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コミュニティマーケティングの提唱者、小島 英揮氏に学ぶ! コンバージョンとLTVの双方に効くコミュニティ活用術(全5記事)

真っ先に「炎上」を心配する担当者が施策の前にすべきこと 自社の取り組みでユーザーからの非難の声が気になる原因

業界業務の経験豊富な「その道のプロ」に、1時間からピンポイントに相談できる日本最大級のスポットコンサル「ビザスク」。そのビザスク主催のセミナーに、コミュニティマーケティングの提唱者で、『ビジネスも人生もグロースさせる コミュニティマーケティング』の著者・小島英揮氏が登壇。本記事では、コミュニティ形成時にやってしまいがちなNG行為や、コミュニティ運営に必要な5つの能力などが語られました。

コミュニティ作りのフェーズ分け

小島英揮氏(以下、小島):コミュニティの作り方はフェーズ分けもできると思います。例えば、「この人はリーダーぽいな」とか「この人はそういう話を聞きたがっている人だな」という人から始めて、クローズドなメンバーで熱量を高める。

「熱量を高める」とは、やっている人の話を聞いて「確かにそうだ」と関心を持って試したり、良かったことを他の人に教えたり、フィードバックしたりすることです。お話をした人は、お礼を言われるともう1回そういう話をしたくなるものなんですね。

みなさんも経験があるんじゃないでしょうか。自分がお薦めしたお店に誰かが行って、「あそこは良かったよ」と言われると気持ちがいい。その後、さらに「誰々さんに聞いたお店が良かったから今度行こうよ」と別の他の人を誘っていたりするとものすごく満足度は高い。

これと同じようなことが起こると、いわゆるコミュニティが発火している状態と言えます。焚き火と同じで、1回火がついてしまえばいろんなものを入れても燃えるんですけど、初めにいろいろ入れると消えてしまうので、きちんと発火させる。

種火から燃えやすい木に火を移すのが大事なので、ここをある程度クローズドな環境で行って、その後に大きなコミュニティにしていくというやり方も、現実的なステップだと思います。みなさんのサービスや製品のファンの方とか、お客さまがどういう熱量かを見ながらやっていくといいと思います。

コミュニティ形成時にやってしまいがちなNG行為

逆についついやってしまいがちなNGな行為もあるので、お話ししておきます。これも3つあります。

まずは「人に集まる」ということ。スターやカリスマみたいな人に人がどんどん集まると、初めはいいんですが、その人からの話を聞きたいために集まってくるので、途中からスケールしなくなるんですよね。どんどん新しいスピーカーが生まれなければいけないんですが、固定化されるとあんまりいいことになりません。

先ほどのダンスのムーブメントの動画も、初めに踊った人が途中から中心にいなくなっても、人が集まり続けた。ああいうかたちにするのがいいと思います。逆に人が固定的になるのはちょっと注意しないといけない。あまり興味関心軸に関係ないインフルエンサーの場合、フォロワーや知り合いがたくさんいる人を連れてきてもうまくいきません。

そして、コミュニティを大きくするためには、新しく来た人をどんどん迎え入れる、ケアをする力がすごく大事です。「俺のほうが知っているから」とか「俺のほうがうまく踊れるから」とマウンティングを取るようなタイプの人が真ん中にいると、ちょっと難しくなってしまいます。

もちろんよく知っている人とかうまく踊れる人は、スピーカーとかステージの上では非常に輝くんですが、コミュニティを大きくする時の中心人物にするとちょっと難しいです。

ちなみに、インフルエンサーマーケティングとコミュニティマーケティングは、私の中では根本的に異なるやり方です。

コミュニティマーケティングは、信頼貯金、トラストを使ってどんどん話が広がっていく。だから、コミュニティを始めた人がその中のインフルエンサーになることはあり得ると思うんですけど、インフルエンサーがやってきて何かをやってもあんまり持続力がないんですよね。

インフルエンサーマーケティングは、基本的にはお金を払って拡散をしていただく従来のマスマーケティングに他ならないので、これは今日お話ししている流れとは違うとご理解いただきたいと思います。

ちなみに海外のリサーチを見ると、日本ではインフルエンサーでリーチはできても購買行動への寄与が低いと言われているので、もしかしたら日本ではインフルエンサーマーケティングはあまり向いていないのかもしれないですね。

コミュニティ運営に必要な5つの能力

最後に、もしコミュニティをやろうと思ったらどんな人が必要かについてお話しします。恐らくこの5つの能力が必要だと思います。

1つは、やはりお客さまとの会話。お客さまに、安心して会話をしたりコミュニケーションしていただかないといけないので、信用される力がすごく大事です。人に好かれる力ですね。

もちろんファンの方を相手にするので、担当の方もそれに負けないくらい製品・サービスに対する理解や愛情が必要です。何なら一番のファンであるくらいじゃないと、なかなか矢面に立てません。

次に大事なのが、人に伝える力。今日セミナーに来ていただいている方はほとんどそうじゃないかと思いますが、会社の中でコミュニティマーケティングをやったことのある人がなかなかいない。つまり会社にロールモデルがいないんですよね。

なので、会社にコミュニティマーケティングの価値をわかってもらう説明をするための調整ができる力。数字以外の定性的な価値を伝える言語化能力も重要です。

そして、そもそもマーケティングのどの部分にコミュニティの力を適用しようとしているのかが、わかっていないいけません。と。そこができないと、本当に「ピザとビールの会議をやっている人」という扱いになることがあるので、気をつけないといけません。

そして、これを1人でできる人がいればいいんですが、こんなハイスキルな人はいないということであれば、信用力や製品愛がある人を担当に付けて、上司の方とかチームが調整、言語化、ファネルの理解をカバーするという分業も最近はけっこうあると見ています。

コミュニティ設計に役立つフレームワーク

最後に、マーケティングに限らず、コミュニティ設計に役立つフレームワークということで「OWWH」(Objective・Who・What・How)の話をしたいと思います。

OWWHはマーケティングを因数分解したものです。マーケティングは人に知られるのがゴールではなく、動いてもらう、買っていただいたりお薦めしていただくことがゴールです。そのために、じゃあ「誰に」「何を」「どう伝えるか」と因数分解します。

構図はこんな感じです。

会社の3~4年後のゴールを定量的、定性的に表現してみる。「1年後はここまで行っていないといけないよね」というものがあり、「その1年後のゴールを達成するためには、誰を相手にするべきですか?」「その人には何を伝えれば響くんですか?」「その人にこれを伝えるために一番いい伝え方は何ですか?」を順番に書いていきます。

それぞれに「Why」を書いていくと、非常に解像度の高い設計図ができます。

「Objective」が一番大事です。これなくして「Who」も「What」も「How」も決めてはいけません。勝利条件の設定を絶対に後回しにしてはいけないことはご理解いただきたいと思います。

Objective、つまりゴールの設定ですが、中期から短期を書くというやり方がいいと思っています。定量的だけではなく、そこにどう想起されたいかという定性的なゴールも書いたほうがいいです。

冒頭で「みなさんのブランドはどんな時に思い出されたいんですか?」という話をしましたが、「1年後にはこういう時にこう思い出されるようになりたい」とか、「3年後にはこういう時に必ず思い出されるようになりたい」と書いていただくと、プランがしやすいと思います。

コミュニティのObjectiveの設定の仕方

コミュニティの場合は、会社とか事業部全体のObjective、マーケティングだったらマーケティング全体のObjectiveがあって、それに対してコミュニティがどう貢献するかを分割して書くのがいいと思います。

コミュニティだったら「売上はいくらになるの?」というのは非常に陳腐な質問です。「売上ができるまで」には、ピタゴラスイッチ的にいろんな施策や要因が複雑に組み合わさっているんですよね。

例えばビジネスを大きくする時にカギとなる「想起」を作るのに、UGCが効果的である場合。そのUGCを作るのに重要な施策がコミュニティなので、「じゃあコミュニティを通じてこういうコンテンツが出るようになりましょう」「こういうスピーカーが出るようにしましょう」「こういうことが起こるようになりましょう」というのを設計していきます。決して「売上がいくらになる」と書くわけではないということです。

また「コミュニティに必要なのは誰か?」を考えます。さっきのリーダーやフォロワーの関係を見ながら誰を集めなければいけないかを決めて、「その方が来やすくするためにはどうすればいいか」「長く参加していただくにはどうすればいいか」「どういう場を用意すればいいか」と設計していくイメージです。

このOWWHのフレームワークで設計していくとあまり大外しをしないので、ぜひ活用いただければと思います。

ということで、今日お話しをした4つのポイントです。まず、ビジネスには「想起」が必要です。「マーケティングとは想起を作り出すことだ」というのがスタートになります。コミュニティは「コンバージョン」と「ライフタイムバリュー」の両方に想起を提供するもので、UGCを作り出すいい仕組みだというお話もしました。

そして、コミュニティを成長させるために守らないといけない基本的なメカニズム、法則と設計図を書く時に役立つフレームワーク「OWWH」の話もさせていただきました。

いかがでしょうか。おさらいはCMC_Meetupなどコミュニティマーケティングのコミュニティに参加して学ぶことでもできますし、私の書籍も基本的には同じことを書いていますので、ぜひこちらもご活用いただきたいです。

今日はせっかくのセッションですので、みなさんからのご質問にもお答えしながら理解を深めていただきたいと思います。

真っ先に「炎上」が気になる担当者が施策の前にすべきこと

渡壁:ご講演いただき、誠にありがとうございます。では、いただいている質問をどんどん読ませていただきます。

小島:はい、お願いします。

渡壁:「大企業がコミュニティマーケティングを進める上で、ユーザー同士のトラブルリスクや炎上リスクにどう対応するかが、課題になると思われます。このあたりの対応策や事前防止策がありましたらお教えいただきたい」という質問ですが、こちらはいかがでしょうか。

小島:その手の質問をものすごく多くいただくんですが、なぜみんな炎上対策に頭が行ってしまうのか。「そんなに自社の製品はみんなからたたかれているんですか?」という話ですよね。

まずお話ししないといけないのは、ファンがいない製品、良いと言われていない製品では、コミュニティマーケティングはできないんですよ。つまり「炎上してしまうのではないか」と思っているということは、何かがフィットしていないんですよね。なので、もしそっちのリスクが高いのであれば、PMF(プロダクトマーケットフィット)が十分ではないのでそれをやるべきです。

一定のファンがいるのであれば、ファンの人と、これから使いたいと思っている人からスタートするのが鉄則だと思います。ネガティブなことを言う方はいらっしゃるかもしれません。これには2つのポイントがあって、製品に対するフィードバックであればちゃんと聞くべきです。

「これは最高。この製品があれば何も要らない」という人だけだと、まったくもって内輪ウケの場になってしまう。なので、ネガティブかどうかは別にして、製品に対するフィードバックをちゃんと聞くのは大事です。

もう1つは、自己承認欲求のためにネガティブなことを言う人もけっこう多いので、いかにこの人が少数派になるようにするかがポイントです。ネガティブな人を相手にするより、うまくできている人をケアする。

ノイズは消せないんですよ。一定数出ます。これに対応するより、私が見ている限りでは、うまくいっている話を広げるところに力を注ぐという考え方が、成功しているコミュニティに共通したやり方かなと思います。

きれいなお答えになっているかわかりませんが、ものすごく炎上が気になっているとしたら、もしかしたらコミュニティをやる時期ではないのかもしれません。心配しすぎの場合は、「ネガティブな人ではなくてポジティブな人からスタートする」を鉄則にやっていただければと思います。

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