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罰ゲーム化する管理職(全2記事)

2024.04.01

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負荷は増え続け、それでもケアされない管理職… 「罰ゲーム化」する管理職と“しんどさ”の原因に気づけない人事のすれ違い

提供:株式会社パーソル総合研究所

部下のマネジメントや後任者の育成、トラブル対応に加え、リスキリングやハラスメント対策など、管理職の業務負担の増大が問題視されています。本イベントでは、『罰ゲーム化する管理職 バグだらけの職場の修正法』の著者で、パーソル総合研究所上席主任研究員の小林祐児氏が登壇し、管理職のあり方を見直し組織改革につなげる方法について語られました。本記事では、パーソル総合研究所による調査研究から、現場の管理職が抱える課題や負担が増大していく背景を掘り下げて解説します。

『罰ゲーム化する管理職』著者の小林祐児氏が登壇

小林祐児氏:みなさん、こんにちは。ご紹介にあずかりました、パーソル総合研究所の小林でございます。本日は「罰ゲーム化する管理職」というテーマでお話しさせていただきます。

あらためて自己紹介になりますが、(私は)もともとは社会学の人間です。世論調査やマーケティングリサーチをやっていて、今はずっと人事管理や労働関係を調査させていただいております。

実は去年のこのイベントでも、リスキリングについてお話ししました。さっき井上から「大人の学びとWell-being」の講演をさせていただきましたけれども。「リスキリングは経営課題」ということや、ミドルシニアの問題やジョブ型雇用など、だいたいトレンドになったら本を書いている感じですが、今一番書きたいトレンドがここ(「罰ゲーム化する管理職」)だったということです。

本日のアジェンダについて、まず「罰ゲーム化」って派手な言葉を使っておりますが、どんなことか。

この中にもおそらく、ご自身が「管理職ポジションです」という方もいれば、「自社の現場は大変そうだな」と思ってらっしゃる(経営層・人事部門の)方もいると思いますが、「管理職の何がそんなに大変なのよ」というお話です。

この「罰ゲーム化」もしくは「管理職は大変だよね」という議論は、特に新しい問題ではございません。それなのにケアしている会社が少ないのはなぜなのか。そして罰ゲームの修正法、という流れで進んでまいりたいと思います。

現場の管理職が感じている課題

「罰ゲーム化とはどんなことか」は、管理職本人に聞いてみるのが一番わかりやすいですよね。「最近の変化はどうですか?」という聞き方で言うと、現場管理職がなかなかの負荷を感じているというのがこのグラフです。

「管理職の抱える課題」はコロナ禍前に行った調査で、いろんな調査がありますが、最近であればいつ行ってもだいたいこんな感じになります。「業務量が増えました」が52パーセント、「部下育成ができません」が37パーセント、「後任者が見当たりません」が56パーセント。では負荷が高い人と低い人は、特にどこに差が出るのかを見たのが、こちらのグラフです。

先ほど「上司の学びが部下の学びにつながりますよ」という調査も紹介させていただきましたが、一番先に削られているのが、学びの時間を確保すること。「忙しすぎて学べません。それなのに上からはリスキリングをしろと言われます」みたいなことです。

その次が付加価値を生む業務、端的に言えば「イノベーションに着手できません」と。忙しすぎて、(目の前の業務を)回すのが手いっぱいということですね。そんなところが高くなっております。

日本企業の強みが弱体化している

次、管理職人材の「後任者がいない」ということ。もちろん、負荷が高い現場のほうが、より課題を感じているのが端的にわかります。ここで日本企業の経営学的な特徴をおさらい的に考えると、よく言われるのが「横のつながりが強い」ということです。

専門用語で「水平的なコーディネーション」と言いますが、いわゆる多能工化です。柔軟なジョブアサインでなんでもできる人を育てることによって、隣の部署の仕事が自分でも少しはわかる。これによってPDCAサイクルが全社的に回せるというのが、ある種の日本のモノづくりの強さでした。だからこそ企業内の人脈蓄積や、残業も含めた疑似共同体的な人間関係が営まれやすい。

ここで一番有名な議論が、野中(郁次郎)先生の「ミドル・アップダウン」。1990年代の議論ですが、トップダウン型ではなくて、ミドルが現場とトップをつなぐことによってイノベーションを起こしていこうと(いう考え方です)。

ここの強さを支えているのがまさに管理職、特にファーストラインマネージャーと呼ばれるような現場管理職です。逆に言えば、未だに経営の垂直的なコーディネーションは弱いです。(日本は)テスラみたいな企業はまず生まれない国ですね。あんなカリスマ的な経営者はほとんど出てこないです。逆に言えば、現場に期待する経営者が非常に多いですね。

そして(日本では)人事権は異常に強く、アメリカは非常に弱いですね。これは人事権を現場の上司が持っているからで、中央の(現場の)人事権が非常に強いってこともあります。ミドルは、この真ん中のいわゆる日本企業の強さと呼ばれていたもの(水平的なコーディネーション)の、ある種の要でもあったはずです。

それにもかかわらず、忙しくなって環境がいろいろ変わって、かつ成果への圧力があって、四重苦みたいなことになってきていると。それは現場の横のつながりの弱体化に直結し出していないだろうか、ということです。ここまではすごくストレートですよね。

管理職が負担を感じている業務の内訳

もうちょっと分析的に、管理職の何がそんなに大変なんだろうか(を見ていきます)。みなさんも現場の意見をいろいろ聞いてると思いますが、どんなことが統計的には大変とされているのか。役割別に「この役割はどうですか」という負担感をずらっと聞いてみました。

一番初めに挙がるのは組織内のトラブル解決です。トラブルにもいろいろありますが、やはり「想定外のトラブルがあった時に一番大変だな」と。ただ、上位のほうは部下のマネジメント系を表す緑色が多くなっていますね。

「定期的な面談を行ってフィードバックをする」が2位です。人にフィードバックをするって、やはり負荷が高いです。あと「モチベーションを維持・向上させる」あたりが3位です。そして4位、「部下の手の回らない仕事をカバーする」。ここのあたりが特に大変そうです。

そしてこの調査では、時間を取られるわけじゃないけれども、「心理的な負担をより強く感じる役割」と、業務量的にパンパンになっちゃうよという「業務量的な負担を感じるもの」の差分を取って比較してみました。

心理的負担に関しては、先ほど見たような「トラブル解決」、ないしは「ハラスメントの対処」ですよね。「こんなに忙しいのに、あそことあそこでハラスメントが起こってきちゃった」という時に「はぁ……」となると。

3位が「部下の評価」ですね。こうやって見ると、やはり対人的なコンフリクトが起こりやすい業務は心理的な負担が大きい。逆に右側の業務量的な負担をより強く感じているのは、「部下の手の回らない仕事をカバーする」フォローアップ仕事。あとは「情報収集」や「進捗管理」、いわゆるマネジメント業務に上乗せされるようなことです。

今、プレイングマネージャーがほとんどになってきましたが、そのあたりが業務量的な負担感をより強く感じさせていそうです。こういうふうに因数分解していくと「なるほど、こういうことか」というのが徐々にわかってきます。

新入社員に増えている、昇進は「どうでもいい」という声

もうちょっと統計的にちゃんと見ると、一番はやはり部下のマネジメントが大変だと。これが一番、現代の管理職の負担感を上げておりました。もうちょっと細かく見ると、メンタル問題や、「Z世代の考えていることはわからんな」という世代間ギャップ問題ですね。

あと部下の離職増加も、特に安定企業で今非常に増えてまいりました。若くて元気なやつからどんどん抜けていく問題。そして育成が十分にできない。こうした部下へのマネジメントの困難が、(管理職の負担感に)一番影響しているようです。

2番目に出てくるのがハラスメント対応、コンプライアンス対応、ダイバーシティ対応、働き方改革対応。みなさんももしかしたらケアされている、ないしは「現場の管理職に研修をやらせたほうがいいんじゃないかな」と思ってらっしゃる。特にここ数年で出てきたようなトピックが、見事に管理職の負担感を上げております。

私も実は最近、ハラスメントと不祥事の研究をしていて、よくお引き合いいただくんですけれども、やはり管理職研修に落ちていきますね。ダイバーシティもそうですね。ダイバーシティ&インクルージョンを進めたいという時に、「やはり管理職の意識から変えていきましょう」という話がよくあるわけです。それが見事に負担感につながっちゃっているということですね。

職場というのは観察しあう共同体ですので、こうした状況はやはり部下からも見えてしまいます。これは新入社員の経年データで、平成最後の10年の比較ですね。「部長を目指す」が男性・女性、そもそも低いんですが、あんまり変わっていません。

「専門職を目指す」がガクッと下がっていて、見事に上がっているのが「どうでもいい」です。別に1社目の企業でどこまで上がれるかなんて「いや、そんな考えないですよ」と。

我々パーソルグループは転職サービス「doda」を提供していますが、新入社員で4月からdodaに登録する人がめちゃくちゃ増えました。みなさんは新入社員の時、dodaに登録してましたでしょうか。「なかったよ」という方がいるかもしれませんが(笑)。

いろんな人の話を聞いていても、最初から「3社ぐらい経験して、自分のキャリアを築いていきたいな」みたいな感覚が当たり前になってきたなと感じています。そうすると、管理職を最初から狙うのは、やはり優先順位が下がってきてしまうのです。

世界的に見ても、日本は管理職への意欲が最下位

管理職意欲をメンバー層に聞いた国際調査を見てみます。こういうアンケートで日本の意欲のなさが表れているのは、よく見慣れた光景ですが、それにしても低いですね。これはAPACの調査ですが、インドやベトナムは8割を超えます。働くことは上を目指すことであるという感覚かなとも思いますが、日本は21パーセントで最下位です。

かつ図の一番右に男女差を出してます。男性の意欲を1とした時の、女性の意欲の比率ですね。上位は1前後で、男性が100パーセント意欲があったら、女性も同じぐらい意欲がある。一方で日本は0.57。圧倒的に女性のほうが意欲が低く、意欲格差が広いということも見て取れるデータです。

そして「罰ゲーム化」を本にまでしようと考えたのは、このデータを見たからというのもございます。

「管理職になると死にますよ」っていうお話です。「死に至る管理職」と呼んでいますが、これは東大のチームないしは国際的ないわゆる健康・医療分野の研究で(言われています)。

「管理職になったって、幸福度は上昇しない」

バブル崩壊以降、韓国と日本はいわゆる管理職ないしは専門職の死亡率がぐぐっと上がってきてしまいました。欧州では逆で、つまり現場のほうが早く死んじゃいます。普通に考えると健康にかけるリソース、つまりお金や時間、意識はだいたいお金持ちのほうが高いわけです。だからお金を持っている上位職のほうが寿命が長いというのが、欧州的なデータの出方です。

韓国と日本はバブル崩壊後、それが逆転しました。かつ、やはり自殺が多いですね。これは男性中高年管理職特有の問題です。日本は不況時に経済的な理由によって、特に男性中高年が自殺を選んでしまう国ですね。これもなかなか痺れるデータです。罰ゲームどころの騒ぎじゃないということですね。

先ほどウェルビーイングの講演がありましたけれども、「管理職になったって幸福度は上昇しない」と。「なんなら主観的な健康度は悪化が見られましたよ」という研究も出てきております。健康・医療系はきちんとした因果関係を見なきゃいけないので、迂闊なことは言えませんけれども、ちょっと危ういデータが揃ってきているのが日本の管理職の現在ですね。

しかも「管理職は大変だから救わなきゃね」みたいなムーブメントって、起こらないわけですよ。「お金を持ってるんでしょ」「偉そうにしてるんでしょ」と、世間的なコンセンサスとか、いわゆるエンパシーを非常に得にくい問題があります。だからこそ誰かが言わなきゃいけないんですが、なかなかそうはいかない。

管理職の大変さを分解したところで、この状況って別に「昔からそこそこ言われていましたよね」と。例えば16年前に、野田(稔)先生の共著で『中堅崩壊 ミドルマネジメント再生への提言』という本が出たのを覚えている方はいますかね。

「ミドル(マネジメント)が弱ってきているよね」という感覚って、バブル崩壊後からちょこちょこ出てくる言説です。にもかかわらず「なかなかケアされていないな」というのが、なぜなのかという問題です。

長期に渡って、管理職の負担は増大していく

経営環境としてはずっと経済が長期停滞していて、人手不足が進行しているのがマクロトレンドです。そこにグローバル経営とコーポレートガバナンスの重視が掛け算されます。そして成果主義、組織のフラット化、女性活用、ダイバーシティにつながります。職場環境としては結局、管理職ポストの減少とプレイングマネージャー化がここ20数年で進んできた。

そこに労働時間管理の圧力が掛け算されます。働き方改革と、激増しているメンタルヘルス問題ですね。10人の部下がいたら、誰かが潰れているからだいたい9人で回していますと。もうシャレにならないような状況が普通の状態になってきています。

それにもかかわらず、人を扱うという意味でけっこう大事な、人材の多様性自体は増えるわけです。非正規雇用が増え、専門職ラダー(専門職が段階を踏んでキャリア形成を目指すためのプラン)ができ、シニアが増え、なんなら外国人労働者が増えてくると。先ほどの部下マネジメントのシンプルさがどんどん損なわれていっています。そこにテレワークの追加ですね。

ロングトレンドとして、「これらが弱まる気配がないぞ」ということもおわかりいただければと思います。おそらく10年後、同じようなテーマでも、この矢印はそのまま伸びているんじゃないかなと思います。

組織のフラット化で管理職のポストも減少

組織のフラット化は、みなさんすでにおわかりだと思いますが、「階層を減らして室長グループぐらいにしとこうか」ということですよね。「管理職が増えすぎたよね」という1980年代の反省から起こったムーブメントで、1990年代に大はやりしました。トヨタさんが非常に有名で、管理職ポストの増加を抑制し、階層を減少させていきますよと。

管理職の割合を測るのは非常に難しいんですが……結果として、男女で分かれていますが、1995年と2015年を比較して、半減ぐらいになっております。

もう日本企業は「あいつはがんばっているから管理職ポストをあげようか」、ないしは「部下なし管理職でポストを増やす処遇にしようか」みたいなことをやらなくなりましたよね。逆に言えば、昔はしていたのが、どんどん椅子が少なくなってきて、部下の人数も増えがちだということです。

プラス、これはそれほど気づかれてないですが、あんまり稼げなくなってきております。これはけっこう自社でロングトレンドを追ってないと、1つの会社でも見えにくいことです。これはメンバー層を100パーセントとして、管理職がどれぐらいもらっているかをパーセンテージで示したものです。部長、課長、係長、全部がここ25年〜30年で下がってきております。

もうちょっと人もいたし、もうちょっと稼げてたのが昔の管理職だったはずなのに、どんどん椅子は減ってきて、どんどん稼げなくなってきました。これが日本企業のある種の全体感です。

働き方改革が進むほど、管理職の負担が増えるわけ

ここに働き方改革が掛け算されます。「働き方改革が進むほど、管理職の負荷実感が高い」ということも見えてきました。忙しいから働き方改革をやっているという逆の因果も考えられるので、慎重に見なきゃいけないデータではあるんですが、現場を見ていると「まぁそうだろうな」という感じです。

なぜかというと、多くの働き方改革は労働生産性向上よりも上限規制の話、法的な対応のお話(だからです)。そしてその法的な対応はメンバー層の労働時間対策になりがち。私は働き方改革の「2重の矮小化」とずっと言っています。

もちろん管理職も労働時間はきちんと見なきゃいけないんですが、働き方改革で成果が出ましたという時に、だいたいメンバー層の平均残業時間とかで見ちゃいがちですね。

「じゃあ、消えた分はどこに行っているんだろう?」と考えると、管理職が忙しくなっていて、「(部下には)残業させられない」みたいなこともよくございます。そして、こういったトレンドがぐるぐる回ります。

マネジメント層が自分で自分の首を絞めてしまう問題

今までの話はちょっとストレートでしたが、もうちょっと構造的なお話に入ります。まずは、マネジメント層が自分で自分の首を絞め出しますよというお話です。これも分析しながら「本当にそうだな」と思っていました。

忙しくなって負荷が高い状態になると、マネジメント層が何をやるかというと、マイクロ・マネジメントをします。つまり部下に考えさせて、ちゃんと成長できるようにアサインするのではなく、「いいから1週間後にこれを出してくれ」「あれをやって、これをやって、何日までに報告して」(と指示する)。

いわゆる行動管理的なマネジメントを強めることがわかっております。そうなると、部下の行動がやたら配慮的になり、自分で考えなくなる部下が育っていそうだということがわかりました。

もしくは「やたら言ってくるけど、部長の言うことは間違っているんだよね」と反抗的になるパターンですね。「なかなか自分で考えてくれないな」「主体的になってくれないな」という背景には、「いや、そういうマネジメントをしているからでしょ」ということがありそうです。

これが結局、上司の負荷を上げていました。そりゃそうですよね。考えてくれない、もしくはやたら反抗してくる部下を持つと大変になる。大変になるから、その多様性ないしはケアをするよりも「考えなくていいから、これをやってくれ」となるんですね。

何社からも聞いたことがありますが、「考えるより動け」とやっていて、結局考えない部下が育って苦労するのは、実は管理職自身ですよ。これが(管理職が自分で自分の)首を絞める問題なのですが、あまり気づかない構造なので、よく管理職研修でも言わせていただくようにしています。

管理職と人事の意見のすれ違い

そして、みなさまのような人事との意見のすれ違いもよく見られます。これは図の左側が管理職本人が感じている課題、右側が人事が考える、管理職が抱えている課題です。左側の現場のほうは、とにかくリソース不足です。「人が足りないし、人が育ってないよ」と。

あと「忙しすぎて『学べ』なんて無理だよ」と。あっぷあっぷ状態の課題が上位にきます。ただ人事は「うーん、それでもいいからもうちょっと働き方改革、ハラスメント、コンプライアンスに対応してくれ」と。このすれ違い感もなかなかですよね。

(人事側は)「まあ現場って、常に『忙しい』って言うものですからね」みたいな感じによくなります。でも一方で、「ハラスメントが増えてきたんです。ちょっと管理職を見直さないといけないかもしれないですね」「コンプライアンスをきちんとやらせないと駄目ですね」。

「いよいよ働き方改革で、残業を減らさないと駄目ですね」「やはりそれが管理職の今の課題でしょう」と。(人事の)みなさまがこっちの考えに傾いている。これもなかなかのすれ違いです。

結局、管理職への支援・サポートとして、まずはIT化というお話に飛びつきがちです。ただ、IT化で管理職の負荷(の軽減)はなかなか難しいなといつも思います。

スイッチングコストもありますし、システム化したことによるいろんな承認事項や例外事項を「管理職がケアしてくださいね」となりがち。あと、単純に「何もやっていませんよ」という会社さんもやはり多いです。

人事のサポートが、かえって負担になることも

管理職負荷のインフレ・スパイラルを簡単に図にまとめると、こういうことです。管理職が忙しくなった時に人事はどう考えるかと言うと、「うーん、マネジメントが機能してないぞ。ちょっとマネジメントスキルが足りないんじゃないの?」と。

先ほどは触れなかったですが、「管理職研修をやりましょう」となります。「やはりマネジメントが変わらなきゃ」という時に、管理職研修にやたら落ちていくことがよくございます。

そして、組織課題はこれからもどんどん起こってきます。不祥事、コンプライアンス、ハラスメント、何でもいいんですが、その度にそういった個別支援が行われていって、管理職にとっては「うーん、また研修か」と。

そして結局、負荷が増大すると(後任の)育成不足になる。管理職になりたがる部下が減る。優秀な人材を選抜できないので、結果的にマネジメントのスキル不足が実現されてしまうと。あんまり優秀ではない人をどうにか管理職にしなきゃいけない状況が起こってきます。そして現場でも、先ほど見た「自ら首を絞める管理職」が増えていっていませんか、ということです。

「これは止まらないな」と思って書いたのがこの本です。新しい状況に対して、どんどん研修を増やして、どんどん部下が育てられなくなって……。「この状況はちょっとまずいんじゃないかな」というのを、私自身も管理職研修をやりながら常に思っています。

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