どうすればムダな仕事をうまくやめられるのか

熊谷翔大氏(以下、熊谷):今日は「ムダな仕事はやめよう」がテーマです。あなたは日々仕事をする中で、「この仕事、ムダだなあ」と思うことはありますか?

「前からやっている仕事だからなんとなくやっている」とか、「あらためて聞かれてみると、何のための仕事か説明できない」みたいなことは少なくないと思います。もちろん私も、「この仕事、すごくムダだな」と思った場面は過去に何度もありますし、それを減らす努力をしたこともあります。

ムダな仕事において一番難しいのが、「どうすれば、そのムダな仕事をやめることができるか」だと思います。自分一人で決めていいのであれば、思い切ってやめることができます。

でも、会社組織で仕事をする以上、「これをやめたら、誰かが何か言ってくるかもしれない」とか、「自分で気がついていないだけで、すごく意味のある仕事かもしれない」と不安になることもあるかと思います。あなたが気になるのは、「どうすれば、ムダな仕事をうまくやめられるのか」ということではないでしょうか。

私は前職のメーカー時代に、全部署の部長宛てに送る社内の案内文書を作る仕事をしていました。今となっては自分でも信じらないんですが、当時は資料の左上に書く部長の宛名を、1人ずつ変えて資料を作っていました。

1つの作業を切り取れば非常に短い時間ですが、例えば何百人も部長がいたり、毎月の繰り返しを年間トータルでみると、本当にムダな仕事だったなと思います。

そして、当時私が所属していたチームのリーダーが、ある日突然、「これ、意味あるのか?」と言い出して、「もう部長ごとに宛名を変えるのはやめよう」と言って、やめてみたんですね。

初めは周囲から心配の声が少し上がっていたんですが、実際にやってみるとまったく困ったことはなく、誰かから何か言われることもありませんでした。「思い切ってムダな仕事をやめるのは非常に大切で、やってみると案外できるものだな」と思いました。

成果を高める「余白」を持つためのムダな仕事の手放し方

ということで、私が今お話しした経験も踏まえて、ムダな仕事をやめるための大切なポイントを、3つまとめてみましたのでお話しします。

1つ目は、ゼロベースで仕事の必要性を考えてみましょう。ゼロベースで考えるのは大事なことですよね。難しいのが、「じゃあ具体的にどう考えればいいのか」というところです。そういう時は、こんな問いを投げかけてみることをお勧めします。

例えば、「前からその仕事をやっていなかったとしたら、今からそれをやり始めるのか?」「誰からも何も言われないとしたら、それをやり続けるか?」といった問いです。個人ベースでも、チームの中でも問いかけられるといいかなと思います。

2つ目は、「やめてみて、困ったら元に戻す」という考えを持ちましょう。その仕事をやめるかどうか迷う暇があれば、1回やめてみましょう。その上で、本当に困るかどうかを考えてみる。そんなステップだと、その仕事の必要性を考えやすくなるはずです。

お勧めなのは、特にリーダーの立場の方が、「1回この仕事をやめてみよう。困ったら戻せばいいから」と口に出して言うことです。メンバーは、その仕事をやめることで職場が困ったり、周りに迷惑がかかるのではと気にしています。ある程度権限を持つ立場の方が言うことで、その仕事を変えやすくなると思います。

最後の3つ目は、こっそりやめてみましょう。これは、正攻法ではないので、最後の手ですが、「これ、ムダだな」と思う仕事があっても「上の人に何か言われるからやめられない」と思っている方におすすめです。

意外とやめても困らない仕事って少なくないと思うんですよね。もちろんやめることで致命的なミスや迷惑につながるのであれば避けるべきですが、そうでないのであれば、こっそりやめてみて、「やはりこの仕事、ムダでした」という既成事実を作る。そんな発想もあっていいんじゃないかなと思います。

ということで、ムダな仕事をやめるためのポイントを3つお話ししました。1つ目は、ゼロベースでその仕事の必要性を考えてみる。2つ目は、やめて困ったら元に戻すという考えを持つ。3つ目が、こっそりその仕事をやめてみる。

「仕事を作るのは得意だけれども、やめるのは苦手」という人や組織は少なくないと思います。でも、いい仕事をするためには「余白」が必要ですよね。その余白を作るためにも、仕事を作るのと同じくらい、ムダな仕事をなくす努力をすることも欠かせないと思います。何か少しでも参考になれば、ぜひ今日から採り入れていただけるとうれしいです。

今回はここまでです。本日もすてきな1日をお過ごしください。