ドーピングには実際どの程度の効果があるのか
成長ホルモン、ステロイド、自己血輸血の場合

Performance Enhancing Drugs

ドーピングの問題は、アスリートの歴史と切っても切れないものがあります。本来ならば病気の治療に使われるような薬や技術が、運動能力向上のために使われ、「よりよい記録を」という願望実現に力を貸しています。今回サイエンスチャンネル「SciShow」が解説するのは、成長ホルモン、ステロイド、血液ドーピングの3つの種類のドーピングです。それぞれどのような仕組みで、どれだけの効果を発揮するものなのでしょうか?(SciShowより)

成長ホルモンの正しい使い方

ハンク・グリーン氏:アスリートである限り、スポーツを続けます。研究によると、プロ選手は強くなるために、パフォーマンスを向上させる薬物に手を伸ばす場合があることがわかっています。アメリカで行われている全てのスポーツで、その話を聞きます。強い野球選手も、PED(運動能力強化薬物)の使用で告訴されました。アメリカンフットボールの選手は薬物検査に引っかかり、よく出場停止になっています。

有名なものでは、ランス・アームストロングが行った血液ドーピングが、2012年に暴かれました。彼が成し遂げたツール・ド・フランスの7連覇は剥奪されました。

鹿の角の成分が入ったスプレーは、パフォーマンスの向上に効果がありません。彼らの財布と健康を痛めつけるだけで、全く効果がないのです。これから、なぜペテン師が勝利を収めることができないのか、ご説明しましょう。

多くのパフォーマンス向上薬は、体内に既に含まれている複数の化学物質から構成されています。それらの混合物は、体の成長や修復、健康の維持に使われます。しかし、度を超えてそれらを摂取すると、体外に排出されてしまいます。

体内では、成長ホルモンが、脳の下部にある脳下垂体から適量分泌されています。

成長ホルモンは、成長と細胞の形成を、インスリン様成長因子(IGF-1)という他のホルモンと共に行います。成長ホルモンは、肝臓でIGF-1に変換され、そして骨や筋肉の成長など、いくつかの効果をもたらします。

通常、成長ホルモンの分泌量は10代にピークを迎え、そこから30歳になるまでどんどん減っていきます。そして、それからはゆるやかに減少し続け、成人のメタボリックシンドロームを助長します。

しかし、成長ホルモンの主な役割は幼少期の成長を促すことです。1985年より、注射可能な、人工的に作られた成長ホルモンが、成長に関する問題を抱えた子供や、腎臓に問題を抱えた大人たちのために、アメリカ食品医薬品局より認可されました。

成長ホルモンは、骨が弱った人や、コレステロール値が高い人、そして非常に稀ながら脳下垂体に腫瘍を持つ人に処方されます。成長ホルモンは月々の費用が非常に高く、最高で5,000ドルもかかります。

成長ホルモンはドーピングにどの程度の効果があるか

成長ホルモンは、それを激しく求めるアスリートの間で人気となりました。その大きな理由は、人間の体からも分泌される物質であるため、摂取したことを検出するのが非常に難しいことです。

そのうえ、注射して30分以内には分解が始まります。これらの理由ゆえに、成長ホルモンを検出できるのは、摂取後12〜24時間以内に、血中の抗体が明らかに異常な高数値を示した場合しかないのです。

だからすべてのアスリートと成長ホルモンの投与を受けている非アスリートは、パフォーマンスが向上したという証拠をほとんど示すことができないのです。

成長ホルモンは筋肉と骨の成長を促進しますが、力の強さや持久力をもたらすかどうかは、はっきりとしていません。カリフォルニアの研究者たちは、アスリートと成長ホルモンについて44の研究を再調査しました。300人以上のボランティアをその研究に動員し、平均20日に渡って成長ホルモンを注射しました。

これと同じ要領で、優秀なアスリートに成長ホルモンの代わりに偽薬を投与した結果、彼らの除脂肪体重は2キロ以上増加しました。彼らの力の強さや運動能力の向上は計測していません。

成長ホルモンが競技能力の向上に役立ったとする結果を示す研究は、たった1つだけでした。オーストラリアのクイーンズランド大学の科学者が、2010年に203人のスポーツを楽しむ人々を対象に行なった研究では、成長ホルモンは力の強さや一般的な運動には効果を示さないことが判明しました。

自転車を全力疾走したときのタイムでは、4パーセントの向上が見られました。たったそれだけです。大きな差ではありませんが、競技においてはこの4パーセントの差が勝敗を分けるのです。

成長ホルモンとステロイドの関係性

いくつかの研究には、アンチドーピング機構が、成長ホルモンはテストステロンと一緒に使用したときに、パフォーマンスを向上させることを発見したということが書かれています。ステロイドは、成長ホルモンと一緒に使わなければ、パフォーマンスを向上させることはできない薬物なのです。

ステロイドは、脂質と脂肪分子の2種類に分けることができます。1つめは、副腎皮質ホルモンとして知られています。このホルモンは、腎臓の上にある副腎から分泌され、免疫機能やストレス反応や炎症を制御しています。関節や免疫障害の治療のために、合成ステロイド薬の処方を受けたら、その薬は本当に体に悪い毒です。私なら、なぜこんなものを処方したのかと問いただします。

もう1つの種類のステロイドは、雄性同化ステロイドです。これは、男性らしさを形作るテストステロンの主なものの1つです。このステロイドは、混合物も含めて、タンパク質を合成し、そして筋繊維となります。

この過程は、ナダルとアマンダのステロイドと呼ばれています。そして、合成されたステロイドは、不良少年たちが違法に使う方がマシなくらい、アスリートによって実際に乱用されています。

他のステロイドと組み合わせて使用し、運動することで、男性の力の強さを38パーセント以上向上させることができます。女性の場合は、それ以上の効果があります。

同化ステロイドは、2種類以上組みわせて使用すると、特段強く効果が出ます。ドーピングをしたアスリートは、オフシーズンで筋力トレーニングを行っている時に、通常1〜3ヶ月周期でステロイドを摂取します。テストはほとんどしていないでしょう。

それらのステロイドを注射した際には、ステロイドは筋組織を巡り、筋細胞の膜にあるレセプターにくっつきます。レセプターはステロイドホルモンを、タンパク質の合成を促進する、細胞の核に運びます。

血液ドーピングとは何なのか

同化ステロイドは、テストステロンの量を増やすだけでなく、狂った副作用もまた引き起こします。時々、性機能に対しても攻撃を強め、睾丸を縮ませたり、勃起不全を起こしたり、心臓に悪影響をもたらします。女性の場合、ヒゲが生えたり、ニキビができたり、肝臓を傷めたり、胸を小さくさせます。そして、生理を止めたり、周期を変化させます。

今、あなたは本当に自分の体が完全にステロイドから自由なのか、疑問に感じていることでしょう。それを疑うために、もう一度副作用についてお話します。もしあなたがさらに有酸素運動、特に自転車競技をするのなら、血液ドーピングをしないようお伝えしておきます。

自転車選手や、他の持久系アスリートは、時々同化ステロイドを使いますが、血液ドーピングはそれよりも遥かに一般的になっています。なぜなら、このやり方はばれにくいのです。

血液ドーピングは、多くの場合アスリート自身の血液を使って、一般的に1〜2通りのやり方で直接血液を輸血します。合成エリスロポエチン(EPO)という、赤血球を制御するホルモンを注射もあります。

どちらの場合も、スタミナを向上させるために、体内の赤血球の数を増やすことが目的であることには違いありません。赤血球は、ヘモグロビンと呼ばれるタンパク質であり、この物質は酸素と結びつき、それを全身に運びます。

体内の酸素は、休んでいる時よりも熱心に運動しているときのほうが、最大20パーセント以上多く存在します。もしあなたがEPOを含んだ血液を使って、赤血球を増やすなら、酸素も獲得できます。

これらは、自転車を漕ぎ続けたり、長時間何かをし続けるときに必要となります。そして、あなたが既に知っているように、世界で最も有名な自転車レースでは、不正が行われました。

ドーピングを使ったアスリートたち

成長ホルモンや血液ドーピングの危険は、もちろんPEDのそれよりも少ないわけではありません。全て競技のアスリートが強くなろうとします。次に、先ほどとは別のアスリートのお話をしましょう。

野球選手のマニー・ラミレスは、2009年に、ヒト絨毛性ゴナドトロピン(HCG)の陽性反応を示し、50試合の出場停止処分を受けました。このHCGは、女性が妊娠時に分泌するもので、男性に投与した場合、増大したテストステロンの数値を下げる働きがあります。

HCGの投与後は、精子の数が上昇しますが、皮肉なことに、HCGのユーザーの中には、後天的な生殖機能の問題を抱えている人もいます。PEDもまた、強くなるだとか、速くなることを志す競技者に限って問題を起こします。

2008年に北朝鮮のオリンピックチームが、プロプラノロールの陽性反応を示し、2つのメダルを剥奪されました。プロプラノロールは、高血圧を治療したり、スポーツ時の恐怖感を取り除くという効果があります。

PEDの使用と近いものでは、アーチェリーの話があります。アーチェリーの世界では、手の震えはパフォーマンスの低下に繋がります。そこで、鹿の角の成分を含んだスプレーを使用しました。これは、おそらく2012年まで知られていませんでした。

NFL選手のレイ・ルイスの場合、上腕三頭筋の断裂後、早期の回復を期待してこのスプレーの仕様を試みました。若い鹿の角のビロードのような組織は、先に説明した成長ホルモンIGF-1を多く含んでいます。この成分は、角の急速な成長に関わっているのです。

いくつかの企業は、組織からIGF-1を取り出し、スプレーに詰め、それを舌の下に投与することを主張しています。これを聞いてショックを受けないで欲しいのですが、このアイデアには、錠剤でもスプレーでも、効果があるという証拠は1つもないのです。

このホルモンはニュージーランドにいるすごい鹿の角から取られているとしてもです。しかし、角のスプレーはすぐに店で一番人気のサプリメントの1つになりました。

今日、私がアスリートに対してアドバイスするなら、注射によって投与することをおすすめします。合成テストステロンはきっと、あなたを不妊にしたり、性交できない体にします。体内の血液の量を増やしたり、鹿の頭から作った狂った混合薬を舌の下に投与することはしないことをおすすめします。

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