未来のことを考えてもしょうがない

小野裕史氏:「チャレンジ」って言うと、これが思い浮かぶんですね。「うまくいかなかったらどうしよう」だとか、「失敗したら恥ずかしいな、カッコ悪いんじゃないかな」とかいろいろと思うんですが、これ全部未来のことを言ってますね。

未来っておもしろい言葉で、「未だ来ていない」と書いて「未来」って読むんです。まだ来ていないことを考えてもしょうがないんですけど、人間考えちゃうんですね。頭を使っちゃうんです。

でも思い返すと、みなさんにもまだ小さくて若かりし頃があったと思うんです。赤ちゃんだったり子どもだったりする頃。昔どんな風になりたいかと考えると、実に自由になりたいものを発想していたと思うんですね。

今、小学校の男子がいちばん憧れてなりたいものは、サッカー選手だそうです。この前の日本戦の後、たぶんこの数は減ったと思うんですけれども。いずれにしても、みんな「本田のようになりたい」って言うんですね。

我々は大人になって経験を積むと常識が芽生えて、「お前な、サッカー選手なんて簡単になれるわけないだろう」「本田なんか簡単になれるわけないだろう」と思っちゃう、言っちゃうんですね。でも子どもの頃はそんな常識なんかないので、自分の心を優先して自分のなりたいものが描けるんですね。

頭を使った瞬間負け、ノータイムで決断すべき

でも、常識ができて経験を積んだとしたって、なりたいものを自由に目指せない理由はないんですね。子どものようにやりたいアクションに実際にチャレンジする権利はあるんですね。でも頭が止めちゃう。

こんな時に便利なのが、この最初から出てきている「ノータイムポチリ」なんですね。何故ならば、ノータイム。頭を使う余地を与えず、時間をかけずにポチッと次の目標設定を決めてしまうんです。この目標設定をするのが大事なんですね。

もう頭を使っちゃダメなんですよ。「ホントかぁ?」とか「そんなノータイムとかやっちゃまずいだろう」とか、頭を使った瞬間、負けなんですね。人と話をすると、「小野さんの仕事って会社に数億円とか投資するんですよね、それノータイムポチリで投資するんですか? 大丈夫なんですか?」なんて聞くヤツがいるんですが、これ、大丈夫なんですね、何故か。

最近学生からよく受ける相談で「僕アプリ作ってみたいんですけど、アイデアはあるんですけど、プログラミングできないんです。どうしたらいいですかね?」って。そんなのはもうエンジニアに声かけまくればいいんですよね。

知り合いじゃなくても、どんどん友達の友達を紹介してもらうとか、そういう小さなアクションも1つのノータイムポチリですね。あとこういうのもありますね、「僕シリコンバレーに行ってみたいんですよね、でもちょっとどうしたらいいのか……」とりあえずチケット取っちゃえばいいじゃないですか。そんなことなら誰でもできるんです。

動き出せば「どうやるか」にマインドが変わる

小さなノータイムポチリ的なアクションなんですが、こういうことの1つ1つではまだリスクは取ってないんですね。ポチっただけで、次のアクションで実際にアメリカに行ってみて打ちひしがれるかもしれないし、アプリ作ってみて全然ダメかも知れないし、成功するかもしれない。

誰かに声をかけてエンジニアを探すだとか、エアフライトを取るだけだったら、ポチる時点では何のリスクもないんですね。でも、その1つの小さなアクションがなければ未来にはつながらないですね。

なので、最初のアクションはなるべく時間をかけずにまず目標設定をしてしまう、ポチリと決めてしまうというのがとても大事かなぁという風に思っています。僕もこんな経歴を辿ってきているんですけれども、iモードのCMを見て買いに行くなんて、もう小さな小さなきっかけじゃないですか。

もしくはCAモバイルの立ち上げも、たまたまその人に飲み会に誘ってもらって「CAモバイルっていう会社があるんだけど来てみない?」って言われて「行きます」って言わなかったら。その瞬間はポチリしかしていないですね。ポチった後に頑張るのは自分次第なんですけども、そんな小さなきっかけから今につながっているんですね。

それで重要なことは、ポチリをやる前は「俺まだそんなことできるレベルじゃない」とか「アメリカなんか行っても英語しゃべれないし」とか「アプリなんか出してもどうせ失敗するかもしれないし」とか、「やれるかやれないか」なんですけども、ポチった瞬間、やる前提に変わるんですね。

これ、ぜひみなさんやってみてください。小さなポチリだけで、「どうやるか」にマインドセットがガラリと変わるんです。

高橋尚子さんとの対談が実現

全然話を変えますけれど、この間こんなありえない体験をさせてもらいまして……。なんと、高橋尚子さん、金メダリストのですね。日本で初めて女子スポーツ界で国民栄誉賞になった高橋尚子さんと対談をやらせてもらったんです。

Qちゃんは日本人で初めて女子フルマラソン世界一になったじゃないですか。僕も一応、日本人で初めて砂漠マラソン世界一になったので、ちょっと対談でもできませんかね? ってノリで頼んだら、なんと実現してしまいまして(笑)。

人間言ってみるもんだなぁと思って。それでおもしろかったのが、Qちゃんが僕の本を読んでくれて、「小野さん、私も実はノータイムポチリの人生なんですよ」と。

それを聞いて感動したんですが、Qちゃんは金メダリストになる3年前までフルマラソンをやったことがなかったそうですね。あの小出監督のもとに育ったわけですけれども、小出監督のところに行くときも「小出監督のところに行ってみたら?」って先輩に言われた言葉に対して、「いや、私なんか無理無理」って電話を切ったところからスタートしたそうです。

なんだけれども、なんとなくチャンスなんじゃないかと思って、大学生で普通に就職活動してたそうなんですけれども、8社あった内定を全部断って、退路を断ったんですね。そして、とりあえず小出監督のところに会いに行くっていう小さなきっかけから生まれているんですね。

まさに、ノータイムポチリ的な。そこから3年間で金メダリストにまでのし上がってしまうという。彼女も最初にそういう小さなきっかけをポチリしてなかったら、こんな風になってなかったかもしれないですね。

ジョブズもしていたノータイムポチリ

話はちょっと大きく飛びますけれども、みなさん大好きなApple。実は、最初はこの方もポチってるんですね。ご存知の方がいらっしゃるかもしれませんけれど、彼は13歳ぐらいの時にヒューレットパッカードっていう会社に憧れて、電話帳をめくってウィリアム・ヒューレットの自宅の番号を見つけて、いきなり突撃電話しているんですね。

完全にノータイムポチリ的なノリだと思うんですけれども、それが彼のヒューレットパッカードと同じような会社を作りたいという最初のステップだったかもしれないですね。

本当に「チャレンジ」って言うと重苦しいんですけれども、きっかけは本当に今日ここに来たっていうのもそうですし、このあと色んな素敵な方の話を聞くっていう機会もそうかもしれませんし、横のつながり、色んなおもしろい人と出会うっていうのもあるかもしれませんし、ゴロゴロあるんですね。

その中で、まず興味を持ったものにどんなに小さな一歩でもいいので、具体的なアクション、目標設定をしてアクションするっていう、その一歩がとても大事です。