硫酸よりも強い「超酸」

マイケル・アランダ氏:酸について聞いたことがありますか? とても酸っぱくて、腐食作用があり、決して紙で切ってしまった時には触りたくないですね。

しかし、化学研究所の中では、化学者は「超酸」と呼ばれるものを扱っています。名前そのままの物質です。とても腐食性が強くとても危険なものですが、質の良いプラスチックを作ったり、世界中の都市のスモッグと戦う鍵となります。

酸はマイナス電気を帯びた電子を得やすかったり、プラス電気を帯びた水素イオンを失いやすく、マイナス電気を帯びやすい分子です。そして強い酸は弱い酸よりも、マイナス電気を帯びやすいのです。

酸が水と混合する時、pHの値は酸の強さを測るのにもっとも一般的な方法です。

これは活発な水素イオンの濃度を基にしています。いつでも、pHが1下がる時には、水素イオンは10倍ほど高くなり、酸は10倍ほど反応しやすくなります。例えば、レモンジュースのpHは2ほどです。

これはジュースの中の100個の分子に対して1個の水素イオンが結合するということです。胃酸のpHは1ほどで、10個の分子に対して1個の水素イオンが結合します。

溶液の中に1つの分子に対して1個の水素イオンがある場合、pHの値は0まで下がります。それ以下では、水と混ざらない酸を測るために化学者たちはハメット酸度係数と呼ばれるものを使います。これは、本当に強い酸がどのくらいのpHの強さがあるのかを示すものです。

ハメット酸度係数を使うと、多くの産業過程で使われている純粋な硫酸はpH-12ほどの働きがあると言えます。純粋な硫酸ほど強力なものを自然界の外で見ることはないでしょう。なぜなら水を含め、触れるものすべてと激しく反応するほど強いからです。

しかし、化学研究所では、硫酸は単なる始まりにすぎません。化学者は硫酸よりも強い酸はすべて超酸と呼びます。超酸は1927年にハーバード大学の科学者によって初めて言及されましたが、超酸の研究は1960年代に遡ります。ジョージ・オラーという化学者の功績によるものです。

オラーは1994年にカルボカチオンについての研究でノーベル化学賞を受賞しました。これはプラス電気を帯びた炭素原子を持つ分子の1つです。カルボカチオンはある種類のプラスチックやクオリティの高いガソリンを生産する時に重要な役割を果たします。オラーはカルボカチオンを作る最高の方法は、超酸の次に多くの炭素を含む有機分子を入れることだと発見しました。彼の発見はプラスチック製造の研究を容易にしたのです。

世界最強の酸は?

ほかの研究者たちは一酸化窒素とうまく結びつく超酸を発見しました。一酸化窒素とは、車の排気ガスとして排出されてスモッグになり、酸性雨を引き起こす、窒素と酸素から成るガスです。

彼らはまず車の排気ガスを超酸に通すことで、一酸化窒素が大気に到達する前に止めることができるだろうと思いました。超酸の多くは超反応物質フッ素を含む酸と現存の強い酸を混合することで作られるため、かなり強くなります。

フッ素は水素との結びつきを終わらせますが、ほかの物質を選んで水素を放出するだけです。ほかの分子が近くをさまよっているとすぐに、フッ素はすべての水素を放出し、代わりにそれがなんであっても新しい分子と結びつきます。

もっとも知られている超酸の1つは「マジック酸」と呼ばれています。なにか違法なクスリのような名前ですが、マジック酸は質の低いガソリンをカルボカチオンに分解するために使われています。

そうすることで、より複雑な結合を形成することができ、レースカーに使われるような質の高いガソリンにすることができるのです。マジック酸は3つのとても強い酸が集合したもので、pH-23ほどの作用があります。

これは純粋な硫酸の10万倍も強い酸です。しかし、それでももっとも強い超酸ではありません。もっとも強いのはフルオロ酸で、これはマジック酸を作るのに使われた2種類の酸を混ぜたものです。pHは-28にもなります。

フルオロ酸はマジック酸の1万倍強く、純粋な硫酸の1京倍強く、そしてみなさんに深刻な火傷を負わせることができるほどの強さを持つ濃塩酸よりも、数字では表せないほど強いのです。

フルオロ酸は人の肌に火傷を与えるだけではありません。肌も骨も侵食し、触れるものはすべて溶かします。フルオロ酸を入れようとする容器も、薄めようとして使う液体も溶かしてしまうのです。こういった物資を保存する方法はテフロンを使う以外にありません。テフロンは超強力なフッ化炭素結合物資によって作られているので、フルオロ酸にも負けません。

そんなすばらしく強い酸の特別な使用方法を見つけられず、化学者たちはずっと探しているのです。テフロン加工のボトルを手に入れるまで、超酸からは離れているのがいいでしょう。もしテフロンのボトルがあったとしても、超酸からは距離を置きましょう。