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心動かす「伝わるプレゼンの法則」~デザイン編~ (全4記事)

日本語の「デザイン」には2通りの意味がある 図解コーチ・新垣才氏が"デザインは学べば誰でも伸びる”と語るわけ

商品やサービスを購入してもらうために欠かせない「提案力」。それには、聞き手の目線に立ったストーリー作りや、商材の魅力を伝えるプレゼン、相手の課題解決へ導くトークなど、さまざまなスキルが必要です。そこで本記事では、提案力を身につけたい起業家やセールスパーソンのために「プレゼンの法則」を全3回にわたってお届けします。第2回目の「デザイン編」となる今回は、株式会社MOVED サービスデザイナー/図解コーチの新垣才氏が、デザインという言葉の定義やスライドデザインを構成する要素について解説しました。

図解コーチの新垣才氏が登壇

新垣才氏:ではあらためて、3回の連続講座の第2回目となる、「心動かす『伝わるプレゼンの法則』~デザイン編~」を始めていければと思います。

まず簡単に自己紹介させてください。私、新垣才というペンネームで活動しております。株式会社MOVED、株式会社コーチェットでサービスデザイナーとして働いていまして、あとはコーチングに図解を掛け合わせた「図解コーチ」という肩書きで個人でも活動しています。

仕事としては図解とかスライド、ホワイトペーパーを作ったり。今日みたいに作り方を教えたり、箇条書きや図解を使ったコーチング、あとは年末年始あたりに出版予定の図解に関する本を執筆中です。

趣味はNotionというアプリで自分のやってることや習慣をちょっときれいにまとめて、図や表にして振り返るというもので、「自分をコントロールする」ことに最近はハマっております(笑)。

2019年から個人事業主でスライドや図を作る活動をしています。あとはコーチングで、その場で話しながらクライアントさんの思考を図に起こして可視化したりですとか。ぼかしばっかりで申し訳ないですが、そんなことをやってる人間です。

今日はここから講義に入って、こんな目次でやっていければなと思います。図解やスライドの書籍ではけっこうテクニックが多くなりがちだと思うんですけど、今日はどちらかというとテクニック以前の思想とか「デザインってそもそも何だっけ」とか「スライドデザインって、どういう要素をどういうふうに使っていくんだっけ」といった、全体像をつかめるお話をメインにさせていただきます。

例えばデザインの本をあらためて読んだ時に「この講座で習った、ここで言ってる話だ」というふうに、この講座が終わったあとでも、自分の今後の活動とつながるような時間を提供できればと思います。

日本語の「デザイン」には2つの意味がある

ではさっそくですが、まずは「デザインとは何か」という源流からお話しします。みなさんはふだんどんな時に「デザイン」という言葉を使いますか。例えば「この服のデザインが気に入ってるんだよね」とか「〇〇さんってデザインセンス良いよね」というふうに使うとして、この「デザイン」をどう別の言葉に置き換えられるか、もしよかったらチャットに書いてみてください。

「設計」「色・センス」、いいですね。「色が気に入ってるんだ」とか「センス良いよね」とか、「設計が気に入ってるんだ」。いいですね、ありがとうございます。今チャットで3名にご回答いただきましたが、例えば「この服の見た目が気に入ってるんだ」とか「ものづくりのセンス良いよね」とかに置き換えられると思うんですけど、デザインの定義をデジタル大辞泉で調べてみると、大きく2つの意味があるんですね。

まずは「意匠すること」「図案」「模様」とか、それそのものの見た目の話。もう1つが「実用面を考慮して考案すること」とか「設計すること」。つまりデザインって「見た目」と「設計」の2つの意味が出てくるんですよね。

これは英語だと明確に分かれてます。見た目は「appearance」という単語があって、どっちかというと設計が「design」なんですよ。広い意味では「設計」という意味があって、その中で日本では特に「見た目」の話をデザインと言いますね。

対象と目的に合わせて「価値の設計」をする

設計と見た目の話を例え話で説明したいと思います。対象が「外を歩いている人」で、急に雨が降ってきたとします。このままだと雨に濡れてしまうので「体を雨に濡らしたくない」という目的・欲求があったとしますね。この時にみなさんだったら何を使うかというと、まず傘が思い浮かぶと思います。

この時に傘の設計とは何かを考えてみると、「手で持つ柄の先に耐水性のある膜をつけて雨をさえぎる」と。ちょっとお堅い表現ですけど、これが設計です。見た目はどちらかというと、例えば「無地の青色の膜で、手で持つ部分は無地の黒」とか「曲線で滑らかなフォルム」みたいな話になるわけですね。

そういうふうに見た目と設計って、実ははっきり分けることができます。この場合、「外を歩いてる時に体が雨に濡れないようにする」というのが傘の価値であり、傘を使う意義です。これって直接的に関係してるのは見た目ではなくて、設計なんですよね。

なのでデザインはそもそも設計であると言えます。もう少し付け足すと「価値の設計」であって、対象と目的、つまり「誰に」と「何のために」に合わせて、価値を設計することがデザインと言えます。

前回のストーリー編の講座を聞かれた方はわかるかと思いますが、ストーリーにも通ずるものなんですよね。ストーリーも「誰に」「どうなってほしいか」を想定して作るものなので、あれも「ストーリーのデザイン」と言い換えることができるんですね。

デザインは設計なので、大きく見ると「ストーリーのデザイン」とか「トークのデザイン」とか、なんにでも当てはまるんですよね。その中でもちっちゃい意味のデザインとして、例えば「スライドの見た目を作る」とか。そういう大きな意味とちっちゃな意味の2通りがあることを、まずは覚えておいてもらえるといいかなと思います。

「対象と目的に合わせる」というのは、今の傘のデザインだったら「10歳の男の子」とか「36歳の女性」とか「89歳のおじいちゃん」とかバラバラで。目的も「体を雨に濡らさない」というのもあれば「おしゃれのために傘をさしたい」って方もいるかもしれないですし。

対象が「孫に傘をプレゼントしたいおじいちゃん」だとしたら、「体を雨に濡らさない」という主目的とはまたちょっと違う設計ができるかもしれないですよね。

デザインは、学べば誰でも伸びるスキル

スライドのデザインというと、例えば商品を買おうかなと迷っている人に対して作るとか。就活生に会社のことを知ってもらうために作る、海外の投資家の出資を得るために作る。対象と目的が違えば、中身もぜんぜん違いますよね。

なので「誰に」「何のために」という対象と目的によって、ぜんぜん中身が違ってくるのが、デザインの定義の話ですね。価値をもうちょっと分けると「機能的価値」とか「情緒的価値」と言うんですけど、ここはちょっと調べてもらえればなと思います。

じゃあなぜ日本語には「デザイン」という言葉に、2通りの意味があるのか。ある方には、デザインという言葉は日本に戦前と戦後の2回輸入されたと言われています。

戦前は英語と同じ「設計」って意味で入って来たんですけど、戦後にもう1回入って来た時に、どっちかというと見た目の話に寄ってしまった。日本だとけっこう「設計」と「意匠」をどっちも「デザイン」と言うので、よくごちゃごちゃになったりしています。

海外だと「design」と、「appearance」もしくは「styling」と明確に分かれているので、ここは区別して覚えておいてもらえると。例えば誰かが「デザイン」という言葉を使った時に、それが広い意味での「設計」という意味なのか、それとも見た目の話をしているのか。これを区別しておくと、話の辻褄が合うかとか、どういう話をしてるのかがより理解できるかなと思います。

なので「見た目」っていうとけっこう「絵心」とか「センス」とか、「私デザインセンスないから無理です」みたいな声を聞くかもしれないんですけど。デザインは基本的に設計なので、どっちかというとスキルなんですよね。「問題解決をするために、そのスキルを使って設計する」というものなので、学べば誰でもある程度までは必ずできるようになる、というのがお伝えしたいことです。

スライドを構成する3つの要素

「じゃあスライドにおけるデザインって何ですか」というところを、このあとにお話ししていきます。ということで、スライドにおけるデザインの全体像ですね。

スライドデザインについては、「デザイン図鑑」「スライドの作り方」みたいにいろんな本が出てると思うんですけど、けっこうこれがブラックボックス的で。「結局スライドデザインって何をどう設計すればいいの?」という話があると思うんですけど、ここで1個、全体像の見方を提供したいと思います。

スライドデザインというブラックボックスを「要素」と「手段」、「空間」と「時間」に分けて考えてみます。そうすると4つの箱ができるわけなんですけど。簡単に話を進めるためにいったん時間は置いといて、ある一瞬の空間におけるスライドデザインの要素は、実は大きく分けると3つしか出てこないんです。

まずは「文字」ですね。ひらがな、カタカナ、漢字、なんでもいいです。それと矢印、四角、三角とか、図形ですよね。あとは絵、もしくは僕は「画(が)」って呼んでるんですけど、アイコンとか写真とか。そういった、「字と図と画」の3つの要素しかないんです。

この3つを、4つの手段で作るのがスライドデザインの全体像になります。まず、僕の造語なんですけど、形を配る「配形」。文字とか図にどういう形を配るのか。そしてそれをどこに置くのかという「配置」。そしてそこにどういう色を配るのか、何色にするかという「配色」。

あとはスライドでは実はあんまり使わないんですけど「質感」ですね。例えば椅子をデザインするというと、椅子の材質を木にするのかアルミで作るのかでぜんぜん違うわけですよね。こういう素材とか質感を配ることが「配質」。

実は一枚絵のスライドのデザインって、この4つしかないんですね。極論、これらの組み合わせをひたすら作っていくことで、すべてのスライドのデザインができます。

「要素の組み合わせ」の全体像をとらえる

それで、さっきちょっと置いておいた「時間」。ここに時系列が入ってくると、「動画を入れ込む」とか「アニメーション」ですね。それを動かして、回転させたりスライドの間のつなぎ目をフェードアウト・フェードインにしたり。

「ひたすらこれらの組み合わせを考えていくのがスライドデザイン、以上です」って言っても過言ではないぐらいなので、まずはこの全体像をつかんでおいて(ください)。「今はどこを学んでるのか」「何に困ってるのか」を、ここの組み合わせからピックアップしていくと、「じゃあどうすればいいのか」という解にたどり着きやすかったりします。

あとは「今読んでる本がどこの話をしてるのか」と全体像をとらえてから読むとより学びが深まるので、ぜひ覚えて帰ってもらえればと思います。

もうちょっと言うと、ほとんどのスライドってたぶん動画とか使わなくてもできちゃうんです。「質感」も実質、水玉模様やストライプにするとかはほとんどないので、実際に使うものってほぼこれだけだと思います。

なんならアニメーションもほとんど使ってないので、今日のスライドも全部、字と図と画に「どんな形を配るか」「どこに置くか」「どんな色をつけるか」の組み合わせで成り立っちゃいます。これはたぶんどこの本にも書いてないことなので、ぜひ覚えて帰ってもらえればと思います。

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