全社員が「7時間睡眠」をルール化
前田:じゃあ越川さんは、今はめざまし(時計)をかけなくても起きれてしまうんですか?
越川:めざまし(時計)は、もうこの3年間で1回もかけたことがないです。
前田:マジですか! 僕は最近、朝6時ぐらいに鳴る炊飯ジャーの音で目が覚めちゃいますね。
越川:炊飯ジャーで起きれるなんてステキじゃないですか。でも僕はうつ病をやったことがあるから、会社では39名全員が7時間睡眠というのをルール化しています。日中に眠くなることもないですし、起きたらピンピンしているみたいなことが3年ぐらいかけてようやく習慣になってきた感じです。
前田:僕もたぶんそうなんですけど、睡眠負債が溜まっているから電車に乗るとすぐ寝ちゃうんですよ。
越川:あぁ、なるほど(笑)。それはそれで気持ちよさそうですけど。
前田:気持ちいいんですけども、気持ちいいまま山手線1周しちゃうので。本当にやばいですよね(笑)。
越川:そうやって余裕がある生活もいいかなと思うんですが。今、双極性障害とかパニック障害みたいな精神疾患の方が、歴史上で一番多いと言われているんですけど。それを一番防げるのは、ストレスをなくすことではなくて、睡眠時間を7時間以上にすることだと思うんですよ。
諸説ありますが、7時間睡眠にするとうつ病になる確率は30分の1以下になると、精神科医にも聞いたので。ちょっと心が病んで疲れたみたいな時は、そういった休養の比率を高めていただくといいかなと思います。
職場で有給休暇を取りづらい…
前田:みんなのメモが止まらないのがここからも伝わってきますけど。じゃあ、2つ目にいきましょう。「組織の中で自分だけ休み方を変える怖さは、どう乗り越えればいいでしょうか」。同調圧力が強いですからね。
越川:そうですね。有給休暇のこととかだと思うんですけど。ただ2~3年前に比べれば、残業しないことへの抵抗はだいぶ減ったかなと思うんですね。
2017年に法律が変わって、2024年から建設業とか医師とか教師なんかも残業規制で45時間になり、そもそも働いちゃいけないので、なんとなく昔に比べれば早く帰りやすくなったかなと思います。
ポイントはたぶん有給休暇だと思うんですよね。有給休暇は一応法定上は年間で20日もらっている方が多くて、大企業だと繰り越して最大40日使えるみたいな方が多いと思うんですよね。これを取得申請するのは、上司の顔色を見たりしてちょっと億劫になりますよね。
ただ、べき論で言うと、有給休暇は申請がいらないんですよ。有給休暇は権利なので、「この時に休む」と言って否定はされないんです。
休んで生産性が高まることを証明していく
越川:唯一、時季変更権というのを管理職が持っています。例えばチーム全員が月曜日に休んでしまったら仕事が回らないから、法律上で言えば、「あなたは火曜日」「あなたは水曜日」というのだけ許されているんです。「来週、子どもの運動会があるから休んでいいですか」と言わなくていいということです。
有休を取るのは権利なので、後ろめたくならないようにするために、やっぱり誰かが取るのを待つのはなかなか難しいと思うので。だったらしっかり休んで生産性が高くなったことを証明していったほうがいいと思うんですよ。
例えば休んだことにより家族の絆が強まった。それで働きがいがあった。だからちょっと苦しい来週のイベントも乗り切れそうだということが、休むことの価値じゃないですか。休みはサボりじゃないんですよ。平日の生産性を高めるために必要なことなんですよ。休暇・イン・ザ・ワークだからですね。
なので、休んだことによってどれぐらいリフレッシュされたか、どれぐらい良かったかをしっかりと出していくことが重要なんじゃないかなと思います。
休む時のルールを作って周知する
越川:あとはやっぱりその期待値設定というのもあると思うんですよね。年に3日しか有休を取らない人が10日取ると、やっぱりハードルが高くなってくると思うので。
1日ずつ増やしてできれば、月に1回ぐらい有給休暇、例えば第3金曜日は休むみたいな。ある程度のルールを作ると他の人たちとも連携が取りやすくなるので。有給休暇を取る計画を早めに作って、Outlookとかのカレンダーに入れて周りに見せていくことから始めてみるのはいかがかなと思います。
前田:Outlookに入れて見える化するっていいですよね。
越川:そうですね。見える化というか、見せる化というか。「もうこれ休みです」と言っちゃうやつですね。
多くの企業が今、メールじゃなくてSlackとかTeamsとかのビジネスチャットに移っているんですね。そうすると休みの時は不在通知がプレゼンスで見えるようになっているので、「メール見ていますか」みたいなことを長期休暇の人には言わないんですよね。
このプレゼンスが見えるようになったのはすごくいいことだと思うので、「何日から何日まで休みです」みたいなことを宣言しておくとかね。
例えば休暇の前からそのメモをTeamsとかSlackに入れておいて、「来週休みです」みたいなことを、ちゃんと期待値を相手に合わせておくと、より休みやすくなるんじゃないかなと思います。
「有給消化」に追われ、形だけの休みを取る人
前田:「年度末は有休を取ることに追われている部下」。
越川:いや、多いですよ。だって鎌利さんがいた会社だって、例えば今月、年度末じゃないですか。そうすると、私服でウロウロする社員が増えるわけですよ。
あれは「休むと仕事が回らないけど、労働組合がうるさいから有給休暇にする」みたいな人たちが、3月に増えちゃうわけです。それは本意ではないので、しっかりと休んでも回るような調整をちゃんとするとか。
例えば、コメントに書いてくれた「あの人がやらなきゃいけない仕事を自分がやって悔しい」んだったら、自分が休む時はしっかりと周りに影響を与えないように業務分担しておくとかマニュアルを作っておくことが、平日に行うべき仕組み化なのかなと思います。
前田:「やるべき仕事をやらずに有休の権利だけを行使する人の尻拭いに追われちゃう」。わかるな……(笑)。
越川:そうですね。こういう人がいると休みにくいと思うんですけど。ただ、これを追及したら誰も休めなくなっちゃうので。だから休めるような仕組みを作るってこと。
僕は休んでいるのに成果が上がっている、モア・ウィズ・レスを目指すべきだと思うので。「あの人は有休をたくさん取っているのにタスクもめちゃくちゃこなしているな」という世界観を目指すべきだと思います。
「疲れたら休むのではなく、疲れる前に休む」
前田:そうですよね。仕事もある程度自分でチョイスできるとか、コントロールできるようにさっきの信頼を積み上げていく。「年5日の有給取得義務があるので、それすら取れない人は明らかに業務量がおかしいと思います」。確かにそうですよね。人によって業務量はやっぱり違いますもんね。
越川:そうですね。今97.5パーセントの企業は人手不足なので、業務が逼迫して休めないのはもちろんあると思います。
ただ、僕も経験者だから言いますけど、仕事が忙しくて楽しくて目の前の仕事をこなしてた時に2回うつ病になっていますので。僕はたまたま復帰できましたけど、これで折れて復帰できない人が今すごく増えている。
そういった意味では、疲れたから休むんじゃなくて、疲れる前に休むことを、自分を守るためにもぜひやっていただいたほうがいいかな。
世界の一流も「疲れたら休むのではなく、疲れる前に休む」と言っていました。自分が主役の人生なのでね。自分を守るために、ぜひ休みを先に考えた上で業務をどう回すかを考えていただくといいかなと思います。
1日5分、「休み方を変える実験」をする
前田:最後に、越川さんからぜひみんなに一言。今一番伝えたいことを締めでお話しいただければなと思います。
越川:ありがとうございます。まず、こんなにわけのわからないルー大柴の親戚に時間をいただいて、みなさんに感謝ですね。本当にトゥギャザーいただき、ありがとうございます。みなさんに言いたいことは、シンプル、大丈夫だってことです。
みなさんはこの時間にプレゼンを学びたい、休み方を学びたいという意欲の高い方々ですからうまくいくに決まっているんですよ。今、この時間に漫画を読んだりゲームをやったりする人たちと、もう圧倒的にみなさんは差をつけているので、大丈夫です。
だからこれ以上がんばらないでください。月曜日の夜7時にこれを聞くなんて、忙しくて大変なのに無理して来ているじゃないですか。これ以上みなさんががんばったら、僕みたいに折れちゃいますから。
だから、みなさんにおすすめなのはこれ以上がんばらないで、がんばり方をちょっと変えてもらいたいんです。
がんばり方を変えるだけでみなさんの努力はもっと報われるようになります。もう1日に5分でも7分でもいいので、休み方を変える実験をしていただければもっと大丈夫になると思います。
前田:ありがとうございます。