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【生成AI時代のプロダクト×マーケ戦略】DMM亀山会長語るAI事業の勝ち筋 / 終活ねっとを辞めた理由 / 品質が良くても売れない現実 / 後発でも勝てる / 広告費の考え方(全1記事)

OpenAIがGoogleと並べたのは“したたかな演出“の結果 DMM亀山会長が語るプロダクトのマーケティング戦略 [1/2]

【3行要約】
・DMM.com会長の亀山敬司氏は「人を集める」と「サービスに落とし込む」は別のスキルであり、競争市場では資金力と戦略的マーケティングが重要だと語ります。
・OpenAIの成功を例に「したたかな演出」と先行者利益の重要性を指摘しています。
・ビジネスリーダーは製品の質を高めつつも、市場での1位ポジション獲得のために適切なタイミングで投資を行い、時には「未完成でも出す」決断が必要です。

「人を集める」と「サービスに落とし込む」では別のスキルが必要

大野峻典氏(以下、大野):「終活ねっと」を途中でやめたみたいな話がありましたが、そもそもあれって何がうまくいかなくてやめたんですか?

亀山敬司氏(以下、亀山):終活のサイトを買収して育てて、お坊さんの手配とかお年寄りを手配したいと思ったけれど、そもそもリアルな業種をやれる人間が少なかった。サイト自体のマーケティングは良かったんだけど。

大野:そうなんですね。その事業としてというか……。

亀山:トラフィックはあったけど、やはりそこから先、結局いろいろな人を手配するのはまったく別のスキルなんだよね。SEO上強いとか、ネット上で人を集められるのと、実際サービスに落とし込むのは違うじゃない。

大野:確かに。終活領域とか、ぜんぜん違いそうですものね。

亀山:人を集めるのと、ちゃんとリアルを結ぶ部隊を作り切れなかった。

大野:そうなんですね。

亀山:だから、今で言うと「小さなお葬式」とか、そういったところはちゃんとしっかりやれているわけ。たぶん初めのタイミングは似たりよったりというか、うちらとしてもそこは未来があるなと思って投資したんだけども。でも、組織力的には弱かったので、ビジネスモデルは良くても、やはりやる人材がうまくまとめられなかったということ。

大野:なるほど。事業によって「こういう人を集めなきゃいけない」など、そもそも組織を作る難易度も変わってくるということですね。例えば、インターネットで完結する事業のほうが、インターネット的な組織を作るのは簡単だったりするわけじゃないですか。

亀山:そうそう。ゲームなら良いゲームだけ作ればいいんだけど。

大野:そうですよね。

亀山:じゃあ(例えば)AlgomaticもBtoBのサービスを作るとしようか。良いものを作って「これは最高のAIです!」となっても、企業に売り込む営業マンが必要とかね。

大野:そうですね。

亀山:あと、企業には信用力が必要だから、広告とか、そういった露出が必要だとかね。

大野:ぜんぜん違うスキルですものね。僕はエンジニア出身なので、やはりエンジニアを仲間として集めやすかったりしますけど、マーケティングに強い方とかPRに強い方とかだと、「新しく出会わないといけないな」みたいなところもあったりするので。より遠い産業になればなるほど、難しいということですね。

亀山:そうそう。それが泥臭ければ泥臭いほど、キラキラと泥臭さがうまく結び付きにくいのよね。

大野:そうですね。

品質の良いものが売れるわけではない

亀山:だからそのあたりがけっこう大変。多くのエンジニアが今、AIを作ろうと思っているんだけど。実際に会社に持っていって、「これ最高ですよ!」とか言っても受け入れてくれるかというと、なかなか難しい。

大野:営業しに行っても、それを受け入れていただけるかどうかはまた別の話ということですね。

亀山:そうそう。会社からすると、例えばどこかの5、6人のAIを開発したチームが来るわけじゃない。「これをやれますよ」「すごいですよ」と言っても、「いや、ちゃんと続けてくれるの?」「せっかく導入したけど、途中でやめちゃわない?」とかいう、会社への不安もあったりするじゃない。

大野:ありますね。

亀山:そこのAIと、例えばドコモとか富士通がやっているやつとどっちがいいと言えば、「こっち(ドコモと富士通)のほうが手堅いかな」とか思っちゃうんだよね。

大野:確かに。

亀山:彼らからすると、「いや、あんなものよりも安くていいんですよ」と。それがもし本当だとしてもうまくいかない。だから、世の中はロジックどおりいかないんだよね。品質の良いものが売れるわけじゃない。

大野:知ってもらう努力が必要ということですね。

亀山:もちろん良いものじゃないといけないんだけど、どうしても社会とつながる時にはまた別のスキルが必要ということなんじゃない。

競争になった時点でマーケティングをしないと勝てない

大野:めっちゃ真逆の話ですが、Facebook(現Meta Platforms)創業者のマーク・ザッカーバーグが「広告費は良いサービスを作れなかったことへの罰金だ」みたいなことを言っているじゃないですか。

亀山:なるほど(笑)。初めて聞いたけど、なるほど。

大野:最近Algomaticでリリースした「アポドリ」という営業AIエージェントでは、今のところ広告費がほとんどゼロなのですが、問い合わせがめちゃくちゃ来ているんですよ。なので、真逆にも聞こえるなとも思うんです。

亀山:いや、本質的には、もちろん品質って良いものなんだよ。でも、じゃあ似たような良いものを作ったとしようか。それが自分たちだけにしか作れないものならともかく、たいてい、たぶん誰かがちょっと真似すれば作れるものだったりしない?

大野:そうですね。競争になったら、もうその時点でちゃんとマーケティングしないと勝てないですね。

亀山:競争になるぐらいの市場じゃないと大きくないじゃない。

大野:そもそもそうですね。

亀山:「アポドリ」とか「アホドリ」とか「アワドリ」とか、3つぐらい会社ができたとするか(笑)。

大野:(笑)。似たような名前ですね。

亀山:そうしたら俺がアホドリがいいと思って、「アホドリのほうが最近タクシー広告を見るな」とか「誰かが導入していたのがあったな」と入れたりすると。2~3割ぐらい違う程度で似たりよったりだったら、自分たちで開発した人間じゃない人が買うわけだから。例えばシャンプーも、どのシャンプーがいいかなんてわからないよね。

大野:わからないですね。

亀山:だとしたら、なんとなくみんなが使っているから安心できて、会社が大きかったり……。

大野:確かに。普通に知っているところで買いますものね。

亀山:でも、スタートアップはそもそも資金がない中で、品質だけで勝負しているわけ。逆に言うとね。みんな広告費もないし、一番良いものが広がるのよ。でも、広がっていく中で、機動力で見た時に、似たようなものが2つあって、こっちは広告をバンと打つ、こっちは打たないとかの差が出るだけ。

大野:確かに。

亀山:だからその程度だよ。本質はやはり良いものじゃないと。

世の中は本質以上に金の力でバンッと来ることがある

大野:本質は良いものじゃないといけないということですね。僕、日頃から思うんですけど、例えばアポドリとかも、かなりサービスを作り込んでから出したんですよ。開発費を本当は出していいところ以上にかけているんですね。それもあって最近広く知ってもらっているというのもあって。

だから、ギリギリの競争になると、かなりマーケティングの競争が厳しくなるというか、ちゃんとしなきゃいけないじゃないですか。でも、良いものを作る側にちょっと突き抜けて2倍、3倍良いものにしておけば、もはやこの開発費ってマーケティングコストとも言えるよなという感じもしますよね。

実は明らかに余剰に、2倍、3倍良いものを作っちゃうという手も、マーケティングとしては機能するんだなと最近は……。

亀山:本質はそっちなんだけど、世の中は本質以上に、金の力でバンッと来ることがあるというだけだよ。

大野:(笑)。そうですね。DMMがよくやるやつですね。

(一同笑)

亀山:うちのやつは、似たようなサービスだったら(お金を)かけちゃえって話になるし、「いや、これは勝てないな」と思ったらいかないもの。

大野:そういうことですね。逆にマーケティングでまくれるとか、お金をかけてまくれるところはやる。

亀山:「これならすぐできるわ」というものがいっぱいあるというか。

大野:ほとんどのものは、そういうちょっとコモディティっぽいものというか、ほぼ同じような品質のものを作れちゃうものですよね。

亀山:そうだね。だって、自分たちもそれ自体の開発で、例えば毎月100個とか売れるとしようか。それが200個売れていったほうが、さらに開発ができるじゃない。

大野:それはそうですね。

亀山:初めの段階で(売れる数を)100個、100個、100個から、広告をバンと打って200個、200個、200個にして、赤字だけどやっていく中で、ある程度市場で1番を取ったら、さらにそこから開発できる。

大野:そうですね。

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