多国籍なチームだからこそ生まれる強み

宇佐川邦子氏:みなさん、こんにちは。リクルートジョブズリサーチセンター宇佐川と申します。本日はお忙しい中お集まりいただきまして、ありがとうございます。

アルバイト・パート領域におきまして、まず簡単に自己紹介がてら、アルバイト・パート領域の話をさせていただいた上で、トレンドのキーワードを発表いたしたいと思います。

我々アルバイト・パート領域では、「タウンワーク」「フロム・エー ナビ」「はたらいく」「とらばーゆ」といった、多様な働き方をご支援する求人メディアサイト、それと最近はやはり求人の入口以外もご要望をいただくことも多くなっておりますので、業務支援サービスとしまして、採用管理であったりとか、シフト管理システム等のツールの提供等もしております。

我々のアルバイト・パート領域での2016年トレンド・キーワードは「多国籍スクラムバイト」です。

先ほどの「美ンバウンド」でもお話は既に出ておりますが、最近の訪日外国人の方々のニーズはまさに多種多様でございます。それぞれの自身の興味で自由に行動される方々が多くおられますので、その方々のニーズを深く理解した接客サービスが必要になってきています。

そういったことを支える上で注目されているのが多国籍な職場でございます。この多国籍な職場では、日本人だけでなく、外国人それぞれが、それぞれの強みを活かしてスクラムのように力を合わせることでチーム力・マーケティング力・接客力がアップするというシナジーが起こっています。

背景の説明に行く前に、昨今話題になった五郎丸さんも、「ラグビーが注目されている今だからこそ、日本代表にいる外国人選手にスポットを当てて欲しい。国籍は違うけれども日本を背負っている。多国籍の組織は強い組織を作っている」そういったことを仰っています。まさにそれが職場でも起きております。

在留外国人スタッフの需要が高まっている

簡単に背景の説明に参ります。外国人消費に関しましては年間3兆円を超える見通しですし、先ほどの「美ンバウンド」にもありましたように、買い物だけではなく、飲食や各種サービスを楽しまれる場面が増えてきています。

さらにアジア以外の外国も全て含めますと、リピートが既に約50パーセント。合わせて、個人旅行・個別手配旅行に関しましても66パーセントにあがっています。まさにニーズを深く理解した接客やサービス、これが欠かせない状況になっています。

さらに日本で生活をする消費者でもあり、働く人でもある、在留外国人の方々も増加しています。ちょっと目を転じまして、我々の求人広告の中での変化を説明させていただきます。

我々の求人広告の中でも、「英語・海外」という言葉と「お客様」のキーワードを組み合わせたもの、つまり「海外のお客様に接客をする」とか「英語を使ったお仕事をお願いする」といったキーワードが含まれる求人案件が、対前年でなんと5.4倍になっています。

留学生が活躍している、留学生と関係する求人広告のキーワードが含まれる求人案件も、対前年で1.9倍。特に販売やホールスタッフなどの職種を中心に増加をしています。

地域で切り分けて見ましても、関東や関西が安定的に増加していることはもとより、なんと九州では4.9倍というかたちで急激に伸びています。これは日本各地で大きな動きが始まろうという予兆ではないかと見ています。

外国人スタッフの強みとは何か

こういった広告の裏側にある働く職場を見に行ってまいりました。その中では外国人スタッフの方々が活躍するシーンが変化をしています。

従来の接客だけにとどまらず、それぞれの持ち味を活かした積極的なアプローチであったり、外国の方々の趣味や慣習、文化風土等も理解したうえでのマーケティング。それから職場におけるリーダーシップの発揮といったかたちで、外国人スタッフの方々の活躍領域が広がってきています。これを「多国籍スクラムバイト」と呼んでおります。

こういった「多国籍スクラムバイト」の職場にいらっしゃる方々にインタビューを行いました。実際に「そこで働いていらっしゃる外国人スタッフの強みは何ですか?」というふうに店長や人事の方に聞いたところ、「学ぶ意欲が高い」「自分の成長につなげる姿勢が強い」「積極的」「誰に対してもハッキリ意見を言ってくれる」「日本の文化やおもてなしに強い興味を持っている」といった言葉が出ます。

反対に、外国人スタッフや店長の方に、日本人スタッフの強みは何ですかと聞くと、「チームワーク」「フォロー」「豊富な商品知識をわかりやすく教えてくれる」といったキーワードが出てまいりました。

こういったそれぞれの強みを活かしてスクラムを組んでいる状態であると、チーム力・マーケティング力・接客力がアップしていることがわかります。

特に、一人ひとりがリーダーシップを発揮してチーム力が上がったり、世界で売れる製品や売場づくりといったものをできているマーケティング力、細やかな世界に通じるおもてなしで接客力アップといったことが生まれています。

「多国籍スクラムバイト」3つの事例

これらのことを、ちょっと事例でご説明いたします。まず1つ目の事例は仙台の居酒屋の「とらの尾」様です。こちらでは自分にできることは何かということを一人ひとりが考えて、ある外国人スタッフの方は「食事の提供は15分以内」といったような仕事の心得をまとめて、自らが日本語と英語で作成し、それを厨房に貼り付けるといったようなことをされています。

「一人ひとりが当事者意識を持ち、誰もがリーダーシップを発揮できるような環境を作り出している。それは良いところを伸ばしあえる組織になっている」というようなことを店長も仰っています。

2つ目の事例は「ミキハウス」様です。お客様に喜んでいただきたいというニーズの理解により、マーケティング力がアップしています。たとえば今年の2月にあったことなんですが、通常2月では、日本の場合、ダウンコートは在庫入りをするんですけども、中国人スタッフが「旧正月の2月の中国ではまだまだ寒いので、ダウンコートが必要なんじゃないんですか」と提案し、他のお店の在庫も集めてラインナップを拡充しました。結果として予想が的中し、売上がアップしております。

こういったかたちのことが起きているのも、職場やお客様に貢献したいという強い意志の行動への現れではないかということを、人事部長の方も仰っています。

3つ目の兆しの「コメ兵」様です。こちらでは「もっと早く、もっと要望に応えたい」ということで、通常免税対応ができなかった日本のスタッフのために、外国人スタッフの方が3ヶ国語の対応カードを作り、対応をスムーズにするというケースでございます。

外国人スタッフが活躍するシーンが増加していく

こういった兆しが全国各地で拡がっております。また一緒に働いていらっしゃる経営者やスタッフの方々の意識にも大きな変化が出てきています。特に右下をここでは取り上げさせていただきたいのですが、外国人スタッフの方々は、将来をしっかり考えているケースが多くて、働く意味について、日本人が一緒に考えるといったかたちで、全員の視野が広がっている、といったような兆しも出ております。

最後に、こういった「多国籍スクラムバイト」を戦略的に構築する仕組みを始められている企業がございます。1つは人事制度を見直しております。言語スキルと販売スキルという2つのスキルに分解をし、たとえば言語スキルが高い外国人スタッフの方は販売スキルを伸ばすように努め、販売スキルが高い日本人は言語スキルを習得するかたちで頑張るといったようなことになっています。

また、外国人スタッフの活躍シーンを増やそうということを進めていらっしゃる企業様の場合、他店からのサポート要請が合った場合は、あえて外国人のスタッフの方を派遣して、その積極性であったり活躍のシーンを見てもらうことにより、活躍推進をはかっている、というようなことを行われています。

まとめます。2016年アルバイト・パート領域におけるキーワードは「多国籍スクラムバイト」です。ご清聴ありがとうございました。