2024.10.21
お互い疑心暗鬼になりがちな、経営企画と事業部の壁 組織に「分断」が生まれる要因と打開策
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小田木:ではさっそくステップ1から進めていきます。先ほどまさに「ギャップとは何か」という投げ込みをくださいましたけれども、何がギャップなのか。そしてそのギャップの背景には何があるのか、いったん言語化してみたいと思います。
どっちからいきましょう。
沢渡:では慣れている私からいきましょうか。世代間ギャップがなぜ起こるのか、なぜ世代間の綱引きが起こるのか。その背景を私は「3つの目線」という言葉で、今日は韻を踏んでみたいと思います。
小田木:また韻踏んじゃうんですか?
沢渡:はい(笑)。目線その1が「俺目線」。2つ目が「過去目線」。3つ目が「短期目線」です。この3つの目線のそれぞれ世代が違う人たちの綱引き、あるいは相互無関心が起こっていると感じています。
まず1つ目「俺目線」は「俺たちの心地いいやり方に合わせなさい」。こんな強引な引力があります。それぞれの世代が心の中でモヤモヤ思っているか、あるいは行動に移してしまう状態があると思うんですね。
例えば、ベテランは「俺たちの勝ちパターンがあるんだ。俺たちの言うとおりにしろ。自分たちの心地のいいやり方にお前も合わせろ」なんですね。
一方で、若手は若手で「ベテランのやり方はイケていない。わかっていない。何でこんなダサいやり方をやらせようとするんだ。ブツブツ」みたいな感じですね。お互いが俺目線で、自分たちのやり方に合わない相手を攻撃するか、無関心な状態になる。
小田木:一方だけを責めない構図ですね。双方にこういう目線があって、わかり合えない問題。
沢渡:おっしゃるとおりです。そして2つ目が「過去目線」です。今までのやり方が正しい。これは特にベテランに色濃いのかなと思っています。
そして3つ目の「短期目線」。言葉を変えると「事なかれ主義」と言えるのかなと思います。例えば、いわゆる定年退職が近い50代後半から60代前半の方は、まもなく自分は定年だから穏やかに過ごしたい……みたいな。変わりたくない。巻き込まれたくない。
そして若手は若手で、居心地が悪かったとしてもどうせ転職するからいいやという、短期的な目線で成長や変化や干渉を諦めてしまう。そんな3つのモヤモヤが背景にあるのかなと思います。
小田木:ありがとうございます。「過去の成功体験にしがみつくあるある」なんていうコメントもいただきました。
沢渡:そうですね。おっしゃるとおりだと思います。
小田木:では、竹内さんも3つ並べて話をしていきましょうか。
竹内:はい。韻を踏む感じではないんですけど。
小田木:韻はいいです(笑)。
竹内:みなさんがこのライブがどんな感じでお聞きになっているかわからないんですけど、本当に今考えています(笑)。
小田木:まさにライブですね。生の言葉を待っています。
竹内:今言葉として浮かんできたのが「過去」「現在」「未来」の3つです。まず「過去」とからいくと、世代間ギャップって、たぶん人類が生まれてからずっとあるものだと思うんですよね。
沢渡:深い!
竹内:今までも「おじさんたちが○○だから」とか、「最近の若い奴らは」みたいなことってずっとあったと思うんです。でも、今になって世代間ギャップに悩んでいる人がたくさんいる、というのが問題の1つだなと思っていて。
今までは時代の変化と組織の変化とか、そんなに急いでいなかったと思うんです。例えば農耕社会とか工業社会って、同じことをやっていればだいたいOKだったから、そんなに時代と組織の乖離はなかったんですよね。
沢渡:なるほど。時代の変化も遅かったのかもしれないですね。
竹内:そう。今は時代の変化がすごく急なのに、組織の変化が昔のままのスピード感だから、組織と社会の間に乖離が起きていて、それが「世代間ギャップ」なんじゃないかなと思っています。これが最近になって言われるようになった背景だと思います。これが「過去」ですね。
竹内:「現在」では、それをなんとか解消しようとして「世代の特徴を知りたい」というリクエストを研修とか講演とかでもらうんですが、ただ実際問題、世代の特徴を知ったところでコミュニケーションを変えられますか? という疑問が僕にはあって。
要は「若い世代はこうだからこう接しよう」と頭ではわかっていても、たぶんできないと思うんですよね。なんで「若い世代はこうだからこう接しよう」としちゃうかというと、ちょっと僕には操作的に感じられて。若い世代を「自分のうまい具合に動かしてやろう」という気持ちが問題だと思っています。
3つ目の「未来」という観点は、一言で言えば「今のままでいいんでしょうか」という問いです。例えばよく聞く言葉として「最近の若い奴らは根性が足りねぇ」と。本当にそうかもしれないんですけど、その精神論はいつまでやるんでしょうか?
ただでさえ人口が減っている今、本当はみんなで協力し合って、それぞれの強みを活かしてチームを作っていかなければならない。未来に対して、もっと変化に対応できるチームを作らないといけないと思っているので、このままじゃマズイよねと。この3つの問題点を挙げたいと思います。
小田木:ありがとうございます。それぞれの観点を3つずつお出しいただきました。
沢渡:鋭いコメントをいただきました。「30年以上生きてきたら、人間固まってしまって、若いものに対応する変化などできないのでは。人間の本質的に」。こんな問いかけをいただきましたが、竹内さん、いかがでしょう。
竹内:できないと思ってしまうと、できないんでしょうね。
沢渡:ああ、なるほど。
竹内:逆に変われると思えば変われるのかもしれない。変われないと思ってしまうのは、「自分が正しい」という経験を積んでそう認識しちゃうんだと思うんです。僕にそういうところないかと言ったら、たぶんあるとは思うんですけど。
でも自分の正しさが必ずしも若手の正しさとは限らない。若手には若手の正しさがあるから、その正しさと正しさをどう擦り合わせていくかという作業が必要なんじゃないかなと思います。それが「景色」なのかもしれないですね。
価値観は変えられないけど、景色は変えられるような気がします。「みんなでこっちに行きましょうよ」と思いの共有ができれば、それぞれの正しさは正しさでいいと思う。
沢渡:竹内さんのおっしゃること、めちゃめちゃ共感します。私も「組織の景色を変えていく」を自分の中でのポリシーにしていますが、景色を変えると人の意識や行動は変わりうると思うんですね。
例えば、今までITにアレルギーを示していたベテランの方が、いざ実際ITツールを使ってみたら、「意外といけるよね。意外とできるやん」という発見が生まれて、そこからどんどんITを使って組織の外の人とつながったり。自ら情報発信して、そこで新たなナレッジを生んだり。
周りに変化の風をもたらしていく人が間違いなくいるんですね。60代でSlackを使い始めた話とか、さまざまな企業で私も見聞きしてきました。
そういう意味で景色を変えることによって、価値観は変わらなくてもいいけれども、そこから行動変容が起こっていくきっかけは作ることができるのかなと思いました。
小田木:ありがとうございます。それぞれ3つずつ出てきた問題について、どんな着眼点を考えたりするとよさそうですか?
沢渡:そうですね。そうしたら小田木さん、私のまとめコメントに、こう書いてほしいんですけども......。その前にみなさんに問いかけをしたいんですが、「俺目線」「過去目線」「短期目線」って、180度転換したらポジティブになると思いません?
どういうことかというと、「相手目線」「未来目線」「中長期目線」の組織と人を作っていこうということ。こんなテーマで話を進めたいなと思います。
小田木:なるほど。「何が問題? なぜ問題?」という背景を考える時に、転換してみると逆にヒントがあるんじゃないかということですね。
竹内さんもよかったら6つ並べて見て、竹内さんなりに注目する切り口があればぜひ共有いただけますか?
竹内:先ほど価値観の話が出てきましたよね。価値観はそれぞれが生まれて育ってきた背景のものだから、「その価値観違うよ」と言われると、ちょっと傷付いちゃうじゃないですか。
沢渡:もうお互いどこにも行けなくなりますよね。
竹内:価値観を傷付け合うんじゃなくて、お互いの価値観を容認し合えたり、ちょっと柔らかくなれたり、お互いの良さが見えたりしたらいいなと思いました。それを「多様性」と言うのかもしれないんですけど。
小田木:「価値観を否定されたら」とおっしゃっていただきましたけれども、やはり仮に問題があったとしても「あなたに課題があるから、あなたが変わるべきだ」というアプローチで来られたら、その瞬間、若い古いに関係なくシャッターが閉まっていく感覚がありますよね。
沢渡:そうですよね。人間だもの。
小田木:「人間だもの。ガラガラガラ。小田木商店今日は終わりです」って。
沢渡:(笑)。わかりやすい。
小田木:変わる必要性はあるんだけれども、変化を「責めモード」だとか「否定モード」で促そうとすると、そういう問題が起こります。否定をしながら傷付けながら変化を促すのか、それともそうじゃない変わり方があるのか。その着眼点だと、沢渡さんの「相手目線」「未来目線」「中長期目線」ともつながりそうですよね。
竹内:あと1点だけあるとしたら、さっきSlackの話があったじゃないですか。「楽しい」と思えたら、変われと言われなくたって変わっちゃうのかなと思いました。
沢渡:そうですね。ITの世界では最近DX(デジタルトランスフォーメーション)が叫ばれていますけれども、私はデジタルトランスフォーメーションを叫ぶより、まず「小さなデジタルエクスペリエンス」を増やす。その意味でのDXを、もっと半径5メートル以内から増やしていったらいいのになと思っているんです。
例えば、Slackを使ってみたら楽しくなって心地よくなって、自らファンになってしまった。これは小さな快感体験や成長体験が、デジタルエクスペリエンスによってもたらされていると思うんですね。
そういう意味では、もちろんITだけがすべてとは言いませんけれども、新しい小さな体験を仕掛けていく。仕込んでいく。それは人事組織としてもできると思いますし、現場のマネージャーやメンバー発でもできるのかなと思いました。
小田木:危機感を煽って動かそうとするのか、それとも「楽しいほうへおいでよ。行こうよ」と言いながら変化を促すのか。冒頭で竹内さんも、ストレスをかけて動かそうとするのか、それとも違うやり方があるのか、それを求めて勉強されたとおっしゃっていました。
責めて変えるのか、否定して変えるのか。それとも肯定しながら一緒に変わるのか。お二人の提唱することの共通点が見えてきた、そんな手応えを持ちました。
沢渡:「内発的動機づけ」というコメントをいただきました。まさにそこが今日のテーマの1つになるのかな。
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