2024.12.24
ビジネスが急速に変化する現代は「OODAサイクル」と親和性が高い 流通卸売業界を取り巻く5つの課題と打開策
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阿部広太郎氏(以下、阿部):(本を刊行した経緯を)バーッと話しちゃったんですけど、泰延さん、感想をぜひ教えていただけたらなと思っておりまして。
田中泰延氏(以下、田中):はいはい。もちろん、ここに来るから何度も読んで。今日ビックリしたのは、阿部さんに最初に「IZ* ONEが解散してね」と言ったら、「解散と思っているのは、それも解釈の1つ」だと。ここに来て、この本に書いてあるのはそういうことなんだと、すごくわかりましたよ。つまりIZ* ONEを「解散して終わっちゃった」と思ったら、そこまでなんですよ。
阿部:そうですよね。
田中:現実は変わらないかもしれないよ。でもそうじゃなくて、どんなかたちでも「はい、終わった」ではない解散の捉え方をすれば、僕たちの中で、IZ* ONEの12人の価値は再定義できる。
阿部:そうですよね。今は少し充電期間中というか、もしかしたら未来に復活するためのなにかのドラマを作っている時間かもしれないですもんね。
田中:はい。阿部さんとずっと何年もお付き合いしてきて思うのは、コピーライターって「言葉をうまいことこねくり回して言い換える人」だと思われているところがあると思うんですよ。
阿部:めちゃくちゃあると思います。
田中:でも、阿部さんはぜんぜんそうじゃなくて。「考え方を変える。行動を変える。その考え方と行動を変える指針に、言葉があるだけなんですよね」といつも思っていて。だから絶対に会いに来るし、顔を見るのが楽しみだし。
言葉をこねくり回して、うまいこと言うたったみたいなものでは、実は何も変らないですよね。「解釈」も、「うまいこと言い換えたらいい感じに聞こえるよ」ということじゃなくて、捉え方そのものを変えれば、未来が変わるんじゃない? ということだと思って、この本(『それ、勝手な決めつけかもよ?だれかの正解にしばられない「解釈」の練習』)を何度も読んでいました。
阿部:ありがとうございます。コピーライターという仕事って、確かに美辞麗句というか、本当に整った、美しさを持った文章を完成させていく仕事でもあるし、職人のようにずっとそれを探求されている人もいて、その人を僕はすごくリスペクトしています。
僕自身にできることは、押し付けがましくなく、断定するわけでもなく、寄り添うように、その人に向かって誠実に真っ直ぐに気持ちを書いていくこと。手紙のように書いていくことが僕の持ち味なんだなと思いました。
泰延さんにおっしゃっていただいたように、まさに捉え方を変えることができる。この本ではうまい文章を書こうとかではなく、捉え方を変えることで、こうもできるんだよということを、ずっと何ページもかけて書いている感じですね。
田中:そうね。例えば、僕たちは「水の広告を作れ」と言われるじゃないですか。こういう場なのでどこのメーカーかわからないようにラベルを取っていますけど、これはアサヒのお水ですね。
阿部:(笑)。そうですね。
田中:キャップに書いていますからね。でも「水の広告を作ってください」と言われた時に、僕らはこの水をちょっと飲んで、「じゃあ、こんな感じで」ということじゃなくて、真剣に「この水は何か」と解釈しないとダメだし。
阿部:そうですね。
田中:いろんな方面から解釈ができるじゃないですか。これが1億年前の地層から湧いてるのだとしたら、「1億年の歴史」という解釈をしないといけないし。この水を飲んだ人の心が落ち着く成分が、0.01ミリグラムでも入っていたら、じゃあ「人間の心が落ち着く」ってどういうことだろう? と解釈しないといけないし。
阿部:そうですね。そうですね。
田中:それをやらずに、こねくり回して「Water in PET bottle」と言っていたら、ダメじゃないですか。どんなコピーや、それ。
阿部:(笑)。
田中:でも、ホンマにそんなやつがおるねん。
阿部:僕も駆け出しの頃って、いかにちょっと「Water in PET bottle」のような、格好よさげなコピーを考えていました。
田中:「愛、それはLOVE」の世界よね。
阿部:そこでずっとバタ足してた感じなんですけど、深く潜ることが大事だと気づきました。地層から水が湧き出してくる場所は南アルプスなのか、どこなのかだったり、体の中の70パーセント以上が水だということだったり。
「水の捉え方はいろんな角度からできる」と考えられるようになった時に、階段を1つ上がれた感じがありました。「物事の見方を探しているんだな」と気付けると、変わりますよね。
田中:そう。見方を探すときには自分が見つけに行かないといけない。
田中:阿部さんがこの本の中にも書いていらしたけど、正解は自分の中にないんです。
阿部:うんうんうん。
田中:よく「自分探し」とかって言うけど、腕組みして「俺っていったい……」って(考えても)、そこには別に何もないから。そこには座って腕組みしている自分がいるだけなんです。
阿部:本当にそうですよ。
田中:「自分探し」は、会社のホワイトボードにみんなが「資料探し」とか書いている中で、僕がどこかでサボる時だけ書くやつですよ(笑)。
阿部:会社の行き先ボードですよね(笑)。「どこ行ったんだろう? 田中さん」となりますよね。
田中:そうそうそう(笑)。
阿部:僕も「未来編」に書いたんですけど、書き手の人は絶対に「自分の中に答えがある」って思わないほうがよくて、自分と他者、相手の間にあるんじゃないかと考えた方がいいと思うんです。
自分の中にあると思い込みすぎると、なかった時に自分をちょっと責めてしまったり、もどかしくなったりする。そうじゃなくて、相手との間にあると思うと、行動しようという思考回路に変わりますよね。
もちろん正解は探し過ぎちゃいけなくて。今回の本にも「誰かの正解に縛られない」って書いてあるんですけど、自分なりに「これでいいんだ」と思える納得感がキーワードかなと思いますね。
田中:そう。例えば僕と阿部さんがしゃべっている間も、「こうじゃない?」「あ、そうかもしれないな」という、10分前にはまったくなかった考え方が2人の共通の解釈になったりするじゃないですか。
阿部:本当にそうですよね。すべての仕事って、こうやって現場現場で話し合いながら生まれるものだったり、企画をしながら生まれてくるもので、そこからまた次にいけるんだなと思っています。
阿部:本の中で、それぞれの章を「自分・現在・過去・未来」と構成したんですけど、泰延さんの中でこの章が印象に残っているとか、特別心に感じたものとかはありましたか。
田中:実は「過去」のところなんだよね。
阿部:おお、「過去」ですか。
田中:つまり、過去の自分に対してこうだと決めつけてしまっている解釈があるから、今現在も不愉快だし、未来にもいいことがなさそうだと思う。だから、その捉え直し方がすごく大事で。
僕が阿部さんの本の中でビックリしたのは、最初の「自分の名前について考えてみよう」というところでね。
阿部:ああ、ありました。
田中:誰がどんな思いを持ってこの漢字をつけて、この呼び方にして......ということがあるんだから。まずは自分のことを解釈して、ポジティブに定義しないと、自分のことを認められないじゃないですか。それが「ああ、いい話だなぁ」と思って。
阿部:泰延さんの「泰」の字って、すごく悠々としているというか。ちょうど本の中でも、内田泰歩さんという方がいらっしゃって。
田中:はいはい、いらっしゃいましたね。
阿部:最後の「未来編」の「自身の名前を解釈する」というところで、「泰」に「満ち足りている豊かな様子」という思いがあると紹介しています。泰延さんって、すごく満ち足りている豊かな人じゃないですか。
田中:そう?
阿部:(笑)。いや、そのままだなと思ったんです。
田中:昨日、外苑前のマッサージ店に行ったら、マッサージのおばさんに「アナタ、脂肪ばっかりネ。ワタシ、脂肪ばっかり揉むネ。意味ないネ。もうちょっと痩せてから来て」と言われたよ。満ち足り過ぎはあかんと思う(笑)。
阿部:(笑)。心だったりとか、ご機嫌な姿をご自身で作られていたりとか。誰かを満たす前に、まず自分を満たしているなという印象がすごくあって。
田中:うん。自分の機嫌を取れるのは、たぶん自分だけやからね。
阿部:そうですよね。
田中:もしくはお金やからね。
阿部:そうですよね(笑)。
田中:お金を払えば僕の機嫌を取ってくれる人はいると思うんだけど、お金があまりないから、自分で自分の機嫌を取っていますね。
阿部:泰延さんの「延」の字も、なにかの延長線上だったり、巻き込んだり、人がそこに集まってくるイメージがあって。泰延さんの名付けの由来って、どういうところからなんですか?
田中:基本的に、本来漢字圏の人は、四書五経とか『春秋左氏伝』とか、漢籍から名前を取るのが当然なんですよ。「平成」とか「令和」とかって、全部そうなんですよ。中国の古典の長い文章の中から、漢字の意味を取ってこなくちゃいけなかった。
阿部:はいはいはい。
田中:でも今は、好きな漢字を好きに付けることになって、親の思いで「この漢字ならこの意味を込められるだろう」と。間違っていることも多いんですけどね。でも、まあまあ、思いがあるんだからそう否定もできないけどね。じゃあその意味はなんだろうと考えると、僕の場合は本当に中国の古典ですね。「泰」と「延」があるんですね。
俺が中学生ぐらいの時に、親父に言われたことがあって。自分の親父は本が好きな人だったんだけど、「お父さん、織田信長はさぁ……」と言ったら、「お前、何が織田信長や」と。
「お父さん、そのお父さんはおじいちゃん、そのお父さんは曾おじいちゃん、そのお父さんはひいひいおじいちゃん。その辺のこともわかってないのに、織田信長とかどうでもよくない?」と言われたことあるんですよね。
阿部:(笑)。
田中:そうだなと思って。
阿部:確かに。
田中:「直系の親族の、お父さんのお父さんのお父さん辺りから知識がゼロなのに、織田信長のことは知らなくてもええやん」と言われたんです。そうだなと思って。
阿部:自分の家族というか、家系図の二代前、三代前のこともあまりわかってないけれど、歴史では勝った将軍とか、名を残した人だけを学ぶという。本来であれば、もっと自分の家族がどんなつながりで、どうして今の自分がいるのかを知ったほうがいいですもんね。
田中:そうなんですよ。ローマ帝国? いやいやいや。この下北沢にいたら、下北沢の歴史、今の自分が立っているところで何があったかを知っておいたほうがいいよって。
阿部:それを知っておいたほうが、自分の現在地がはっきりしますね。
田中:そうなんですよね。ローマ帝国は、今の自分とあまり関係ないんですよ。
阿部:本当にそうですね。名前から自分の過去・現在・未来をたどっていくこともできると思うんですけど、僕は泰延さんがそこにピントを合わせてくださったのが、とてもうれしいです。
阿部:僕は「広太郎」という名前なんですけど、たまたま広告の「広」の字で。広告の仕事をしているのは、偶然のようで少し導かれているような、そういうものも感じています。
田中:親御さんが「甘太郎」にちなんで付けたというじゃないですか。
阿部:(笑)。そうですね。居酒屋の「甘太郎」にちなんで。
田中:(笑)。もう読んでくださっている方もいらっしゃると思うけど、この本の中ですごく好きだったのは、阿部さんの名前を「新太郎」にするという案もあったんだよね。
阿部:そうですね。両親に聞いてみて、30数歳にして初めて知ったんですけど、新聞の「新」、新しいの「新」の「新太郎」も、最終候補にあったと。その名前だったらどうなっているのかなと、思いを馳せるのがおもしろかったですね。
田中:なるほど。
阿部:名前って本当におもしろいと思っていて、一人ひとりに名前の物語があるし、名前を旅してみることが、自分の受け取ったものを解釈する練習になるんじゃないかなと思って、本の中に書かせてもらいました。
田中:阿部さんが、生徒のみなさんに向かって「自分の名前をちゃんと知って、文字ごとに解釈してみよう」というワークショップをやると、そこからみんな目が覚めるように考えるようになって。今の自分が立っているところを、どう解釈しようかなって考え始める姿がおもしろかったですね。
阿部:こんなにも身近で、ふだん自分の目の触れているもの、毎日当たり前にあるものでも、ちょっと捉え方を変えると自分の中の意識が変わるんだなと。そう気付いてもらえる瞬間があって、僕自身もうれしかったですね。
田中:「自分の名前の意味から考えてみようよ」と言うと、みんなハッとするんじゃない?
阿部:泰延さんが、お父さんや家族にどういう歴史があったのかを知らなかったと気付くのと同じで、名前も「なんでそうだったのかな?」って、意外に考えたことがなかったんだなと思いますね。
田中:そうでしょう。本当にローマ帝国が生活と関係しているのは、ヤマザキマリさんと塩野七生さんくらいでしょ。
阿部:(笑)。そうですね。
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