「現場のDX」が進まない理由とは?

渡辺享靖氏(以下、渡辺):「ノーコードの『アプリ開発+データ連携』活用でDXをアジャイルに~現場業務をデジタル化し、基幹系・情報系システムとの連携でより大きな価値を~」と題しまして、アステリアの熊谷さんにお話をうかがっていきたいと思います。熊谷さん、どうぞよろしくお願いします。

熊谷晋氏(以下、熊谷):よろしくお願いします。

渡辺:今日は「現場のDXをアジャイルに推進する」というテーマでお話をうかがっていきたいと思っています。ただ実際のところ、現場のDXはどの企業でもなかなか難しく、苦労されているところがあるとお聞きしています。原因はどんなところにあるとお考えでしょうか。

熊谷:まず最初に、「現場」と言ってもかなり広範囲な定義が考えられますので、弊社で考えている「現場」の定義をこちらに書かせていただいております。

まず、私どもは現場のことを「店舗や倉庫、客先など、さまざまな場所に赴いて業務に従事する場所のこと」と定義しています。ここにも書いてあるような工事現場や建設現場。あとは、災害現場や営業現場で行われる業務というようなところです。

そもそも現場は、臨機応変な判断が求められる部分が非常に多いので、すべてを標準化してデジタル化するのは難しいのではないかと考えています。ただ、逆説的ではありますが、現場での臨機応変な対応をサポートするためにも、効率化・デジタル化を図っていくことは重要だと思っています。

「現場のDX」を阻む、3つの問題点

熊谷:現場のDXを阻む問題は、大きく分けて3つあると考えています。1つはインフラの問題です。DXというか、デジタル化と言ったほうがいいかもしれないのですが、一般的にはパソコンとインターネット、イントラネットがベースになっていると思います。

私どもは現場のことを「デスクレスワーク」というふうに言い換えているんですけれども、移動や立ち仕事が多かったり、そもそもパソコン操作がなかなか馴染まない部分があります。

渡辺:「デスクレス」とおっしゃっているのは、机のないワークということですね。

熊谷:はい、まさにそうです。例えば倉庫や工場では、そもそもネットワークが整備されていない。回線が細かったり、通じていない。こういった制約があるところも1つ挙げられると思います。

2つ目は、一般的な企業のDXと同じですが、人材の問題。あとはコストの問題だと思っています。ただ、この部分もやはり現場ならではというのがあります。今はどこでも人材不足が問題になっていますが、特に現場ではITにも現場業務にも詳しい人材はとても少ないと。

さらに日本企業特有の事項だと思うのですが、これまでシステム化やIT化をする際に内製ではなく、自社であまり人数を抱えずに専門のITベンダーさんと分業で、システム開発やIT化を図ってきた歴史があります。

そういう意味では、情報システム部門の人員が潤沢にいらっしゃるケースが少なかったり、ITに関する知見を持った現場人材が非常に少ないことが背景としてあると思います。

最後に、下の2つはコストの問題もあるんですが、1つは投資の観点ですね。どうしても投資となりますと、システム化のプライオリティが高くなりますので、やはり効果が出やすいように適用範囲の大きいところが優先されてしまいます。一般的には、例えば財務会計システムや人事給与やネットワークといったところですね。

さらに、JUAS(一般社団法人 日本情報システムユーザー協会)さまの「企業IT動向調査」では、2割ぐらいが新規開発投資で、8割ぐらいが保守投資というのがだいたいずっと変わってないんですね。そもそも新規開発投資にお金が回らない上に、こういったところが優先される。結果として現場は、経営の投資判断からかなり遠い位置で、DXの流れから取り残されてしまっているのが現状だと考えています。

こういった現場特有の難しさもあって、アナログのままで既存の業務システムでカバーできない領域がたくさんあるというのが現状です。

既存の業務システムではカバーできない「すき間業務」

渡辺:なるほど。既存の業務システムでなかなかカバーできていない業務がたくさんあるというのは、直感的に「確かにそうなんだろうな」と思うんですが、具体的にはどんなものがあるんでしょうか?

熊谷:こちらはアンケートの調査結果なんですが、課題と非常に一致していたので、ちょっと持ってきました。一番上から見てみると「紙文書を利用した業務が残存しており効率的ではない」と。

例えば、店舗に紙が置いてあってチェックするような業務やアンケート。あとは倉庫での棚卸しやFAXによる受発注。こういったものは、まだまだ紙が残っている領域ではないかなと思います。

また、2番目にあるのは「Excelなどの業務ファイルが散在」と。紙をExcelに置き換えたりメールで送ることはできているんですが、単体のデジタル化というか、そこにとどまってしまっている。日報、売上といった報告業務は、そこからさらに集計しなければいけないと。こういうところがシステム化されていないので、どうしても情報の多重入力が発生してしまいます。

あと、3番目は「既存の業務システムでは対応できない『すき間業務が多い』」。昨今ですと、RPAが普及してきたのでかなり改善されたと思いますが、代表的なものでは受発注に用いるWeb-EDIのダウンロード。あとはWebの調査業務といったものですね。

こういうPC操作のような定型業務を、RPAを活用することによって、人の操作から置き換えているところにとどまっているのではないかなと思います。

あと、最後に4番目も挙げさせていただきますが、「業務フローが整理されておらず、システム化がしにくい」。業務フローが整理されていないと、単体の業務はデジタル化されていても、それらをつないでいくプロセスはカバーできていない。つまりはデータとシステムを連携することができていないと。

こういった業務システムでカバーできていない領域等がありますが、現場で手軽に活用できるインフラとして、現在のスマホは昔のPC並みのスペックを持っています。今はスマホを1人1台持っていますので、場合によってはBYOD(個人所有のスマホなどの端末を業務に活用する)も検討に入れながら、カジュアルに活用することができます。5Gであれば十分通信速度も速いですし。

ノーコード技術は非常に進化していますので、現場人材の知見を活用して、システム化を図っていくと。私どもは、現場でアジャイルにシステム化を推進して、現場で発生したデータをそのままプロセスに取り込むという提案をしております。

「ノーコードが便利だから」と取り入れるだけでは上手くいかない

渡辺:やはりそうですよね。こうした領域ではノーコードツールを使って、アプリを現場で開発していくのは非常にいい方法だと思いますし、今はツールが非常に良くなってきているので。

熊谷:そうですね。

渡辺:ハードルが高くないかたちでできることは非常によくわかりますし、いい目の付けどころかなと思います。ただ、ノーコードで現場向けのアプリを作ればそれでいいのかというと、若干疑問があるというか。

既存の業務システムもサイロ化している状態があり、その延長線上で、今度は現場がノーコードでモザイク状にシステムを作られていった時に、大丈夫なんだろうかと。やはりデータがサイロ化してしまうんじゃないかといった問題も懸念されます。そういったところについてはどのようにお考えでしょうか。

熊谷:こちらはノーコードに関する選定ポイントのアンケートですが、こういうアンケートでも、ノーコードを選定する時にベーシックな問題が挙げられています。コストや人材、機能と同じようなレベルで、API連携などが記載されていて、みなさんがサイロ化を懸念されているんだなと非常に実感するところです。

やはり業務システムでもアプリでも、サイロ化問題はどうしても残ると思います。これは昔から変わらないと思いますし、言葉は違えど昔からノーコードツールはありますが、例えば代表的なのはNotes/DominoやAccessなどですね。

こういったものがスタンドアロンで動いてしまって、ブラックボックス化して悩まれている企業さんは非常に多いと思います。ある意味、製品として非常によくできているためにEUC(プログラマーや技術者でなくてもアプリケーションを作成できるシステム)が進んでいく。

ただ、プロセスをつなぐことを考えていないので、結果的に単体業務として残ってしまっていると。「ノーコードが便利だから」と単純に作っていると、やはり将来的には大きな問題になってくると思います。

DXの第2フェーズへの移行期に出てくる課題

熊谷:DXの推進フェーズでは、この3つがよく言われますが、これもやはり第1フェーズから第2フェーズに行くところで課題は出てくるかなと思っています。サイロ化の問題というのは、単体の業務はデジタル化されていても、各業務をつなぐプロセスとしてデジタル化ができていませんので、つなぐ部分がどうしてもボトルネックになってしまう。

逆に言うと、サイロ化を避けてプロセスを含め全体をデジタル化できれば、スループットを上げることができます。時間当たりの処理量、出来高を増やせたり、リードタイムを下げたり、受注生産、納品・生産期間なども短縮できたり。営業現場などでは、問い合わせへの回答が早くなって顧客対応数が上がるというものがあると思います。

では実際にサイロ化をどう解決すべきかというと、これは非常に個人的な意見なんですが、2000年代にサイロ化が問題になった時に、「SOA」という言葉がけっこう流行って。

渡辺:流行りましたね。

熊谷:「Service-Oriented Architecture」ですね。これはシステムをWebサービス化して、サービス同士で通信手段ややりとりの方法を決めて、自動で連携していくような構想だったんですけれども。当時は設計の難度が非常に高いこともあって、僕も考え方としてはすばらしいなと思ってもなかなか普及しなかったんですね。

根本的に言うと、特に国産のパッケージなどは業務システムが対応していない。APIなどを持っていなくて、閉じてしまっていることが多かったのではないかなと。

渡辺:そうですね。

業務アプリのサイロ化を防ぐための最適解

熊谷:ただ、現在はクラウドアプリケーション、特に「ホリゾンタルSaaS」と呼ばれているような専門性の高いSaaSサービスがたくさん出てきています。こういったものはAPIが当たり前になっていますし、先ほどの連携の方式も、技術的にRESTと言われるような、非常にカジュアルにつなぐ方式が中心になっています。

さらにはノーコードを連携するためのツールは、当時は「エンタープライズサービスバス」と呼ばれていましたが、数千万円、数億円していました。それが今は、使いやすいコスト感で提供されていますので、私どもとしてはアプリを従来システムと連携していくことで、サイロ化を防ぐことが可能ではないかと考えています。

ノーコードの連携ツールを使って、アプリや既存システムをシームレスにつなぐことが最適解かと思います。そうすると、現場の鮮度の高いデータを迅速に活用できて、既存システムで持つマスタデータや在庫情報を現場でも活用することが可能になってくる。

今日のテーマである基幹系・情報系システムとの連携によって、より大きな価値を生んでくれるのではないかなと考えています。

渡辺:なるほど。アプリをノーコードで開発するという出発点がありましたが、データ連携のところもノーコードでやっていくというふうに、セットで考えることがアジャイルな理由につながるということでよろしいですかね。

熊谷:はい、おっしゃる通りです。

渡辺:そのお考えに沿った事例があれば、ぜひご紹介いただきたいなと思います。

熊谷:はい、では、事例をご紹介いたします。まず1つ目は、ユニファさまです。こちらの会社はスタートアップ企業で、「スタートアップワールドカップ」という世界大会で、2017年に優勝された会社です。

保育施設向けのICTサービス「ルクミー」を提供されているのですが、商談管理のためにもともとSalesforceを導入されていました。しかし、保育施設や自治体では、業務において決められているルールがかなり異なるそうで、一部の業務はkintoneで管理するなど、柔軟な対応の実現が必要でした。

しかしながら、それらに対応することによって今度は自社サービスの「ルクミー」を含めて、多重入力が発生してしまうことになり、その対応について事業推進部で検討されました。

エンジニアがいない部門だったんですが、私どもの製品の「ASTERIA Warp」を使っていただいて、このデータ連携基盤を、ノーコードで構築することによって対応された事例になります。

連携の基盤があることによって、多重入力が解消されただけではなくて、業務プロセスが変わった時や利用システムが追加になった時も、柔軟性や迅速な対応ができるようになったこともメリットとおっしゃっていました。

営業活動を可視化するために、モバイルアプリを作成

熊谷:もう1つの事例は柳井電機工業さまです。こちらは、創業70年を超える大分県の電気機械工具の販売業で、SFAツールを導入して営業活動を可視化しようとしたそうなのですが、SFAあるあるでなかなかデータの入力が進まなかったと。

渡辺:そういうことは多いですよね。

熊谷:私自身も経験がありますけれども、非常に多いと思います。この状況を改善するために、開始時間・終了時間、そしてコメントだけを入力する非常に簡単なモバイルアプリを作ることを検討し、この部分を可視化しようと考えたそうです。

モバイルアプリを作るところまでは弊社のサービス「Platio(プラティオ)」を使っていただいているので、手前味噌ですが、非常に簡単に作れたそうなんですが、やはりこのデータを営業のみなさまに可視化しなければ意味がないということになりました。

このお客さまにはどれぐらいの工数をかけていたのかなど、データをSFAツールにデータを連携して、ダッシュボードで営業のみなさんが参照できる仕組みを構築されたそうです。

こちらのデータ連携開発は1名で2ヶ月という短期間で、アプリ作成からSFAツールへの連携の仕組みを全部作られたという事例になっています。現在は営業部だけではなくて、技術系の部門の方にも活用を広げて、巡回ルートの効率化まで展開をされています。

販売店のさまざまな備品を管理する仕組みを構築

熊谷:事例を3つお持ちしたので、もう1つお話しさせていただきます。お名前はまだ出せないんですが、某光学機器のガラスメーカーさまです。小売店舗を持たれているので、製造業と言うよりも小売業と思って聞いていただいたほうがいいと思います。

店舗ごとにノートPCやプリンタや情報機器が多数ありますが、壊れたら修理したり、店舗間で移動したり、という中で本部が管理していかなければいけない。資産管理していれば管理できるものの、それ以外の備品扱いになっているものも管理する必要があり、結局別で管理しなくてはならない。

これらを管理するツールをどうやって作ろうという時に、店舗をいちいち回るのも大変なので、店舗側の方にアプリを配布し、機器に新たに貼り付けたQRコードを読み取って、自動的に情報機器の台帳ができるような仕組みを構築されたという例になります。

実際のアプリは、非常に簡単な入力インターフェースで、上から順番に入力するだけで勝手に台帳ができます。さらにはその台帳からExcelでレポーティングする業務まで全部連携することによって自動化されています。

渡辺:もともとExcelでレポーティングしていたけれども、そちらにデータ連携をしていったということですね。

熊谷:はい、その部分も全部自動化されていらっしゃる事例ですね。モバイルアプリケーション連携は、どちらかと言うとモバイルアプリのデータを、バックエンドの基幹システムなどに流して使うケースが多いんですが、こちらのお客さまは基幹の情報を逆にモバイルアプリに渡して、現場でそのデータを使っていらっしゃいます。

渡辺:なるほど。

基幹システムの情報を、モバイルアプリに渡して活用

熊谷:店舗で商品情報などの質問を受けた時、あとは在庫情報を受けた時、通常はバックヤードのパソコンで調べて回答する運営になっていて、リードタイムをもっと縮めたいということと、店舗の若い方はパソコンよりスマホの操作に慣れていることもあって、スマホアプリ化をしてユーザーさまに迅速に対応するという取り組みをされました。

アプリは、社内システムと在庫情報をマージして、これらをモバイルアプリケーションに送って検索でき、在庫情報なども見られるような仕組みです。

画面だけ見ると簡単そうに見えるのですが、実は開発の画面もけっこう簡単です。モバイルアプリの開発画面で、Webアプリケーションをドラッグ&ドロップすると、実際に動かすスマホアプリの画面イメージを見ながら開発をすることができます。

データ連携は、データベースからデータを持ってきて、それを変換して、モバイルアプリに差し込みます。動きとしては3個のアイコンで済んでしまう。実際にこういった開発をした例になります。事例としては以上になります。

渡辺:非常におもしろいですね。

熊谷:ありがとうございます。

渡辺:データを逆に現場に持ってくる使い方もあることが、非常におもしろかったです。現場でいろいろサイロ化されたデータをなるべく基幹系に持っていくという流れが一般的かなと思ったんですが、その逆方向もあることは非常に新しい発見だったなと思います。

ノーコードツールを使いこなすための注意点

渡辺:ただ、こうしたノーコードツールは、見た目は確かに簡単に見えますが、「銀の弾丸ではない」というようなところがあって。

熊谷:そうですね。おっしゃる通りです。

渡辺:それなりに使いこなすというところでは注意点も必要だと思います。アステリアの視点で、どういったところに注意したほうがいいのかを、ぜひ教えていただきたいなと思います。

熊谷:使いこなす上での注意点は、どちらかと言うと、まず使って軌道に乗せるためという感じで聞いていただければと思います。まずはサービスとしての技術要求レベルがどれくらいかというところです。

「ノーコード」と「ローコード」という言葉が全部混ぜこぜに使われているのが現状なんですが、当然ながらレベル感はツールによって違いますので、やはり技術がある方のほうが使いこなしやすいのは間違いないと思います。

なので、自社のレベルやどういうものを作りたいかによって、特にノーコードツールはユーザビリティが重要になりますので、こういったところを見ていく必要があると。

ノーコードツールとローコードツール。私たちの定義では、ノーコードはコードを書かなくて済む、ローコードはコードを書くのが少なくて済むという分け方をしています。これらをどうやって使い分けるか、場合によってはコーディング自体も使い分ける必要があると思います。

あとはパートナーさまですね。従来のシステム開発をお願いする時のパートナーさまですと、請負やSESに来ていただくような契約ですが、今は伴走支援と呼ばれるような立ち上げを支援されるパートナーさまが非常に多くなっています。こういったサービスメニューがどれくらいあるか。

クライアントである現場の方々は、どうしても目の前の業務をデジタル化するところにとらわれてしまって俯瞰できないので、先ほどの課題にもあるようなサイロ化をさせないためにも、こういった従来と違ったパートナーさまの視点が必要だと考えます。

渡辺:今の伴走支援というのは、具体的には立ち上げをサポートして内製化を促すような支援ですか?

熊谷:おっしゃる通りです。これまではどちらかと言うと、システム的な要求仕様を出して作ってもらう開発パートナーさまが多かったと思います。今は横について独り立ちを支援するようなパートナーさまや企業さまはかなり増えています。そういったところをうまく活用されるのがいいのではないかと考えています。

渡辺:なるほど。

内製化をする上での判断基準は「サポート体制」「スキル取得」「コスト」

熊谷:あとはサポートですね。製品やサービスのサポートはもちろんですが、パートナーさま自身がどのようなサポートがあるのか。あとはやはり内製化がポイントになりますので、セルフサービスでどれぐらい解決できるか。そういったサービスがあるかどうかもポイントになると考えています。

あとはスキルの取得ですね。内製化をしていくための情報はどれぐらいあるのか。先ほどのセッションでも、海外のベンダーの参入が非常に多くなっているとありましたが、製品としてはローカライズされていても、ドキュメントがローカライズされていないケースが多いです。

渡辺:そうですね。

熊谷:なので、日本語の情報がきちんとあるかどうかは確認されたほうがよいかなと思います。あとは媒体ですね。私どものお客さまでもけっこう多いのが、もちろんWebでも情報を出していますが、それだけじゃなくて例えば書籍も欲しいといったニーズがあります。こういったニーズにも対応できるかどうか。

あとは、やはりコストの問題ですね。私どもも製品・サービスのトレーニングというかたちで有償のサービスも提供していますが、こういうものにどれくらいお金がかかるか。無償の範囲でどれくらいできるのか。こういったところも事前に調べておいて、活用されるのがいいのではないかなと思います。

通常の製品とだいぶ違う部分としては、コミュニティを挙げさせていただいています。内製化をしていく上で、先ほどの柳井電機工業さまもそうですが、1人でやらなければいけないと。拡大フェーズになったら、社内で一緒に広めてくれる伝道師を作るのは重要だと思うんですけれども、なかなかそれができない会社も多いです。

そういった時に、同じ目線の仲間を作れるような場所があるか。やはりそういう仲間がいると、内製のモチベーションを保つことができるので、そういったコミュニティは非常に重要だと思います。

担当者が本当に知りたい情報は、コミュニティにある

渡辺:社内でもそういうコミュニティ作りが必要になってきますね。

熊谷:そうですね。社外の方でもお話しできるようなものを想定していますが、実際のケーススタディですね。先ほど事例をご紹介しましたが、本当にみなさまがお聞きになりたい情報が出せるかと言うと、ベンダーの話だとやはりなかなか難しいので。

そういう話をストレートに聞ける仲間がいることや、つながりを提供できる場があるかどうかは非常に重要だと思います。個人的には、ここらへんはやはりノーコードツールならではかなと考えています。

非常に手前味噌ですが、私どもはノーコードのスキル習得を支援するために、ノーコードに特化したリスキリングのポータルサイト「NoCode Gate」というものを立ち上げています。有償のコンテンツをトレーニングで使っていますが、そういったものを含めて全部無料で提供したりしています。

また、私どもの製品・サービスだけではなくて、最近ではRPAテクノロジーズさまが提供される「BizRobo!」の動画が載っていたりと、会社にとらわれずにさまざまなツール、サービスをご覧いただけるようになっています。スキル習得を支援するような仕組みを提供しております。

あとは、今Slack上でオンラインで展開しているユーザーコミュニティがあります。これはエンタープライズ企業向けの製品ではけっこう珍しいんじゃないかなと思っています。

現場のDXを進めるには、ツール以外にも総合的な支援が必要

熊谷:先週見た段階で1,289名に参加いただいており、お客さまや代理店さまの技術者の方が質問をすると、私どもを介さずにコミュニティメンバーの方から回答していただくようなことが日夜行われています。私どもとしては、それを支援するためにブロックチェーンでポイント制度を作って、そういう方々のモチベーションをサポートしています。

こういったポイントをたくさん獲得された方を表彰するイベントを定期的に開催しております。事例で紹介した柳井電機工業のご担当者さまにもお話しいただきますので、よろしければイベントレポートなど御覧いただければと思います。

渡辺:確かにツールも非常に重要ですが、こういったいろいろなコミュニティ、イベントを通しての情報収集や意見交換が、やはり現場のDXをアジャイルに進めていくためのベースになる。総合的な取り組みがあるのはすごくいいことだなと思いました。

熊谷:ありがとうございます。

渡辺:そして、今日のセッションのテーマでもありますが、やはりノーコードはアプリの開発だけじゃダメで、データ連携させていくこと。それも現場から基幹系というデータ連携もありますし、逆に基幹系から現場にデータを連携して持ってくるアプリの使い方もあるということで、非常に勉強になりました。

熊谷:いえ、とんでもございません。

渡辺:今日はいいお話をたくさん聞かせていただきまして、どうもありがとうございました。

熊谷:ありがとうございました。