ChatGPTが革新的なのは「数字」ではなく「言葉」なところ

植野大輔氏(以下、植野):ということで我々の話はいったんここぐらいにして、みなさまからの、どんなお話、意見、コメント、質問でもいいので、質疑の時間とさせていただけば。よろしいでしょうか?

大橋久美子氏(以下、大橋):はい、どうもありがとうございました。じゃあ質疑応答に移りたいと思います。最初に、DXの御友さんのほうにお願いいたします。

御友重希氏(以下、御友):御友です。どうぞよろしくお願いします。

植野:今日はありがとうございます。

御友:今日はありがとうございます。すごくおもしろくて、abundance360(Xプライズ財団CEOで連続起業家のピーター・H・ディアマンテス氏が、2012年から2025年までの開催を宣言して主催するクローズド・コミュニティ)とか私は行ったことがないですけど、行っている友達がいて、いいなと思いました。私自体は役人で、ただまぁ金融庁とかにいるとどうしてもレギュレーターの立場で、G20ぐらいから、そういったテクノロジーに触れる機会が多くありました。

私は簡単に、質問になるかわからないですけど、ChatGPTを個人で使い始めている中で、もう少しパブリックセクターが実際に使い出して、あとは中高生とか、そこらへんから使えるような環境を作り始めている例だけは出そうかなとは思います。

デジタル田園都市で「地方創生 まち・ひと・しごと」とあったのが、看板が変わってデジタル田園都市国家構想になりました。それを応援する団を作っていまして、ちょうど今週頭に議員連盟ができていて、そこでこういう話(デジタル田園都市国家構想を活かした地方のためのセミナー)をしていました。この中に、メタバースとAIという感じで出てくるんですね。

要するにこういったAIを使いこなすという人材像もあるんですけど、ローカルハブを作って、それを地域メタバースやAIで表現する。メタバースは3D空間でしょうけど、ChatGPTは言葉なので、今までコンピュータが数字だったのが全部言葉でやったあたりが革新的なのかなとか。

やはり非常に知識量は限られたり偏ったりするんですけど、たぶん推論の能力はすごく高いとみな言うところです。ファインチューニング(学習済みのモデルに全体を新たに再学習させること)とか、いろいろ使いながら、上手に使えばいいだろうと。そこらへんは応用しているところがあります。

地方創生に役立つAIの活用事例

御友:ローカルハブとは、要するに公共がやっていることと産業クラスターを、デジタル時代にしっかり結び付けましょうみたいなものです。それは何より都市自体の生産性が低いので、みなさまは組織自体を活性化して生産性を上げるわけですけど、我々パブリックセクターが相乗効果を生んで国が至らないと、地方も全部没落していくので、そういう意味で付加価値を上げる。そして、その時の人材を確保することですね。

最先端エンジニアのところにChatGPTを位置付けながら、特にAIを研究して何かするというよりは、実際に地方創生に役立つものを作ってしまおうと考えています。

1つ、このメタバースとAIで、なるべく軽く中高生でもパチパチと作れる空間にしておいて、表現としてその3D空間を作るのと、それから簡単にこういうところに出展する時に、こういうARポスターみたいなところにChatGPTを連動させる。行政で言えば、行政には、人間より勝るという意味で、マサルくんという名前の閉じたAIがあります。

これはもう一気に使えるということで、有料のものをこの応援団が買ったので、結局ChatGPT側に(情報を)使われることはない安心感からけっこう利用が伸びて、どうやって使っているかもいろいろわかり出しています。

ですから実験としておもしろいかなと。逆にこの紫式部のほう(AI)は、非常に一般的で、推論することがないんですね。ですからお二人の話にもあるように、マサルくんは、何でも必ず適当に答えるんです。

日本人にはない話なので、教育上良い。まさに壁打ちそのものです。日本で壁打ちをしようと思ってもそういう人種がいないんですけど、ChatGPTはそういう人種なので、明らかにそれが公務員の中でもできている感じですね。紫式部ちゃんは要するに自治体として答えることなので、なんでもいいから答えていたら信用力とか何から終わるわけですね。

どんな国の人でもわかる表現の手段としてのChatGPTの使い方を実験

御友:対外系のAIで、白書から何からいっぱいファインチューニングと称して食わせて、答えさせる。これの良いところは、非常に言語に明快なので、変にわかりやすく「漫画で表現しました」という情報は食わないわけですね。

白書とか、つまらない文字列、役人が「阿呆じゃない」と言って怒られていたものほどよく食べ、よく消化して、ちゃんと出典として正確に出してきます。

ですから、ChatGPTの本来のものを使っているかはどうかは知りませんが、ただ唯一、多言語対応してくれることは、特に観光振興だと悪くはないわけですね。という実験をしています。

これを1年やりながら、ちょうど2025年が万博だし、2027年(横浜国際延元博覧会)がある。夢の島のコピーみたいな、メタバースとかいう表現をしてもあまりおもしろくないので。とにかく全国各地の見える化と、赤ちゃんでもどんな国の人でもわかる表現の手段としてのChatGPTの使い方を、1回実験してみております。紹介だけになってしまって、感想があれば(スピーカーの)お二方とか今日の参加者の方にお聞かせいただければと思います。以上です。

大橋:ありがとうございます。じゃあ堀田さん、植野さんからコメントがあればぜひお願いいたします。

メタバースは「没入」を作り出す装置

堀田創氏(以下、堀田):そうですね、メタバースって何の装置かなと考えた時に、VRとかがまさにそうですけど、臨場感の装置です。要は認知が僕らのいろんなものを確定していくので、例えばそのMTPの話をした時には、MTPに対して没入ができるかできないかによって世界観が変わっていく。

じゃあ地域社会に対する愛着とは何ですかといった時に、地域社会に対して没入ができるかどうかで愛着が変わっていくわけで、住んでいればそりゃ没入できるわけじゃないですか。

けど、住むわけにいかない人もたくさんいて。その住むわけにはいかない人たちにとって、メタバースがあると没入する装置になってくれる。人間は没入しているとすごく強くて、無意識のパワーを全部使えるようになるんですよね。なので没入していることに対してものすごく僕らは、人間として進化することができる。これがポイントです。

じゃあ地域を良くしようと思った時に、「このコミュニティ温かいな、いいな」と没入することができると、「これに向けて良いことをしていこう」というイニシアチブが生まれていったり、同じようなことは実は教育分野でも起きていて、結局のところ、教育とかチームビルディングとかになってしまうんですけど。

没入を作り出して、その没入の中に教育的な要素を入れると、基本的に人間の認知がそっちに向かっていって、それが一定期間長く続くとそっちにロックインされるので、僕らの無意識のパワーを使った推進力が得られる。

僕はメタバースとはそういう装置なんだろうなと思っていて。なので地方再生とかにはまさに、けっこう効く施策になっていく。ただ、そこまで理解した上でやっていかないといけない場合がけっこうあって、ただただやると「なんかこれ、アクセス面倒くさいな」というツールになるので、そこが没入するまで作れるかどうかが、やはりUXにかかってくる。

これがもう一歩足りないのがたぶん今の世の中の難しさですけど、それは当然(UXが追いついてくるのは)時間の問題なんだろうなと思います。

AIの実務化は「必然性のある入口」をデザインできるかが鍵

堀田:2点目のChatGPTのほうですけど、ChatGPTを含むAIサービスの問題って、AIサービスを使い始めても、例えばChatGPTをやって1週間ぐらいで、「正直もう使わなくなりました」みたいな、試し使いと使い捨てがめちゃくちゃ多い世界観だということです。

ここに対する施策がたぶんポイントになってくるんだろうなと思っていて、パナソニックさんとかが導入されていたChatGPTの使い方がめちゃくちゃおもしろくて、ユーザーはむしろ増えていますよね。ぜんぜん減らないです。やはり実務に直結させて、それでドキュメントを探せますみたいな。その人たちが使ったほうがいい明確な理由を与える。そこまでいくと、リテンション問題というか、やめない。

そうしないと試し使いで終わってしまうことがあったりするので、必然性のある入口の部分をうまくデザインできるといいんだろうなという思いの中で、僕がちょっと昔絡んでいたものがあります。

アブダビの政府のレギュレーターが、金融の難しい問い合わせに対してチャットボットを使う施策があって、あれがめちゃくちゃアクセスが多かったんですよね。わかりにくいので、全員もうそれ(チャットボット)に聞いたほうが早い。明確なユースケースがあるとなんだか知らないけどめちゃくちゃユーザーが増えていきました。

やはりそういうところにChatGPTをうまくはめていくことがポイントになると同時に、比較的そこは難しそうだなとはいつもストラグルしながら感じています。変な感想になってしまいましたけど、そんな感じですかね。

植野:ありがとうございます。

未来に共感する「動画」の活用法

大橋:ありがとうございます。そうしたら、会場のみなさんからも、御友さん宛でもいいですし、堀田さん、植野さん宛でもいいですし、何かご質問はありますでしょうか? 今日は50人なので、もう声出しをしていただいてもいいと思うんですけれども、いかがですか? どなたかないでしょうか?

そうしたら、私のほうから植野さん、堀田さんに質問をさせていただきたいと思います。非常に臨場感高く未来を創造していくことが大事だということで、その没入感をクライアントの方と作っていくのはけっこう大変だよね、というお話は途中でもあったと思うんです。なかなか丸1週間、さっきのabundanceに行くのも難しい中で、どうやってみなさんと未来を共感しているのかをうかがわせていただければと思いました。

堀田:じゃあ植野さん……。

植野:僕から? そうですね、1つやりやすいのが、さっきのググれではないですけど、もう1個ググるやり方の先にYouTubeという動画サイトがあって、例えばabundanceの公演も、ホームページにいけばいくつかはYouTubeとか、動画サイトにあるので、それを見てみるだけでも、だいぶ雰囲気の違うことが起きてくる。

動画革命ではないですけど、テキストより遥かに人間に臨場感を沸かしてくれると思いますので、映像を使う。やはり動画もこれだけインターネットの上にたくさんありますから、できればスマホとかではなくてデカい画面で、ちょっと部屋を暗くして見たりすると没入できるとか。

ハリウッドムービー……ハリウッドだけではないですけど、映画を見るような感覚で、未来系の動画とかカンファレンスに触れてみるのはいいのではないですかね。それから最近、英語ももう日本語字幕に自動でしてくれたりするので、言語の壁も取っ払えるようになってきましたから、そういうチャンスがいっぱいあると思います。

大橋:すごくプラクティカルなアドバイス、ありがとうございます。

これからのオペレーションを徹底的にAI化する重要性

堀田:僕がよく言っているのが、インシデントというか、何か起きた時にそれの意味付けをちゃんと考える方向性のほうが、「これからこういうプランでやっていきましょう」よりも、人は自分ごと化しやすいことに気づきまして、それをけっこう使っています。

これは我々のお客さんに保険会社さんが多かったんですけど、保険会社さんってコロナでけっこうてんやわんやしたんですよね。コロナの患者数があまりに増えて保険金の請求の量が、単純にオペレーションがめちゃくちゃ膨れ上がって大爆発したみたいな。

その結果、営業人員も全員保険の査定に回る、なんかもうとんでもないことが起きた。ここに臨場感があるんですよね。これを使う感覚はけっこう効くなと思っていて。危機感を醸成しながら未来に連れていくのに、目の前で起きた問題はやはり有効ですよね。

なので、僕らがどう提案するかというと、「これからはもうオペレーションレジリエンスの時代です」と。オペレーションがどれだけ頑健で壊れないか、これを作っていくのが競争戦略になる。なぜなら「地球は大変なことになるから」。

なので、オペレーションを徹底的にAI化して、全部レジリエントに、オペレーショナルレジリエンス(災害等が起きても、最低限必要な水準でサービスを提供できる、速やかに回復できる能力)を実現していきましょうみたいな話をした時に。臨場感はコロナでてんやわんやしたことなので、彼らからすると目の前のことだけど、でもそもそもよく考えると、もともと全部をAI化するのは10年、20年越しのプランだったわけですよ。

だから10年、20年の話をしているのに、目の前でそれが起きてしまった瞬間に、変わろうと思うんですよね。なので、インシデントと未来をつなげる意味付けのストーリーがめちゃくちゃ大きなポイントかなと思っています。

大橋:ありがとうございます。そういう危機感がある時をうまく活用していく感じですかね。

堀田:そうですね。

日本の危機を感じさせる、『シン・ニホン』の臨場感の高さ

大橋:ありがとうございます。ご質問が来ておりました。「今日はありがとうございました。大変刺激的でした。『トランスフォーメーション思考』のあとに続けて読むとしたら、こういうのが良いとお考えの書物・文書は、ビジネス書以外にありますか。心理学とか、量子力学とか、聖書とか、仏典とか、少女漫画、SFなど」とご質問をいただいております。

『トランスフォーメーション思考 未来に没入して個人と組織を変革する』

堀田:そうですね……。

植野:ビジネス書以外というところが難しいですよね。

堀田:うん、そうですね。ビジネス書に当たるかどうかよくわからないんですけど、やはり『シン・ニホン』は強烈ですよね。

植野:あぁ、安宅さんのね。

堀田:安宅さんの。臨場感を未来に高めようと思ったあとに『シン・ニホン』を読むと臨場感が高すぎて吐き気がする(笑)。読むと「大丈夫なんだろうか、日本は」と思いますもんね。

大橋:それは絶望感みたいなことですか?

堀田:そうです。安宅さんのメッセージは「『悪いと捉えようとしたら悪いこと』がたくさん起きるのも全部ビジネスチャンスです」みたいな、ポジティブな捉え方。「日本はこうするべきだ」という提言もあったりするので、「あぁこの人、地でトランスフォーメーション思考をしているな」なんて思ったりしますよね。

大橋:やはり危機感をちゃんと作ろうとしているのかもしれないですね。ありがとうございます。植野さんはありますか?

植野:そうですね、定義によるんですけど、ビジネス書以外だと……まぁちょっとビジネス書側にいってしまうかもしれないですけど、関心があったらぜひabundance360のピーター・ディアマンティスがいくつか本を出したり、シンギュラリティ・ユニバーシティの本が出ていて、『トランスフォーメーション思考』の実践編として、組織の作り方とか技術の捉え方とかがより詳しく書いているのでそちらを読んむのは有効です。

自分で見に行く、触りに行く、使いに行くこと

植野:あとは本を読むというよりは、やはり自分でいろいろ見に行く、触りに行く、使いに行く時間もあるのではないかなと思うのと、読みたい本があったら、別に関係なく読んだらいい、無理に「『トランスフォーメーション思考』の次に読む」とか思わなくていいのではないかなという気がします。

大橋:先ほどおっしゃっていたYouTubeとかもきっといいですよね。

植野:そうですね。本ではなくておっしゃるとおり、見に行く、伝えに行く、YouTubeに行く。いいと思いますね。

大橋:はい、ありがとうございます。

植野:というかChatGPT4を触ってみる、聞いてみるのがいいのではないですかね。

大橋:確かに。そうしたら質問はこんなところでしょうかね。今日はプレゼンスタイルから、内容から、とってもインスパイアリングな、すばらしいプレゼンテーションをありがとうございました。ずっと聞き続けていたかったですし、今日はClubhouseで今日の公演を放送していますけれども、とてもClubhouse向きだったのではないかなと感じました。

私はもうちょっとお話しをうかがいたいぐらいですが、ちょうど時間にもなりましたので、こちらで終了とさせていただきたいと思います。植野さん、堀田さん、本当に今日はありがとうございました。

堀田:ありがとうございます。

植野:貴重な機会をどうもありがとうございました。