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内科医が話すストレスと自律神経の話(全3記事)

自律神経が狂いやすいのは、多忙すぎる“精密機器”だから 人間の脳に搭載された「全自動おまかせシステム」

SNSを通して医療の情報を発信するプロジェクト「SNS医療のカタチ」。YouTubeで開催された一般市民公開講座「SNS医療のカタチONLINE」の第10回目となる今回のテーマは、「内科医が話すストレスと自律神経の話」。ゲストに内科医の國松淳和氏を迎え、SNS医療のカタチメンバーとのトークセッションが行われました。本記事では、人間の体における自律神経の仕組みを國松氏が解説しました。

5人の医師によるトークセッション

ヤンデル先生(以下、ヤンデル):みなさん、こんばんは。『SNS医療のカタチONLINE』記念すべき第10回でございます。それではまず、SNS医療のカタチのオリジナルスリー(メンバー)の自己紹介から。けいゆう先生、どうぞ。

けいゆう先生(以下、けいゆう):どうも、けいゆうです。よろしくお願いします。

ヤンデル:では次に堀向先生、どうぞ。

ほむほむ先生(以下、ほむほむ):小児科医の堀向です。よろしくお願いします。

ヤンデル:最後、おーつか先生どうぞ。

おーつか先生(以下、おーつか):おーつかです。(イベントと同時刻に放送中の)『半沢直樹』を見ないでこっちに来てます。よろしく。

(一同笑)

ヤンデル:そうだね。今日、裏番組が豪華だからね。さっそく参りましょう。第10回目にして、ついに『SNS医療のカタチONLINE』に内科医をお呼びすることになりました。南多摩病院の國松先生です。どうぞよろしくお願いいたします。

國松淳和氏(以下、國松):どうも、みなさんこんばんは。よろしくお願いします。

ヤンデル:お願いします! 

國松:内科医の國松です。今日はストレスと自律神経の話をします。今日の話は聞き終わった後に、ハッとするよりもモヤっとする感じで終わるかもしれませんが、それもあえて意図的なところかもしれません。でも、ちょっと聞いてみてください。

「自律神経の不具合」は「精神的な問題」ではない

まず、私のバックグラウンドをちょっと説明しておきます。私は東京都の総合病院で内科医をしています。所属は総合内科・膠原病内科で、それぞれの専門医を持っています。

毎日診療をしていまして、あえて人と区別する特徴があるとすれば、留学や教育で臨床を離れたことがないです。自分でも言っていますが、本当にゴリゴリの臨床家/臨床屋を自認しております。

その他には、医師向けの本を人よりもちょっと多めに書いておりまして。ただ、日常業務と本の執筆以外にやってきたこととして、不明熱(38.5度以上が3週間以上続く、原因不明の発熱)といった診断不明の病態に取り組んできました。

何周かして「治療が重要だ」とわかって、さらに何周かして「診断と治療を一緒にやればいい」ということに気づきました。そして「小児と成人内科を分ける意味もあまりない」と気づいて、「心と体を分けなくていい」「精神科も内科もあまり変わらない」と気づきました。

そう言うとみなさんは、「おお、すごい!」と思うかもしれませんが、体の病気の診断を期待して私のところにやってきても、実はバチィっと診断を下せることは多くなくて。私自身は、「自律神経の不具合です」とか「ストレスが処理されてないんですね」と話すことがかなり多いです。

でも、それは「あなたのは精神的な問題です」と言っているつもりはぜんぜんありません。私もまた、誤解を招いているんだと思います。

人間の「すべて」を司る自律神経

ところでみなさん、医者から「自律神経の失調ですね」「ストレスですねそれは」と言われたことはありませんか? そこで今日は、「自律神経やストレスが何か」ということをお話ししたいと思います。

参考にしたのは『やさしい自律神経生理学―命を支える仕組み』という本なんですが、これは一応医療者向けかなと思います。一般の方が読むとけっこう難しいかもしれませんが、とてもいい本です。

やさしい自律神経生理学―命を支える仕組み

“ちまた医師”と書いてしまいましたが、両極端な医者をここに表示しています。1人はちょっと雑な先生で、ある患者さんを見た時に「(病気らしい病気はないし、神経質そうな患者さんだし、よくわかんないから)自律神経失調症でしょうね」と言う先生。

もう一方の絵に描いたようなスマイルのちゃんとした先生は、「自律神経失調症なんて病気はない!(ちゃんと慎重に診断をしないとだめだ!)」と、Twitterとかで声高に叫ぶような先生ですね。

この両極を俯瞰して、私はどう考えているか。私なりの一番いい言い方をすると、「すべての症状は自律神経が関与している」と、こうまとまると思います。

自律神経の役割ですが、心臓を動かす・整える、呼吸を整える、体温を整える、汗の量を調節する、排尿の調節をする、胃腸の動きを調節する、痛みを調節する、心配・不安・焦り・興奮・恐怖といった情動の反応の調節をしたりします。とにかく書ききれないんですが、人間のすべての活動の調節をしています。

自律神経とは、脳が体を操るための“糸”のこと

そうなんです、人間は“操り人形”だったんです。この場合、操る人は人間の脳のことです。そして操られる人形は私たち、あるいは私たちの臓器。そして、操る人と人形をつないでいる“糸”が自律神経なんですね。

これを模式的に表します。真ん中が中枢で、操り人形を操る人。実はそれも黒幕がいまして、視床下部という総司令室があります。操り人形ですから、(臓器を)糸で結んでいる。この糸が自律神経です。

先ほど“総司令室”と呼んだ、視床下部を説明します。(スライドの)右側がちょっと難しい挿絵になっていますが、真ん中のところですね。ここは本当に、生きるための総本部で、すべての総司令室です。人間のほぼ全部の活動を請け負います。

なのに実際には脳全体のたった0.3パーセント、たった6ミリで4グラムしかない。こんなちっちゃなところが、私たちを支配しているんですね。

多忙な人間の脳が採用する“全自動おまかせシステム”

ただ、視床下部という部署があまりに多忙すぎるので、大事なところはある程度は自動化させておく必要があるんですが、実は「ある程度」どころではありません。大脳というのは、本当に信用できない。人は計算を間違え、結婚相手や職場を間違え、約束を破る。「後でやる」は絶対に後でやりません。人の意志や思考なんて、ぜんぜんあてにならないです。

だから「大切なことは全面的に自動調節させておこう」と考えるほうが、信用できるんです。それを担うのが、中枢から臓器をつなぐにょろ(~)の部分ですね。この、にょろの部分が自律神経というわけです。

人体の精緻なオートメーション装置、すばらしいです。これがまさに、自律神経のシステムになっています。とにかく脳は多忙なんです。

みなさんが「自分で自分の体を動かしてる」なんて思ったら大間違いです。自分で動かせるほど単純でもありませんし、もともと精緻なオートメーションシステムがあるので、愚かなミスをするお前(大脳皮質)じゃ信用ならないんです。だから、“おまかせシステム”を全面的に採用しています。

とにかく(自律神経を)たまには休ませてやってください。精密なんだから、それはすぐ狂いますよ。「いろいろ忙しいんだから、お前(大脳皮質)ごときの都合なんかいちいち細かく聞いてられないよ。優先順位ってもんがあるんだよ」という気分になってきます。

(病院の)先生から「自律神経の異常ですね」と言われた時にぜひ思い出してほしいのは、どんな症状でも自律神経が関与しているということ。「自律神経の調節が悪い=精神の異常」ではないんです。

ここまで「精神」という言葉を一度も使わずに自律神経の説明をしていますが、(自律神経の疾患と精神は)イコールではないということですね。これが自律神経の説明になります。

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