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さくらインターネット 田中邦裕氏(全1記事)

さくら田中社長が鹿児島で講演 スタートアップ支援の使命を語る

鹿児島で開催されたスタートアップイベント「startuphack Kagoshima」にさくらインターネット代表・田中邦裕氏が登壇。「さくらとコミュニティの過去・現在・未来」をテーマに基調講演を行いました。田中氏はスタートアップを経験して、Webサービスづくりに関わる自身の立場から、ユーザーの視点に立ったサービスの提供を心がけるようになった背景を語ります。また、「私も、さくらとスタートアップが好きな人の1人」と今回の鹿児島のイベントを契機とした熱量のあるコミュニティづくりへの意欲を見せました。

ユーザーの立場に立ったサービスづくり

田中邦裕氏(以下、田中):私は実はスタートアップも経験してまして、15年くらい昔に何社かつくったりして、プログラマーなので自分でもロゴジェネレーターなどのWebサービスをつくったりして収入を得ている部分もあるんですけど。

今回の私の立場というのは、さくらの社長というよりは、サーバを実際に使ってスタートアップをやっている側の人間という感じです。

特にこのロゴジェネレーターというのは、最初さくらでやったんですけども、途中でさくらのサーバがですね、アクセスが集中すると503(エラー)になるんですね。「自分の会社のことディスってどうすんねん」という感じですけど。

(会場笑)

そこへ救世主が現れまして、AWSでした(笑)。私はAWSと契約しまして、事なきを得たわけです。

JAWSというコミュニティもありまして、すごく活発なんですけども。そこの第1回が5年前に東京でありまして、なぜか私が乾杯の挨拶をしまして、「AWS最高!」と言いまして(笑)。

そのあと、「もっと日本のスタートアップが使いやすいクラウドとかアプリケーションをつくれないか?」ということがあってですね。

それまで「VPSとかやらない」と宣言していたんですけど、ユーザーの立場からどうしても「やっぱりさくらだったらこういうサービスを提供するだろう」というサービスを提供していこう、ということで自社のサービスをつくってきました。

そういうこともあって、自分が利用者でありコミュニティの中に普通にいながら、「さくらとしてこういうふうなこともできるんじゃないか」みたいなことをいつも考えながら、経営というよりも仕事をしている人間ということが自己紹介でした。

「東京に本社を移すことはない」

ここからさくらインターネットの紹介です。真面目な話なんですけど、96年の学生時代に私は学生ベンチャーとしてさくらインターネットを立ち上げました。その後、99年にさくらインターネットが株式会社化しまして、今まで19年この仕事をしています。

2005年にマザーズに上場しまして、ご存知の方もいらっしゃるかもしれませんが、北海道の石狩市というところにデータセンターを2011年に建設しました。

今の従業員数は300人弱。本社は大阪です。ちなみにさくらインターネットというのは、「どこにある会社なのかいまいちよくわからない」と言われる会社で、なんとなく東京だと思われているんですけど。

私は東京自体好きなんですけど、東京に集中するという概念がなんとなく納得できなくて、頑なに私の目が黒いうちは東京に本社を移すことはないだろうと思います。

(会場笑)

要はどこでもいいということです。今回、鹿児島というふうになってますけど、宮崎とかいろんなところからみなさんいらっしゃっていると思うんですね。だから鹿児島っていうことに限定せずに、ただ今回は鹿児島にみんな集まっていて、今度は宮崎に集まって、次は沖縄に集まってとか。次回は三島村でやりましょうかね。

(会場拍手)

みたいなことで、ゆるーくつながりを持っていこうと考える所以でもありまして、頑なに本社を東京に置くのをやめている会社でもあります。

スタートアップを支援する、さくらインターネットの使命

ちょっと固い話なんですけど、「なぜうちの会社ができたか?」という話でして。さっき言ったように学生時代にサーバを自分でつくって友達に貸して、友達がまたその友達に貸していって結構コンテンツが増えていったんですね。

最初、僕はエヴァンゲリオンのホームページをつくるためにサーバを立ち上げたんですけども、自分でつくるよりも利用者さんのほうがよっぽど上手くつくるということに気づきまして、自分だけでやってるうちはクリエイティビティがなかなか足りないものですから、これ以上成長できないかなあと思っていました。

私が得意なのはインフラ部分なので、そういうロビーオフコンテンツのようなサービスとかビジネスの下に入ろうと思いました。

実は当社の使命に書かれている存在意義に関しては、やっぱりお客様のビジネスが広がるように、我々がインフラをつくっていくというところになっています。

ということで、今日はサービスの宣伝は全くなく、基本的にはうちがどういう会社で、なぜスタートアップを支援するポジションにいるのかというところを話します。

お客様が増えないとうちの商売上がったりですし、うち自身で何かサービスがつくれるわけではないので、こういう支援を通じて一緒に成長していかないと未来はないかなというところを表現しています。

余談ですけど、実はグリーさんとかミクシィさんの一昔前のソーシャルゲームですとか、最近だとメルカリさんもそうですし、アラタナさんなんか今日も来ていただいていますけど。アラタナさんにも実は使っていただいています。そういうスタートアップの方が最初に借りるサーバとして、ずっと前から使っていただいているところはあります。

こんな格好して真面目な話をするのもどうかと思いながらも、グリーさんの本社に行くと、六本木ヒルズの受付に1台のサーバが飾ってありまして、それは「この1台からグリーは始まりました」という文言付きであります。それはうちが寄贈させていただいたものです。

なので、最近スタートアップ支援を始めたというよりも、以前からスタートアップの方に普通に使っていただいているというような会社でもあります。最近外資系のクラウドベンダーが頑張って営業されていて、最初は無料だけどあとはめっちゃ高いっていう。

ディスったらアレなんですけど、実際そういうこともあってサーバ代に苦労されてる、インフラ代に苦労されて、企業が伸ばせないという話をよく聞いていてですね。

うち自身が能動的にもっと「スタートアップに使いやすいインフラがあるんだよ」というのをお伝えしていかないといけないなあということがあって、スタートアップ支援を能動的にやるようになった背景があります。

内側からエネルギーが醸成されることが大切

うちの考えるコミュニティとは何かというと、これ林さんがまとめてくれたんですけど、林さんはすごい真面目ですごく調べていただいてですね。「昭和45年の国民生活審議会のコミュニティ問題小委員会」という団体なんですけど。

(会場笑)

逆説的に言うと、実はこんなに前から議論されているんですね、コミュニティというのは。キーワードは「自主性」と「開放的」プラス「信頼感」のある集団ということで、トップダウンで誰かにつくらされたというものではなくて、みんなが集まってつくったという定義になっています。

よくグループとチームの違いという話をされますけど、グループというのはゴールがあってみんながとりあえず集められたというもんなんですけど、コミュニティとかチームというのは、お互いが目的を持ってそこで自発的に活動するというものです。

なのでどちらかというと、グループは熱量が上から与えられている感じなんですけど、コミュニティだとかチームというのは内発的にエネルギーが醸成される、そういうようなものだろうと理解しています。

以前からコミュニティイベントと呼ばれるところには当社は行っていました。OSC(オープンソースカンファレンス)とかはできたときから、個人的に行ってました。どうしてもデータセンターのお固いビジネスなんで、私個人として行ってるにすぎなかったんですけど。

最近有難いことに「コミュニティ活動を自らやりたい」と言ってくれる社員の方が増えてきて、正直コミュニティ活動って「行け」って言われて行くほどつまらないものはなくて、自分から行くというのがすごく重要だと思っています。

なので「社員に無理やり行かすのもなあ」と思って、1人で行っていたんですけど。最近は自ら、さっき出てきた林さんとか今回やらしていただいている油井さんとか、2人をはじめたくさんのうちの……どうしたんですか? 油井さん、恥ずかしいですか? (Tシャツに)「パーティ」って書いてますね。熱量高いですね(笑)。

(会場笑)

やっぱり自発的にやってくれるというのがあって、業務指示でやるっていうのはあんまりテンション上がらなくて、自分たちでやりたいということが大事。

鹿児島でもやりたいというのがあって、とにかくやりたい、やりたいという人がさくらの社内にも、いろんな地域にもおられて、それがたまたま結実した場所がここ鹿児島だったということだろうと思います。

ユーザーと社員が同じ視点のコミュニティづくり

実際、さくらのコミュニティというのは軽くできていて、「ミクシィは今ゲームの会社じゃないの?」というのがあるんですけど、なんかFacebookとかmixiとかにユーザーグループができて、一応コミュニティという形で活動されているということがあります。

あと「仙台でさくらのクラウドを知る催し」という地元の方々が「東北デベロッパーズネットワーク」というところが集まってやってくれて、私が講師として行ったりとか、自分も楽しかったです。

これも「やってくれ」と頼まれたのではなく、「一緒にやりましょう」とお声がけいただいて、行きたい人が行ってみんなで乗り合わせるみたいなイベントでした。なので、このようにコミュニティ活動というのは以前からやってはいました。

ただ私ですね、以前から社員から「コミュニティをつくりたい」と言われてもですね、頑なに「うーん……本当につくっていいのだろうか」と自問自答をしていました。

要は、鹿児島でも技術系の勉強会というのはあると思いますし、スタートアップミーティングとか、そういうスタートアップ系のイベントもありますし、あとはJAWSだとかAndroidだとか結構Tech系のコミュニティがあるんですね。だから「それやったら、うちつくらんでもええんじゃないか」みたいな話をしていました。

なので僕自身、個人でよくそういうコミュニティに顔を出しているんで、「なんかさくらのコミュニティって押し付けがましい」という話をしていたんですけど。ちょっと私、なんというか勘違いをしていたのかなと思いました。

結構、地元の方から「さくらのコミュニティあれば行くよ」と言っていただいて、むしろつくりたいよと言っていただいて。

うちの社員もコミュニティつくりたいというのは、業務指示じゃなくて、本当につくりたがっているみたいなんですね。

なので、うちの社員も地元の方も何かに評価されるからとかじゃなくて、自分がやりたいという気持ちをすごく感じてですね、「それに応えないのはダメなんじゃないか?」と私は心変わりしたこともあって。

とにかく当社らしいコミュニティを、ユーザーのみなさんとうちの社員が同じ視点でやれればいいなと思ったのが、今回のコミュニティを本気でやろうと思ったきっかけです。

ユーザーにとって身近な「さくららしさ」を大切にしたい

こういう思いから「さくらクラブ」と「さくらサポーターズネットワーク」ができたんですけど。実はこの名前もうちの社員が頑張って考えてくれてですね。私のセンスじゃないというのは実は腰折りトークじゃなくてですね、なかなかいい名前だと思うんですけど。

最初「さくらクラブ」ってなんかどっかの夜の店の名前みたいだなあと思いがちだったんですけど、見てれば見ているだけなんかよさそうだなと。

おまけにドメインがなかなかよくて、「saku-love」となっています。さくらの愛というなかなかもっさりというか。

(会場笑)

もっさりというと表現があれなんですけど、スタイリッシュを目指してもさくららしくないと思ってたので、見てたらすごくしっくりきましてですね、これも僕がどうしようということではなく、こういうふうにしたいという話でやりました。

「さくららしさ」というのは奇しくも出てきたんですが、これはみなさんにお聞きしたいと思ってるんですね。さくらっていうと昔はうさんくさいというか、起業したすぐのときに「地元のぼったくりバーが“さくら”という名前で、嫌なこと思い出した」と言われたりですね(笑)。

名前を変えようかと思ったこともあったんですけど、やっぱりずっとやってますと愛着もわいてきますし、「どういうようなイメージなんだろう?」と。まあエンジニア的なイメージなのか、なんとなく親近感があるというか。

スーツ族というより、今日スーツの方が本当に少なくてビックリしたんですけど、私もスーツじゃなくて、まあそういうことなんですけど。

あ、スーツの方いらっしゃいますね(笑)。すばらしい(笑)。センスがあられる。

(会場笑)

ということで、ぜひ一緒につくっていきたいなと本気で思っています。よく「一緒につくりましょう」と言いながら、お仕着せがましいコミュニティもあると思うんですが、それは私の本意ではないですし、やっぱりもともとあるコミュニティと戦うものでもないと思うんですね。

全部に行ったらいいというか、私自身個人でそういうコミュニティに行きますので。そういう中の1つとして、こういう部分はさくらクラブがいいなと思えるようなコミュニティが目指せればいいと思っています。

モチベーションを上げるための、熱量を高める場所づくりをしたい

今回、初めての会合 in 鹿児島ということでさせていただくことになりました。鹿児島にもスタートアップで当社を使っていただいている方は多くてですね、昔からつながりがありました。

鹿児島に限らず、福岡だったり、宮崎だったり、九州エリアの方々に結構使っていただいています。その中で「ぜひ鹿児島でイベントやりたい」というお話をいただいて、「ぜひやってみたいな」という思いの中で、始まったというところです。

少し読み上げになっちゃいますけど、当社がホストを務めるコミュニケーションネットワーク、ユーザーのみなさんの熱量を受けとめ蓄えることができる場を用意ということであります。なので、うちからエネルギーを注入していくというよりは、一緒にエネルギーを蓄えていこうというふうな話です。

最近思うのは、仕事の動機付けというのは絶対重要だなと思っています。というのも、肉体労働だったらとりあえず酒とメシと睡眠ぐらいあればいいのかもしれないですけど、やっぱり我々はモチベーションを上げて頭の中で仕事をしないといけないので。

知識労働をすることを考えると、マズローでいうと少し上のほうの欲求、承認欲求だとかその場にいられるだとか、愛されるだとかそういう高次の欲求が必要なんだろうなと思います。

その1つが動機付け、熱量だと私は思ってまして、単に給料もらっていたらモチベーションが上がるとかそういうものでもなさそうだなと思っています。そのキーワードは「熱量」です。

「熱量」って家で1人で仕事していてもあんまり高まらないんですね。社員によっては独身の社員が、「あんまり有給を取りたくない」と言ってですね、最近「有給取れ」と言うと「休みたくない。でも仕事はしたくない」と言って「え、なんで?」と聞くとですね、「家にいると寂しい」っていうんです。

それだったら嫁さんでも探したらいいんじゃないかと思うんですけど、そういう次元の話でもない。とにかくつながれる場所が欲しいんだなあということを、無理やりつないだわけです。

なので、とにかくいろんな人がつながると熱量が上がりますし、どうしても1人だと熱量下がりっぱなしになります。まあ、唯一気をつけなければならないことは、世の中には熱量を奪う人もいます。

だから熱量をピタっとくっつかれて、熱を吸い取られるということではなくて、一緒にいて熱量を高めていけるような、そういう場をつくらないといけないなと思っています。

うちら的にはその場をつくることにしています。それもうちが「こういうふうにしてください」と言ったら熱量が下がっちゃう。とにかく、ゆるくやっていこうということです。

「さくらとスタートアップが好きな人の1人」として参加をしている

基本的には、ここで出た勉強の結果が他のコミュニティで何かつくられてもいいでしょうし、他のコミュニティでやってたことがこっちに来てもおもしろいですし。結局、コミュニティって場所でしかなくて、「さくらクラブ」でしかやれないかというとそうでもないと思います。

個人はいろんなコミュニティに帰属していますし、そういうコミュニティを超えて、いろんなつながりができるかもしれません。新たなイベント、新たなコミュニティ、既存のコミュニティとの連携といったことを広めていきたいなと思っています。

まとめなんですけど、コミュニティって結局誰かに「行ってこい」って言われて、まあ「行ってこい」もあるかもしれないですけど、基本的には自分が行きたくて、行って集まるものだというふうに思っています。

ここがポイントで、「さくら」「インターネット」とここに書いていたんですけど、ここを修正しました。さくらの社員もさくらインターネットという法人の判断というよりも、個人に近い形で参加すべきかなあと思っています。

なので、私今回のスライドでも自己紹介のところで、「代表取締役」と書かなかったんです。

私も、さくらとスタートアップが好きな人の1人として参加をしていますし、そういうゆるーく、しかしながら集まるとなんとなくモチベーションが上がるという、「同年代でこんなに頑張ってる奴がいるから俺も頑張らんとな」とか、社内の人にどんどん熱を伝播させていく場、会議になればうれしいなと思います。

今日はいつになく緊張して上手くしゃべれなかったですけど(笑)。私の思いとしては、やはり誰かに言われてやるんじゃなく個人が集まって、あと企業の色が格別についているとかじゃなくて、しかしながら、うちはこれマーケティング施策でやってるんじゃなくてですね、言うなればブランディングの施策なのかもしれないと思います。

これでいきなりお客様が取れたりとかということは全く考えていないんですけど、やらしいことを言うと、10年後くらいに「さくらってスタートアップに強いよな」と他とは比べものにならないくらい言われるような状況になったらいいな、というやらしい裏の心もあるんです。

それをやるのってうちの社員においても私においても、個人のモチベーションでまずはやらないといけないと。

ということで昨日は温泉を満喫しましたし、「鹿児島最高」ということで締めさせていただいて、次の場所はどっかでぜひやりたいと思いますので、ぜひまた参加していただけたらと思います。

また鹿児島でやってもいいですし、これからも末長くお付き合いいただければと思います。ということで、以上です。ありがとうございました。

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