとうございました。

(会場拍手)