イベントプラットフォーマー登場で、何がどう変わった?

小島英揮氏(以下、小島):じゃあ、いくつかお題を用意して、ここからお話をしていきたいなと思います。まずは「イベントプラットフォーマーが出た後のビフォーアフター」ということで、こんなに変わったよ、という話をですね。

(スライドに表示された動くトーマスに関して)トーマスはちょっとした小道具なので、あんまりここはいいですよ。

(会場笑)

藤田祐司氏(以下、藤田):動くんだ! びっくりしました。

小島:こんなに変わるぞ、みたいな雰囲気でございますね。

イベントプラットフォームが登場する前・後ということで……あ、そうだ。今日いらっしゃっている人の中で、自分はどっちかというとイベントを企業側で企画したり、運営したり発注する側だ(という人)。

(会場挙手)

はい。じゃあ、私はそういう人をサポートする側、代理店とか(という人)。

(会場挙手)

もっぱら参加者です(という人)。

(会場挙手)

はい。なるほど。だいたいわかりました。一番はじめに手を上げた「イベントを作る側、プロデュースする側」の人はだいたい僕とペルソナが合っていますね。

僕は30年ぐらいBtoBのマーケティングをやっていて、オフラインのイベントってリードジェネレーションがすごく大事なんですよね。(スライドを指して)これが2010年以前の僕ですなんですけど、もうカオスですよ、カオス。(注:当時のイメージ画像。ムンクの『叫び』)

(会場笑)

「イベントやるぞ」と言ったら、もう「ヒャー」みたいな。

(会場笑)

「絶対に失敗してはいけない」“CGIフォーム”時代

小島:お金だけじゃなくて、まず受付が大変だったんですよね。これは世代がばれちゃうかもしれないけれども、申し込みのためにCGIで登録フォームを書くんです。自分で書いてもあれなんで、代理店の方にお願いするじゃないですか。そうすると、前のイベントと同じCGIのはずなんですけど、CGI作成費に30万取るんですよね。

小笹文氏(以下、小笹):今みたいにGoogleフォームとかないですもんね。

小島:ない。

藤田:もう頼むしかない。

小島:頼むしかない。さすがにFAXじゃないだろうと思って、Webを作るんですけれども、作ってもらった人がいる。「これ、同じCGIですよね?」「いや、違うんです」と。「本当ですか?」とか言いながら。

(一同笑)

さらに、「なにかあったらいけませんので、電話を引いて事務局機能を持ちます」と。「回線を引きます」と。

藤田:プラス何十万円。

小笹:「03」を引く。「0120」を引くのも高いですからね。

小島:高いです。それで、「そこに人が1人張り付いています」「本当に!?」みたいな。だから1個やる時のオーバーヘッドがすごかったんですよ。だから、イベントを1回やったんだからこうやってくれよみたいに、結果をすごく求められると。

そうすると、今の硬直している日本と一緒で、「絶対失敗してはいけない」みたいな。軽くトライができなくなるんですよね。

藤田:たしかに。

小島:なので、つまらないイベントになるんですよ。わかります? バントでコツコツやっていくみたいな。

藤田:置きにいって、置きにいってみたいな。

小島:置きにいって、置きにいって。絶対失敗しちゃいけない。もうサラリーマンは失敗すると後がね。この頃はもしかしたら、僕も終身雇用の中にいたかもしれないので、「もうちょっといろんなおもしろいことをやりたい」とか、ぜんぜん思わなかった。とにかく確実にやろうみたいな。もうカオス。

藤田:はー。

無料でイベント申し込みフォームが使えるという革命

小島:この頃やったイベントであんまりおもしろかった思い出がないです。なんか大変。とにかく大変。回数は今よりぜんぜん少ないし、フォローだっていいかげんなもんですよ。名刺だけいただいて、営業に好きな名刺を渡して、本当にフォローしているかどうかトラックできないという暗黒のような……本当に大変だった。

これが変わったのは本当に2011年、2012年あたりです。2社を含め、いろいろなプラットフォームができて、イベントを作ることが本当にぜんぜん問題じゃなくなったんですよね。

イベレジさんとかPeatixさんが出た時に、「これ、これ!」と思ったのは、毎回CGIを作ったのはやっぱり変だろうと。初めからフォームがあってひな形があって、ちょっとカスタムしたら再利用できる。2社がすごいのは、課金のイベントじゃなければ、なんならタダでイベントが作れると。

ちなみにお二人ともマネタイズの計画としてはフリーでイベントを作らせるというのは、躊躇なくやった感じなんですか? 

藤田:うちは……。あ、どうぞ。どうぞ。

(会場笑)

小笹:うちはそうです。無料のイベントは誰でも無料で作れるというように、最初のイベレジのキャッチコピーからそうでした。

小島:特にBtoBだと有償イベントって実はあんまりなくて、お客様を呼んで来てもらうイベントのことが多いので、それだとなかなかマネタイズが大変だったんじゃないかなとなんとなく、今に来て思います。

小笹:そうなんですよ。

小島:そうなんですか(笑)。

小笹:有料のチケット販売のところは販売手数料をいただいているモデルなので、そこのところでがんばろうと思っていたら、いろんなサービスも出てきた。Peatixさんとかはうちよりもぜんぜん安いし(笑)。

(会場笑)

どうすんだよ、と。

藤田:ここは大事なところなので。

小島:大事な、大事な。ここはつぶやいても大丈夫です?

藤田:つぶやいても大丈夫です。 

小笹:これは事実なんでね。どうすんべ、みたいな。

販売手数料モデルに加えて作ったビジネスの柱

小島:僕が「おお、これだ」と思ったイベントフォームを作る仕組みをどこに持っていくかと思ったら、じゃあ企業にもっと使ってもらおうとか。企業に……。

小笹:そうですね。有料のチケットの手数料収入である程度リクープラインに持っていくというところは時間がかかるなというのは、もともと思ってはいましたと。ですけど、うちの場合はどちらかというと、もう1本の柱を作ろうというイメージですね。

小島:じゃあ、それがぐるぐる回るだけじゃなくて、イベントにまつわるところで、ビジネスの柱をもう1つ作ろうと。

小笹:です、です。イメージ的にはいわゆるエンタープライズ版、うちで呼んでいるのはプレミアム機能というのが、機能ごとに全部有料課金になっているんですよ。

例えば、「この個人情報に同意させるというチェックボタンを、自動的に付けるんだったらおいくらですよ、チャリン」みたいな。そういう機能課金になっているんです。

小島:あと、マルチトラックとかありますよね。

小笹:そうですね。

小島:複数のトラックがあって、これを選ぶとこっちを選ばないようにするとか。

小笹:とか、請求書払いの対応ができるようにするとか。そういうのが細かくメニュー化されていて、それの積み重ねでお支払いいただくモデルなんです。そっちのほうは短期的に売り上げをキープできるだろうなと。

小島:それがベースになって、イベレジを使うイベントが増えていって、その中で有料イベントが増えてくると、そちらの収入も見込めると。

小笹:そうです、そうです。イベントってやっぱり繰り返し型なので、どんどんそこは座布団になっていくだろうなというところがありました。手前のところはプレミアム機能というところで、きちんと収入源として……今ももちろん、中心の柱で、そこをまずはお金に換えていく。

ユーザーが集まっていけば、だんだん有料のイベントとかも自然に、オーガニックに作られるようになっていくはずなので、そこで今度は販売手数料のところがある程度のボリュームになっていくだろうというもくろみでやっています。

小島:なるほど。今のところそのもくろみ通りになっているということですよね? 

小笹:今のところは、そうですね。結局チケットの販売手数料ってやっぱり積み重ねの話なので、当然そうなっちゃうんですよね。そこはある程度時間は必要だなと思っていました。

「チケッティング機能」は機能の一部にすぎない

小島:なるほどね。一方Peatixって、もうそこ1本というビジネスなんですか? 

藤田:いや、実はそうでもなくてですね。うちは無料で使っていただくことなんてまったく問題ではないんです。

なぜかというと、Peatixを使ってイベントに行っていただくと、ユーザーの方が増えますよね。その結果「Peatixを使ってくださる方たちがどういうイベントに行った」というデータがPeatixにどんどんたまっていきます。そこにおいては有料のイベントだとか無料のイベントだとかはぜんぜん関係がない。

小島:なるほど。データがとれるようになるということですよね。

藤田:そうですね。これを言うといろいろあるんですけど、いわゆるチケットの手数料で商売していこうというのは、まず薄いし、そこで勝負していってもそんなにおもしろくないよねという。

小島:ベースとしてはあるけれども。

藤田:そうですね。そこっていわゆるチケット業界と言われるところなので、あんまり言うとあれなので微妙なんですけどもね。要はチケット業界のビジネスをやろうとは思っていないと。

小島:チケッティングに踏み込んだほうが楽だから、入れてはいるけれども。

藤田:チケッティング機能というのは一部の機能であって、そのサービスではないというのが、我々の考え方。

小笹:結局チケットの有料の手数料って、世の中的にはそれだけに限らず、そこの販売手数料って今後限りなく0に近づいていくわけで、そこじゃないんですね。

藤田:そこじゃないという感じです。ある時、かなり手数料を下げたりとかもしていたんですけれども、多くのユーザーの方に使っていただくことによって、いわゆる送客力、Peatixを使うと人が集まるという状態がどんどん生まれていきましたと。

そうするとよく……アマゾンのサイクルみたいなのもあるかと思います。イベントが集まってくる、イベントが集まってくるとユーザーが集まってきて、というサイクルが回り始める。

どんどんコミュニティが増えていくと、例えば企業の中でもパパ・ママコミュニティにリーチをしたい、ちょっと告知をしたいんだという、「とあるコミュニティと接触がしたい」という企業が出てきたりする。

あとはイベントをやってらっしゃる方でも、もっと告知を強化したいみたいなニーズというのは出てくるので、そのあたりが1つビジネスとして立ち上がっていくと。

小島:なるほど。なるほど。

属性を超えて集客したいとき、「イベレジ・Peatix共にページがある」のが理想

藤田:そこが今、どんどん立ち上がってきているという感じです。結果、無料のイベントウェルカムで、ある意味どんなイベントでも利用してほしい。

小島:それって今のAI、機械学習と同じで、データ量が多ければ多いほど、正解に近づきやすいという話ですよね。

藤田:そうですね。なので、究極でいうと、イベレジさんには迷惑をかけているところかもしれないんですけれども、イベレジさんで集客をしているイベントでも、実はPeatixでもイベントページを立てるというのがありましてですね。

小笹:そうなんですよ(笑)。

藤田:けっこう大胆な。

小島:ちなみに今日イベレジで申し込みをされた方は、どれぐらい? 

(会場挙手)

小島:はい。Peatixで申し込みをされた方? 

(会場挙手)

藤田:ありがとうございます。

小笹:半々ぐらいかな!? (笑)。

(会場笑)

藤田:それぐらいですね。

小島:これがぜんぜん属性とかが違っておもしろいですよね。でも、ちょっと越境して違う層にリーチしようと思ったら、ページはたくさんあったほうがいいってことですよね。

藤田:そうですね。あったほうがいいということです。イベレジさんの機能がいろいろあってフィットするというイベントの場合、「でももっと集客したいよ」という時にPeatixに情報を載せていただいて、チケットを買おうとすると、実はイベレジさんに飛んでいくというような機能があります。

小笹:あるんですよ。

藤田:そういうようなところで。

小島:連動できるなという。

藤田:大型のカンファレンスとかで、両方使って集客されているところというのはあったりとかします。

小笹:Peatixさんからタグをもらって、イベレジに埋め込むとかね。

藤田:そうですね。すみません、そのあたりはお手数をおかけしてると思います。

小笹:やってますよね。

課金システムの拡充で“イベントの歩留まり”を解消

小島:だいたいプラットフォーム自体が集客のところをいろいろ面倒を見てくれるようになると、イベントオーガナイザーからするとお任せするところがもっと増えていく。そうするとstickiness(粘着性)が上がるというか、継続して使うようになるんじゃないかなと思うんですよね。

藤田:そうですよね。

小島:それで、集客のところだけじゃなくて、最近のイベントプラットフォームを使うと、いくつか自動的についてくる機能として、課金まわりがけっこう大きいなと思っています。

昔はお金をイベントでお預かりして、請求書を発行するのってすごく大変だったんですよね。だからお金を取るのを諦めているところがすごく多かったんだけれども、これができるようになった。

あとは、会社じゃなくて本当にボランティアで、みんなでやろうとした時に、実費くらいは回収できないと、サスティナブルじゃない。そういうマイクロに課金して運用費用をまかなうというのができるようになった。

僕はこれ、けっこう革命的じゃないかなと思います。それは感じるところはあります? 

藤田:そうですね。イベントをやってて、初期の頃はよくありました。特にNPOの人たちとかって無料でイベントをやられるケースがけっこう多かったんですよ。そうすると歩留まりの問題で、せっかくいいイベントをやっているのに当日ぜんぜん参加しないというのもありました。

これはもう有料・無料の話になってきますけれど、やっぱり500円でも1,000円でも有料にすることによって、お客さんが来てくれる。

恐れとしては、500円取っちゃうと申し込みが来ないんじゃないかというのがあるんだけれども、こうやって簡単に集金することができる機能で、歩留まりを調整するために使える。結果としては参加者の数がどんどん増えていくということが起きています。

やっぱりこういう我々みたいなサービスが提供されることによって、コミュニティ活動とかイベント活動というのは格段にしやすくなっているんだろうなという感じはありますね。

小島:なるほどね。確かにそうですよね。イベントに限らずスマホで物を買うというのが普通になってきているので、そういう意味でもだいぶハードルは下がってきています。

藤田:そうです。

小島:むしろお金を振り込んでくれるほうが大変で、そこで払うほうが絶対にいい。最近だったら、Apple PayとかGoogle Pay連携でいちいちカード情報を入れなくても、一発で課金できるのがけっこう大きいような気がしますよね。

“イベントの受付”問題はスマホ×チェックイン機能で解決

小島:さらにはチェックイン。これも便利です。だいたい紙を出してチェックをするのは、変な話なんですよ。少なくとも、もともとの申し込みデータはエクセルになっているんですよ。だけれど、紙に出してチェックしてまた再入力するというプロセスが普通にあったんです。

今はもうチェックインすれば、自動的に誰が来て誰が来なかったかが瞬時にわかる。すごくいいですよね。

小笹:あと今の世の中からすると、受付に個人情報のリストがあって、それを来場者の人たちが見れるという状態ってどうよというのもありますよね。

藤田:どうよ、ですよね。

小笹:あと、やっぱり受付に置く人数。イベントを運営している側もイベントの仲間じゃないですか。でも、私は20代の時にずっとライブハウスで、その時付き合っていた彼氏の……。

小島:その情報、いります? 

(会場笑)

藤田:それは発信してOKですか?(笑)

小笹:過去の話なので別に大丈夫です(笑)。彼氏がバンドマンで、1ヶ月に一度ライブをやるわけですよ。そのライブハウスの受付嬢をずっとやらされていたわけですよ。彼氏がライブをやってるのに、私はずっと受付でお金を集めて招待客のチェックをしてとかやってると、私は何なんだと。

藤田:それで別れたんですか? 

小笹:(笑)。

小島:あの時イベレジがあれば(笑)。

小笹:そこって結局、お金の管理をずっとしていないといけないと。

小島:大変です。

小笹:その人も仲間のはずなのに、コンテンツを見れないんですよ。たぶん今日もやってくださっている方がいると思うんです。それが一昔前はリストのチェックだったり、いろいろコミュニケーションがあった。

要は対応時間が長いので、いっぱい人を置かなきゃいけなかったんですけど、今って200~300人ぐらいだったら1人でいけますよね。たぶん藤田さんもそうだと思います。

藤田:本当にできる。あと、参加してくださる方が来て並んで会場に入るまでに15分は待たされるという体験って、入り口から最悪です。そこが楽になるのはすごく重要なんじゃないかなと。

小島:本当にそうなんですよね。スマホだけたくさん用意しておけば、いくらでも受付を並列処理できちゃう。

小笹:究極、受付の人を置かないでセルフでできますからね。

小島:これをやると後ろでイベントをオーガナイズしている側も、何人ぐらい来ているかというのを、「今、何人来ました?」というのをやらなくても(よくなる)。忙しい受付に「何人来ますか?」とチェックするのも、ちょっとアレですよね。

小笹:「○○さん来ました?」みたいな、あるじゃないですか。

小島:データがあるってすばらしいんですよ。

藤田:今は見りゃわかるという状態ですもんね。

申し込み・来場者のデータ化で、リアルタイムでPDCAが回せるようになった

小笹:今イベレジだと、誰かが来た時にその営業担当の人にメールで通知を送る機能もあります。BtoBのイベントだと、だいたいその営業の人たちが受付の前でお迎え体制で待っているわけですよ。見たことありますよね? あれ、運営側にしてみると非常に邪魔です。

(会場笑)

邪魔って言っちゃった。

小島:大切なお客様なんですよ(笑)。

小笹:あ、大切なお客様です。はい。

藤田:そこはちょっとまるめて。

小笹:お客様の導線を考えると、ちょっと場所を考えていただきたいんです。

藤田:しかも、待ってる時間ももったいないですしね。

小笹:そうなんですよ。それで「○○、来た?」って運営を円滑に回すうえではすごく大事です。

小島:本当に大事です。

小笹:だから、それをテクノロジーでカバーできるというのは、今はだいぶ変わってきているのかなと。

小島:あと特にBtoBのイベントなんかそうで、「で、どうなったの?」みたいな話を社内でレポートを書いたり、自分もフォローアップしなきゃいけないので、そういうのはダッシュボードがすごい役に立つ。

小笹:そうですね。

小島:これはまさに、イベレジさんにダッシュボードがあります。

小笹:イベレジのダッシュボードだと、申し込み受付をしている最中とかでも、毎日毎日これぐらいの申込数が入っているよというデータが見れます。あとアンケートでとってる、お客様の層ってこういう人たちだよという機能が、いちいちデータをダウンロードしてグラフ化して、社内のレポート用に作る手間は一切不要です。キャプチャーすればいいし、なんなら管理画面を共有すれば上司の人もすぐ見れます。

これだと、毎日チューニングできるんですよね。結局イベントって、来てもらいたい人にちゃんと来てもらわないと意味がないので、どれだけ目標の人数がいても、その層がぜんぜん違ってたら意味がないわけじゃないですか。それを日々見ながら、「経営者層の人たちがターゲット通り来ているね」というところを見ながら、例えば次の集客の施策とかを回していけるというところでいくと、このダッシュボードはわりと主催者さんもちゃんと見てらっしゃるなと思っています。

藤田:これ、すごく大事です。昔はそれこそ小島さんが……。

小島:「ヒャー」ってなってたところ。

チケット業界のスタンダードは「データ=有料」

藤田:その頃って、例えばチケット会社とかにデータを頼むと、引っ張り出すのも一大事でした。お金を払わないと出せないとか。

小島:誰のイベントなんだって思う時、ありましたね。

(会場笑)

藤田:そうですよね。チケット業界でいうと、「データを渡しません」ということがあったりしていた頃から、うちもフォームでデータをとれたりします。主催者が自分たちの情報をいつでも自由に引き出せるというのは、実はかなり大きい変化なんじゃないかなと思いますね。

小笹:すごく大きくて、例えば“なんとかぴあ“さんとか。

(会場笑)

藤田:ほぼほぼ言ってますよ(笑)。

小笹:事実としてね。いわゆる興行系のチケットの販売サービスって、主催者さんが個人情報をほとんどとれない。

藤田:とれないですね。メールを送りたい時は、もう。

小島:つまり手が打てないですよね。どうなったかわからないので、アクションが打てない。

小笹:だから、誰に売れたかがしっかりできないから、PDCAも回せない。すごく儲かってるアーティストさんだったらいいんでしょうけど、なかなか売れないからどうしようみたいな時って、アーティストさんのファンイベントって、わりとこっち側のサービスでやってらっしゃることもありますよね。

藤田:販売状況すらもリアルタイムで確認できないのが、以前だった。今もそういう部分があると思うんですけれども、やっぱりこういうサービスによって、データが可視化されるようになったのはかなり大きいんじゃないかと。

小島:僕がもともと「ハーッ」となってたのは、CGI(Common Gateway Interface/Webサーバー上でプログラムを使って処理した結果を表示させる機能)に毎回30万払うとかはあったかもしれないですけれども、このプラットフォームができて、それが解決されただけじゃなくて、その後に僕と同じような立場の人が「これがあったらいいのにな」というのがものすごくフィードバックされた。僕はフィードバックしてないのに、他の人のフィードバックでどんどん機能が追加されていってるんですよね。これがけっこう革命です。

それまではやっぱり買い切りだったので、自分のイベントがぜんぜん進化しないんですよ。だけど、こういう機能がつくと、「こうやって見ればいいんだ」「あ、みんなこれを見てるんだ」というのが、実はダッシュボードを見るとノウハウがわかるんですよね。イベンター側のスキルも、けっこうプラットフォームに引っ張られて上がっているんじゃないかなと思います。

藤田:それは上がってると思います。

“イベント市場”が可視化されることで、 主催者同士の交流も促進

小島:僕みたいに仕事でマーケティングをやっている人間だけじゃなくって、もうちょっと仲間を増やしたいNPOさんとか、仲間を増やしたいのでイベントをやりたいという人も、けっこう下駄を履いた状態でスタートできるのかなというのがすごくあるんですよね。

これが簡単にできれば、本来やりたかったことに集中できるわけですけれども、とはいえそこまでが大変だと。そう簡単にはいかないじゃないですか。

藤田:そうですね。だから、そこのハードルをかなり下げていることによって、イベントがやりやすくなっているというのが、かなり大きいんじゃないかなと。

小笹:たぶん世の中でこれだけイベントがあることが可視化されているなとは思っています。

藤田:すばらしい。

小笹:そうすると自分と似通ったことをやっているイベントの主催者さんと交流できるようになったり、主催者さん自身も他のイベントに興味をもって行くようになったり。

小島:お客さんじゃないんだろうなと思いながら、同じようなイベントをやっている人のところに学びに参加してみたりとか、けっこうやったりしますもんね。でも、それを見つけやすくなっているし、逆もあるかもしれない。僕らがやっているイベントを見て、フォロワー的に始めてくれて、結果的にそのマーケットとか考え方を広める仲間を自動的に作っているかもしれない。

そういう意味で、やっぱりこういうイベントのプラットフォームができたのはすごく大きいし、あとは「CGIが30万」の話をずっとしちゃいますけど、やっぱりそのお客さんの……。

藤田:恨みが大きいですね(笑)。

小笹:よっぽど根に持ってるんだなと思って(笑)。

小島:そこで回収しようというビジネスモデルだったら、こうはならない。でも、今言うところのサブスクじゃないですか。たくさん長く使ってもらわないといけないと。そうすると自然とサービスって洗練されていくんだなというのは、すごく現れているなという気がしますよね。