人はなぜ“キレる”のか?
怒りのコントロールと言語能力の関係性

『はじめての「アンガーマネジメント」実践ブック』出版記念セミナー #3/5

怒りをマネジメントするための心理教育としてアメリカで誕生し、近年日本でも注目を集めている「アンガーマネジメント」。その第一人者である、アンガーマネジメント協会代表理事・安藤俊介氏が、著書『はじめての「アンガーマネジメント」実践ブック』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)の刊行を記念しトークセミナーを行いました。自分や他人の怒りをコントロールするための考え方や自分の怒りを知るための方法について、わかりやすく解説しました。

自分の怒りの感情を「測る」

安藤俊介氏:さて、最近イラッとしたことあります? お互いに言ってみてください。

(参加者がお互い話し合う)

じゃあ行きましょうか。後でそのイラっとした部分を使うので、覚えておいてください。これから、みなさんがイラっとしたら、やってほしいことがあるんですよ。それはなにかというと、イラっとしたらその場で怒りの温度をつけてほしいです。

なんのために温度をつけるかというと、怒りの感情ってみなさんコントロールしにくいでしょ? コントロールしにくい理由の1つは、今まで怒りという感情について測ったことがないからなんですよ。

例えば気温はわかりますよね? 気温は最高気温とか最低気温とか、昨日に比べて高いとか低いとかわかるので、比較ができるんですね。

ところが、怒りという感情は比較ができないんです。「今怒っていること」と「この前怒っていたこと」の比較ができないので、毎回新鮮に怒れてしまうんですよ。なので、これからはイラっとしたら10点満点で構わないので、怒りの温度をつけてほしいんです。

さっきイラっとしたことをお互いに言ってもらいましたけど、0点は「穏やか」、10点は「人生で最高の怒り」とすると、何点くらいになります?

10点をどれくらいの強さに設定するかが1つのカギですよね。「10点ってどれくらい強いんだろうな」「人生で一番強いというとどれくらいなのか」ということですよ。

例えば動物で言ったら、人生で一番強いって言ったら、それこそ目の前の敵を食い殺すくらいだと思うんですね。もしみなさんが普段、7点とか8点とか9点って感じてしまうと、「あと一歩いくとやっちゃう」とかいうことになります。おそらくみなさんは、そこまでのいかりは感じてないはずなんですよ。

これからイラっとしたら、ずーっと温度を測り続けてみてください。「3点かな」「2点かな」とか。最初のうちは多分でこぼこすると思います。「これ4点にしちゃうとこの間の1点はおかしいな」とか、「これ2点ってことはこの間の5点はおかしいな」とか。でこぼこするんですが、つけ続けていくうちに綺麗な階段が作れます。そうすると、どう対処していいかわかるんですよ。

なので、これからイラっとしたら、点数をふって反射をしない。そんなふうに考えて、ちょっと待ってみてください。「反射をしない」というのがすごく大事になります。

いいですね。これからイラっとしたら、反射をしないでください。どれくらいしないでいいかというと、意味はわからなくてけっこうなので「6秒」と覚えておいてください。とにかく6秒待ってみてください。そうしたら、今よりはうまく怒りの感情と付き合えるようになります。

怒りとうまく付き合うためには「言葉を増やす」

そうしたら、「怒りのボキャブラリー」というゲームをやってみましょう。みなさん怒りに関する表現ってどれくらい言えます? 「頭にくる」「腹が立つ」「イライラする」「むかつく」「はらわたが煮えくり返る」とか、どれくらい言えますか?

よく質問にあるのが「MM」は「まじむかつく」ですね。で、「MK5」が「マジで切れる5秒前」です。ここに書いてある単語って、ごくごく一部なんですよ。怒りの感情って、ものすごく幅が広いものなんですね。だから、それに貼るラベルだと思ってください。

みなさんが怒りの感情を上手にコントロールしたかったら、いくつか伸ばしてほしい能力があるんです。そのうちの1つが言語能力なんですね。言葉の能力の高い人は、怒りの感情のコントロールが得意なんです。逆に言語能力の低い人は、怒りの感情のコントロールが苦手なんですね。

言語能力の低い人ってどうやって怒るかというと、「怒ってるって言ってるから怒ってるだろ!」となるんです。単語として、表現として、強弱がつけられないのでボリュームで強弱つけちゃうんですよ。だから、怒ったときに大声を出す人っていうのは、言葉での強弱ができないんです。だからボリュームでつけちゃうんですね。あとは机叩いちゃうとか、出ていっちゃう。それは「言葉で表現できない」ってことなんです。

一般的にいうと、子供の頃に怒りの感情のコントロールが苦手というのは、言語能力がまだ低いからなんです。

「今時の子供たちはキレやすい」っていうじゃないですか。それはなにかっていうと、言語能力が低いんですよ。今の子たちっていうのは、怒るに関していうと、極端な話「うざい」と「やばい」と「キレる」の3つしかないんです。

軽いものを「うざっ」って言うんですね。それを超えた瞬間に「やばい」に入って。で、「やばい」がずーっと先までいくんですよ。なに見ても「やばい」って言うし、なにを食べても「やばい」っていうし、なにを感じても「やばい」って言うんですよ。

それを超えた瞬間に、ほかの表現がないので「キレる」というラベルを貼ってしまうんですね。そうすると、それに引きずられて「キレる」という行動をしてしまうんですよ。本当は「キレる」というラベルを貼る前に、もっともっと表現があるんですよ。でも言葉を知らないんです。だから安易にそういった行動をしてしまうんですね。

言葉にはちゃんと意味があって、その辺のおばあちゃんが「この牛乳やばい」って言ったら本当に「やばい」ですからね。ちゃんと意味はあるんです。なので言語能力を高めるというのはすごく重要で、どうやったら言葉の能力を高めることができるかなんですよ。

それは、1つは文化に触れることなんです。「本を読む」とか、「映画を観る」とか、「音楽を聴く」とか、文化に触れることによって自分たちの言葉の引き出しは増えるんです。

もう1つは、自分と違うコミュニティの人たちと交わることです。例えば会社で「業界用語」ってありますよね。その業界にいる人たちは、全員同じ言葉を使うんです。だから、あえて違う業界の人たちと交わることが必要なんですね。

今、私たちは言葉はなかなか増えないんです。メールを打つときでも、予測変換で全部言葉出てきますよね。LINEを使ってる人はわかりますね。スタンプで会話できますよね。言葉がだんだんいらなくなっちゃうんですよ。

なので、「努力をして言葉を増やす」ということをやっていかない限りは、今では言葉は増えないです。

なので、これからみなさんは怒りの感情と上手に付き合いたいのだったら、「言葉を増やす」とういう努力、「言語能力を高くする」という努力というのをぜひしてください。もしみなさんにお子さんがいらっしゃるのであれば、ぜひ言葉を増やす努力を教えてあげてください。子供のうちから言葉を増やしてあげる。言葉って結局は理性なので、要するに前頭葉を発達させるんですね。言葉を増やす努力を教えてあげてください。

怒るのは「~すべき」が裏切られたとき

さっき、イラっとしたことをお互いに言ってもらいましたが、例えばこういうラベルを貼るとすれば、どんな表現が適切ですか? 

ここで1つ気づいて欲しいことがあるんですね。さっき点数を振ってますよね。「さっき振った点数と、今貼ってるラベルは本当に合っているか」なんですよ。それまで気にして一緒にやってみてください。

これからイラっとしたら点数を振ってください。2点とか3点とか。それで余力があったら、ラベルを考えて見てください。それをすることで、みなさんの感情のコントロールがしやすくなります。

さて、みなさんは結局どれに怒ってます? これもラベルだと思ってください。さっき怒ったことを言いましたよね。それって「誰か」に怒ってます? 「出来事」に怒ってます? 「なにか」に怒ってます? どれだと思います?

ちょっと整理しますね。「誰か」っていうのは山田君に怒っているなら山田君です。腹が立つんだったら「誰か」ですよね。「出来事」っていうのは山田君が遅刻をしてきたという出来事なら「出来事」ですよね。「なにか」っていうのは、例えば山田君が繰り返し遅刻をしてきたという歴史であるとか、「そもそも山田君が時間を守る気がないんじゃないか」という有り様みたいなものです。さあ、どれでしょう?

意外と難しいですよね? 「誰か」と言われれば誰かのような気もするし、「出来事」と言われれば出来事のような気もするし、「なにか」と言われればなにかのような気もするし。誰かがそれをやってるからのような気もするし、繰り返しそれがあるからのような気もするし。

今ラベル貼ろうとすると、どれかだと思うんですけど、わからないんですよ。なぜかというと、答えはすごく簡単で、この3つのラベルが全部不正解だからです。私たちは誰にも怒ってないし、出来事にも怒っていないし、なにかにも怒ってないんですよ。じゃあ一体なにに怒っているかっていうと、それが「べき」という言葉なんです。

みなさんが怒る本当の理由というのは、自分が信じている「~すべき」とか「~すべきでない」が目の前で裏切られたときなんです。

例えば、「マナーを守るべき」というところでマナーを守ってなければ腹が立つんですよ。「仕事はこうするべき」と思って、仕事をそうしなかったら腹が立つんです。自分が信じている「べき」が目の前で裏切られたときに、頭にきてるっていうのが私たちの姿なんですね。

みなさんって、これまで怒る原因って全部外にあるものだと思っていたんですよ。「誰かがいるから」とか、「こんな出来事があるから」とか、そういうふうに思ってたんですが、本当の怒る原因は、全部自分の中にあったんです。

でも、それってすごくいいことで。なぜかというと、もし怒る原因が外にあったならば、どうにもコントロールできないんです。でも自分の中にあるから、全部コントロールできるんですよね。なので、今日は最後にどうやって自分がその「べき」と付き合うのか、というのを一緒に考えておしまいにしましょう。

みなさんの心の中には、このような3重丸があると思ってください。中心にあるのは、自分が信じている「べき」と同じ「べき」です。だから、言ったら100点です。

その回りにあるのは、自分が信じている「べき」とはちょっと違う。「ちょっと違うけど許せるかなぁ」です。それで、その外が「許せない」です。みなさん全員がこの3重丸を持ってるんですね。みなさんの3重丸がどうなってるか、一緒に見てみましょう。

みなさんは大人ですから「時間を守るべき」だと思ってますね。時間は守るべきですよ。じゃあこうしましょう。今日10時集合です。「10時集合」と言われたら、何時何分に来るべきですか? じゃ、お互いに言ってください。10時集合と言われたら。はい、じゃあ言いましょう!

お互いの3重丸をはっきりさせる

今から私が時間を言いますね。10時集合です。今から私が言う時間に相手が来たら、それって1の「全然OK」ですか? 2の「違うけどまあいいんじゃない」ですか? 3の「いやいやそれアウトでしょ」ですか? いきますよ。9時40分。せーの!

(参加者が選ぶ)

今みたいに「1」とか「2」とか「3」で「せーの!」で言ってみてください。9時45分。せーの!

(参加者が選ぶ)

9時50分。9時55分。9時59分。10時。10時1分。10時5分。

ありがとうございます。「気が早い」っていうと語弊があるんですけど、世の中には9時50分くらいから「3」の人って出始めるんですよ。10分前でも「遅い!」なんですよ。でも世の中には10時5分でも「1」の人がいるんです。その2人が待ち合わせたらどうなります? 揉めますよね。でもお互いに「時間は守るべき」だと言ってるんです。

これが、私たちが毎日向き合っている問題なんです。言っている「べき」は一緒なんだけども、お互いの3重丸が違うから話が合わないんです。

みなさんの3重丸ってどうなってます? 例えば「仕事って一生懸命やるべきだよね」。そしたら向こうは答えます「いや、やってます、俺なりに」。自分の3重丸と相手の3重丸が違うんですよ。そして問題は、みなさんの3重丸を相手は知らないんです。見せたこともないし。

もし、みなさんが無駄にイライラしたくないんだったら、この3重丸って努力が必要なんですね。みなさんの3重丸の一番の問題点は、そもそもよく見えないんですよ。でも悪いことに、この点線が日々大きくなったり小さくなったりを繰り返してるんです。

さっきの「時間を守るべき」で言うと、ある日は10時に来ても怒らないのに、ある日は5分前に来て「遅い!」って怒るんです。それは、その基準が動いちゃってるんです。

アンガーマネジメントって、怒らなくなることはないので、この3重丸さえ描ければいいんです。もっと言ってしまえば、この点線さえはっきりしてればいいんです。ここが怒ることと怒らないことの境界線ですから。

なのでみなさんは、できる限りこの3重丸をはっきりさせてほしいんです。自分の3重丸がどうなっているか。もし無駄にイライラしたくないんだったら「1」と「2」を広げてください。「まあ、そういう『べき』もあるよね」と思ってください。でも「なんでもかんでも許せちゃう」ということはないので。ある程度大きくしたら安定させてください。

そして、それを人に見せてください。「自分はここまでは許せるけど、ここから先は許せない」。なのでみなさんは、これから「自分の3重丸ってどうなってるんだろう」、「人の3重丸ってどうなってるんだろう」、それを考える癖をつけてください。

みなさんの3重丸。今、残念ながら正体は「機嫌」になっちゃってるんですよ。機嫌がいい日は「1」「2」は大きくなっていてなんでも許すけど、機嫌が悪くなると「1」「2」は小さくなってなにも許せなくなってしまう。それだとよくないので、なるべく安定をさせる。無駄にイライラしたくないんだったら、大きくすることです。そういう努力をぜひやってみてください。

今日はアンガーマネージメント、若干時間をオーバーしましたけれども、みなさんに知ってほしかったタイプであるとか、「べき」という言葉、3重丸の境界線。普段からぜひ意識をして見てください。どうもありがとうございました。

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