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【著者来館】『成果を上げるプレイングマネジャーは「これ」をやらない』出版記念イベント!(全2記事)

上司からは丸投げ、部下からはハラスメント扱い、業務は増加…プレイングマネジャーを苦しめる「6つの圧力」とは

書籍『成果を上げるプレイングマネジャーは「これ」をやらない』を、経営者やリーダー育成を手掛ける中尾マネジメント研究所・代表の中尾隆一郎氏が執筆。「自分もプレイヤーとして結果を出しつつ、部下もマネジメントしなければならない」。二重苦にあえぐプレイングマネジャーはこの問題にどう立ち向かうべきか。後編では、中尾氏がプレイングマネジャーを取り巻く現状と解決方法を語ります。

プレイングマネジャーは「いじめられている」

中尾隆一郎氏:この本の中にも書きましたけれど、(プレイングマネジャーを支援するプロジェクトで調査をした結果)「プレイングマネジャーをいじめている状態」になっているとわかりました。

要は人が採用できてない状態です。仕事ができる人が管理職になったんだけれども、「あなたの後任はいません」「あなたならできるよ」と言われて、「俺もできるのかなぁ」と思って、やってみたらえらい目に遭うのがこのプレイング業務の増加なんですね。

あとはタイムマネジメントは、この15〜20年前だと労働時間に関してもかなり緩かったので、いざとなったら残業や休日出勤ができたと思うんですけど、今は日本でほぼできないですよね。ここにいらっしゃる方は人事が多いから、「労働時間を守らない」とは大きい声で言えないですよね。

もう1個は、コンプライアンス、ハラスメント、健康管理、情報管理、個人情報などを「全部マネジャーがしなさい」「データのチェックもしなさい」と言われて、勉強会に参加しないマネジャーは「なぜ参加しないのか」「レポートを書け」と言われているわけですね。10年前のマネジャーの業務にプラスされています。

上司も答えがわからないので「よろしく!」と丸投げされている状態です。言われたことをそのまま受け取らなくても「一緒にやりましょうよ」「これは共通課題だから、人事と相談して勉強会しましょうよ」と言えばいいんですよね。

だけど、言われたことをやらないとダメだと思ってる人たちが多かったです。あとはメンバーからハラスメントだと言われたら困るという話があったりもしますね。

メンバーの仕事の肩代わりは、チームの業績低下を招く

中尾:そもそも、1on1はとても難しいじゃないですか。相手に合わせてやらないといけないんだけど、プレイングマネジャー自身が1on1の教育もされずにやっています。メンバーに何か要望したら「ハラスメントだ」と言われますしね。

もっと言うと、最近は「傾聴をしなさい」と言われていて、相手が言われることをじっくり聞けという。聞いたほうがいいんだけれども。そうすると「中尾さん、困ってるんです」という話になると「わかった、やるわ。俺が代わりにしてあげる」と言うと「中尾さん、ありがとうございます!」という話になって。

別の人も「中尾さんに頼んだらやってくれるよ」と頼りにしてしまいます。それで全員分を引き受けるとマネジャーの業務量がパンクしてしまうので「いや、無理だわ」と言ったら「えこひいきするんですか!?」という話になって、プレイングマネジャー側のハラスメントの話になってしまうと。

「中尾さんは山田さんの仕事は受けるんだけれども、鈴木さんは受けてくれない」となって、鈴木さんが「中尾さんは好き嫌いをしている」「僕のことを嫌いなので、中尾さんは嫌です」という話になって、上司に呼ばれて怒られます。そうするとまたメンバーの仕事を受けないといけない。

冒頭お話をしたように、マネジャーがプレイングしてもいいんだけれども、メンバーができる仕事をすると、チームの業績が下がるんですよ。なぜかというと、マネジメントをする時間がなくなるからです。

投資対効果をプロットして考えてみよう

中尾:みなさんの会社はわからないけれども、たまたま今日の午前中も、ある会議で「昇進・昇格基準が合っていない」という話がありました。メンバーのモチベーションを上げるためにマネジャーにする現場のリーダーがいたとします。「この人をマネジャーにしとかないと、さすがに元気がなくなるんじゃないか?」と。

いやいや、そんな感じで人事を決められたらその人の下のメンバーは大変じゃないですか。だいたいそういう人は「俺はマネジャーだ!」と偉そうに振る舞いますよね。

結局、本人にマネジメントスキルを身につけさせてあげないといけないわけですよ。あるいは本人がスキルを身につけないといけないわけですね。

結局はマネジメントスキルを身につけさせる時間がなくて、時間を作ってあげないといけないんだけれども、何をやめるかという状況になってしまうんですよね。

やめること、絞ること、見直すことにしても、どうしたらいいかは、みなさんが業務改善したりする時に悩まれていると思います。

そういう場合は、横軸にかかっている時間を考えましょう。縦軸に期待される効果、つまり投資対効果ですね。投資対効果をプロットしてみませんかと。時間がかかっているけれども、効果が低いものは勇気を持ってやめませんか。効果はあるんだけど時間かかっているものは、何かを絞りませんか。

みなさんも使っていると思うんですけれども、この1〜2年で生成AIが出てきて、仕事の仕方がかなり変わりましたよね。つまり時間が短くて効果があるものでさえ、見直すことができるようになった。

効果が悪いものはやめる。効果があるんだけど時間がかかっているものは対象を絞る。今うまくいってるものも見直そうよという話なんです。これは個別性が高いから、本当はいろんな人がプロットすればいいんだけれども。

マネジャーにとって1on1は「悪の権化」の一つ

中尾:プロットもうまくいってる会社はあるんだけれども、こいつが「悪の権化」じゃないかなぁと思ったものが2つありました。

1つは1on1。必要な時にやる1on1はいいんです。例えばご家族の問題とか体の問題とか、あまりオープンにしたくないような話ですね。それを1on1するのはいいんですけどね。

ヤフーの1on1が中心になって、日本で広がりましたよね。ヤフーさんは本当に上手にやってらっしゃると思うんですよ。1on1のエバンジェリストも社内にいて、教えたりできるレベルになってるんですね。

でも、1on1はとても難しくないですか? 僕がリクルートにいた時は、できるだけ1on1は避けてたんです。だって、悩みを聞くじゃないですか。聞いたら解決しないといけないですよね。

しかも「中尾さんにだけ言ってるんです」と言われるんですよ。他の人に相談せずに、事実かどうかもわからないのに、それを解決するのはとても難しくないですか? 「無理やりやるんだったらこれですよね」などと極端な話をされることもあるので、できるだけ1on1はミニマムにしたかったんですね。

1on1は、かけた時間に対してデメリットがありすぎる

中尾:仕事をプレイングマネジャー側にもらうという話をしましたが、僕は異動が多かったんですね。なので、人間関係をどうやって作るのかというと、異動して一番最初に自分が担当した業務やプロジェクトをレジュメにして共有していました。

共有して「あなたのことも教えて」とお願いします。レジュメでもいいですし、最悪、人事に履歴書などをもらったり、内部の評価をもらったりすると、その人のことはだいたいわかるじゃないですか。

それをもらった上で、個人的な話が聞きたいというよりも、「僕たちが一緒にやる組織の良いところは何で、さらに良くするためには何をしたらいいか」を教えてほしいという話だけを聞いたんですね。メンバー個々人の「誰々が嫌い」とかは「我慢できる間は我慢しておいてほしい」と強く思っていましたと。

だって、僕たちは友だちになるわけじゃないじゃないですか。友だちになれたり、いい関係になれたらとてもいいんだけれども、会社の中で業績を上げようとするうえでは必要条件ではないですよね。十分条件でもないので、仕事で成果を出すことに特化していました。

僕みたいなアプローチは嫌だという諸先輩はめっちゃいました。ただ、僕よりも年の若い人たちは「めっちゃいいですね」という感じでしたね。

1on1は記録が残らないんですよね。やったことは残るんだけれども、その中身の本当の琴線が何だったかは、フォーマットがちゃんと決まってないことが多いです。

そうすると上司も人事もサポートできないんですよ。今はツールはあるけれども、そのツールに書く内容も、人によってぜんぜんレベルが違うから、本当に助けないといけない人もわからないんですよね。

1on1にかかっている時間に対して効果が悪すぎるんですよね。デメリットがでかすぎるというのが、ざっくり言うと僕の結論です。このことを、本気で1on1をやっている人たちは、みんな異様にアグリーしてくれるんですよ。

もちろんうまくやっている会社はあります。うまくやってる会社は「本当?」と思ってるんですよ。だって5年前は1on1をやってなかったじゃないですか。5年前はやってなかったけど、「業績悪かったんですか?」と思うわけですね。何のためにやってるんでしたっけと。

NVIDIAやPixarがオープンに1on1をする理由

中尾:僕はダニエル・キムの成功循環モデルが好きなんですよね。長期的な成功を目指すための組織運営のフレームワークとして「関係の質、思考の質、行動の質、結果の質」という話がありまして。

一番最初の「関係の質」を作るために、短時間の1on1をやるのはアリだと思うんですよ。でも、「思考の質」を高めるために1on1がいいとするならば、一対一でしゃべった情報を、管理職の僕がハブスポークでやらないといけないから、とても効率悪いじゃないですか。

今週、CESがありましたよね。CESの基調講演をしたNVIDIAの革ジャンCEO(ジェンスン・フアン氏)ってご存知ですかね。NVIDIAという会社は、世界で時価総額が1番から3番くらいになっている会社なんですね。半導体を作ってる会社で要は部品メーカーですよ。

今、部品メーカーが世界で一番評価されてるんですね。彼の前にイーロン・マスクやGoogleの社長などが列をなして「半導体を売ってください」とお願いしてるんです。世界中で彼らに値引きを要求する人は誰もいない。

「プレミアムな料金を払うから売ってください」と言われている半導体を、世界で彼のところだけ作れるんです。

NVIDIAのCEOは、1on1は絶対しないそうです。直属の部下60人と会議をしていて、オープンな場で1on1をやったりするんですね。そのコミュニケーションが他の人の学びにもなります。CEOの言葉をその人だけが知っている状態を最悪だと言ってるんですね。

Pixarもオープンなところでシビアな会議をしています。Pixarの映画は世界でほとんど外してないですよね。プロデューサーを含めたチームの人たちが「今度の映画はこんな感じなんです」という方針を出して、それに対して、今まで映画監督をやっていた人たちがアドバイスをしまくるんですよ。

1回目の案なんて、ボコボコにされるらしいんですね。そこに参加していいのは、実務を本当にやってる人なんです。背広組は参加できないんですよ。Pixarは一時期、Appleの創業者のスティーブ・ジョブズが買っていたんですが、彼は映画を作っていないから、ジョブズでさえそこには参加させてもらえないんです。

1on1が常態化するとオープンな会議の質が下がる

中尾:本当にわかる人たちが、率直により良いものにするためにオープンで会議をやってたりするんです。クローズでうまくいくことが本当にあるのか、ということが僕のもともとの問題意識です。

1on1をやると「今度は中尾さんとの1on1の時に言っておけばいい」となって、オープンな会議の質が下がると思うんですね。「1on1に価値がある」という人たちは、本当にチーム会の質を担保できてるのかなと思います。1on1が問題の中で一番の大物なんですね。

もう1個は、手間をかけすぎている目標管理や評価です。ある大手の会社で、1年間に1回だけ評価をする会社です。評価前の最後の1ヶ月は、管理職がその業務ばかりやってるんですよね。査定会議の資料を作って、査定会議をやって、人事もそこに全部参加して、上司もそこに出て、業務が1ヶ月止まるんですよね。

次の目標設定する時にも、1ヶ月同じようなことをやってるんですよね。12ヶ月のうち2ヶ月を社内会議に費やしているんですよ。そこまでしないといけないですか? それよりも、毎週毎週細切れにしてフィードバックしてあげたほうがより良くなるんじゃないかと思います。

半年ごとに中間面談をやるにしても、課長さんや部長さんは忙しくて、中間面談ができなくて10ヶ月経ってから「査定が悪い」とか言われたら、メンバーはすっかりやる気をなくすじゃないですか。

こまめにフィードバックし続けたほうが成果も出るし、うまくいくと思います。目標設定や評価を乱暴にするわけではなくて、もっと細切れに毎週毎週のルーティーンにしてしまえば会議も増えません。

会議のアジェンダをしっかりと決めよう

中尾:やっぱり、いろいろ変え方があるんじゃないでしょうか。主に1on1と目標管理・評価の2つが原因だと思っているんですよね。

もう1個は、会議です。みなさん、会議のアジェンダはちゃんと切ってますか? 会議のアジェンダの種類は4種類あるって知ってますか? アジェンダは「発散をする、収束をする、決める、報告をする」の4つなんですよ。

ところが、このアジェンダが4つの何に該当するアジェンダかを言ってない場合がありますよね。発散は、できる限りアイデアが欲しい状態です。ブレインストーミングしたいのに、誰かの意見を「そんなのできるわけないじゃん」と言った瞬間に、アイデアは広がらないですよね。

急に「アイデアを出してよ」と言っても出てくるわけないじゃないですか。広げる時には「こういうテーマで集めるから、事前にどこかに書いといてね」「できれば、みんな見といてもらって、よかったら、いいね!ぐらい押しておいてよ」としたら盛り上がりますよね。

発散するんだったら発散が大事で、収束する場合はどんな論点で収束させるのかを決めておかないと揉めるわけじゃないですか。決めると言ったら、絶対決めないといけないんですよ。

アジェンダはみんな1個で切るんだけど、このアジェンダはいつまでに広げて、いつ閉じにいって、いつ決めるんですか。それをいつ報告するのかが設計されていないアジェンダがとても多いんですよね。

実際に即興でプレゼンすることもあると思います。いろいろと見直すポイントが山のようにあります。でも、これはあくまでも一般論です。

1on1をやめたら、こういうデメリットが起こるのではないかと想像できるじゃないですか。本にはそのデメリットは「こうやって解決したらいい」と書きました。

一般論として、1on1をやめる場合はダメになる部分が出てくる可能性があるから、こうやって防ぐと決めることです。目標設定会議なども、何かを変えるとトラブルが起こるので、本に「こうやって変えたらいい」と書きました。

実際は、みなさんの会社によって、すべての会議がダメとか、すべての1on1がダメとか、すべての目標管理がダメなんてことはたぶんないんですよ。そのうちのどれを残してどれを変えるかということを考えたほうがいいですよね。

大事なことは、みなさんの会社のプレイングマネジャーも労働時間がパンパンだったり、精神的にアウトになっていて、倒れそうな人たちもたくさんいます。

「あなたは管理職だから1人でがんばれ」というのは、かわいそうじゃないですか? 特に人事は人のことに携わってる大事なポジションだと思いますので、一緒に助けてあげませんか? というのが僕のメッセージです。

吉田洋介氏:ありがとうございます。

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