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『はじめての「アンガーマネジメント」実践ブック』出版記念セミナー(全5記事)

「“怒らない”努力はしなくてもいい」イライラをコントロールするために押さえておくべきポイント

怒りをマネジメントするための心理教育としてアメリカで誕生し、近年日本でも注目を集めている「アンガーマネジメント」。その第一人者である、アンガーマネジメント協会代表理事・安藤俊介氏が、著書『はじめての「アンガーマネジメント」実践ブック』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)の刊行を記念しトークセミナーを行いました。自分や他人の怒りをコントロールするための考え方や自分の怒りを知るための方法について、わかりやすく解説しました。

アンガーマネジメントは「怒らない」ことではない

安藤俊介氏:今日は、前半は私のほうからアンガーマネジメントに関して、そもそもアンガーマネジメントってなんなのかという話をさせていただきます。それから、せっかくですので、今日は本を使って、どういうタイプがあるのか、みなさんはどういうタイプなのかという分析をできればと思っています。

後半はディスカヴァーの社長である干場さんと対談させていただこうかと思います。2時間弱ですけど、お付き合いいただきたいと思います。

今日は、アンガーマネージメントの話をしていくんですが、アンガーマネジメントって聞かれたことがない方はどのくらいいらっしゃいますか?

(会場挙手)

すばらしいですね。ちゃんと全員聞いたことあるんですね。じゃあ、みなさんはアンガーマネジメント自体はご存知ということで、話を進めていきます。

アンガーマネジメントというのは、1970年代にアメリカで生まれたとされている心理教育とか心理トレーニングと言われているものなんですね。

はじめはアメリカでは怒りっぽい人のためのプログラムとして、あるいは刑犯罪を犯した人のプログラムとして使われていたものなんですけども。徐々に一般化されていって、今では企業研修であったり、あるいは家庭のなかの夫婦セラピーやカウンセリングであったり、あるいは学校教育だったり、そういったものに使われていると。それからアスリートの方々ですね。そういった方に使われています。

あるいは、日本と仕組みが違うんですけども、司法でもアンガーマネジメントが入っているのがアメリカの状況ですね。司法というのは一体なにかというと、アメリカの場合、刑犯罪を犯した人は、保護観察の処分と罰金と、あとは矯正プログラムというのがあり、その矯正プログラムのなかにアンガーマネジメントが入っていたりもします。

今日は私の持ち時間は55分くらいいただいてますので、50分ぐらいアンガーマネジメントの話をしていこうと思っています。

アンガーマネジメントという言葉を聞くと、「イライラしない」「怒らない」とか、そういったイメージを持たれる方が多いかと思うんですが、決してそんなことはないんですね。怒ってはいけないということはまったくないです。アンガーマネジメントをしていても、怒る必要のあることは怒りますし、怒る必要のないことは怒らないで済む。その線引きができるってことなんですね。

ですから、けっして「怒らなくなる」ということではなくて、怒る必要のあるものは上手に怒れる、怒る必要のないものは怒らなくて済むようになる。その線引きができるようになるってことがアンガーマネジメントだと考えてください。

闇雲に怒らないというふうにしてしまうと、それはマネジメントではないということですね。ですから、怒らないっていう努力はしなくていいです。

こういう仕事していますんで、よく「じゃあ、あなたは怒らないのか?」って言われることがあるんですが、そんなことないです。イラっとすることはいくらでもあります。

例えば最近ですと、先週の土曜日に福岡に行ったんですけど、その飛行機のなかでも、軽くイラってしてるんですね。なにかというと、後ろに座っているおじさん2人がずーっと喋ってるんですよ。

ずーっとです。別にヘッドホンして音楽聞いちゃうんで別に気にはならないんですけど、たまに外すんですよね。そうするとまだ喋ってるんですよ。1時間50分。本当に離陸前から着陸までずーっと喋ってるんですよ。ですから、いい大人が、いい男2人が1時間50分なにをそんなに喋ってるんだってのがイラッとするんですよね。

(会場笑)

「そんなに喋らなくてもいいんじゃないの?」って思うんですよね。しかも飛行機の上で。だから別にイラッとはします。それで、だからといってなにかをするわけではないです。ただ、そういう人もいるんだなって。

ただ、私にもイラっという感情はあるし、怒りという感情自体はあるんですね。

みなさんはふだんからイライラしたくないと思うし、「怒りたくない」と思っていると思うんですけど、決して怒りという感情を取り除くとか、怒るのをやめようというふうには思わないでください。そもそも怒りという感情自体を取り除くことは絶対にできないんですね。

怒りという感情を取り除く必要はないので、それは持っているものとして考えてください。「別に怒ってもいいんだよ」ということです。

問題のある怒り方

今日みなさんとやっていきたいのは、怒る必要のあることは上手に怒れて、怒る必要のないものは怒らなくて済むように、線引きができるってことなんです。

そもそも、怒りという感情というのは、一体なんのためにあるかってことなんですよ。怒りという感情自体は元々は身を守るために存在している感情と言われているんですね。別名「防衛感情」と言われているんですけど、動物にも怒りという感情があるんですね。動物にとっての怒りの感情って一体どういうことかというと、目の前に敵が出てくるんですよね。

その時に動物がやらなければいけないことは、たった2つです。それはなにかというと、身を守るために襲いかかるか、逃げるかなんですよ。じゃあその時にどうすればいいかというと、怒りという感情を使います。

目の前に敵がいる時に、リラックスしているとどちらもできないんですね。怒りという感情が生まれると、みなさんよくご存知の、アドレナリンというホルモンが出ます。ホルモンが出ると、心臓がドキドキして血液を身体中に送り込んで、筋肉を緊張させるんですね。筋肉を緊張させて、相手に襲いかかるか、逃げるのかというのを体にさせる、というのが怒りという感情のそもそもの役割なんです。

ですので、自分が怒っているというのは、なにかわからないけれども、なにかを守ろうとしている行為、というふうに考えてください。自分ではなにかよくわからないけれども、なんらかの危機とか脅威が目の前にある状態が、自分が怒っているという反応をしているということなんです。

もちろん私たちは社会的に生きてますから、生命の危険を感じるような脅威というのはなかなか感じないと思うんですけど、ただ、それでも身の危険を感じることはあるわけですよ。

それ以外であればなにかというと、例えばなにか自分の大切にしているものを守ろうとしている行為だったり、なにか譲れないものを守ろうとしていたり、大切な価値観であるとか、存在であるとか、なにかそういったものを守ろうとしている行為が、自分が怒っているという状態だと思ってください。

ですから、自分だけでなくて、周りの人たちが、例えば仮に誰かが怒ってるとすれば、それはなにかを守ろうとしている、そういう行為をしているということなんですね。なので、結局、自分がなにを守ろうとしているか、それから、怒っている人たちはなにを守ろうとしているのか。そういったことを理解してあげるというのが必要になってくるということなんですね。

さて、今日は怒りという感情について、もっともっと知っていただきたいんですけど、さっきから私は、「怒ってもいいよ」って話をずっとしているんですけれども、ただ、この4つに当てはまると問題があるんですね。

「強度が高い」というのは、1回怒るとすごい激昂してしまう人です。それから「持続性がある」というのは根に持つんです。たとえば思い出し怒りをするであるとか、根に持ってるんです。ずっとじゅくじゅく怒りを溜め込んでしまうとか。

それから「頻度が高い」というのは、しょっちゅういろんなことでイライラする。そして「攻撃性がある」というのは、怒った時に人を攻撃する、あるいは自分を責める、あるいはものにあたるんです。

人を傷つけるというのは、怒った時に人にあたるということです。それから、自分を傷つけるというのは自分を責めちゃうということですね。「なんでダメなんだろう」とか。そして、ものを壊すというのはものにあたる、ですよね。ものを乱暴に扱ったり、ドアをバタンと閉めてみたり、ものを乱暴に扱うってことです。

怒りのタイプを自己診断

さて、みなさんどんな傾向がありますか? 自己診断してみましょうか? 自分はどんな性質があると思います?

みなさんから左が強度・持続性・頻度です。ですから、強度が高いのか持続性があるのか、頻度が高いのか。それから、右は攻撃性です、自分は怒った時に人にあたるタイプなのか、自分を責めちゃうタイプなのか、あるいは物にあたるタイプなのか。

時間取りますので、この図を書いてみましょうか? 自分で点数をふって自分の三角形を書いてみてもらえます?

さあ、時間取りますんでやってみましょう。自分はどんなタイプだと思いますか?

それではせっかくなので、お隣同士で、お隣がいない方は後ろ振り向いていただいて、自分の三角形がどうなっているかというのをお互い紹介し合ってください。

(参加者が紹介し合う)

そしたら、今度は誰か1人思い浮かべてください。友達でも家族でも職場の人でも誰でもいいので、誰か1人を思い浮かべてください。思い浮かべました?

じゃあ、その人の三角形を想像して書いてみましょう。自分が書いた三角形の上に、その人の三角形を想像して書いてみてください。書く時に色を変えるとか、点線で書いてもらうと識別がしやすいので、自分が想像した人の強度、持続性、頻度、それから攻撃性を想像して書いてみてください。その人のイメージですね。

(参加者がイメージした人の三角形を書く)

さて、いけました? じゃあ、自分が想像した人を書けたら、またお互いにその人のことを紹介してみてください。その人は一体誰でどんなタイプですか?

(参加者が紹介し合う)

いかがですかね。みなさんはその人のなにを見て強度が高いと思いました? 「この人すごい怒るな」という人にはどんな特徴があります?

たとえば言葉とか声の大きさとか。一般的にいえば、声が大きい人って強度が高く見られたりしますよね? それから、なぜか顔が濃い人なんですよね。

(会場笑)

なぜか顔が濃い人って、強度が高くみられたりするんですよね。

持続性はどうでしょう。暗い感じ。伏し目がちとかね。声が小さいとか、逆に顔が薄いとかね。なぜか。

(会場笑)

それから、頻度というのは、たとえば貧乏ゆすりだったり、癖として出てきますよね。なので、自分がどう振る舞っているかというのは、人から見られてるんですね。ですから、自分がどう見られたいか、って思ったら、どう振る舞えばいいかがわかるわけですよ。ですから、みなさんはふだんどう振る舞ってます?

アンガーマネジメントってメンタルのコントロールなんですけど、気持ちをコントロールしようとか、感情をコントロールしようってところに目が行きがちなんですが、実はね、振る舞いだったり、仕草だったり、体を使うことでもメンタルとかいろんなものがコンントロールできるようになったりするんですね。

ふだんから自分の仕草とか振る舞いみたいなものに目を向けるというのも、ぜひやってほしいんです。そうすると、穏やかな自分を演じていれば、それは穏やかな自分になります。

逆にずーっと乱暴なことをやっていれば、やっぱり性格もだんだんすさんできちゃうんですね。ですので、振る舞いというのはすごく大切なので、ぜひそんなとこにも注目をしてください。

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