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株式会社令和トラベル 執行役員 VPoE 麻柄翔太郎氏ピッチ(全1記事)

粗利率が低い旅行代理店業務を完全自動化 競合比10倍の生産性を掲げ業界の常識を覆したスタートアップ

新しい未来の実装に挑むエンジニアのためのピッチコンテストStartup CTO of the year 2024。スタートアップCTOによるピッチコンテストを実施し、事業成長に連動した技術戦略を実現する経営インパクトや組織開発力などを評価指標に、2024年最も輝いたCTOの挑戦を讃えました。本記事では、株式会社令和トラベル 執行役員 VPoE 麻柄翔太郎氏の6分間のプレゼンテーションの模様をお届けします。

日本人のパスポート保有率はわずか17パーセント

麻柄翔太郎氏(以下、麻柄):こんにちは、令和トラベルの麻柄と申します。よろしくお願いします。みなさん、海外旅行は好きですか? 吸い込まれるような大自然、歴史を感じる街並み、プライスレスな体験。海外旅行には多くの感動が詰まっています。きっとみなさんの中にも、海外旅行が大好きな方は多くいらっしゃるのではないでしょうか。

しかし、日本人のパスポート保有率はわずか17パーセント。海外旅行のハードルは非常に高いのが実情です。「日本と海外をもっと近づけたい」。この課題を解決するために、私たちは海外旅行アプリ「NEWT(ニュート)」を提供しています。

NEWTは、パッケージツアーを簡単に予約できるサービスです。ツアーの商品数は、日本最大級の7万ツアー。お得なキャンペーンも盛りだくさんで、煩雑な旅行準備もアプリ1つで完結できます。

うれしいことに、これまで4万人を超える方に海外旅行を提供できています。



その結果、年間の流通額は数十億円と、短期間で大きな事業成長を成し遂げられました。しかし、この事業成長を実現するためのハードルは非常に高く、大きく2つの経営課題に直面してきました。

事業成長でぶつかった2つの経営課題

麻柄:1つ目の課題は、事業成長に関するものです。ECサイトにとって、良質な品揃えはサービスの生命線です。私たちも、ありとあらゆる旅行ニーズに応えるために、日本No.1のツアー商品数を用意することを計画していました。しかし、ツアーの商品作成は非常に複雑でした。創業当初のペースでは5年かかる見通しで、到底許容できるスピード感ではありませんでした。



2つ目の課題は、利益創出のドライバーを作るという課題感でした。ツアーの商品作成だけでなく、予約の手配、渡航のサポート、海外旅行を支えるための業務は非常に膨大でした。競合他社はオペレーターを大量に抱えて運営しているという構造でした。

加えて、旅行業界は粗利率が低い構造でした。これらを加味した上で、理想とする高い収益性を実現するためには、少なく見積もっても、競合比10倍の生産性を実現する必要がありました。



事業成長のために必要な、この2つの経営課題。これは、ちょっとやそっとの工夫では到底解決できないレベルの、非常に大きな課題でした。

どう解決したか。私は、テクノロジーによる旅行代理店業務の完全自動化というアプローチで、これらの経営課題に挑戦しました。

まず初めに、業務自動化の全体構想を描き、中期事業計画から逆算して必要な自動化目標を定め、ロードマップを策定していきました。そして、業界構造、商品、業務を誰よりも深く理解し、ドメインモデリングを進めていきました。

生成AIで旅行代理店業務を完全自動化

麻柄:その結果、商品も業務も非常に複雑すぎて、すべてを一度には開発できないことがわかってきました。そのため、業務を因数分解して、一つひとつの機能を最小化し、拡張性を担保した上で、非常にインパクトの高い機能から、順次自動化をしていくというアプローチを採用しました。



最小単位で自動化を進めていく戦略を採ることで、安全かつスピーディーなデリバリーを積み重ねていくことができました。また、各機能の検討に当たっては、技術による解決は諦めずに行っていきました。従来的なシステム開発ではどうしても自動化が難しいような業務についても、生成AIで最後まで自動化していきました。


100人規模にスケール可能な組織設計を行う

麻柄:そして何より、これらを高い水準で実行できるエンジニア組織を作ることに注力してきました。



採用は凡事徹底、近道などありません。行動量を最大化すること。候補者体験をとにかく向上すること。全員でこの2つに徹底的に向き合って、PDCAを回していきました。



そして、100人規模にスケール可能な組織設計も進めていきました。横断的な関心事を別チームとして切り出し、機能開発に集中できるプロダクトチームを、横に横にとスケールアウトできる構造を作っていきました。



その上で、一人ひとりのパフォーマンスを最大化できる環境作りにも取り組んでいきました。今では、エンジニアは30人を超え、組織で壮大な目標に立ち向かえる状態になってきています。


技術で経営課題を解決するための3つのポイント

麻柄:これらの取り組みを重ねた結果、短期間で業務自動化システムの土台を完成させることができました。



狙っていた圧倒的な生産性も実現できています。ツアーの商品数も7万ツアーを超え、ここまでの事業成長に大きく貢献することができました。



私は技術で経営課題を解決するために、「イシューを見極めること」「技術による課題解決をできる構造を作ること」、そして「強いエンジニア組織を作ること」。この3点をどれだけ高いレベルで実現できるかに徹底的にこだわって、これらの取り組みを進めてきました。



これからも技術で事業成長をリードし、ますます多くの方々に、すてきな海外旅行をたくさんお届けしていきたいと考えております。テクノロジーを駆使し、旅行の未来を創る。令和トラベルでした。

(会場拍手)

意思決定の優先順位付けで重視していたこと

司会者:麻柄さん、ありがとうございました。さあ、それでは審査員の方から質問がありましたらお願いいたします。澤山さん、お願いします。

澤山陽平氏(以下、澤山):ありがとうございました。開発しなきゃいけない機能が本当に膨大で、その中でインパクトを見極めて、少しずつ優先順位を決めてやっていったという話がありましたが、そこに関して2つ気になっています。

「インパクト」と言葉で言うと簡単ですけれども、その観点はいろいろあると思います。特にCTOの立場で、「こういうものから優先していくべきだ」という意思決定について聞きたいです。

もう1つは、先ほど(業務自動化でツアー作成業務が)95パーセント(削減された)となっていましたけれども、逆に言うと、技術では解決していない部分とか、あえて残した部分もあるのかが、ちょっと気になりました。

麻柄:ありがとうございます。意思決定の優先順位については、私はVPoE(Vice President of Engineering)なんですけど、創業当初はCTOとしての意思というよりは、事業としてどれだけ成長のドライバーを作れるかを最重要視していました。

効率化についてはけっこうシンプルです。仕入先によってもいろんなバリエーションがあって、料金の設定1つに取っても、いろんな条件分岐があるので、実際に手を動かして、全部マニュアル作業で業務をしてみる。そうすると、「ここにこれだけ時間がかかる」というのが見えるので、オペレーションをしている部署と一緒に、業務を全部洗い出して優先順位をつけていきました。

2つ目が、(ツアー業務作成で)自動化できていない部分ですよね。シンプルに業務のバリエーションがありすぎて、対応できていない枝葉の部分が多いのが1つです。

あとは、先ほど生成AIで、ツアーのタイトルも自動生成していると言いましたが、やはりエリアによってはなかなか精度が出なかったりします。なので、最後は人がチェックをして整えていくところは、どうしても残ってしまっています。

澤山:ありがとうございます。

意思のこもった仕事が、一番成果につながる

司会者:小野さん、お願いします。

小野和俊氏(以下、小野):プレゼンありがとうございました。先ほど、VPoEというお話もありましたけども、後半のほうで、エンジニア一人ひとりのパフォーマンスを最大化できる組織を作ったとおっしゃっていました。

いろんな事業のステージやチームのメンバーの状況とかによって、パフォーマンス最大化のやり方は違うと思うんですけど、工夫のポイントを教えていただけますか?

麻柄:ありがとうございます。正直、創業初期は、そこまで頭が回らないというか、気にしていられなくて、とにかく作るというところがほとんどでした。ただ、この1〜2年は、やはりプロダクトチームも20人とかに分かれてきて、いろんな特性の開発が必要になるかなと思っています。

新しい機能を作るところや、やはり業務システムになると、細かなところをチューンしていくことや、SRE(Site Reliability Engineering)的な観点も必要になると。



いろんな業務が出てくる中で一番やっていたところは、一人ひとりの意思を極力尊重した、その人に合ったミッションを設定することや、アサインをすること。そんなところが、一番工夫していたポイントだと思います。

「やりたいこと」と「やるべきこと」が一致して、そこに対してちゃんと実力もついてくるという構造が作れると、その中で一人ひとりが成長できる環境も作れますし、何よりも意思のこもった仕事をすることが、一番成果につながると思っているので、極力それを実現できるようにと心掛けて運営してきました。

組織としての一体感を生む工夫

小野:ありがとうございます。例えばスキルマップを書いた時に、「これをやりたい人、ちょうどここにいたよね。これをやりたい人もいたよね」とマッチすればいいと思うんですけど、みんながあんまりやりたがらない時は、どうやって調整をされましたか?

麻柄:30人ぐらいいるチームなんですけれども、幸いなことに、好き嫌いせず「事業に向かって必要なことはする」というスタンスを強く持ってくれている人が多く集まっています。

たぶんこれは、ミッション・ビジョン・バリューの研修を、会社で幾度となく繰り返して、「いい旅行サービスを作りたい」という想いをみんなで強く持っているからだと思っています。

もちろん内情では、「これは嫌だな。あっちのチームのほうがいいよ」みたいな話も、もちろん聞くんですけれども、表面的にそれを爆発させることなく、向き合ってくれているのには、正直救われている部分が非常にあります。

小野:よくわかりました。ありがとうございます。

司会者:以上で質疑応答は終了でございます。麻柄さま、どうもありがとうございました。どうぞみなさん、拍手でお送りください。

麻柄:ありがとうございました。

(会場拍手)

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