男性の乳首は進化の名残ではない

ハンク・グリーン:乳首! みんな付いているね。言うまでもなく、女性は赤ん坊に乳を飲ませるために乳首が必要だ。でも、なぜぼくら男たちは貴重な胸のスペースを明け渡してまで乳首があるんだろう?

ボディピアスをあける場所の選択肢を増やすため? ジョギングするときにすりむけるスペシャルな苦痛を味わうため? あるいは、お腹を空かせた乳児をあざけるためだけに、ただそこにあるの?

ずっと前に小さな胎芽だった頃、ぼくたちは実は女の子……みたいなもんだったから、男たちには乳首がついている、ということがわかってるんだ。聞こえただろ、屈強な奴!

現代の人間の身体には、必要ない親知らずや、役に立たない尾骨みたいな退化した機能がたくさんあるけど、男性の乳首は違う。それは男性が授乳していた過去に起こった何かの進化の名残りじゃないんだ。それはぼくたち自身の個人的な発展による遺物なんだよ。

乳首は性別が決まる前に発達を始める

子宮の中で、ほ乳類はほんの小さなまたたきから泣き叫ぶ子供に成長する間に、一連の発育段階をたどるんだ。

その過程は、受精卵……

胎芽……

胎児……

赤い顔の赤ん坊、と進んでいく。

ほとんどの赤ん坊は普通、男か女で、X染色体を持った女の子かXとYの染色体を持った男の子だ。

でも胎芽のとき、ぼくたちのホルモンが性に関して本気になる前は、女性の設計図をたどってぼくたちの人生は始まる。だからぼくたちの乳首は実は性別が決まる前に発達するんだ。

最初の数週間以内に、2つの乳腺がすべての胎芽で形成され、脇の下から太ももまでつながっている細胞層を厚くしていく。やがてこれらの組織は小さくなって2つの乳首を形成するんだ。

驚くほどたくさんの人が──そのうちほとんどは男だけど──それをただのしみだと思っているとしても、結局は初期の乳腺に沿った場所のどこかに余分な乳首が残ることになるんだけどね。

しみじゃないんだよ!

これらの乳首が赤ん坊に形成されてほどなくして、性別を決定する特別な遺伝子であるY染色体が、その胎芽が正式に男性であることを宣言して、男性ホルモン、ひいては男性の身体の発達を開始するんだ。でもぼくたちは乳首を取っておくんだよね。

ネズミのオスの乳首は消える

おもしろいことに、ほ乳類のすべてのオスに乳首があるわけじゃないんだよ。

例えば、ネズミを見てみよう。オスとメスの両方における胎芽の発達の初期段階で乳房組織が形成されるんだけど、その組織が形成され始めた数日後に、PTHRPと呼ばれる特殊なタンパク質が作られて、オスとメスに異なる結果を伝えるということをエール大学の研究者たちが発見したんだ。

そしてメスのネズミは、その乳腺芽がタンパク質に刺激されて、乳首と、母乳の生成に必要なすべての配管がそれに伴って生成される。でもオスは、さらなる乳房の発達が止まるだけでなく、それらの細胞は基本的に、循環し始めてあふれ出す男性ホルモン向けの特殊な受容体に変化する。

だから乳房細胞は発達が止まるだけじゃなくて、実は退化するんだ。そしてオスのネズミが産まれるときには、乳首は跡形もない。

もちろん、そのエストロゲンが、生物学上の女性たちの乳房細胞の発達において、乳腺を刺激し始める思春期の間に、変化を起こすんだ。

男性の乳首は積極的に存在しているわけではない

それはさておき、そんなに役に立たないなら、なぜそんなものが付いてるんだ?

男性と女性の特徴や分離は、繁殖成功の観点において正当な理由がある場合にのみ起こる傾向にあるんだ。進化に関する話をすると、女性の胸は種の生存に不可欠だ。男性の乳首は違う。でも、なぜ1つの性にとってそれほど重要で、もう一方にとっては害を与えないだけのものをずさんに扱うんだ?

だから男に乳首があるのは、その特徴が男性に選ばれることに賛同したからではなく、むしろ選ばれることに反対しなかったからというだけなんだ。

すべての特徴に相応の理由があるわけじゃないんだよ。結局、男性の乳首は遺伝的に生じた女性の胸の副産物ってことだね。

だから遠い未来に、ぼくと仲間たちはみんなケン人形(バービー人形のボーイフレンド。乳首がない)みたいになってるかもしれないけど、ぼくは驚かないよ。正直に言うと、ぼくはあれが好きになってきているよ。ペットボトルの蓋みたいじゃないか。