2024.11.25
「能動的サイバー防御」時代の幕開け 重要インフラ企業が知るべき法的課題と脅威インテリジェンス活用戦略
The Last Major Smallpox Outbreak in America(全1記事)
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オリビア・ゴードン氏:オレゴン・トレイル(注:西部開拓時代をモチーフにしたゲーム)をプレイすれば、人類史が致死性の病気で溢れかえっていたことがわかります。
衛生環境が改善され、病気が伝染する仕組みが解明されたおかげで、多くの疫病は過去のものとなりました。そのなかでも最も有名なものは天然痘でしょう。天然痘は世界で最初にワクチンが作られ、最初に根絶された病気です。
アメリカで天然痘の大規模感染が最後に起こったのは1947年で、人でごったがえしていたニューヨークの町中でウイルスが拡散しました。
ですがすぐに鎮圧され、たった12人が感染するだけで済んだのです。ニューヨークに何百万人もいたことを考えれば、驚くべき少なさです。
天然痘は天然痘ウイルスによって発病し、感染した人の全身の肌に小さな水ぶくれのような症状ができます。
歴史研究者たちは、少なくとも3000年前にアフリカの南東部から始まって、貿易、戦争、植民地によって全世界に広まったと考えています。どの国であっても、熱や発疹が出たあと死に至ります。
せきやくしゃみによって、ウイルスを含んだ体液が容易に感染する上、感染した場合の致死率は30パーセント近くにもなります。一命は取りとめても、視力の喪失、不妊、見るに堪えない膿の傷跡といった後遺症が残ってしまいます。
20世紀だけでも、天然痘によって全世界で3億人もの人が亡くなったと考えられています。つまり、誰も天然痘から逃れられないのです。
一方で、一度天然痘で一命を取りとめた人は、その後に規模感染が起こっても感染しないことに医師たちは早くから気づいていました。
2000年も前に、天然痘を生き延びた人のかさぶたを使って、意図的に別の人に感染させて免疫を作る「人痘接種法」が考案されました。基本的にはかさぶたを腕にこすりつけたり、砕いたものを吸引させたりしていました。
大抵は実際に効果がみられ、自然に感染するよりは安全性が高いものでした。ですが、辛い症状は表れますし、1パーセントから2パーセントの人は亡くなってしまいました。
突破口を開いたのは、1796年に天然痘のワクチンを開発したイギリスの医学者、エドワード・ジェンナーでしょう。
これはまた、歴史上初めて成功したワクチンでもあります。彼のやり方では、天然痘の代わりに牛痘に感染した牛を使いました。
牛痘は天然痘と同じ種類のウイルスですが、症状は天然痘と比べてずっと軽い病気です。
彼は牛痘を接種された人は天然痘への免疫を持つことを発見し、ワクチンと名付けました。ワクチン接種(vaccination)は、ラテン語で牛を意味する「vacca」から取られた名前です。
こうしてワクチンの時代が始まりました。1947年にはワクチンによって、ヨーロッパやアメリカで天然痘はまず見られない病気になりましたが、依然として広がっている地域もありました。
ワクチン接種が定着していない地域に旅行者が出かけ、おみやげのTシャツなどによって帰国して地元で感染させる場合も考えられます。ニューヨークで起こったのはこのケースでした。
メキシコへ旅行した夫婦が3月に帰国してしばらくすると、夫が熱と発疹を訴えすぐに入院します。不幸なことに医師は診断を間違えてしまい、亡くなった彼を検死するまで誰も天然痘だとは見抜けませんでした。当時アメリカでは天然痘の感染が同時に起こることはありませんでしたが、今回は別の人にも症状が出ました。
そこで市の衛生局は、住民全員へのワクチン接種を強く勧めます。ですが、当時ニューヨークには800万人もの住民がいたため、どう考えても簡単なプロジェクトではありません。
民間の研究機関、軍の備蓄、市の取り組みによって、感染確認から10日で120万人になんとかワクチン接種が行われました。人々はブロックごとに列をなしてワクチン接種を受けたのです。最終的には250万人にワクチン接種を行われ、大規模な公衆衛生の偉業の1つに数えられました。
ワクチン接種が行われている間にワクチン不足が起こったため、社会不安に繋がって詐欺まがいのことが横行する下地にもなりました。看護師の服装をしたある女性は、ただの水をワクチンと称して500人に接種して、婚約者からの印象を良くしようとしたそうです。デートのためによくそこまでできるなって思いますけどね。
幸いなことに、ワクチン不足や迷惑な活動は、大規模感染が沈静化してから起こりました。結局最終的に感染者は12人で、死者はたった2人でした。
この感染のケースでは、リングワクチン接種が効果を発揮しました。
これは患者と接触した人を追跡してワクチン接種を行う手法です。天然痘のように、体内で十分なウイルスが増殖した後に接触すると感染するタイプのウイルスにはとても効果的です。
ニューヨークにおける感染のあとには、1949年にテキサスで1人が死亡する小さな感染が起こっただけで、アメリカからは1952年に撲滅が確認されました。1960年にはWHO(世界保健機関)が撲滅運動を開始します。
一人ひとりすべての人にワクチン接種を行うと、費用も時間もかかってしまいます。そこでニューヨークで起こった感染を食い止めた、リングワクチン接種が採用されました。効率的に行われた結果、天然痘が根絶されるのは時間の問題になりました。
天然痘の自然発生が最後に起こったのは1977年のソマリアで、天然痘の患者2人と旅行した男性が感染しました。幸いなことに彼は完治し、その後はポリオ根絶に人生を捧げました。天然痘による最後の死者は1978年に研究所で発生した事故によるもので、それを最後に確認されていません。
安全のために、研究用のウイルスは厳重に管理された2ヶ所、アメリカとロシアで保管されています。多くの国は、将来に起こるかもしれない大規模感染に備えてワクチンを備蓄しています。ですが、この数十年の間起こっていません。
2018年には、天然痘撲滅40周年記念が祝われます。ニューヨークで行われた大規模なワクチン接種キャンペーンのような努力によって、世界中で最も致死率の高い伝染病が過去のものとなりました。本当に感謝したいですね。
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