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「『ぷよぷよを手掛けた米光氏が語る、おもしろい環境で働き続ける秘訣とは』(全4記事)

「もしタイムマシンを使えるなら…」 ぷよぷよを生んだゲームクリエイターの大ヒット作を生む考え方

クリエイターヒストリアは、ゲーム業界でお仕事をしているデザイナー、プランナー、マーケターなどのクリエイター向けに、キャリアパスをテーマに実施するセミナーイベントです。業界で成功を納めているクリエイターはどのようなキャリアを歩んで行ったんだろう……。今に至るまでの努力や道のり、人生の転機等その歴史に迫っていきます。 第一回は、誰もが一度は遊んだことがあるあの「ぷよぷよ」を手掛け、デジタルゲーム、アナログゲームなど幅広くデザインする、池袋コミュニティ・カレッジ「表現道場」の道場主でもある、米光 一成(よねみつかずなり)氏をゲストにお迎えし、3記事目では「もし過去に戻れるなら?」という視点から、ゲーム制作への価値観を紐解きます。

ぷよぷよの原作者に聞く「もしタイムマシンがあったら」

宮田大介氏(以下、宮田):駆け足で長い歴史をわーっと聞いてきたのですが、ここから質問タイムに移っていこうと思います!

「もしタイムマシンがあって、歴史を一つやり直せるとしたらどれをやり直しますか?」という質問です。そもそも戻るのか、という問題もありますけど…。

米光一成氏(以下、米光):あー。ゲームを作ってきた歴史の中で戻りたいという感情はあまりありませんね。

宮田:戻ったとしても同じルートを辿りますか?

米光:そんなことはない(笑)。戻ったら戻ったで、「ここ違うふうにしようかな」というのはあるのだけど……。

うーん、もうちょっと年取ったら戻りたいと思うかもしれないけど、今はまだやり直せる。まだ新しいゲームを今作れる。だから、今作るので忙しいから、戻ってやりたいことはそんなにない。

宮田:ああ、なるほど。でも、それはけっこう良い考え方ですよね。「いつでもここから原点チャレンジできるから、別に過去に戻らなくても良いよね」という。

米光:国を動かす、すごいプロジェクトをやっている訳ではないので「あの時に戻ってやり直せば……!」とかではないので今からやり直す。

宮田:それはすごく良い話ですね。若い人も聞いてらっしゃると思うのですが、もう年取っちゃったから、とか関係なく「今からやれば良いじゃん」と。

米光:なんか、あのゲームが出たから、というのがあまりないのですよね。企画していて、「しまった! もっと早く作れば良かった」とかなくて、出て良かった、と感じることが多い。

世に出て、おもしろくなく作っていたらちょっと腹立つのはありますが。このタネで、こんなおもしろくないの作りやがって、今出したら真似と思われるし、つまらないやつの真似しているみたいで、それはなんか嫌なんだけど、それも今の所はあまりないかな。もっと面白いものを作ったら真似に見えなくなりますし。

米光:あ、一個だけあるとしたら、SCRAPさんが出す演劇とゲームを合わせた活動ゲーム。僕も街中を歩きながら進んでいくことをちょっとやっていたのですけど、そこの部分もっとちゃんとやっていればSCRAPさんみたいなすごい作品作れたかな、と思うので、未来の僕が「もっとちゃんとやれや」と言っているかな……と思ったのですが、今改めて話していて思ったのは、大規模(な取り組み)に興味ないので、まああれはあれで良かったのだな、と再認識ました(笑)。

宮田:なるほど(笑)。常に前に、前にですね。

米光:そういうとカッコ良さげですね。ただ単に面白いゲームが好きで作りたい感じなのですけどね。

宮田:すごく勇気をもらえる良い話だと思いますよ!

大事なのは「自分が面白いと思えるゲームかどうか」

宮田:では、今までの話でだいぶ答えた感はあると思うのですが、「先人クリエイターの話を聞いてキャリアに活かそう」というテーマでやっているので、今聴いていただいている方にメッセージをお願いしたいです。

「振り返った時に後悔しないクリエイター人生を歩むには。」

宮田:ちょっと重い質問ではあるのですが(笑)、先ほどの話を聞く限り米光さんは特に後悔もないようですし、常に面白い場所を目指している印象があります。最初にこの業界入った時も「これからゲーム業界がくる!」というよりは自分にとって一番面白そうな所へ飛び込んだ感じなので……。

米光:「クリエイター的に後悔しない」という意味だと、自分がその時作りたいものを作ると良い。もうちょっと修行してから、と思うと修行期間が短ければ良いけど、実らないと後悔しちゃうので、ポイントポイントでお手伝いするにしても、自分が面白いと思えるゲームなのかは大きい。

参加したことにより自分が面白くできる、パワーを与えられると思うと後悔はしないと思う。

宮田:自分が面白いと思えないものだと後悔しちゃう?

米光:「面白くないもの作っちゃった」と後悔すると思います。結果的に面白くなくなった、というのはあると思いますが、参加を決めた段階で面白くしようと思っているかは大事。

僕も会社に入っていた時は、できるだけそういう風にしようと思っていました。会社から言われて、それができない時もあったけど「これか……」の中でどう面白くしようか考えないと、後悔しちゃう。逆に枠があって、その中でどれだけ面白くしようか考えれば後悔しないと思います。

宮田:すごくコンディションが悪かったり、環境が悪かったりすると、修行中だからとか、環境が悪いから面白いもの作れないのですよ、と言って逃げていたらいつの間にかそのまま人生終わってしまうというか……。

米光:そう。「諦めて、環境のせいだからできていないのだ」と言うよりは、その環境から抜け出す努力をした方が良い気がするのだよな……。

宮田:もしくはその環境を面白くしちゃうとか……。

米光:ああ、そうそう、もちろん。自分が少しでもその環境を面白くしようとするスタンスも良いと思います。

宮田:結果的に環境って変えられない。移動することはできるけど、ずっと青い芝生を追っていても…。

米光:そうですね。良い会社だったら改善はウェルカムだと思うので、あまり腐らずに環境を変えていくんだって考えて行動すると、後悔しないですむと思います。

宮田:全力で面白い状況に…今の状況を変えるか、環境を変えるか。面白くないのはしょうがないよね、と受け入れてしまうと将来後悔する所が出てきちゃう感じですかね。けっこうそこら辺は僕もすごく共感できる所です。オルトプラスが好きなことを仕事にしよう、というキャッチコピーでやっている会社でもあるので…努力が好きなことなので、いくらでも頑張れる。

米光:「よく寝ずにやってるねー」と言われるのですが、寝てます。好きなことなので、いつまでもやってたり、すきまの時間を見つけてはやってたりする。好きなことが仕事になっていくのはすごく楽。

宮田:結論(笑)。自分が面白い、楽しいと思える場所を選んでいくのは、面白い場所に居続けるためのコツかもしれませんね。

米光:先のことを少し見ておくクセをつけるのは良いかもしれません。大学で教えてると、学生が中学の時に好きだったゲームで止まってるパターンもあって。どんどん世界は進んでいっているのに! 自分が中学のときに夢中になったものを、いま、作るんだってことを意識して、作ってるものが完成するのは未来なんだっていうことを考えて、動く。過去の縮小バージョンにしないようにするのが大切です。

宮田:それはすごく大事なことかもしれませんね。それこそ「BAROQUE」に感銘を受けてゲーム業界に入ってきた子がいたら、自分が「BAROQUE」を作るのではなく、10年後に同じようなインパクトを与えられる作品を作ることを考えた方が良い、という話ですかね。僕も勉強になる話を沢山聞かせていただきました。一旦ヒストリアはここまでですかね。

面白さをちゃんとわかってくれた人と組む大切さ

それでは視聴者からの質問で……「米光さんのアナログゲームは他のゲームに比べてTVで取り上げられていると思います。狙っていますか? そのコツはありますか?」と質問が来ています。

米光:狙ってはいないです。「はぁって言うゲーム」がテレビやYouTubeであんなにたくさん遊んでもらえるとは考えてなかった。いろいろなお題に合わせて「はぁ」とか「好き」とか言うゲームなので、ファンの人も嬉しいし、シンプルですぐ分かるゲームなので、たくさん取り上げてもらった。でも、作ってるときにはぜんぜん狙ってないです。

僕が、シンプルなルールで、簡単に遊べて、みんなが面白いゲームが好きなので、それがたまたまテレビなどにマッチしたんだと思います。

宮田:なるほどですね。「変顔マッチ」も多分すごくTV受けしますよね。軽く……どういうゲームなのか紹介してもらいたいです。

米光:「変な顔が描いてあるかるた」みたいなカードがあって、それを並べるのですが、「変顔マッチ!」と親が発して、残りの人は該当する変顔を演じる。それで、どの変顔をみんながしているのか当てようとする。なので、いろいろな人の変顔が見られます。

宮田:人を選ばない、子供でもできるシンプルさもあるので、すごくTVに取り上げられやすい、というのはあるのでしょうね。

米光:そうですね。もうちょっとルールが複雑なゲームだとあっという間にTVに取り上げられなくなるのですよ。でも、そういうゲームもそれはそれで作っているので、そういったものが面白いと思ってもらえる人の間で広まっていくと良いと思います。

宮田:なるほどなるほど。沢山作られていますものね。その中の一部が沢山取り上げられている、っていうのかもしれませんね。

米光:「変顔マッチ」はダイソーでたった百円(税別)で売ってるので、みなさん30個ぐらい買って配ってください(笑)。

宮田:30個(笑)。あ、でも2セット買えばzoomでもできますね(笑)。

お、質問わさわさ来ましたね。「少人数のプロジェクトは、手伝ってくれる人を探すのが特に難しいと思います。米光さんはどうやって意識して集めているのでしょうか?」とのことです。

米光:難しいですよねー。アナログゲームを作るときは、最初の段階ではひとりで作ってます。メンバー集めない。むずかしいことはやらない。あきらめてひとりでやる(笑)。

絵なんか描けないんで、すごい苦労して描いたり。ある程度まで作ってプロトタイプまでもっていって、遊んでもらって、面白いね、と言ってくれた人の中に絵を描ける人がいたらチャンス。面白さをちゃんとわかってくれた人と組むと、めちゃくちゃやりやすい。

だから、できるところまでひとりでやっちゃうのがいい。できるところまでやって「面白いのに、この絵じゃもったいない」って言われるところまでできたら「じゃあ、描いてよ」って言えちゃうんで。

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