2024.12.24
ビジネスが急速に変化する現代は「OODAサイクル」と親和性が高い 流通卸売業界を取り巻く5つの課題と打開策
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松岡宏治氏(以下、松岡):自己紹介はここまでにさせていただいて、ここからトークを始めていきたいと思います。2~3分くらい、僕から頭のネタ出しとして日本の現状を、アトツギ周りの数字をファクトで整理してみました。
(スライドを指して)これは、2000年から2016年の休廃業と倒産の件数です。倒産は減っているんですよね。でも休廃業はガンガン増えていっていますよと。その中でもけっこう特徴的な数字で、2006年~2007年と2015年~2016年の休廃業と、中小企業全体の年齢層の比較なんですね。
(スライドの)この緑より上は60代です。それで、2007年の時点で休廃業や解散する企業の70パーセント以上が60代なんですよね。それが2016年になると、82.4パーセント。休廃業する会社の8割以上が60代以上なんですよ。
そして、今日ここに集まっていただいているのは、20代、30代、40代という経営者の方々と、これから跡を継がれる方々です。そんなみなさまから、今日のお話は……ふつうにアトツギのセッションはけっこうあるので、「どうやって跡を継ぎましたか?」という話はやめます!
(会場笑)
最初はばっちり資料を作っていたんですけれども、一昨日ぐらいに「やめよう」となって(笑)。全部作り直しました。
今日は大きく分けて3つの方々にメッセージを伝えたいなというので、一番最初に属性を聞かせていただいたんです。「アトツギ」「支援事業者」「その他の方々」に向けて、このお三方に「今、何を伝えたいか?」というところをディスカッションしていければと思います。残り25分くらいですね、よろしくお願いします。
松岡:一番最初は、7~8人ぐらいいらっしゃったアトツギの方。既に跡を継いでいらっしゃる方が多いんですかね? それともこれから跡を継がれる方が多いんですかね? その方々に向けて、このお三方からメッセージを引き出していきたいなと思っています。「どう振ろうかな?」というのも考えたんですけれども、どなたか「まずこれは言いたいです」ということはありますか?
鷲尾岳氏(以下、鷲尾):雑じゃない……?(笑)。
(会場笑)
松岡:「ここの入りをどうやって回そうかな?」と思いながらやっていたんですけれども(笑)。鷲尾さんはまだ継がれてない状態ですよね?
鷲尾:そうですね。「継ぐ」という言葉が難しいと思うんですよ。要は「『社長になる』ことを『継ぐ』と言うんですか?」という話は実際にあります。僕はあえて今「社長になりたくない」と言ってやらせてもらっているんですけれども、実際にやっている仕事は社長業だったりするんですよね。それで、僕が思う社長業のマイナスの部分を、全部親父がやってくれと。人づきあいとかイヤだし……(笑)。
(会場笑)
すみません。ここに銀行さんもいらっしゃると思うんですけれども、「僕はゴルフに行きたくないからやってくれ」とか(笑)。
(会場笑)
そういったかたちで、僕は基本的に経営は責任も全部持って、事業の移譲はほぼ全部起こしています。親父は一応、最終決裁権は持ってもらっていますけれども、基本的には話し合って僕が全部決める、という状態にはあります。「『継いでいる』と言っていいのかどうか?」で言うと、難しいラインだと思っています。
松岡:そうですね。
鷲尾:それは僕が個人的にすごく気にしている部分です。要は「社長になるタイミングはいつなの?」ということと、もう社長になられているお二人に、社長になって変わったことをスピーカーではなくて、そっち(客席)側で聞きたいです(笑)。
(会場笑)
山谷武範氏(以下、山谷):自分が「社長になった」というか、三条市はけっこう特殊で、それこそ「石を投げれば社長に当たる」というくらい、本当に社長が多いんですね。
松岡:新潟県は一番社長が多い県という話ですね。
山谷:新潟の三条がめちゃめちゃ多いです。個人事業主ばかりなので、ほぼ社長なんですね。
(会場笑)
それで、その息子がほぼ継ぐ、みたいなかたちです。社長になるなら早いほうがいいですし、自分は社長になって社長同士の仲間ができたというのは……飲みに行くにしてもほかの社長だし、それですごく良かったなというのはありますね。
松岡:横のつながりみたいな。
山谷:横はすごく強いですね。三条はそれこそ商工会議所の青年部や銀行さんで「未来塾」というようなかたちで若手だけを集める、ということを必死にやってくれています。
松岡:なるほど。
山谷:それでつながるというのはすごく多いですね。
鷲尾:三条市、いい市だなと思いますね(笑)。
(会場笑)
岩田真吾氏(以下、岩田):でも鷲尾さん、そういうのには絶対行かないタイプ(笑)。
(会場笑)
そういうの「お父さん行ってきて」みたいな(笑)。
松岡:社長同士の仲がいいということは、地域によるのかなと思ったりしているんですけれども。岩田さんの地域はどうなんですか?
岩田:僕の地域は、岐阜羽島に工場があって、その川向かいの愛知県一宮市が、繊維の産地です。
松岡:尾州と呼ばれるところですよね。
岩田:そういう意味でいうと、基本的に地方は地方の中で固まりたい。同調圧力とまで言うと言い過ぎですけれども、そういうのがあります。さっきおっしゃっていただいたような商工会議所の青年部は、我々で言うと毛織物協同組合の青年部があります。青年は何歳のことを言うのかな、みたいな感じですけれども。
山谷:(笑)。
岩田:そういうのはやっぱりあって、僕もそれはそれで横のつながりとして、すごくいいなと思うんですけれども。そっちだけを見ていると、そっちの常識だけになってしまう。さっき鷲尾さんが言っていたような、「そういうことに時間を使っていていいのか?」みたいなところはあると思うので、バランスをみなきゃいけないかなとは思います。
鷲尾さんがさっき言ってくださった「社長になったらイヤなことがあるよね?」というような話は、最近僕も思っていて。
私は28歳のときに社長になっているんですけれども、たまにアトツギ系の話をするときに「社長は早くなったほうがいいと思う?」というような質問も聞いていて。結局いいところと悪いところがあるんですけれども、「『いいところは何か?』『悪いところは何か?』ということをちゃんと意識した上で、意思決定することが大事なんじゃないの?」と言っています。
Makuakeのセッションなのでアレなんですけれども。アトツギがやるべきことは、新規事業だと私は思うんですよ。みなさんだいたい社長の息子だったら、東京とかどこかの大学に行かせて、新しいものに触れてこさせて帰ってきた人に、「とりあえず30年やってきた仕事を一から覚えろ」というのは、もったいないんじゃないかなと思うんです。
そういう意味では、新規事業担当がいい。社長になってしまうとやりづらいところがあると思うので、新規事業担当ないし新規事業部長になる。もう少し言ってしまえば、お父さんが銀行と話して新しい会社を作ってあげて、「この資本金の限りでできるところまでやってみろ」と。「尽きたらお前が金融機関に行って交渉してこいよ」ぐらいの別会社を作らせて、「うまくいったら本業の会社を買い取ってね」みたいな(笑)。
(会場笑)
このくらいのことまでやったら、すごくロックだねって。自分はやっていないんですけれども、若いアトツギには他人事なので言っています(笑)。そういう意味では今、いいポジションにいらっしゃるなということは、すごく思います。
鷲尾:金融機関さんがいらっしゃるのでアレなんですけれども……ぶっちゃけ話で、個人保証の問題が一番デカいんですよ。あの、言っても大丈夫ですか?(笑)。
(会場笑)
松岡:大丈夫です。カットする?(笑)。
鷲尾:カットしたほうがいいかもしれないですけれども(笑)。いや本当に、「『アトツギは個人保証をとられるんじゃないか?』ということで社長になりたくない」という思いは絶対にあるんですよね。うちの親父にも一回言われたことがあるんですけれども。よくあるのが「俺が代表取締役会長になる。そうしたら俺に個人保証がついたままだから、お前が社長になってやれ」ということです。
でも一般的に考えて、経営責任を持っている社長が個人保証をとらないと、銀行さんも不安ですよね。そうなったときに「『会長だから個人保証がこっちについていてもOK』という判断は絶対にしないでしょう?」という話をしたら、「俺はもう早く社長をやめるんだ」みたいな謎のケンカになって(笑)。
(会場笑)
それで、結局まだ社長交代はしていない、ということなんですけれども。個人保証は社長になった瞬間、ばちっとつけましたか?
松岡:山谷さん、どうでしたか?
山谷:もうばっちりですね。ハンコを何個押したんだっていうくらい(笑)。
(会場笑)
松岡:プレッシャーや、何かリスクを考えられたんですか?
山谷:めちゃめちゃ考えましたね。「うわ、連帯保証人が全部俺の名前になっている」みたいな。それはすごく思いましたね。
鷲尾:だって、いきなり自分じゃない誰かの作った億の……。
山谷:そういうことです(笑)。
松岡:誰かの借金が落ちてくる、みたいな話ですよね(笑)。
鷲尾:いや本当に怖いっすよ……。
山谷:そうですね、それはすごくありましたね。「じゃあそれをどう返していこうか?」ということで。
松岡:山谷さんは弟さんと一緒に事業をやっていらっしゃるんですね?
山谷:そうですね。三兄弟で、3人ともうちの会社に入っているんですけれども。最初に1番下が入って、その次に2番目が入って、それから10年ぐらい経って自分が入ってきた、というかたちです。
それこそ1つ下の弟が専務をやっているんですけれども、帰ってきたときには「なんでお前、帰ってきたんだ」と文句を言われました。社長になるときも「まず弟が社長になってから」というような話もあったんですけれども。弟が「社長は絶対兄貴のほうがいい」ということで、自分がならせてもらった感じです。でもやっぱり仲は悪いですよ。
(会場笑)
松岡:ご兄弟で跡を継がれて、仲が悪くなって分裂しちゃった、というようなところもけっこうあったりするとは思うんですけれども。そのへんの切り分けは、どうやって一緒に……?
山谷:そうですね。一緒にできるのは、弟が前からいるということで、会社の中は全部弟に任す、というかたちです。自分は逆に、今までやってこなかった広報ですね。「外に対してどういう発信・アピールをしていくか?」ということで、それこそ新聞、ラジオ、テレビ、いろいろなメディアに出させていただいて。そういったかたちでのPRをやっていますね。
松岡:なるほど。本業というか、もともとやっていた製造まわりは弟さんに任せて、新しい分野を山谷さんが。
山谷:自分がやっているという感じですね。
松岡:なるほど。岩田さんはもともと28歳で継がれて、その前は大手企業さんで働かれて、戻ってこられたというかたちだと思うんですけれども。お父様との関係性はどう折り合いつけて、跡を継がれた感じですか?
岩田:28歳で社長になるときに、親父の信念としては「老害みたいになりたくない」というような、ダンディズムが一応あるんですよ。
うちは5代目で、古い産地なので、そうするとほかの会社さんにもそういうことがあって、先代にいじめられているほかの人を見ているんですよね。「老害になりたくない」というダンディズムを持っている。なので彼は「お前が戻ってきて、どうせお前が今からやるんだったら、お前がやったほうがいいんじゃないの?」と。
岩田:それで、さっき僕が「メリットとデメリットを見極めろ」と言ったのは、早くやったほうがいいところはあると。例えば新しいことにもトライしやすいとか、別にエコノミークラスでどんどんいろいろなところへ行っても苦しくないとか。たぶん60歳くらいになると、けっこうキツくなってくるんだと思うんですけれども。
そういうようないいところもあれば、やっぱり「会社の中のことがちゃんとわかっていない」「信用や実績がない」みたいな悪いところもあると。
それは種類は違うけれども、総量は一緒なんじゃないかと。「それなら、将来やっていかなければいけない若い人がやったほうが、まだ納得感があるんじゃないか?」と言ったような気がしているんですよ。
(会場笑)
この話を親父にすると「まったく覚えていない」って言うんですけれども。
(会場笑)
私はそれに対して非常に納得感があって、僕が会社に入って10ヶ月後に彼から「もうお前、社長やれよ」みたいな話になりました。
松岡:入って10ヶ月後に(社長になった)。
岩田:僕も、さっきの話のことがあった気がしていたので、「じゃあやるか」という感じでなりましたと。ただ社長になると、なかなかやりにくいことは、実際さっきの話でもあったようにいろいろな時間を使うということもあるし、このあとの話につながるんですけれども。
メリット・デメリットの話で、僕は社長になってもいいと思います。もう1つ「『跡を継ぐ』ということをどう捉えるか?」というときに、もちろんふつうに起業するよりも、地盤があるとか信用があるとか、資産がある、社員がいてくれる、みたいないいところがいっぱいあるんですけれども。
けっこう大変なこと、例えば借金が最初からついているとか、「資産がある」と言ったけれども、建物がむちゃくちゃ古くて修繕に時間がかかるとか。
岩田:それで最近、私がアトツギのみなさまへ言っているのは、「帰ったらまず一度、就業規則を読み込んでください」という話をしています。
アトツギと働いてくれている仲間と決定的に違うのは、就業規則というルールのうえで戦っている従業員さんと、アトツギはもはやマインドがオーナーというか、取締役以上なんです。そこから違う働き方しているんですよね。そこのギャップがあるままだとまずいよ、と。
とくに古い会社で怖いのは、昔の感覚で就業規則を作ったままということが、今の時代においてものすごく地雷だと僕は思っていて。ここに時代の空気を感じて問題意識を持つのは、アトツギしかいないと思うんですよ。お父さんは「昔は気合と根性だったんだ」と。それで「営業手当は残業手当」みたいなことを言うんですけれども、そんなことはもうダメなんですよ!
(会場笑)
これは感覚の問題だから絶対にダメです。なので就業規則を一度読んで、時代に合わせたらいいと思うよと。その中で攻めに転換するという意味で、僕がさっき話していた「LGBTも同等にする」というのは、誰も損しないしいいことですよ。
なんとなくでいたら絶対組み入れないようないいことを、アトツギが組み入れることによって、「会社が1つ変わろうとしている」という発信にもなると思っています。「ちゃんと地雷を見極めろ。就業規則は危ないぞ」ということは、けっこう話をしています。
松岡:お話をおうかがいしていて、「新規事業をやれ」というような話とも近いのかなと。結局、「アトツギだからこそ、やることをやる」みたいなイメージなのかなと思いました。
やっぱり社内にいると、今の流れの中に飲み込まれてしまって、新しい目線が入ってこないですよね。それが外から入ってくるからこそ「えっ、これっておかしくない?」ということを思えるところがあるのかな。というところで、あと10分!
(会場笑)
山谷:これ1個しか終わらないじゃないですか(笑)。
(会場笑)
岩田:次いこう、次(笑)。
松岡:予想はしていたんですけれども、なかなか延びてきているというので、次へいきましょう(笑)。
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