【3行要約】
・AIの普及により業務効率化が進む一方で、個人の孤独感や人間関係の希薄化が課題となっています。
・DMM創業者の亀山敬司氏は、AI技術の発展により「AI彼女」や故人との対話サービスなど、BtoC領域での新たなAIビジネスが生まれると予測。
・未完成でも継続的改善により新市場を創出すべきだと語りました。
AIが“死んだおじいちゃん”になる未来はありえるか
大野峻典氏(以下、大野):こんにちは、Algomatic代表の大野です。今回は前回に引き続き、DMM.comの亀山会長に来ていただいています。よろしくお願いします。
亀山敬司氏(以下、亀山):はい、亀山です。よろしく。
大野:前回の続きですけど、BtoBのサービスでAIを活用して経営者はどうしていくべきかという話をしてきました。今回はBtoC領域でのAIサービスという区切りでお話ししていきたいと思います。
亀山さんはBtoCで「自分だったらこういうAIのサービスが欲しい」とか「作りたい」など、何かありますか?
亀山:BtoCで俺がパッと浮かぶのは、やっぱりどうしても「AI彼女」とか「AI死んじゃったおじいちゃん」とかね(笑)。
大野:(笑)。終活みたいなものですね。
亀山:そうそう。昔、お墓とかお坊さんとかを手配するみたいな終活事業をやって上手くいかなかったんだけど(笑)。俺もさっきの話で「いろいろやってます」と言ったけど、けっこう失敗しているわけよ。
今の時流的にお葬式も明朗会計にして改善するのもありかなと思って何年か前にやったけれど、うまくいかなくて終わった。
「自分を残す」という終活
大野:事業の話もそうですけど、僕、勝手に亀山さんは「人生の最期をどうするか」というか、終活的な話をけっこうするイメージがあって。トピックとして「自分をどう残すか」みたいな話もしていましたけど、けっこう興味があるんですか?
亀山:興味があるというか、例えば昔であれば、親父の記録なんかほとんど残っていないけどさ。
大野:そうですよね、当時はLINEなどもなかったですもんね。
亀山:LINEもなきゃ音声も残っていないし。だけど俺だったらまあまあ残ってるわけじゃん。
大野:亀山さんがこうしてしゃべっている様子がYouTubeなどにたくさん載っていますもんね。
亀山:今はそれをばーっと読み込むと、ある程度俺の言いそうなことを言ってくれそうじゃない。
もちろんそれは本当じゃないかもしれないけれど、なんとなく「たまに話をしてみたいな」と思うこともあるわけじゃない。そういう時に、例えばWeb上で過去の死んじゃったおじいちゃんと「おう、元気?」みたいな。「相変わらずお前は、未だにハンカチも免許証も忘れてるんだろう」とか言われたりとかね(笑)。
大野:(笑)。
亀山:「すいません」みたいな(笑)。そういう話をしてみたいとか思ったりもするし。
大野:自分がおじいちゃんやお父さんと、そういうふうに話したいという気持ちから、そういうサービスがあったらいいな、みたいな感じですか。
推し活世代には自然な、AIと過ごす孤独の楽しみ方
亀山:それはあったらいいなと思ってるよ。例えば映画のストーリーでも、独身の男性が寂しい時にちょっと彼女と、みたいな感じで話をするとかよくあるじゃない。
大野:ありますね。『her/世界でひとつの彼女』でしたっけ? そういう映画、ありますよね。
亀山:そんなのあったよね。一方で、俺らの世代からすると、ああいうのって不気味な世界っちゃ不気味な世界でもあるんだよね。でも推し活とかゲームとか、いろいろなことをやっている若い世代からすると、それほど不自然には見えないかなと思う気がしていて。
大野:そうですね。実際に会ったことない人、オンラインでしか見られない人を推したりとか、会話する世界が今はありますからね。SNSとかでもある。
亀山:そうそう。それはそれで楽しめる世界は、あってもいい気もするかな。
“AI彼女”が導く自己理解
大野:確かに。しかもAIでいろんなものの生産性が上がって、働かなくても人々が生きていけるようになった時に、「楽しさを満たす」「孤独を埋める」みたいなものが来そうな気もしますね。亡くなってしまった人ともしゃべれるとか、(理想的な存在と)恋愛できるとかもあってもいいですもんね。
亀山:自分の理解者ができるみたいな。結局俺も旅すると自問自答したりするわけよ。良いところも(悪いところも)含めて自分が一番自分のことを見ているから。
だけど、例えばかわいい女の子に「去年こんなことを言っていたけどやっている?」とか「10年前はこんなこと考えていたわね、あなた」とか言われたら「ああ、そういえば言っていたな」みたいな。「最近変わっちゃったんじゃないの?」みたいなことを言われたら「いけない、ちょっと考え直すわ」みたいなね(笑)。
大野:(笑)。今は旅で自問自答しているんですか?
亀山:自問自答は、頭の中でいろいろやるんだけどね。
大野:そこにそういう人というか存在がいるとしたら。
亀山:話し相手になってくれる。これから先は、個別のデータをずっと溜めていけると思うんだよね。去年から付き合った女の子よりは、10年前から付き合っているAIのほうが、自分を理解してくれるというのはあると思うんだよね。
大野:そうか。自分と同じくらい人生の全部を見ている存在になる。自問自答って頭の中でやるの難しいですよね。
亀山:自問自答じゃないかもしれないけれど、自分が忘れていることもけっこうあるじゃん。
大野:確かにありますね。
亀山:俺の欠点もわかっているから、例えば朝何時になったら起こしてくれるというのでもいいわけじゃん。「まだ寝てんの?」みたいなことを言ってくれるとかね。
大野:本当のパートナーみたいな。彼女とか言うと奥さんに怒られちゃうかもしれないですけど(笑)。パートナーとか相棒。
亀山:そうね。パートナー、相棒。じゃあ男にしとこう、AIお友だち(笑)。
大野:(笑)。
亀山:俺が使うかはともかく、次の世代はそういうのをなんとなく欲しがるんじゃないかなって気がするよね。
個人AIがビジネスに活きる未来
大野:そうかもしれないですね。けっこう僕はChatGPTと会話するんですよ。例えば、3日前ぐらいにYouTubeの番組の生放送に呼んでいただいたんですが、準備する時間がなかったんです。
「こういう用件で呼ばれているんだけど、MCとして質問して」と話しかけて、AIに質問してもらって答える、みたいなことをしたんです。
亀山:それってOpenAIくんみたいなものと話している段階だと思うんだけど。
大野:まあそうですね。
亀山:大野のデータはその中に入っていないんだよね?
大野:過去にどういう話をしたかというのは、一応データとしてChatGPTに入っています。
亀山:一応残ってるの? じゃあ例えば、1年前に話した内容を理解して答えてくれる?
大野:理論上はそうですね。どこまできちんと記憶しているかはわからないですけど。
亀山:映像上や音声上のデータにプラスして、世間のニュースとかも俺専用のサーバーの中に全部入っていったら、俺の欲しい情報をくれたり、俺の過去と照らし合わせて「10年前、『こんな時代がきたらいい』って言っていたけど、ニュースでこんなの出てるわよ」みたいな話にもなるじゃない。
大野:そうですね。
亀山:たぶん今からデータをどんどん貯めていく世界にはなると思うんだよね。ましてやデバイスが発展して、例えばメガネとかから俺が見ているデータが吸収されたりしていくと、ますますそうなってくる気はする。
大野:そうですね。そして、どう自然にデータを取るかって、けっこう難しいなと思っています。例えば僕らはXもYouTubeも開くから、そこには好みのデータとかが貯まるじゃないですか。
会話の場合、どこまでデータが貯まるかというのはありますよね。つまりYouTubeを開くのは、YouTubeの動画がおもしろいからで、そのぐらい自然とやるような(ものがあれば)。
亀山:でも最近さ、マイクをつけといたら、24時間ぐらいはデータを録音しっぱなしのハードウェアがあるじゃない。
大野:ありますね。
亀山:それをつけっぱなしにしといたら、俺が今日1日話している内容は全部入ってくるんじゃない?
大野:確かに、一応入りますね。文字起こしされた情報が残りはしますね。
亀山:それをAIがある程度簡略化して、まとめ上げたものとしてまたサーバーに落とし込むことはできるだろうから。
大野:できるはできますね。データ量がすごく多くあっても、目次みたいな感じで整理して置いておけば、あとから辿る時に全部覚えなくてもよくなってきますし。
亀山:自分の行動って意外と自分でも忘れたりしているから、自分以上に自分を理解している存在が、一方で出来上がる気もするんだよね。