2024.12.10
“放置系”なのにサイバー攻撃を監視・検知、「統合ログ管理ツール」とは 最先端のログ管理体制を実現する方法
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蟹瀬誠一氏(以下、蟹瀬):こんにちは。
駒崎弘樹氏(以下、駒崎):こんにちは。
蟹瀬:ご存知じゃない方もいらっしゃいますので、(駒崎さんが)何をやっているのかを15秒ぐらいでお願いします。
駒崎:15秒……短いですね(笑)。認定NPO法人フローレンスという団体を経営しています。フローレンスは、子供が熱を出したり風邪をひいたりしたとき、保育園はなかなか預かってくれませんので、保育園に代わってお預かりする幼児保育という事業をメインに……。
蟹瀬:病気のお子さんでしたね。
駒崎:そうですね、病気の子供を預かる保育ということ。また、小規模保育というミニ保育所を都内で13園やっていたりとか、重い障害のある子はなかなか保育園ではお預かりができないので、その子たちを専門にお預かりする障害児保育とかをいろいろやっている団体です。
私自身、もともとITベンチャーの経営者だったんですけれども、働き方の改革というものを唱えまして、今はワーク・ライフ・バランスをかなり達成した職場を実現しました。
もともと1日16時間ぐらい働いていたんですけれども、今は定時で退社して、19時に家に帰って、子供たちをお風呂に入れて寝かしつけまでやると。
蟹瀬:その辺はサイボウズの青野さんと似たところがありますね。
駒崎:そうですね。青野大先輩です。
蟹瀬:僕はもう65になりまして、今年初孫が生まれて、初めて初孫を抱いたら子育てしてた頃を思い出しましたね。
駒崎:そうですよね。
蟹瀬:僕らの頃には、もうまったく法律的にも整備されていないし。企業の中では「もう女性は寿退社」っていう感じでね。うちの女房は、会社から帰ってきたら泣いたことがありますよ。
駒崎:そうですか。
蟹瀬:その「お前、何で子供生まれたのにまだ働いてんだよ」みたいなことを同僚に言われたりね。
今はどうなんですか? この法整備。こうして人口が減って、少子高齢化で子供が少なくなって。安倍さんもよくわけのわからない「新3本の矢」とか言い出して。こういう子育て支援も(政策に)入ってますよね。
駒崎:そうですね。
蟹瀬:法整備的にはどうなの?
駒崎:蟹瀬さんの世代がご苦労されてくださったおかげで、本当にちょっとずつですけれども、法制度は前に進んできていると思っています。
特にこの「子育て支援」とか「女性の活躍」という言葉が政権の公約の中枢に入ったというのは、これまでなかったことだったんですね。
蟹瀬:そうだね。
駒崎:そう考えると、今は非常にスポットライトが当たって……それは恐らく危機感の裏返しだと思うんですけれども。政権としてはかなり力を入れてくれている。しかし、まだまだ不十分だというのが、私の考えです。というのも少子化を克服した国々、例えばフランスとか北欧は出生率が……。
蟹瀬:デンマークとかね。
駒崎:デンマークも出生率1.8を超えて、フランスは2ぐらいなわけなんですね。これはどうやってやったか。本当にひと言で言いますと、国力を上げて、予算をきちんとそこに投入した。
蟹瀬:配分してね。
駒崎:対GDP比で言いますと、親とか子供の支援に、日本がだいたい対GDP比1パーセントちょっとぐらい使ってるんですね。例えば北欧やフランスどのぐらいかというと、3パーセントぐらい。
蟹瀬:一時、7パーぐらいまでいってたときもあるんだね。
駒崎:ぜんぜん物量が違うというか、きちんと割いているお金がぜんぜん違うがゆえに、今、日本の場合はようやく政府が注目してきてくれてはいるけれども、十分に保育園をつくっていくだけの財源がない。
あるいは、そこで働く保育士の方々。例えば、東京の保育士さんの平均の月収……だいたい19.3万円です。
蟹瀬:本当に少ないですよね。
駒崎:実は全国で一番高いんです。
蟹瀬:不思議だよね。
駒崎:それでも一番高いというようなレベルで。だとすると、なかなかなり手がいない。保育士がいない。だから保育園がつくれない。なのでみなさんが預けるところがない。待機児童がふえる。こんなような状況になってしまっています。
蟹瀬:やっぱり自分の昔の経験からすると、何とかしたいという思いはあったけど、なかなか、「みんなで頑張りましょう」っていうかけ声ばっかりでね。
それが大きく変わったのは1972年に、みなさんご存知の男女雇用機会均等法というのができた。その後何回も改訂されてはいるんだけれども、あれでがらっと変わった。特に大きな企業の中は、法律が変わるとみんな従うわけ。
駒崎:そうですよね。
蟹瀬:だから、女房の待遇もそれで一気に変わったね。そういう意味で、法律が変われば世の中が変わる。やっぱり制度の整備って大事ですよね。
駒崎:非常に重要ですね。制度と予算。この両輪できちんと投資していかないと、日本に未来はないかなという気がしますね。
蟹瀬:それともう1つ。今回のセッションのテーマでもあるんだけれども、企業内で実際に働いている男性、特にその上司の人。こういう人たちと働いている女性との関係、育休・産休をとる男性との関係……この辺が難しくて。
世間では「働く女性を優遇しましょう」みたいにいろいろ出てきているけど、実際のところでは「マタハラ」という言葉が出てきて、なかなか女性が育児をしながら安心して働けないという状況がありますよね。その辺どうなんでしょう。
駒崎:そうですね。男女雇用機会均等法であるとか、育児休業法とか、さまざまな制度ができつつあるんですけれども。実際に制度はできた。だけれども、みなさんがお勤めの企業の現場で、実際に育休がとりやすいかというと、まだまだというところがあります。
先ほど「マタハラ」とおっしゃいましたけれども、実際は労働者の権利というのはとれるわけなんですよ。しかし、とろうと思ったら「え、(産休)とるの?」みたいな。
蟹瀬:そうだね。
駒崎:そういうことを言われたりだとか。あるいは(産休を)とって帰ってきたら、自分のやりたい仕事ではなく、かなりバックエンドのところに追いやられてしまったりだとか。さまざまな運用の実態があると。
なので、制度をつくるだけじゃない。我々働く人たちが、きちんと職場でその理念を制度に落とし込み、文化を変えて、構造を変えていくということをしなければ、やっぱり子育てと仕事の両立はできないと思いますよね。
蟹瀬:せっかくそういう制度をつくっても、その上司の理解がないために、育児離職みたいなことが起きていると。実際にいろんな現場をご覧になって、実態はどうですか?
駒崎:そうですね。日本の女性の約6割が出産とともにやめるんですけれども、非常にもったいない。諸外国と比べてもむちゃくちゃ高い率でやめてしまうわけなんですよね。
これはやはり、子育てしながら働きづらいというところが背景にあるんですけれども。やっぱり大切なのは、こういう話をしていると「あー、女性の話だな」とみなさん思われるかもしれないんですけれども、そうじゃない。
男性の働き方を変えなくては、女性が働きやすい職場というのは一生できない。なぜならば、(企業では)男性並みの働き方を求められる。つまり、長時間労働が当たり前で、休日も「とりあえず来い」と言われたら来るし、際限なく働こうというような働き方が当たり前。
そういうワークスタイルが当たり前だったら、女性がそれに追随する、フォローするということはなかなか難しい。特に子育てをしてたら……そんなわけなんですよね。
駒崎:なので我々は、やっぱり男性の働き方を変えようということで、2010年から厚労省とともに始めたのが、「イクメンプロジェクト」というものでした。
これは長妻(昭)大臣のときに始めたプロジェクトなんですけれども、当時「イケメン」という言葉が流行ってたので「イクメン」という言葉でやってみようということで。当初、そういう言葉が出たときは「ちょっとこれ、あまりにもふざけ過ぎじゃない?」と。
蟹瀬:でも、ずいぶん定着した。
駒崎:それで記者会見をして、最初不安だったんですけれども始めてみたら、初年度は「イクメン」という言葉の国民認知率って13パーセントだったんですけれども、たった3年で94パーセントまで上がったんです。
蟹瀬:僕なんかそのおかげで「元祖イクメン」とか言われて。
駒崎:よかったですね。
蟹瀬:いや、共働きしてた頃に女房のほうが給料が多かったわけ。
駒崎:そうなんですね。
蟹瀬:だから、僕のほうが介助もやらなきゃいけないなというのもあって。
駒崎:でも本当に元祖ですよね。
蟹瀬:ありがとうございました。
駒崎:その世代でちゃんとやられたのって本当にすばらしいと思います。
蟹瀬:こんなことで褒められるとは。
駒崎:いやいや。でも、褒められるという現状ってそんなによくなくて……。当たり前のことですからね。
蟹瀬:僕がラッキーだったのは、外資系の企業にいて上司の理解があったわけ。上司が「今日は会社休むよ」って。
「何で休むの?」って聞いたら「子供のリトルリーグの試合があるから」と。そういう環境にいたから。当時の日本企業だったらとても難しいと思う。
駒崎:なるほど。上司ですよね。
蟹瀬:だから今「イクボス」という言葉がつくられたりしているでしょう。
駒崎:はい。
蟹瀬:結局は、その男性の上司、女性の上司の場合もあるんだろうけれども、この人たちがどこまで意識改革ができるかにかかっているような気がするんですよね。そのあたりどうですか?
駒崎:おっしゃるとおりだと思います。今、この厚労省イクメンプロジェクトの座長をやらせていただいているんですけれども、その中で「イクボス」をフィーチャーしていこうというふうになっています。
これはなぜかというと、このイクメンプロジェクトをやっていて、3年で国民認知度も上がったし、イクメンのさまざまな政策ができて、男性の育児休業もずいぶんとりやすくなりました。
「やっぱり育休中って収入が不安だよね」っていうことがあったので、そこの部分はもとの給料の8割ぐらい社保を入れて、「つくよ」というふうにもなったので、結構制度としてはとりやすくなってきているんですけど……男性のほうは育休率上がらなかったんです。
蟹瀬:そうですか。
駒崎:「何でかな?」と思ってアンケートをとってみたら、結局「職場がそういう雰囲気じゃない」っていう回答がすごく多かったんです。
「その雰囲気をつくってるの誰?」と言ったときに、1つが同僚、もう1つが上司だったんですね。
やっぱりこの上司が部下の育児、あるいはワーク・ライフ・バランス、多様性に共感して、それをうまく伸ばそうという意識なくしては、イクメンだけがふえても実現できないだろうと。
じゃあ、そうしたことに理解がある、その多様性をマネージできるような上司をふやしていこうということで「イクメンボス」という概念を提唱して、そういうイクボスたちを表彰したり、イクボスをうまく育てている企業を表彰したりということを、国策でやっています。
蟹瀬:みなさんご存知の方も多いと思うのですが、イクボスの定義ってどういうことなのか? これはワーク・ライフ・バランスに大変配慮をしていると。それはよくわかる。一方で、中間管理職の方、あるいは経営者も当然その中に入ると思うんだけれども、事業や企業の業績も伸ばさなきゃいけない。
駒崎:そうなんですよ。
蟹瀬:管理職になったらこの2つのテーマがあるわけですよ。ここのところの調整というのはどうなの。
駒崎:その両輪を回していくのはやっぱり大変なことで、成果を出すだけでも大変。一方で、その部下の生活や多様性にも配慮しているということを、両方やらなきゃいけないので、とても苦労は多い。
だけれどもそれができないかというと、できていて。例えばこの前、「イクボスアワード」というものがありました。表彰させていただいたんですけれども、その中にこういう事例がありました。
芳野病院という地方の病院があるんですけれども、やっぱり医療業界は働き方がすごくタフで……。宿直があり、夜勤があり、人の命を預かっているからプレッシャーも大きいですよね。
そうした中で、地方ということもあって、求人してもなかなか働く人がとれなくなってきたということがあって。彼らは何をしたかというと、やっぱり「一人ひとりの働き方が選択できるようにしよう」ということで、50種類以上のシフトをつくって多様な働き方というのを認めた。
蟹瀬:この人は何時から何時まで、あるいは何曜日に働くとか、自分で選べるようなものをつくったということね。
駒崎:それだけ多様だと、マネジメントもものすごい大変じゃないですか? しかし、それを情報機器も使いながらうまくマネジメントをしていったおかげで、かなり幅の広いスタッフが働けるようになって、求人の問題をクリアしたりとか、定着率の問題をクリアしていったということで、表彰させていただきました。
蟹瀬:今ちょっと言葉が出てきましたが、ITとかサイボウズのグループウェア、そういうものを積極的に使っていくということが、ものすごくプラスになる。
駒崎:ものすごいプラスになったと思います。実は「僕も直接的にサイボウズを使っているっていう企業さんもいらっしゃって」。ここに来たから宣伝めいて言っているわけじゃないんですけれども(笑)。
蟹瀬:それは、(宣伝に)聞こえると思うよ(笑)。
駒崎:いやいや(笑)。ある介護の社会福祉法人さんがいて、イクメンアワードのグランプリで来られたんですけれども、「何をやったんですか」って聞いたら「当たり前のことを、当たり前にしました」と。
現場の介護なので、本当にそれこそ3Kの代名詞なんですけど。「シフトの管理を、サイボウズを使ってやってきました」と。今までは(仕事の管理を)紙でやっていて、「点滴を忘れちゃった」とか。
それで「お前、何で穴あけんだ」みたいな感じですごい言われたけれども、ちゃんと(仕事を)見える化して、チームとしてやるようになったら、そうしたシフトも、ミスというのもなくなっていきましたと。
その当たり前を徹底させてやっていくことによって、この働きやすさというのが実現できるんだなということがわかって。
蟹瀬:ITの登場によって、私たちの生活、ライフスタイル、そしてワークスタイルがずいぶん変わりましたよね。
駒崎:そうですよね。特にすごい難しいITの技術を使っているわけではないんだけれども、そのワークライフ・バランスを実現できるというのは、すごく希望でもあるかなと思います。
蟹瀬:僕らは65だから、サラリーマンとしてはリタイアしている人が多いわけだけれども、管理職のポジションにいる人ってやっぱり発想がまだまだ昔のままなんですよ。
だから、AかBか選ばなきゃいけないような気がするわけ。つまり、働くか休むか。あるいは、もうやめる。どっちかしか選ばないような発想があるんだけれども。
今おっしゃったように、そういうテクノロジーの発展の中で、いろんな形が選べる。このことに気がついてくると、会社の業績自体も上げていくことが可能になるんじゃないのかな。
駒崎:そうですね。サイボウズさんもそうですし、情報のプラットフォームがあることによって、いろんな働き方ができるかなと思っていて。
例えば、我が社フローレンスは社員数360人ぐらいの小さな会社なんですけれども、いろんな働き方ができるように工夫しています。
例えば、ホームのスタッフは「週1日在宅勤務をしようね」ということを推奨しているんですけれども、その人の管理はどうするかというと、グループウェアとコミュニケーションに関してはチャットツールを使うし、外部とのやりとりに関してはメールでしょうし、ITのプラットフォームさえあれば家でもぜんぜん働けるわけですよね。
家で働けるということは、ワークライフ・バランスの達成やコンティンジェンシープラン(※事故や災害、非常事態の対応策)にもなって。どういうことかというと……。
蟹瀬:何かあったときにね。
駒崎:何かあったときですね。それを一番感じたのは震災のときでした。2011年、東日本大震災のときに、みなさんも覚えていらっしゃるかと思いますけれども、交通網は本当に、ずたずたで、ぜんぜん電車が来なかったりってあったじゃないですか。
あのときも、在宅勤務でとりあえず業務を続けようということで、家からやってもらって、つつがなく業務を回せたりというような。
蟹瀬:BCM(事業継続管理)がちゃんとできたということですよね。
駒崎:そうなんですよね。そういう意味で、働きやすい環境をつくるということは、しなやかな職場というものをつくれる。
そして、何かあったときに、硬直的な働き方だと機能不全になるけれども、しなやかに業務を遂行し続けられるということがあるので、企業にとって働き方の改革というのは、本当に特になることばっかりだと思います。
蟹瀬:もう1つは、やっぱりこれまで製造業が中心の社会だったから、長い時間働けば生産性も上がると。これは当たり前の方程式だったんだけれども、情報産業とか第3次産業、あるいは第4次産業が主流になってくると、必ずしも使ってる時間が長いから生産性が上がるとか、そういうわけじゃない時代になったと。
そうすると、やっぱりその職場で、苦しいこともあるけれども、働いてる人たちがどれだけ楽しく、何かを得られるような環境をつくっていくかというのは、会社の大小に関係なく、これからの経営者の大変大きな課題だと思うんだよね。
駒崎:本当にそうだと思います。「働きがい」と「働きやすさ」。この2軸が恐らく今後の企業の命運を決すると言ってもいいんじゃないかなと思っています。
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