5年前まで超アナログ企業だった檜垣造船株式会社

喜多椋平氏(以下、喜多):今回はこのような機会をいただき、誠にありがとうございます。

吉井美佳氏(以下、吉井):ありがとうございます。本日は「すべてはkintoneからはじまった。檜垣造船IT維新物語」というタイトルで、kintoneを導入してからこれまでの弊社の歴史を紹介したいと思います。

まず最初に自己紹介させていただきます。私、経営管理部 総務課の吉井と申します。システム担当って書いてるんですけれども、IT経験はありません。苦手意識がないというだけで担当をさせてもらってます。2014年の入社で10年目、ご覧のとおり子どもが2人いて、育休・産休を経て今も働かせていただいてます。

喜多:同じく経営管理部 総務課の喜多椋平と申します。経歴は2019年入社の5年目です。IT経験は皆無、苦手意識もあり。これはちょっと柔らかく書いてるんですけど、本当はめっちゃ大嫌いでした。趣味はマラソンとバスケットボールです。本日はどうぞよろしくお願いします。

吉井:よろしくお願いいたします。

(会場拍手)

本日はこちらの7つのコンテンツにしたがってご紹介していきます。

喜多:檜垣造船とはその名のとおり、船を造る会社です。本社は日本最大の海事都市、愛媛県今治市にあります。こちらに映ってるバリィさんの出身地でもあります。みなさんご存知だと思いますが、(サイボウズ株式会社の)青野社長の出身地でもあります。

主に近海船の開発・建造を行っております。その実績は700隻以上にわたり、貨物船に限らずケミカルタンカー、LNG運搬船、多種多様な船舶の建造を行っております。もちろん船型開発にも力を入れており、国内初・内航LNG燃料貨物船を建造するなど、時代のニーズにも対応しております。もちろんDX化にも大々的に力を入れております。

吉井:が、しかしです。檜垣造船、ほんの5年前まで超アナログ企業でした。

喜多:超アナログ企業でしたよ。

PC支給も情報共有もない、旧態依然の幕末状態を変えたきっかけ

吉井:「ない」が当たり前だったんです。PC支給がない、情報共有がない、そして共有ツールもない。

喜多:ないない尽くしですよ。不便も当たり前でした。社外セミナーに行った際にはその場で内容をメモに取ります。その後会社に帰ってパソコンで内容を打ち込み、データを印刷して、そこから上司11人に押印してもらいます。その間、自分の手元に戻ってくるまでなんと2週間です。

吉井:2週間です。「紙って最高!」の時代ですね。

喜多:「造船所は紙が一番や、紙の図面があったら船は作れるんやけん」。そんな言葉に私は衝撃を受けました。

吉井:そうです。まさに檜垣造船、旧態依然の幕末状態でした。

喜多:実際に11人の押印のところ、見えますか? 

吉井:これは私の実際の報告書です。こんな状況を変えようと一石を投じた社員がいました。それが東京事務所の林です。林はスーパーゼネコンの勤務経験がありまして、この状況をおかしいと感じていました。2008年にはイントラネット(組織内におけるプライベートネットワーク)が必要だということで会社に訴えかけたんですが、当時会社はスルー。

その後、産休・育休から復帰した私とタッグを組んで、会社への説得を続けておりました。そんな時、転機が訪れます。2018年に経営体制の一新で、新社長がIT化を全面に打ち出したことで、「絶対にできない」とされていたIT化が「できるかもしれない」という状況になったんです。

そこでさっそく、ケーオー商事さんで開催されていた「サイボウズまるごとセミナー」に私が参加させていただきまして、流れるように2018年5月、kintoneとGaroonの導入が決定しました。これらを導入することで簡単にイントラネットを作れたんです。

喜多:林が描いてた想像どおりのイントラネットが。

吉井:簡単にできたんです。

喜多:じゃあもうこれで導入完了ですよね。

吉井:そう思いますよね。こちら。

喜多:あれ、あれ……? 「やり方を変えると仕事が増える」「今でも業務はうまくいっている!」、不満続出じゃないですか。

吉井:そうです、不満続出です。

なかなか社内に浸透しない状況を打開した、2つの策

喜多:こちらで導入完了したわけではないんですよね。

吉井:そうです。ここでやったこととしては、「段階的な導入」と「環境の構築」をしました。

喜多:段階的な導入と環境の構築。どのようなことをされたんですか?

吉井:まず当時の超アナログな状況に合わせて、丁寧に導入を行いました。「複数回に分けて説明会」って書いてるんですが、約1年かけて導入をしています。

喜多:1年間!

吉井:また「独自マニュアルの配布」って書いてるんですが、私のほうで約100冊近くのマニュアルを独自で作りました。

喜多:100冊! すごいですね。

吉井:その他もいろんなことをして、全員が利用できる環境が整ったんです。

喜多:ってことはもう導入完了ですよね。

吉井:そう思いますよね? でも檜垣造船、環境だけでは変わらなかったんです。

喜多:環境を変えてダメなら、次はいったい何をしたんですか。

吉井:次にやったことがこちら、「強制kintone」です。

喜多:強制kintone? 何ですかそれ。

吉井:kintoneを使わざるを得ない状況にしました。

喜多:これ、僕の稟議書アプリですよね。

吉井:そうです。

喜多:僕も決裁を取らないといけないので、すぐ書きました。そのように強制していって、使わざるを得ない状態を作ったということですね。

吉井:そうです。申請しないと買えないとなると社員は使用するんです。そうすると「不便だ」と言っていた社員も、使っているうちに「あれ? 便利じゃん」と、便利さに気づいていったんです。これに重ねてやったのが「共有kintone」です。

喜多:共有kintone? 何ですかそれ。

吉井:部門間共有が必要な業務を優先的にアプリ化しました。

喜多:これによって属人化がしにくい状況になりましたね。

吉井:そうです。こちら、実際に使ってる式典予定表のアプリなんですけれども。造船会社では船を海に下ろす際の「進水式」などの式典を年に30回ほど行っています。そこにいらっしゃるお客さまのお名前とか行動のスケジュール、手配した内容すべてをこちらで一元管理しています。

喜多:100名以上来られる時もありますので、こちらで一元管理できますね。

kintone導入から約1年、社内の「あたりまえ」が変わっていった

吉井:便利になったんです。ただ檜垣造船はここまでやっても変わらない。

喜多:ここまでやっても変わらないんですか?

吉井:最大の敵が残っていました。

喜多:あの(スライドの)顔を隠してた人ですか。

吉井:そうです。ただこの時、檜垣造船の「あたりまえ」はすでに変わっていたんです。先ほど2週間と言った報告書も、秒で完結するようになっていたんです。

喜多:秒で完結するようになりましたね。もう(反対派は)周りに誰もいないですね……(笑)。

吉井:そうです(笑)。気づいた時には(反対は)少数派、もうやるしかないということで檜垣造船、kintoneが業務に必須の時代がやってきました。

喜多:新時代ですね。

吉井:導入から1年後の2019年です。「いざIT維新! 新時代到来!」ということでさっそくデータ活用を開始しました。

喜多:データ活用の開始。どんなことをしたんですか?

吉井:「クレーム対応」って書かせていただいてるんですが、kintone導入前は担当が各部署に連絡を入れていって、ちょっと属人化の起こりやすい状況だったんですけれども。kintoneを導入してからは進捗の確認とか、それぞれがいつでも直接入力できるようになったので、一目で進捗がわかるようになって水平展開も容易になったんです。

実際に使用しているのが、こちらの品質異常報告書アプリです。ここで原因の分析等も行っておりまして、同じような不具合が起こらないようにすることで顧客満足度の向上につなげています。

喜多:kintoneを使ってデータ集計・分析が簡単にできたということですよね。

社員のマインドや社風にまで変化が

吉井:そうです。ここからまだまだやります。IT管理者制度を導入しました。

喜多:IT管理者制度って何ですか?

吉井:IT管理者を育成して、これまで私たちシステム管理者がやっていたアプリの運用を、各部のIT管理者にお願いするようにしたんです。それによって、システム管理者が社内の伴走者になりました。

喜多:伴走者に。

吉井:そうです。こうなると、こちら。

喜多:あれ? アプリ数5,600!?

吉井:そうです、急激にアプリ数が増加しました。

喜多:こちらもただ作るんじゃなくて、その場その場でアップデートを重ねていったからこの数になったんですよね。kintoneなら失敗してもやり直せる、だから恐れず作成できて、この数字に現れたんですよね。

吉井:そうです。アプリって作っていくうちにどんどん楽しくなってくる一面もあって。

喜多:確かに。私も最初は本当に大嫌いだったんですよ。けど作っていくうちに「あれ? これならできる」と思って、作るのがすごく楽しくなりました。

吉井:そうです、どんどんアプリ化していこうとなったんです。このように各部にIT管理者を置いたことで、さらに素早い対応ができるようになりました。

喜多:この時には「デジタル最高!」ですね。

吉井:そうです、「デジタル最高!」。でもそれだけじゃなかったんです。

喜多:それだけじゃなかった。

吉井:いつの間にか事務作業がペーパーレス化していたんです。

喜多:私自身、入社した際には「ちょっと在宅勤務は厳しいだろうな」って実際に思ってました。でも今はできていますね。

吉井:そうです。私も今「小1の壁」真っ只中なんですけれども、夏休みと在宅勤務を使用して、ずっと子どもを見つつ作業が続けられています。

喜多:kintoneを使っていくうちに、マインドに変化が起きましたね。

吉井:そうです。マインドの変化があったことで、こういった制度が導入できたんです。

喜多:マインドが変わったってことは、社風も大きく変わったと思います。改善提案制度で社員一人ひとりから出た意見がボトムアップされ、社長に直接届き、みんなのがんばりが可視化されるようになりました。また私自身、システムがすごく苦手だったんですけど抵抗なく使用できて、今はIT推進者になってしまいました。

吉井:まさかですね。

驚異的な勢いでIT化、大幅な業務改善へ

喜多:まさかのまさかですよ。またDX戦略プロジェクトも発足され、驚異の勢いでIT・DX化が進んでおりますね。

吉井:そうです、まだまだやめません。今、檜垣造船がやっているのが他システムとの連携です。

喜多:他システムとの連携。

吉井:第1弾として、自社作成の基幹システムとkintoneを連携しました。マスターデータを連動することで、多重管理からの解放を行ったんです。加えて造船業では膨大な量の部材を扱うんですけれども、それもkintoneで整理して基幹システムに取り込みました。

喜多:柔軟性・拡張性の高いkintoneだから、システム連携も実現できたんですよね。

吉井:そうです。kintoneの特性をうまく活用して、このように今もシステム連携を進めています。檜垣造船は、kintoneを導入してからアナログを脱出できただけではなく、マインド変革で業務改善が大幅に進みました。もともと書類が溢れてたデスクが、こちらのとおりすっきりスマートに。

喜多:スマートになりましたね。

吉井:スマートになって業務も効率化しました。

喜多:今、舞台に立たせてもらっているように、kintone hiveに出場できるまでになりました。

吉井:まさかですね。

喜多:実は私事なんですけど、3年前に上京した友だちがいて「いつか一緒に仕事ができたらいいな」って背中を押して送り出したんですよ。実は今日、ここに来ています。ヒロキ!

参加者:いいぞー、椋平!

吉井:(笑)。このように業務改善を行ったことで、業務効率化だけでなく、ワークライフバランスの実現も行うことができました。

喜多:私も、友だちの奥さんと友だちの子どもと一緒に誕生日を祝ったり、趣味でバスケットをしてますので、その時間も取れるようになりました。

IT化で業務改善を実現できた2つの要因

喜多:業務改善の一連の流れの中で、何が一番大切だったんですか?

吉井:大事だったものが2つあると考えています。1つ目がこちら、「明確なビジョン」です。トップが示した明確なビジョンを全社員に周知するだけでなく、共感してもらうことが大事だと思いました。またもう1つ、それに合わせた「最適なシステム」。檜垣造船にとってそれがkintoneだったと思っています。

喜多:ここまで来られたのは、膨大なアナログデータをデジタル化してくださった先輩社員の尽力があったからこそです。これからはどんどん若手でIT化を進めていきます。私たちがんばるけん、乞うご期待!

吉井:がんばります。以上です、ありがとうございました。

喜多:ありがとうございました。

(会場拍手)

司会者:吉井さん、喜多さん、ありがとうございました。

吉井:ありがとうございます。

司会者:ではさっそく質問に移らせていただきたいと思います。あ、その前に。お二人の掛け合い、最高でした(笑)。

吉井:ありがとうございます(笑)。

司会者:資料にございました、基幹システムとの連携が大きなターニングポイントだったんじゃないかなと思ってるんですが、「基幹連携、ちょっと難しいよな」って思ってらっしゃる方は多いと思います。御社がどういったかたちで実現されたのか、少しおうかがいできますでしょうか。

吉井:kintoneありきで考えていたのもあると思うんですけれども、先ほども紹介した林がしっかり引っ張ってくれまして(笑)。

司会者:なるほど。同じような企業IDでの取り込みについてはいかがでしたか?

吉井:それができるようにkintoneのアプリをあらかじめ準備していました。

司会者:わっ、なるほど。じゃああらかじめ基幹連携も見据えた上での。

吉井:kintoneを中心にやっていくということで。

司会者:なるほど。やはり最初がすごく大事ということですかね、ありがとうございます。ではお二人のご登壇、以上となります。ありがとうございました。

喜多、吉井:ありがとうございました。