2024.10.21
お互い疑心暗鬼になりがちな、経営企画と事業部の壁 組織に「分断」が生まれる要因と打開策
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司会者:ここからは、クロージングに入ります。クロージングは、Scrum Inc.、アヴィ・シュナイアーさま、JJ・サザーランドさま、Scrum Inc. Japan、クロエ・オニールさまによるご講演とディスカッションです。それでは、モデレーターのクロエさま、お願いいたします。みなさま、拍手でお迎えください。
(会場拍手)
アヴィ・シュナイアー氏(以下、シュナイアー):おはようございます。Agile日本!
クロエ・オニール氏(以下、オニール):今日、アヴィが英語で登壇してくれるので、私が日本語に訳します。よろしくお願いします。
(会場拍手)
始める前に、Agile Japanのみなさんに感謝したいと思います。ここに呼んでくれてどうもありがとうございます。
コロナが明けてからみなさんが集まるのは初めてだと思います。以前、私も日本でトレーニングをしていたので、今回は見覚えのある顔がたくさん見られてすごく楽しみですし、光栄に思います。
アジャイルの価値における一番根本的で大事な部分は人なので、「アジャイルを組み立て直そう」というテーマもすごく合っていると思います。
今日は、日本の文化におけるアジャイルの変革についてお話しします。
まずは、感謝したいと思います。スクラムの考案者であるジェフ・サザーランド博士をはじめ、息子でScrum Inc.のCEOでもあるJJ。Scrum Inc. Japanのクロエもいます。私は、アジャイルの変革を世界中で進めているコンサルタントです。
今日は、文化についてお話ししたいと思います。文化について話をする前に、まず、「文化とは何か?」というところから始めたいと思います。
「文化」を辞書で引いた時に何が出てくるかというと、とてもアカデミックな訳が出てきます。「文化とは何か?」ということが、歴史的なところから訳されています。それもすごく大事です。
でも私たちが文化について話す時は、違う視点で話します。Scrum Inc.が文化について話す時は組織的文化について話します。これは、辞書には載っていません。いろいろなホワイトペーパー、リサーチペーパーを読まないと、組織的文化について理解することはできません。
(スライドを示して)これはみなさんも読んだことがあると思います。「組織文化とは」というデフィニション(※definition)には、いろいろな要素が含まれています。この文章の中ですごく大事な部分は、文章の最後のあたりに書かれているところです。持続的な競争優位性を付加するというのが非常に大事なポイントです。
私たちが職場における組織文化について考えた時、競争優位性にプラスになるのかどうかを自問自答しなくてはいけません。組織文化が持続的な競争優位性を付加していないのであれば、文化を変える必要があると思います。
私たちが考えなくてはいけない組織文化の要素には、どういうものがあるでしょうか? これもいろいろなリサーチペーパーに書かれています。(スライドを示して)こちらは、エドガー・シャインというMITの教授から出ているモデルです。
彼は、重要な要素が3つあると書いています。表面的に見えないものから見えるものまで描かれています。
アサンプション(※assumption)……ここでは、認識、信念、思考、感情というものが仮定として挙げられています。これらは、表面には見えませんが、人との対話の中で感じることができるものです。もしくは、質問をすることでわかることです。
その上に「価値」があります。価値の中には、戦略、目標、ゴール、フィロソフィーというものがあります。
私は、この中で一番大事なものは正当性だと思います。
職場において、間違った決断をした時に、「なぜ、そうしたのか?」と聞かれます。私たちも自分の子どもに対して、そうしていますよね? 「なぜそうしたのか?」と聞かれた時、私たちは後から理由を考え出します。仕事において、「なぜそうしたの?」と聞かれると、ゴールに整合するように私たちは言い訳をしようとします。
(スライドを示して)この図において、成果物として目に見えるものは、例えば人がオフィスの中でどう座っているか、組織の中でどういうプロセスが存在するのか、です。
じゃあ、スクラムはどこにあるのか? みなさんに教えていただきたいと思います。スクラムは一番上にあります。組織が使えるプロセスの1つです。
アジャイルはどこにあるでしょう? アジャイルは真ん中、価値のところにあります。アジャイルはフィロソフィーであり、私たちが体感できる価値です。ここにいるみなさんや私たちのように本当にアジャイルを信じている人間は、アサンプションの一部になっていきます。でも、多くの職場ではアサンプションになっていません。
ここからは日本の文化について話していきたいと思います。日本文化はどういうところから来ているのか。木に例えると、日本文化のルーツは中国から来た儒教、インドから来た仏教。神道もありますね。
日本のルーツはこれら全部です。これらは他者への配慮、周りの人へのマインドフルネスだと思います。これは世界中でスクラムを教えている私から見てもとてもユニークです。「周りに対するマインドフルネス」は日本にしかありません。
アメリカではみんな「自分に対してマインドフル」なので、とても違います。(周りの人へのマインドフルネスは)日本で一番美しい文化の一部だと信じています。
(スライド示して)木の葉っぱを考えた時、どう表れるのかというと、例えば礼儀。これは、他人に対するリスペクトから来るものだと思います。
パンデミック前に日本に来た時、みんなマスクをつけていたんですね。私は「自分が風邪をひきたくないからマスクをつけているんじゃないか?」とその時に思いました。私の友だちの和田さん(和田圭介氏)はアレルギーだからマスクをつけているんだと思っていました。
だけど、和田さんはその時、周りの人にくしゃみがかかるのを防ぐためにマスクをつけているんだと言っていました。和田さんは自分のことを心配してではなく、電車に乗っている周りの人への配慮からマスクをつけていました。ほかの国ではこういう行動は見られません。
日本でエレベーターに乗ると普通のボタンがあって、低いところに車椅子に乗っている人たち用のボタンがあります。周りの人へのマインドフルな気持ちは、世界中のほかのどこにも見られません。
(スライドを示して)日本の街中ではこれが見られます。目が見えない人が道を歩けるように、ボコボコになっています。
犬を飼っている人も周りの人に対してマインドフルです。ワンちゃんが電信柱におしっこをすると、日本ではペットボトルに入った水をかけますが、それは日本だけです。アメリカでは道路がおしっこだらけです(笑)。
あと、お土産を渡す文化。「プレゼントをちょうだい」と言う文化じゃなくて(笑)、どこかに行ったらみな、お土産を買って職場の人に渡しますよね。
あと、日本ではなにか落とし物をした時に、電信柱にそれを結びつけて「落とし物」と書いているのを見ます。ほかの世界では、なにかを拾ったらみんな自分の物としてポケットに入れちゃいます。そういった意味でも日本はすごく特別な国だと思います。
では、次にアジャイルの文化がどこから来たのかを考えていきたいと思います。
アジャイルの歴史も日本にオリジンがあります。アジャイルのオリジンは、トヨタ生産方式から来ています。
多くの人がトヨタ生産方式について考える時、一番上のポイントである「無駄を排除すること」をまず考えるでしょう。みなさん、下から2番目のポイントを忘れがちです。「人を尊重すること、周りにリスペクトを持つこと」。
車を大量生産して、そこで働いている人を苦しめるという文化をトヨタは最初から持っていません。アジャイルのバリューを最初に書いた人たちは、これにとてもインスパイアされました。
ここで、アジャイルの文化の歴史が見られます。まずはトヨタ生産方式があって、そこからスクラムが生まれ、そこからアジャイルの価値が生まれました。ここにいるみなさんは、スクラムの価値、アジャイルの価値と原則を深く理解していると信じています。
これを見ると、本当にこの価値というものがトヨタ生産方式であったり、日本から来ていることがわかると思います。スクラムの柱や価値観と日本の文化や価値観が、ぶつかっているのかそれとも合っているのか、どっちなのかを考えた時、私は合っていると思います。周りに対するリスペクトは自分に対しても大事ですし、周りに対しても大事です。
ただ、日本を周りいろいろな組織の人たちと話した中で、日本のビジネスの文化において、その要素がアジャイルに合っていないことが明確になっていると思いました。
(次回へつづく)
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