「もっと効率的に仕事をこなしたい」「仕事もプライベートもバランスよく過ごしたい」という人に向けて開催された本イベント。目標実現の専門家の大平信孝氏と、コクヨ株式会社ワークスタイルコンサルタントの下地寛也氏、資格ソムリエ(R)の林雄次氏をゲストに迎え、「整理術」「行動術」「メモ術」を組み合わせた実践的な手法について語られました。本記事では、相手が主体的に動き出すリーダーの“お願い”の仕方を明かします。
何度言っても変わらない相手を動かすコツ
下地寛也氏(以下、下地):『感情的にならず相手を「すぐやる人」にする34のコツ』も、自分がすぐにやるためのコツと、相手にすぐにやらせるコツ、共通点と相違点ってありますか?
大平信孝氏(以下、大平):そうですね。鋭いご質問です。前提として、やはりすべての土台に、「自分がすぐやる人だったら、相手にもいい影響を与えられる」というのがあるんですよ。「自分が動いていないのに相手が率先してやるか?」ということですね。
下地:あぁ、「お前が言うな」というような。
大平信孝氏(以下、大平):そうですね。だからやはり一緒にすぐやる人になるっていうのがベスト。だからこそ、リーダー側や親側がまずは「すぐやる」のは1つありつつ。でも、そうは言っても相手と一緒に動きたいというか、言ったことをやってもらいたいシーンっていっぱいあると思うので、その時にやはり問いかけですよね。
ただドッジボール的に「これやってよ」と言うだけじゃなくて、問いを少しだけでいいので足すんですよ。以前エッセイの取材を受けた時に、編集の方が「うちの主人が電球を替えてくれないんですよ」という話になって、「替えてもらえばいいじゃないですか」みたいな。「でも、何度言ってもやってくれないんです」と。
「じゃあ、こういうふうに言ってみてください」と。「『替えてほしいんだけど、いつだったらできそう?』と言う。それをただ付け加えるだけでいいですよ」って。そう言われたほうは、「じゃあ、このテレビを見終わったらやるよ」とか。
「いつだったらできそう?」と言うことで、相手に主導権を渡している。なので、相手が自分で少しだけ考えて、「じゃあ、明日やるよ」と宣言してもらうと、結局、実行確率が上がるんですよ。
だけど言われっぱなしだと、結局、他人事なんですよね。「あなたはやりたい、替えてほしいって言っているけど、別にまだ知らない」という感じで自分事になっていない。
下地:なるほど、なるほど。
大平:やってもらいたい時は、自分事の視野になんとか入れてもらわないといけないんです。その1つの方法として、問いかけて答えてもらう。「じゃあ、明日やるわ」とか「これ終わったらやる」というかたちで宣言してもらうと、自分事になってやってもらえる。
下地:なるほど。
大平:やはり言う側も、何回も同じことを言いたくないじゃないですか。「また、もう何回も」みたいな。それがお互いにけっこうコミュニケーションのストレスになっていて。
「また言われている」ってなるから言われるほうも嫌だし。言うほうも「また言わなきゃいけない」というので疲れているのが、ビジネスシーンでもご家庭でもけっこう多いんですよ。
自分が指示するのではなく、相手に主導権を渡す
大村:大平さん、僕は『感情的にならず相手を「すぐやる人」にする34のコツ』を読ませていただいて、思いっきり気に入ったページに折り目をつけているんですけど、まさに「相手に行動の主導権(を与える)」というのを家でちょっとやってみたんですよ。
大平:どうでした?
大村:確かに効果あった。だからすごいと思って紹介したいなと思ってたんです。
大平:これで万事うまくいくわけではないんですけど、少しでも相手が動き出す可能性が上がるコツをなんとかまとめました。
大村:あと僕がもう1個やっていたのが、「自分2、相手8の割合で話す」ということ。なぜならば、「話すことは聞くことよりも行動につながりやすい」。
下地:自分が指示するんじゃなくて、相手に話してもらうっていう。
大平:そうなんですよ。話すっていうのは「リリース」という「放す」ということでもありますので、結局、思考がごちゃごちゃしていると動けないんですよ。何をやったらいいか、あれもこれもってなっちゃうので。
だけど、話している中で「あぁ、自分はこういうことが必要なんだ」とか「これがやりたいんだ」と自分で気づくことにもなるんですよ。なので、話しているだけっていうのは本当にドッジボールのようで、受ける側もけっこうしんどくなってくるので、やはり対話というか、キャッチボールをすると。ドッジボールよりもキャッチボールで相手に話してもらい、相手に主導権を渡す。
相手も、最初はスラスラ出てこなくてもいいんですよ。でも、そういう問いを増やすことで、相手が自分で考えられるようになってきます。
副業がうまくいく考え方
下地:ちなみに大村さんは『仕事の「整理ができる人」と「できない人」の習慣』を出されましたけど。次に本を出すとしたら、何にするんですか?
大村:実はもう4冊目を書き始めていて、ページ構成までできています。
下地:どんな本ですか?
大村:実は副業をどうやってやっていくかみたいな。
大平:マジですか。楽しみ。
下地:副業を整理して、うまくいくためにどうするか。ちなみに副業をうまくいかせるためにはどうしたらいいですかね?
大村:好きなことをやったほうがいいと思います。ちょっとだけぶっちゃけますと、僕、けっこう副業で講演をしたり、本を書いたりするんですけど、そのお金はすべて世の中に再還元しているんですよ。
大平:そうなんですか。
大村:いろんな本を買わせていただいたり、いろんな方のセミナーに行ったり。要は、僕の場合は本業があるので、生活費は本業で賄っていて、副業で得たのは本当にボーナスみたいなものなので、それは全還元していく。
大平:(笑)。へぇ、そうなんですね。
下地:すごいですね。
大村:本来やりたいことが、お金が目的になっちゃうと、自分がやりたいことと違うことをやってしまう可能性があるかなと思って。あえてそっちのお金はすべて再還元する。
だからチャリティーランナーをやったり、クラウドファンディングに充てるとか、そういうふうに回していく。でも、どんどんどんどん自分に戻ってくるモノが大きくなる感覚があるんですよ。そういうかたちでやっていきたいなと思っています。
だから本当に、この本を買っていただいても、別に僕がおいしいものを食べに行くとかじゃなくて、世の中に再還元する原資にさせていただくので。
下地:大平さんは作家が本業ですが、本を書いたらどうされていますか?
大平:やはり次のメソッド開発や、次の本の構想にまた使っていく感じですかね。
資格ソムリエが語る、資格を取得で一番大事なこと
大村:今(林氏が)来てくれました。自己紹介からお願いします。
林雄次氏(以下、林):資格ソムリエ、林でごさいます。今日時点で資格を536個くらい持っています。自己紹介だけで小一時間くらいかかりますので割愛しますけれども(笑)。最近は『かけ合わせとつながりで稼ぐ 資格のかけ算大全』というのが出ております。
大村:よかったら、このままちょっと座っちゃいましょうよ。さっき、実はこの4人で書泉グランデでイベントをしていました。やはり資格を取るのも全部の要素が入っていると思うんですよ。
大平:確かに、確かに。
下地:行動とかね。
林:そうなんですよ。行動もメモもそうだし、片付いていないと勉強できないですからね。でも(林氏は)お坊さんなんですよね。
林:浄土真宗の僧侶の資格を取ったということでね。
下地:それも資格の1つとして。
林:はい。すべての学びの根源はそういうところに集結するかなというので1回学んでみたんですけど、よかったですよ。世界のニュースとかがけっこうわかる。
下地:資格を取るのは何が一番大事なんですか?
林:資格を取るのは、やはり好きになることが大事だと思いますよ。
大村:やはり好きなんだ。
下地:500個も好きなことがあるんですね。
林:そうそう。資格って1,000個も2,000個もあると思うんですけど、土木系のやつとか電気系のやつを持っているかっていうと、1個も持っていないんですよ。これまでの縁もゆかりもないものを取ってもしょうがないので、マニアになっちゃいけないなと思って、自分に関わりのある分野、好きな分野だけやっているんですよ。だから、何でもかんでもやるわけではない。
優先順位付けよりも大事なのは「やらないこと」を決めること
下地:1個取るのにどれくらいかかるんですか?
林:1個取るのに、早い時だったら5分くらいですけど。
大村:資格5分って、何(笑)?
林:無料でネットで取れるのとかあるので。
大村:晴れ男・晴れ女検定とかありますよね。
林:唐揚検定とかね。
下地:一番時間がかかったのは?
林:一番かかったのは、中小企業診断士で5年かかりました。
大村:中小企業診断士なんて合格率4パーセントとかですもんね。
林:大変ですね。もう本当にピンからキリまでなんですけど。
大村:ということで、最後に一言ずついただいていこうかなって思います。私からお伝えさせていただきますと、整理ができる・できないのポイントのところで、やはり劣後順位を決めるっていうか、やらないことを決める。
下地:優先順位じゃなくて?
大村:優先順位は決めなくていいけど、やらないことを決めるのが重要かなって思っております。
下地:劣後順位を決めるコツは何ですか?
大村:劣後順位を決めるコツは、それこそ自分はどうありたいかっていうところを選択基準にする。自分がどうありたいかをちゃんとイメージしていくことによって、劣後順位を決めることができます。
劣後順位というのは、ドラッカーとかが言っているんですよね。やらないことを意識して引き算することで余白が生まれると、また新しい出会いや機会が生まれる。
下地:余白を作らないといけないんですね。
大平:余白、大事ですよね。
大村:余白で言うと、この本にプーさんの名言を入れているんですよ。「僕は何もしないをしているよ」という。はい、じゃあ、次は林さん、お願いします。
資格の「かけ算」でオンリーワンの存在になる
林:いろんな『かけ算大全』と言いつつ、掛け算、足し算、割り算、引き算、全部で4つご紹介しているんですけど。引き算も大事で、まず引かないとモノを入れられないっていうのは、本当です。
でも、本当の自分の強み、または自分自身をちゃんと表現するのは(掛け算なんです)。「社労士です」と言っても4万5,000人いてコンビニよりも多いので、「どんなコンビニですか?」ということにもなりますよね。
私の場合は「IT×社労士×僧侶」というのは私だけだと思うんですけど。でもそれって別に私だからできるわけじゃなくて、みんなできると思うんですよ。それぞれ本当にオンリーワンだと思うので、そのオンリーワンをわかりやすく表現するのに資格を上手に使ったらいいんじゃないですかと。
今まで存在しなかった「本屋×カフェ」というブックカフェという新しい業態が今や当たり前になっている。それをやり始めた蔦屋書店がありますが、蔦屋が代官山に店を出すって、昭和の人にはたぶん想像だにできないことだったと思うんです。
新しい組み合わせはとんでもないものを生む場合があると思うので。自分をちゃんと表現するだけなんですけど、資格を使うとこんなやり方がありますよっていうのをご紹介させていただいております。
物事の分け方と目的が合っていない状態が「やりにくさ」になる
大村:ありがとうございます。下地さんどうぞ。
下地:『「しやすい」の作りかた』を書きましたが、「しにくい」というのが、物事の分け方と目的が合っていないってことなんですね。なので、こうなりたいのに、仕組みや制度がずれている。「何の目的で組織や整理の仕方を分けるんだ?」ということをいろいろまとめさせてもらった本です。なんかやりにくいなとか、気持ち悪いなっていうのがあったら、「自分のやっている目的と合っているかな」ということを考えていただければいいかなと思います。
大平:最後になりますが、自分1人ですぐやる人になるのもいいんですけど、やはり自分と相手、共に行きたい未来に行くというか、一緒に協力してすぐやるチームができたら一番いいと思います。
やはりアドラーも「すべての悩みは人間関係にある」と言っていて、結局、そこで感情的になって消耗してしまって、自分の本当にやりたいことに行き着かないのはもったいなさすぎる。
なので、お仕事上の人間関係やご家族との人間関係の感情的なストレスを、この本で撃退していただいて。自分と相手との間に境界線を引いてもらって、コントロールできるところに集中すれば、基本的にストレスは生まれないんですよ。
だけど、あの上司がとか、子どもが、親が、パートナーがって、コントロールできないところに踏み込むと、それがストレスになっちゃうんですよね。
だから、そのストレスからできるだけ自由になって、相手により効果的な良い影響を与えられるようなコミュニケーションを少しでも増やしていただけたらと。そのきっかけとしてこの本を使っていただけたらと思います。
大村:はい、ありがとうございます。ということで、今回はおじさん著者4人による対談形式でお送りしました。最後までお付き合いいただきましてありがとうございました。