メール→Teamsへの移行をどのように行ったのか

沢渡あまね氏(以下、沢渡):みなさんのチャットのご質問にお答えすべく、リアルなコミュニケーションの解像度を上げていきたいんですが、ポイントは大きく2つあります。

プロジェクトチャレンジで言うと、現場と第一線、あるいは地方の事業所も含めた複数の人たちが、チャットを通じて同じテーマでプロジェクトを作ってそこでやり取りをする。この変化を生んだことによって、現場と本社一体となって1つのものを作るコミュニケーションと経験が生まれてきています。

もう1つが、プロジェクトチャレンジも含めたTeamsのコミュニケーションをどう増やしていったのか。

この部分をみなさんもお聞きになりたがっているので、Teamsチャットが前年比で約290パーセントを達成するためにどんな取り組みをして、どんな道のりでやってきたか、永井さんからお話しいただいてもよろしいですか。

永井泰右氏(以下、永井):承知しました。さっきの繰り返しになってしまうんですが、「騙されたと思って、メールを止めてTeamsにしてください」というのを、まずは人事から根気強くやる。

沢渡:まず、人事からやりましたよね。

永井:あとは、賛同する部分から徐々に徐々に広げていく。正直、私も最初はちょっと懐疑的だったのはありましたが、使ってみるととても便利で。簡単・速いかつスマートで、いいことしかなかったんです。

なので、自分が使い続けて(便利さを)体感してみて、それをずっと伝えていくしかないんです。そうすると自然と仲間が出てきて、中にはエバンジェリスト級の人も現れ、その人たちが自分でセミナーをやったり、部内にもエバンジェリストみたいな人がいたりして。

ライフワークのように、自らセミナーを企画してTeamsの説明をやっている人もいて、そういうふうに仲間を募ることによって、徐々に徐々に広げていった。まさに半径5メートルの相乗効果っていう感じがします。

根気強く、人事から現場に施策を広めていく

沢渡:これ、すごいですよね。最初は人事がメールを止めて、「Teamsをもっと活用していきましょう」って旗を掲げていった。

「Teamsでやったらお互いの引き継ぎが楽になった」「議事録も楽になった」「こんないいことがある」「こんな課題がある」というのを、まずは社内の会議体などで人事が発信していったんですよ。

しかも、数値目標も作って数値の進捗も出しながら、社内の会議体である「まじスマプロジェクト」とかで社内にも発信していったら、各拠点がもっとTeamsに取り組んで、いい取り組みをお互いに発信したり、社内の会議体で公表してくれるようになったり。

最初は人事ががんばる。でも、人事だけががんばって空回りするのではなく、現場の人たちと同じ景色を見て、同じ景色を作っていく。これって、言葉を換えると「エンパワーメント」だと思うんですよ。

現場と一緒に自己効力感をどう持っていくか。それができてきて、カルチャーが変わってきたのか。そういう意味で、日々のコミュニケーションであるチャットやメールというコミュニケーションから景色を変えていく。

そして、このような基盤があったから、社内で複数部門が集まる越境プロジェクトもうまくいった。そこから社内と社内の新しい出会いが生まれて、課題解決が生まれて、今までの縦割り型・ライン型の仕事の中では見えなかった能力や可能性、意欲が開花し始めていった。

コミュニケーションからカルチャーが変わっていく。その変化が生まれてきたと思っています。

Teamsの活用でコミュニケーションのスピードを加速

沢渡:永井さん、補足をお願いします。

永井:たぶん、沢渡さんは私より当社のことをご存じなんじゃないかと思いますが、本当におっしゃるとおりですね。Teamsは1つの例ですが、やっぱりコミュニケーションを取りやすいですし、相談しやすいですし、いいところしかないので。

これをやり続けることで、コミュニケーションのスピードを上げ、質を上げ、カルチャーを変える1つのアプローチになるんじゃないかなと思っていますので、根気強くやっていきたいなと思っています。

沢渡:(視聴者から)いいコメントを2ついただきました。「Teamsの活用を人事が主導した」。そう、この越境もいいことだと思うんですよね。

どうしてもITツールって「情報システム部門だけが、一生懸命活用促進をしなければならない」となってしまいがちなんですが、これを組織のカルチャーに訴求しやすい人事が進めていったことが越境だと思うんですよ。

もう1つ、このコメントもうれしいですね。「私は人事ではないのですが、今できるのは人事を信頼して乗っかることなのかなと思います」。だって、永井さん。この一言、めちゃくちゃうれしくないですか。

永井:いやぁ、それに応えられるような人事になりたいですね。

沢渡:ね。お互いに越境ですよ。ありがとうございます。

人事だけでがんばらず、社内全体を巻き込んでいく

小田木朝子氏(以下、小田木):ここまでにかなりいろんなチャットやコメント、ご質問もいただいてますので、ざっと振り返ってみましょうかね。

「『俺たち』っていう言葉、すごくいいと思います。『人事だけががんばっちゃっている』という空気ではなく、社内全体の横のつながりを感じる」。

まさに名づけもそうですし、語りかけ方というか、どんな言葉をチョイスするのか。もしかしたら自然に選んできたのかもしれないですが、どう見られるか・どういうメッセージを相手が受け取るかという意味ではすごく大事なんだなと、コメントを見ながら思いました。

沢渡:ありがとうございます。「俺たちは」というのは、僕のアドリブですけどね。元バスケットマンなんで、つい出てしまいました。

永井:でも、「俺たち」「私たち」みたいなやつは、やっぱり重要ですよね。

沢渡:「Youが変わりなさい」ではなくて、「We変わりましょう」なんですよ。

永井:かつ、「やってみよう」というノリがけっこう大切なのかなと思っています。最初は理由とか、「なんでやるんだ」という理屈付けが必要ですけど、まずはちょっとやってみましょうよという話です。

沢渡:「You must」ではなくて、「We try」ですね。

小田木:そうですね。

沢渡:We try。“not” you must。

小田木:なるほど、ありがとうございます。

施策を打ち出し、運用で「魂を吹き込む」

小田木:(視聴者から)「取り組み概要のコミュニケーションスピードはどんな感じでしたか?」というコメントをいただいています。

この年表だけを見ると、かなり矢継ぎ早にいろんな手を打って進めてきた感じにも見えますが、一方で永井さんがおっしゃっていたように、施策をリリースするだけでは活用されない・支持されないというお話もありました。

この取り組みって、立ち上げ時点があって、だんだんテイクオフしていく時期があって、成功体験が生まれる時期があってと、いろんなフェーズがありそうですが、永井さんたちが特に大事なポイントだと見ているのはどのへんのフェーズなんでしょうか?

永井:全部ですが、やっぱり最初の腹落ちのところはすごく重視したいと思っています。

沢渡:まさに腹落ちセミナーにふさわしいテーマが出てきた。

小田木:本当に。

永井:「なんでやるの?」「やったらどういうことがあるの?」ということをちゃんと打ち出していくことは、大切にしたいと思っています。さらに、どーんと打ち上げ花火を上げただけで終わりだと寂しいので、そこに運用で魂を吹き込むということですね。

沢渡:魂を吹き込む。

永井:根気強くやるしかないなと思っています。

沢渡:永井さん、やっぱり言語化うまいなぁ。

小田木:今回、永井さんをつないでいただいた時に、沢渡さんが「本当に泥臭くコミュニケーションを取る人事の方たちなんですよ」と、おっしゃっていました。

沢渡:そうなんです。

小田木:だから今回は、「永井さんたちに、リアルを話してもらう役割をぜひ引き受けてもらおう」という話が出たんです。

新たな施策に対し、現場からの反発は?

小田木:施策を打つというよりも、どんなスタンスで現場とコミュニケーションを取ったりしたんでしょうか。当然、「本当にそれでいけるんですか?」みたいな反発もあったと思うんですが。

永井:めちゃくちゃあります。なので、まずはやってみましょうということですね。ここは、ちゃんと人事からいろんな階層で説明をしていっています。

やってみなければ始まらないですし、冒頭のカルチャーのところですが、失敗を恐れずにチャレンジすることを重視しているわけなので、「どんどんやりましょうよ」とずっと言い続けてるところから始まっているのかなと思います。

沢渡:そうですね。社長がおっしゃっている、そして会社全体のビジョン・バリューを噛み砕いて行動されていると思うんですよね。

コメントにもありますが、「昔は人事は『間違えてはいけない』みたいな空気がありましたよね」。そうそう、そうですよね。「人事は聖人君子でなければならない」みたいな(空気)を根本から変えているってすごいと思います。

永井:もちろん、そこも絶対にありますね。そこを捨てているわけではなくて、それもやりながら。ただ、やっぱり「開かれた人事」と言いますか、そのような存在になることが理想だと思っています。

沢渡:まさに、人事そのものが両利きの経営をしている感じですね。

永井:そうなりたいなと思っていますね。

一方的な施策の打ち出しでは、あまり意味がない

小田木:起点と納得感にかなり情熱を燃やされてきたんだなというのが、話の端々から感じられましたし、「確かに自分たちもそうなりたい」と、立ち返る起点が明確にある。

ゴールに関しては、「みんながそっちに行けるんだったら行きたいよね」と思えるビジョンがあるところと、何度聞いてもつながるなぁと感じました。

永井:今、ご質問いただいた「時間のズレ」はものすごくあります。「まずはやってみよう」が先で、そこから腹落ちした人たちを徐々に増やし、マジョリティを増やし、仲間を集めていく。

小田木:成功体験が生まれたら、すかさず「こんな変化が生まれたよ」ってみんなに知らせる。

永井:そうですね。そういう意味で言うと、Teamsの活用は取り組みやすいテーマでもありますので、まずはそこで体感してみるのも1つかもしれません。

沢渡:そして、関連してこんな質問が来ています。「とはいえ、Teamsを現場部門へ浸透し魂を吹き込むための取り組みで、うまくいったもの・うまくいかなかったものを教えていただきたいです。オンライン説明会、セミナー、勉強会、オフラインコミュニティなど」。

永井:うまくいかなかったことで言うと、「Teamsでこんな活用がありますよ」と一方的に出すのは、あんまり意味がなかったような気がします。臨場感がないというか。

小田木:なるほど。臨場感。

永井:なので、「こう使ってみてください」「ああ使ってみてください」と、こじんまりしたセミナーなどでどんどんやってみる。いかに使ってもらうかがすべてなので、まずは使ってくださいと。

小田木:「一緒に体験を作る」的なイメージですね。

沢渡:そうですね。そうすると、その中から数人のエバンジェリストが生まれて、勝手にプロジェクトをやっています。

小田木:ファンが生まれてくると。

社内のスマートワーク推進もすべてTeamsで実施

沢渡:社内のスマートワーク推進の会議「まじスマプロジェクト」も、すべてTeamsのミーティングでやったんですよね。

本社部門の部長や課長、現業第一線の主任、若手、中堅の人を集めて、それぞれでTeamsでブレイクアウトセッションをやる。そしてオンラインドキュメントを共有しながら、その場で議事録を書いて完成させる体験をひたすら繰り返していく。

そうするとその体験から、「これってもっと部内で使えるよね」「バーチャルで組織体を作ってみたい」というプロジェクトが生まれたり、変化が生まれてきましたよね。

永井:そうですね。まさにおっしゃるとおりで、やってみる・体感してみる。「こんないいことがあるんだ」というところから、根気強く組織内に波及してもらう。そこをけっこう意識しながらやっていきました。

一部ではだいぶ浸透したんですが、まだまだ全組織で使えているわけではないので、成功モデルをどんどん広げていきたいなと思います。

小田木:ありがとうございます。みなさま、チャットやコメント本当にありがとうございます。起点と納得感からスタートして、さらに実際の取り組みを設計して、浸透させる工夫や仕掛けを共有いただきました。

永井さんは「今回の一連の取り組みは、まだまだ途上だよ」と言っていますが、何かを変えたいとか、半径5メートルから景色をよりいいものにしていきたいと思う私たちに、ここまでの総括になるかもしれませんが、具体的なエールをいただきたいなと思います。

沢渡:いただいている質問は、この後の時間でなるべくお答えしていきたいと思いますが、1回切り替えたいと思います。みなさん、ありがとうございます。