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今企業に求められている「カルチャーモデル」とは(全2記事)

2021.08.18

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社員の不満や業績不振、その根本原因は「カルチャー」だった “目指すカルチャー”を実現するための5つのステップ

提供:Indeed Japan株式会社

採用先進企業のさまざまな知見や事例が学べる、「Owned Media Recruiting SUMMIT 2021 vol.2」。本年2回目の開催となる今回は「オンライン採用時代に企業カルチャーを問い直す」をテーマとし、より実践的な内容へとアップデートされています。これから企業は、職場の雰囲気や社員の熱意などのカルチャーをどのように言語化し、発信すればよいのか。識者と人事担当者らが、さまざまな試行錯誤や経験を明かす貴重なイベントとなりました。本記事では、『カルチャーモデル 最高の組織文化のつくり方』の著者・唐澤俊輔氏が、企業カルチャーを作るための実践的な手法を5段階で紹介します。

企業のカルチャーを作る「5段階のステップ」

唐澤俊輔氏:ここからは実践編として、どのようにカルチャーを作っていくかをお話していきたいと思います。5段階の「カルチャーを作るステップ」をご紹介します。

まず、「現状の棚卸しをしていく」ということで、現状を棚卸した上で、ゴールとしてのビジョン・ミッションでどうありたいかを掲げます。そこから、カルチャーとしてどの方向に行くのかというスタンスを定め、具体的にどうするのかを言語化する。

そして、絵に描いた餅にならないように、組織でかたちにならなきゃいけないので、カルチャーを浸透させるまでが重要だと定義しています。

棚卸しは、先ほどの7Sの話に沿って、それぞれ「自社はどうなっているのか」というのを、こういう問いの例にもあるように、「どのように成長していくか」「どういうバリューがあったか」とか。

実際こうだけど、現実はそうなっていないことなども含めて、現状をしっかりと可視化していく。その上で、「こことここって実は整合性が取れてないね」というものが見えてきたりすると思うので、その辺を課題として認識することが大事かなと思います。

ビジョン・ミッションの設定は、「どういう社会にしたいか」とか「自社はどういう使命を担っていくのか」ということを定義していくことなので、大きすぎる場合は抽象度の高さという難度があるんですが。

総花的なものにしてしまうと、例えば「(ビジョン・ミッションは)世界平和」と言った時に、「誰でも言えるよね。でもそれ、できるんだっけ?」という話になってしまうので、この会社だからこそ言えるというところを、しっかりと探りましょうというのが重要です。

ミッション・ビジョンの上下は、どちらのバターンもありなので定義次第なんですが、このSHOWROOMの時の例では、ミッションは非常に抽象的に「努力がフェアに報われる世界を創る」と描いています。

その下にビジョンとして、当面3年から5年くらいの間に目指す世界として、事業ドメインをエンタメ×テックに決めようと、いったん絞った感じですね。使い方としては、こういうふうに抽象度と具体をうまく整理することが大事かなと思います。

他社の成功例を真似するよりも大事なこと

ここから本題になってくるわけですが、カルチャーの方向性は先ほど話した4象限で、ここで行こうというのを一定に定める必要があります。ポイントは、定めたことはしっかりと一貫性を持たせることですね。

ありがちなのが、カリスマリーダー経営で経営者が強いけれども、「やはり人が増えてきたし、権限移譲したいよね」となってきた時。「じゃあ全員リーダーでみんなに任せて行こうか」となるんですけど、任せて「よろしく」と言ったあと、やはり経営者がひっくり返すことがけっこう起きますよね。

「なにか提案しても、結局社長が決めるんだから意味ないでしょ」となると、冷めてしまって、結局変わらないということが起こるので、すべての評価の制度にしろ、採用の仕方にしろ、すべてをそこに沿わせていくという一貫性が非常に重要かなと思います。

逆に言うと、施策だけ真似しないほうがいいですね。チームリーダーで擦り合わせを大事にして、みんなで凝集性高くやっている組織といった時に、「じゃあGoogleが食堂をやっていて、うまく行っているらしいぞ」という感じで、真似して「食堂を入れましょう」といったことをするんですけど。Googleが食堂をやっているのは、そこで部門を超えた横断的なコミュニケーションを取ってもらって、化学反応を起こすことを期待しているわけですよね。

でも、チームで仲良く動いている縦割り型の組織だと、いつも同じ課のメンバーで食堂に行って帰ってくるだけになると、何の意味もない。ただ安くご飯を食べているようになってしまわないように、一貫性というのは大事にしましょうということです。

「取るべき行動」は、現状の課題の裏返し

7Sに関しては、こういうかたちでそれぞれのSの整合性を取っていく。

一つひとつ丁寧に言語化して可視化していくことが重要になるんですが、ここでマクドナルドの時にやらせてもらっていた事例をご紹介します。本社スタッフは600名程度なんですが、本社スタッフが全員参加型でワークショップをやって、バリューを言語化しました。

このあとの言語化の話は、パネルディスカッションでも具体的に見ていきたいと思いますが、策定したステップとしては、ワークショップでみんなで課題を出したんですね。当時は業績が良くない時期で、組織をより強く一枚岩にする目的でやったので、「お客さまを第一に見られていない」とか、「現場のほうを向けていない」といった課題に優先順位を付けていきました。

それらを裏返して取るべき行動に置き換えたので、「Be! CUSTOMER」とか、「Go! GEMBA」と書いてありますけど、要は課題を裏返して取るべき行動にしてバリューにして、全員でこれを一番大事にしようと掲げたという話です。

マクドナルドの場合、(日本でも)外国籍の社員もけっこういたりします。そこで、すごく簡単で、外国人にもわかるけど日本人にもわかる英語というふうにしていました。「GEMBA」は日本語なんですけど、こういうのを外国の人も喜んで「GEMBA」と言い出したりするので、バズワード的に作ったりもしましたね。

こういうものを真ん中のShared Valueに置いた上で、周りの6つのSを整合していくことになります。2015年当時のマクドナルドが、7Sに当てはめてやっていたわけではなくて、後付けで整理しているものではあるんですが。改めて見ても、整合性が取れているなと思って整理しています。

権限移譲しながら、お客さんにより近いところで意思決定をしようと。「Be! CUSTOMER」だとそう決めたので、Structureのところでは、組織を地域別に分けて、各地域ごとに根ざした意思決定ができるような権限移譲をしていくとかですね。それに伴って、各地域の連動したインセンティブが出ていくとか、この辺りの整合性を取っていきました。

メルカリは、カルチャーを表す言葉をどう決めたか?

あとメルカリでは、創業期からバリューが非常に強くて、「Go Bold」「All for One」「Be a Pro」という言葉をずっと言っていたので、けっこうバリューが浸透した会社でしたね。そこにカルチャーや組織風土として、「Trust & Openness」という言葉を当時決めました。

もともと性善説と言っていたんですが、組織のグローバル化に伴い、外国籍の方も増えた時に、実は英語に性善説を表すいい言葉がなくて、「Humans are good」とかになっちゃうんですね。

それだと訳せないし伝わらないので、「自分たちが意味する性善説ってなんだろうね」と言語化していく中で、信頼を前提にしたオープンなカルチャーが僕たちらしいと。なので、情報は全部オープンだし、信頼する。

その結果、オープンだから権限移譲しても現場でちゃんと機能するよね、という組織作りをしながら、カルチャードックというドキュメントにまとめて言語化していったという例です。

これも後付けにはなるんですが、その当時の7Sを改めて整理していくと、全員リーダーで任せていこうという、大胆に任せる経営。真ん中にShared Valueがあるので、現場に権限移譲して階層もなるべく減らしていく。給与も絶対評価で相対的ではなくて、成果を出した人はしっかりと給与で報いる。株式で報いる。こういうことを設計しました。

従業員にカルチャーを認知してもらう方法

最後が「浸透」になります。結局、カルチャーを日々の行動・言動に落とし込んでいかなければ、絵に描いた餅になってしまうという課題が、どうしても大きいですね。

なので、ここでは、マーケティングでは第一人者と言われる、フィリップ・コトラーという方が考え出した「5A」のフレームワーク(を用います)。聞いたことがある方もいらっしゃるかもしれないですが、AIDMAやAISASといったものに近いです。

お客さん向けに認知を取って、訴求・アピールしていって、お客さんが調べたら見つかるような状態をしっかりと作り、実際に買ってもらったり、使ってもらうような行動を推奨する。

「買った商品がよかったよ」と話題になって、また次のユーザーにつながっていくようなサイクルを回していこうと言っていまして、それを従業員向けにも整理しています。

僕はマーケティングから人事の仕事に移っているんですが、マーケターの仕事がお客さんを幸せにすることだとしたら、人事は従業員を幸せにする仕事だなと思うので、やることはまったく同じなんですよね。なので、このプロセスで整理をしています。

さあ、1個ずつ見ていきましょう。まず「認知」です。認知をしっかり取っていくのは、特にバリューだったり、ミッション・ビジョンが目に触れるように設計していくことなので、メルカリは「Go Bold」「All for One」とかをステッカーにしたり、パーカーやTシャツにしたりしていました。

今でいうと、たぶんZoomの背景にするとか。オンラインのものがもっと必要になってきているかなと思いますが、可視化していくことで日々触れたり、カジュアルに接しているような仕組みは、基本として大事かなと思います。

SHOWROOMはオフィスのエントランスがカセットテープでできているんですけど、カセットテープを並べて、デジタルとアナログの融合を端的に伝えるようなことをしていましたね。

企業の施策は、経営陣から従業員へのメッセージである

それから、浸透の2番目がアピールということで「訴求」なんですが、ここは理解を深めて、共感や好感を得ていくことで、共通認識を醸成していきます。

このEXジャーニーがけっこう大事で、あらゆるタッチポイントでカルチャーと触れるわけですよね。すべてが組織のカルチャーを感じられるわけなので、すべてのタッチポイントが一貫していて、自分たちらしい状態であることが大事ですね。

なので、メルカリであれば「Go Bold」と言っていたわけですが、「常に大胆に行こう」なので、入社前のところからいろんな手続きも全部、大胆に新しいものを使っていくことを意識していました。

例としては「Sick leave(傷病休暇)」というものを導入したんですね。有給とは別で風邪をひいたり、病気になった時に休みが取れる休暇制度を入れました。これはグローバルのテックカンパニーでは標準だったので、メルカリも世界を目指す中で入れようということで議論をしたんですが。

その時に、当然傷病休暇なので、一般的には「診断書を持ってきてください」という話になりますよね。なので、診断書を持ってきてくださいという制度にしようとしていたんですが、「僕たち、Trust & Opennessと言っていたよね」という話があって。

「みんなを信頼するし、嘘つくやつはいないよね」と信じているので、だとしたら「診断書はいらないよね。そのプロセスは余計だよね」という議論をしました。「嘘をつく人はいないし」というだけの理由なんですけど。新しい施策をやる時に、常に自分たちのカルチャーに沿っているのか、バリューに沿っているのかを立ち返る。これがメッセージなんですよね。

「Trustだからお前ら信頼しろよ」と社員に言うことがカルチャーを浸透させることではなくて、人事施策の一つひとつに、「僕たちはこういうカルチャーなので、診断書はやめました。みなさんのことを信頼しています」と経営陣がしっかり伝えること。これがカルチャーが浸透するという意味では、すごく重要だったかなと思っています。

カルチャーは評価や表彰制度とセットで根づかせる

それからAsk。「調査」と訳されていますが、どちらかというと検索などをしながら、カルチャーを調べたくなったら見られるような状態が重要なので、いわゆる発信の話です。

今日の後半のパネルディスカッションで出てくると思いますが、メルカリではまさに「メルカン」というオウンドメディアを作りました。経営陣が出てくるというよりは、社員一人ひとりが出てくるようなメディアを作ったりとか。

今日もnoteさんがいらっしゃると思いますが、右側はnoteをプラットフォームとして活用している、PLAIDさんの例です。オウンドメディアをゼロから自前で作らなくても、noteのようなプラットフォームをうまく使いながら、発信しているという上手な例だったので、ご紹介させていただいています。

オウンドメディアをイチから自前で作って、ずっと回し続けるのは「更新頻度どうしよう」とか、けっこう難易度が高いので、この辺はカジュアルに始める方法もありかなと思っています。

4点目がActということで、「行動」を促していくところに入りますが、一人ひとりの日々の行動・言動に落とし込むことが何よりも重要なので、やはりここが肝になってきます。

当然、(社員に)「行動しろよ」と言ってするわけではないので、評価や表彰の制度とセットで落とし込んでいくことが、非常に重要かなと。仕組みとセットであることが大事だと思っています。

「バリューを中心にやっていく」というカルチャーを作っていくのであれば、当然バリューの体現度合いが評価に入ってきて、「この人はGo Boldだね」「この人はそれが足りないね」という評価をしながら、経営陣でも議論をしますし。

マネージャーもそういうフィードバックを本人にしていく。日々の会話を通して、バリューの体現を常に求めていくことが重要になってきます。

(カルチャーは)評価だけだと見えないです。あの人が何点の評価だったかとか、給料がいくらかまでは開示しないケースが多いので。表彰が有効なのは、「あの人がGo Bold賞を取るということは、あの人は(カルチャーを)すごく体現している。なるほどね」という感じで、浸透していくことです。

「Go Bold、大胆に行こうと言っても、どこまで行ったらGo Boldなんですか?」の答えは、なかなか言語にできないですよね。なので、こういう人の事例などをうまく見せていくことが重要になっていくよと。

あとは外部プラットフォームをうまく使いながら。これはUniposさんの例なんですが、社員同士がピアボーナスを送り合えるような仕組みを入れたりすると、バリューに沿った行動に対して、「あなたは、これについてGo Boldでよかったね」という言葉が日々出てくるので、そういう会話を増やすようなツールを入れていくことも重要かなと思います。

ゴールは、従業員が自らカルチャーを説明できること

最後がAdvocateということで、カルチャーを発信し広めると共に、改善サイクルを回しましょうと言っています。推奨していってもらうには、当然会社を好きになってもらったり、紹介したい(と思ってもらう必要があります)。リファラル採用はまさにいい例で、そういう機会をどんどん積極的に作っていくことが重要だと思っています。

メルカリでは、当時もリファラルを非常に重視していたので、推奨する機会を意図的に作っていました。例えば採用の目的の会食だったら、事後報告で「お金も払うからね」という感じで自由にやってもらっていたり。そういうことを意識的に入れていました。

リファラル採用のいいところは、社員が他の人に会社の説明をするところですね。自分たちの会社のらしさを説明することを通して、(カルチャーが)浸透していくということなので。

Advocateが実は一番難しくて。こういう組織のカルチャーの浸透度はサーベイをかけたりするんですが、最初に認知。それから理解しているか。そして行動が取れているか。自分の言葉で説明できるか、といった4段階ぐらいがあります。

僕はもともと行動よりも説明できるのが手前かなと思って、理解できたら説明できるかなと思っていたんです。でも実は行動が先で、行動ができてから説明できるレベルに行くということがあったので、この機会を作ることは浸透にはけっこう重要かなと思いますね。

あとは今、サーベイの話をまさにしましたが、なんらかのかたちでエンゲージメントスコアなどを取りながら、推奨度合いを調べていくと、やはり「推奨したい」が低いとなかなか推奨されないので、このスコアを上げていくことも根源的に重要です。

ということで、カルチャーをつくるステップをご紹介してきました。現状の棚卸し、それからビジョン・ミッションを設定し、方向を定めて、言語化して浸透していくという5つのステップです。

今日はまず、言語化についてのパネルディスカッションがあって、そのあとは「どうみんなに伝えていくか」という、外部的な発信も含めた事例を紹介していきます。ぜひそちらも聞いていただきたいなと思います。

誰もが「うちの会社は最高の組織文化だ」と言える世の中に

最後に、せっかくの機会なのでいくつか持ってきたんですが、私自身は志というのを、「人の心に火をつけるプロ経営者となって、これからの日本企業を救う」としています。救うと言うとおこがましいんですが、こういうことを思ってチャレンジをし続けたいなということで、マクドナルドから転職しながら、今は独立起業して組織開発支援をやらせてもらっています。

これは、自分がそういう人材になりたいと思っているから、やらせてもらっているわけなんですが、自分一人では当然すべての組織を見ていくことはできないので、ぜひみなさんと一緒にやっていきたいなと思っています。

より良い会社にしたいとか、もっと楽しく働きたいといった変化を生み出すのは一人ひとりだと思っていますので。明日からどんな小さなことでもいいので、このあとのセッションも含めて、いろんな学びとか気付きがあるかなと思いますので、ぜひ今日から新たな行動を起こしていただいて。

「うちの会社は最高の組織文化だ」と胸を張って言える。そういう世の中になればなと思っていますので、ぜひみなさんと一緒にがんばっていきたいなと思います。このあとのパネルディスカッションでも、より具体的な事例を伺いながら深めていければなと思っています。引き続きよろしくお願いしますということで、セッションはここまでで終わりにしたいと思います。

何かご相談がありましたら、ご質問でもなんでもいいので、どんなことでもお気軽に、Twitterなどでご連絡をいただけるとうれしいです。では、以上にしたいと思います。ありがとうございました。

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