JALグループのkintone事例を初公開

足立宜親氏(以下、足立):みなさん、こんにちは。よろしくお願いします。

黒田綾乃氏(以下、黒田):こんにちは、よろしくお願いいたします。実はJALグループさまのkintoneの事例は、本日のセッションが初公開の場となりますので、みなさまぜひ楽しみに待っていてください。

ということで、まず私たちの自己紹介をさせていただきたいと思います。まず私は、サイボウズ株式会社パートナー第一営業部の黒田綾乃と申します。ふだんはパートナーさんと一緒に営業活動をしており、日本航空さまの担当営業をさせていただいております。

足立:私は、サイボウズ営業本部パートナー第一営業部の足立宣親と申します。黒田と一緒に日本航空さまを担当しております。今日はみなさんと一緒に楽しめればと思いますので、よろしくお願いします。

黒田:この後JALさまをお呼びする前に、1点アナウンスをさせていただきます。セッションの後半では、みなさまのリアクションを私たちが代表してうかがう時間もありますので、感想やご質問があれば、ハッシュタグ「#JALキン」をつけて、ぜひツイートをお願いします。

足立:講演中に黒田が拾ってくれますので、みなさんスマートフォンを持って、気になるところがあれば、ご質問いただければと思います。あと、2020年に入社した黒田の夢は、「Cybozu Daysでお客さまと一緒に登壇することだ」ということで、今日は夢を叶える場になっています。

黒田:ありがとうございます(笑)。

足立:みなさん、よかったら応援の拍手をお願いしてもいいでしょうか?

(会場拍手)

足立:ありがとうございます!

黒田:ありがとうございます。では、お呼びします。日本航空の日髙さん、JALインフォテックの千葉さんです。大きな拍手でお迎えください。

(会場拍手)

kintone導入後2年足らずで、450のアプリが誕生

日髙大輔氏(以下、日髙):みなさん、こんにちは。今日はJAL kintoneチームから2名で参りました。JALグループのkintoneの総括をしております、日本航空IT運営企画部技術戦略グループの日髙と申します。kintoneをはじめとするノーコード・ローコード基盤や、ITの新技術調査を担当しております。よろしくお願いいたします。

また、今回のCybozu Daysでよく聞くキーワードで、「内製化」と「伴走型システムインテグレーター(SI)」という言葉があります。私たちは伴走型SIerも内製していて、そちらを率いているのがJALインフォテックの千葉さんです。お願いします。

千葉耕一氏(以下、千葉):JALインフォテックの千葉と申します。僕は約2年前、JALさんの中でkintoneを入れようかな、という(話が出た)時から関わらせてもらっています。今日はどうかよろしくお願いいたします。

足立:よろしくお願いします。JALさまをご存知ない方はいらっしゃらないと思うんですけど、会社紹介とkintoneを導入している状況などもうかがえればと思います。

日髙:今日はひょっとしたら、こちらの会場にお越しいただいた方にも、JALグループをご利用いただいた方もいらっしゃるかもしれません。ご利用ありがとうございます。

これはコロナ禍前の数値でございますが、私どもは1日の平均のフライトが1,000便、年間のご搭乗者数は4,200万人。これだけ多くのフライトを飛ばし、ご利用いただいている航空会社で、連結従業員数は3万6,060名です。

その中でkintoneをどう使っているのかと言いますと、まず導入方針が大きく2つあります。IT部門での開発を必要としない小規模ニーズに対応する、いわゆるEUC(End User Computing)。もう1つが、効果を出せる組織からkintoneを導入する、スモールスタート方式で展開しています。

導入は2020年からですので、使用開始してからまだ2年経っておりません。現在の契約数を見て「あれっ?」と思った方もいらっしゃるかもしれませんが、3万6,060人に対して、今のところ945人です。そのうちアプリ数が450ということで、航空会社らしいものを例に持ってきました。機内で客室乗務員がいただいたお客さまのご意見管理や、新事業案件管理などに使っております。

「人生・仕事の結果=考え方×熱意×能力」

足立:従業員数3万6,000から比べると、契約数が少なく感じられるかもしれないですが、今年に入って急激に伸ばしていただいています。私たちもJALさまからいろいろお話をうかがっているんですが、みなさまにも大きなヒントになるということで、今日はぜひ日髙さん、千葉さんにお話をうかがいたいと思っております。今日の講演のコンセプト、お願いできますでしょうか?

日髙:まず、他のセッションでも「kintoneを使った業務改善やDXの成功例」はよくあると思うんです。今日は足立さんたちと相談して、ちょっと視点を変えてみました。

成功につなげるための「JAL IT部門流kintone初期導入メソッド」と、ちょっと自分でもハードルを上げてしまった感はあるんですが。IT部門としてどうユーザーを支えていくか。そのためにどういう取り組みをしたかを主眼にお話ししたいと思います。

足立:ありがとうございます。「成功につなげるための」ということで、今日はタイトルにも「成功」が入っています。成功方程式は「目的x仕組みx熱意」ということで、詳しくお願いします。

日髙:まず、稲盛(和夫)さんの本をお読みになった方はご存知かもしれないんですが、当社には「JALフィロソフィ」というものがあります。JALの業務に携わる全員が持つべき考え方として定めているものです。その中にいくつか条文があって、「人生・仕事の結果=考え方×熱意×能力」というものが最初に出てきます。

ここでのポイントは、能力がどんなにあっても熱意がなかったら成功しませんよ、ということでもあるし、考え方はマイナスからプラスまで100点のレンジがあるので、考え方が少しでもマイナスだったら結果もマイナスになってしまう、という思いが入った成功方程式です。

この成功方程式をもじって持ってきたのが、私たちJAL kintoneチームが考えるkintone成功方程式、「kintone導入の結果=目的×仕組み×熱意」です。今日は、この1(目的)、2(仕組み)、3(熱意)の順でお話ししていきたいと思います。

kintone導入の2つの目的

日髙:さっそく「目的」から。最初に2つ掲げた導入方針の1つ目が、IT部門での開発を必要としない小規模ニーズに対応すること。これが私たちのkintoneの導入の目的になっています。

昨日のProduct Keynoteで青野さんが、「今回のCybozu Daysの中でも『内製化』が1つ、大きなキーワードになっています」とおっしゃっていました。内製化と言っても、社内ユーザーが作るのか、IT部門が作るのか、いろいろなパターンがあると思います。

これは表にするまでもなかったかもしれないんですけど、ユーザーが(システムを)作れれば他人に頼まなくていいので、早くたくさん作れる。だけど、出来栄えはさすがにIT部門の人たちには敵いませんよね。私たちには、やはりユーザーが作るだけでは足りない要素を、IT部門が補わなければならないという問題意識があります。

足立:なるほど。これは日髙さんや千葉さんが作って「すごいぜ」というセッションではなくて、ユーザーさんに作ってもらっているということでよかったんでしたっけ?

日髙:そのとおりです。目的はこれぐらいで、今日のメインは2番の「仕組み」になりますので、どういう仕組みを作ってユーザーを支援しているかを、一つひとつご説明していきたいと思います。

相談者のタイプを「子羊・イノシシ・ネズミ」で3分類

日髙:ちょっとイメージしていただきたいんですけど。みなさんもJALグループの社員で、「なんかkintoneというものがあるらしいぞ」と聞きましたと。これからkintoneを自分の部門で導入したいから、kintoneチームに声をかけようとしている社員だとイメージして聞いてみてください。

最初に私たちのところに、「すみません、kintoneでこんなことしたいんですけど」と、導入相談が来ます。私たちが開発のデモンストレーションをして、「こんなものが作れますよ」とか「それだったらkintoneでできますね」という、実現可否の見極めをしていくんです。

そこで、私たちに相談が来るパターンを冷静に分析してみると、3つに分類できました。ちょっと動物占いみたいに考えてきました。

1個目の「迷える子羊系」は、実施したいことは明確だが、最適なソリューションがわからない。これは一番多いパターンです。「こんな集計をしたいんです」「こんな案件管理をしたいんです」ということに対して、私たちは「じゃあkintoneで作ってみましょう」と答えます。

2つ目は、ちょっと毛色が変わっていて「突撃イノシシ系」。デジタル化やDXに向けてkintoneを導入したい。「何がやりたいんですか?」と聞くと、「それはこれから考えます」という、kintoneありきのパターンです。私たちも、これはkintoneならではのパターンで、ありなのではないかなと思っています。

3つ目が「囚われのネズミ系」です。IT部門に頼らず独自導入したが、kintoneアプリを作った人がいなくなって困ってしまい、「助けてください」と駆け込んでくる。今回相談しながらがんばって考えた結果、だいたいこの3つのパターンに収れんするとの結論です。

「とりあえずDX進めたい」という声にどう対応すべき?

足立:導入検討をされているユーザーさんは、この3つに分類されるということで。お話を聞いていると、1番と3番はやりたいことが明確なので、やりとりの仕方や携わり方がなんとなくわかると思うんですけど。

2番の「とりあえずDX進めたい」という企業さまのお話も聞きますが、イノシシ系のユーザーにどう関わっていくか、ちょっと聞いてみたいなと思います。千葉さんがよろしいですかね?

日髙:そうですね、千葉さんお願いしていいですか。

千葉:これまでのシステム開発は、最初に要件定義をしっかりやっていくのに対して、kintoneは要件を掘り起こしてくれるイメージです。ほとんどのことはもう決まってるんですが、細かいところが決まってなくて、例外や特別な処理をうまく聞き出していかなくちゃいけない。

それをすごくうまくやってらっしゃるのが、kintone専門のとあるSlerさんなんですけれども。

足立:今日も出てるんですよね?

千葉:一度同席させてもらったことがあるんですが、もうとても上手に要件を聞き出していて、我々も見習わなくちゃいけないなというのが現状です。

足立:これまでとは若干違うところで、スキルを発揮しないといけない。IT部門の今までの仕事というよりは、業務コンサルに近いスキルが必要という感じなんでしょうかね?

千葉:はい、そんな感じです。

費用対効果をわかりやすく伝える方法

足立:ありがとうございます。導入相談以降の流れもお話しいただきたいなと思います。

日髙:最初に相談いただいて、ここで「kintoneを使おう」となるので、ユーザーにいきなりライセンスを買ってもらうのではなく、私たちkintoneチームで持っているライセンスを貸し出します。

借りた部門は、まず最初にアプリ開発のための教育を、5時間受講してもらいます。その後、私たちと一緒に対面でのアプリ開発相談をしていきます。ここがだいたい3ヶ月です。あんまり長くダラダラしてもいけないし、短くてもダメなので、この「勝負の3ヶ月」が非常に大事だと思っています。

最後に利用開始する時に、ライセンスを実際に買っていただくために、社内の決裁などの手続きをするんですけど、ここで費用対効果のコミットをしてもらいます。

足立:なるほど。おそらくユーザー部門の方は、費用対効果のコミットは当然考えていかないといけない部分だと思うんですけど。今日もおそらくIT部門の方が多いと思うので、IT部門として費用対効果のコミットにどう携わっているかをお聞きしたいですね。

日髙:正直、ユーザーも私たちも悩むところなんですけど。やっぱり効果を求められるので、まず私たちが一番よくやるのは事例紹介です。例えばkintoneの場合、脱Excelとか脱ペーパーワークというものがあります。

一番わかりやすい例ですと、紙で仕事をしていたために出社しなければいけないけど、kintoneに置き換えることでオンライン化された結果、出社回数を減らせた。そうすると、通勤費が削減できるという事例とか。

足立:なるほど、わかりやすい。

「共通機能・ルール・教育」の3本柱

日髙:あとは、部署によっては、すでにある社内システムが老朽して取り替える時に、「この機能だけだったら簡単だから、自分たちでkintoneで作っちゃいます」というふうにやったところもあります。事例を紹介して、「こういうものだったらどうですかね?」と一緒に考えています。

足立:なるほど。ペーパーワークを置き換えていくことは“あるある”かなと思うんですけど。老朽化したシステムも、もうIT部門さんが「ここやっちゃえば?」という感じで携わっているんですかね?

日髙:IT企画本部の中では、kintone利用希望組織の方々にも5時間の研修を受けてマスターしてもらっているので、そういうところから「これぐらいやろうよ」という提案をしています。

続きに行きます。今言ったようなプロジェクトがどんどん走っていくんですけど、その前に私たちkintoneチームとして、共通機能・ルール・教育という3本をやりました。

さらに今も継続的な改善ということで、いろいろな共通機能を追加整備したりしています。これからABCDのそれぞれの要素を紹介していきたいと思います。

まず共通機能ですね。ルックアップ用の社員情報マスタを一番最初に作りました。例えば私がMicrosoft Formsを使っていて、手打ちで従業員番号を入れ、氏名を入れ、メールアドレスを入れて、これはユーザーも正直大変だから……。

「やっぱりkintoneなんだから、従業員番号を入れると、ルックアップ機能で氏名やメールアドレスが自動入力される仕組みを作りましょう」と千葉さんにお願いしたと。

千葉:社員情報をルックアップできるよう、社員システムと連携したアプリを作ります。

日髙:ということで、まず最初に月2回、社員システムから手作業でJALインフォテックのチームの人に入力してもらったんですけど。今は毎朝RPAで自動投入して、最新の社員情報が社員マスタのアプリの中に入っています。社内のkintoneユーザーは、そのマスタをルックアップして使えるようになっています。

足立:最新にならないといけないので、RPAと組み合わせながらやってらっしゃるんですね。

日髙:そうですね。

アプリが乱立する“荒れ地化”を防ぐには?

日髙:次はルールですね。当然ユーザーが「たくさんのkintoneアプリを作って活用します」というふうに来てくれるので、私としても万々歳、大歓迎なんですけど。やっぱり、アプリが乱立してカオスになる前に対策しないといけない。

他社さんの講演や事例をうかがっていても、利用拡大するにつれて“荒れ地化”すると、(今回のCybozu Daysのテーマとは違う)愛せないカオスになってしまうので。そういった点から、早くある程度のルールを作ってしまうという問題意識がありました。

足立:そうですね。荒れ地化するという話はけっこうありますから。

日髙:シンプルなところを2つ紹介したいと思います。まずは必ず命名規則に従うことですね。先頭にkintoneのアプリIDをつけてください、後ろに作成者の組織をつけてくださいと。これで通番管理をし、どの組織が作って管理しているアプリかが一目でわかるようにしています。

また、アクセス権の設定は「Everyone」をつけっぱなしだと全員に見えてしまうので、そこは絶対に外して、必要な組織だけつけてもらうようにしています。

足立:めちゃくちゃ具体的な例を示してくださって、ありがとうございます。

「アプリを番号で呼ぶ文化」がもたらした思わぬ効果

日髙:「kintone REST API」を使っている方でないと、「アプリID」という言葉はちょっと耳慣れないと思うので、簡単に説明させてください。kintoneのアプリIDは、アプリを開いた時に、URLの一番後ろに数字が書いてあります。

ここだと528番というふうに自動採番されるので、アプリを作成した時に採番された番号を、ユーザーが自分で「528 kintone問い合わせ受付」のように、アプリ名の先頭につけます。これを絶対にやってもらうようにお願いしています。

私も当初は通番管理ぐらいのつもりで入れたんですね。でも、実は個人的にも、たぶん社内的にも大ヒットしていまして。例えば「kintoneに関する問い合わせは528番のアプリを使ってください」。「○○の申請は××番のアプリを使ってください」と、番号で呼ぶ文化ができてきたんですね。

さらに、水色の吹き出しのように、ちょっとわかる人は、「~~~.cybozu.com/k/528」と入れればいいんだなと、いちいちブックマークとかしないでURLを直打ちするんですね。こういう効果が出たことは、個人的には今は非常に功を奏していると思ってます。

足立:なるほど、今日この場にいらっしゃる方で、もしこれからkintoneを導入する直前の方がいらっしゃったら、もうすぐに使えそうなTipsなので、ぜひ使っていただきたいですね。

日髙:そうですね。最初にルールとして徹底したことで、みんながちゃんと番号をつけなきゃとわかるようになったので、やってよかったと思っています。

足立:サイボウズでも案件管理と検索すると、やっぱりいろんなチームの案件管理ができてしまったりするので、ぜひみなさんにも参考にしていただきたいと思います。