休廃業する会社の社員8割以上が60代オーバー

松岡宏治氏(以下、松岡):自己紹介はここまでにさせていただいて、ここからトークを始めていきたいと思います。2~3分くらい、僕から頭のネタ出しとして日本の現状を、アトツギ周りの数字をファクトで整理してみました。

(スライドを指して)これは、2000年から2016年の休廃業と倒産の件数です。倒産は減っているんですよね。でも休廃業はガンガン増えていっていますよと。その中でもけっこう特徴的な数字で、2006年~2007年と2015年~2016年の休廃業と、中小企業全体の年齢層の比較なんですね。

(スライドの)この緑より上は60代です。それで、2007年の時点で休廃業や解散する企業の70パーセント以上が60代なんですよね。それが2016年になると、82.4パーセント。休廃業する会社の8割以上が60代以上なんですよ。

そして、今日ここに集まっていただいているのは、20代、30代、40代という経営者の方々と、これから跡を継がれる方々です。そんなみなさまから、今日のお話は……ふつうにアトツギのセッションはけっこうあるので、「どうやって跡を継ぎましたか?」という話はやめます!

(会場笑)

最初はばっちり資料を作っていたんですけれども、一昨日ぐらいに「やめよう」となって(笑)。全部作り直しました。

今日は大きく分けて3つの方々にメッセージを伝えたいなというので、一番最初に属性を聞かせていただいたんです。「アトツギ」「支援事業者」「その他の方々」に向けて、このお三方に「今、何を伝えたいか?」というところをディスカッションしていければと思います。残り25分くらいですね、よろしくお願いします。

跡を継ぐ=社長になること?

松岡:一番最初は、7~8人ぐらいいらっしゃったアトツギの方。既に跡を継いでいらっしゃる方が多いんですかね? それともこれから跡を継がれる方が多いんですかね? その方々に向けて、このお三方からメッセージを引き出していきたいなと思っています。「どう振ろうかな?」というのも考えたんですけれども、どなたか「まずこれは言いたいです」ということはありますか?

鷲尾岳氏(以下、鷲尾):雑じゃない……?(笑)。

(会場笑)

松岡:「ここの入りをどうやって回そうかな?」と思いながらやっていたんですけれども(笑)。鷲尾さんはまだ継がれてない状態ですよね?

鷲尾:そうですね。「継ぐ」という言葉が難しいと思うんですよ。要は「『社長になる』ことを『継ぐ』と言うんですか?」という話は実際にあります。僕はあえて今「社長になりたくない」と言ってやらせてもらっているんですけれども、実際にやっている仕事は社長業だったりするんですよね。それで、僕が思う社長業のマイナスの部分を、全部親父がやってくれと。人づきあいとかイヤだし……(笑)。

(会場笑)

すみません。ここに銀行さんもいらっしゃると思うんですけれども、「僕はゴルフに行きたくないからやってくれ」とか(笑)。

(会場笑)

そういったかたちで、僕は基本的に経営は責任も全部持って、事業の移譲はほぼ全部起こしています。親父は一応、最終決裁権は持ってもらっていますけれども、基本的には話し合って僕が全部決める、という状態にはあります。「『継いでいる』と言っていいのかどうか?」で言うと、難しいラインだと思っています。

松岡:そうですね。

鷲尾:それは僕が個人的にすごく気にしている部分です。要は「社長になるタイミングはいつなの?」ということと、もう社長になられているお二人に、社長になって変わったことをスピーカーではなくて、そっち(客席)側で聞きたいです(笑)。

(会場笑)

早いうちに社長になれば、横のつながりはできるが……

山谷武範氏(以下、山谷):自分が「社長になった」というか、三条市はけっこう特殊で、それこそ「石を投げれば社長に当たる」というくらい、本当に社長が多いんですね。

松岡:新潟県は一番社長が多い県という話ですね。

山谷:新潟の三条がめちゃめちゃ多いです。個人事業主ばかりなので、ほぼ社長なんですね。

(会場笑)

それで、その息子がほぼ継ぐ、みたいなかたちです。社長になるなら早いほうがいいですし、自分は社長になって社長同士の仲間ができたというのは……飲みに行くにしてもほかの社長だし、それですごく良かったなというのはありますね。

松岡:横のつながりみたいな。

山谷:横はすごく強いですね。三条はそれこそ商工会議所の青年部や銀行さんで「未来塾」というようなかたちで若手だけを集める、ということを必死にやってくれています。

松岡:なるほど。

山谷:それでつながるというのはすごく多いですね。

鷲尾:三条市、いい市だなと思いますね(笑)。

(会場笑)

岩田真吾氏(以下、岩田):でも鷲尾さん、そういうのには絶対行かないタイプ(笑)。

(会場笑)

そういうの「お父さん行ってきて」みたいな(笑)。

松岡:社長同士の仲がいいということは、地域によるのかなと思ったりしているんですけれども。岩田さんの地域はどうなんですか?

岩田:僕の地域は、岐阜羽島に工場があって、その川向かいの愛知県一宮市が、繊維の産地です。

松岡:尾州と呼ばれるところですよね。

岩田:そういう意味でいうと、基本的に地方は地方の中で固まりたい。同調圧力とまで言うと言い過ぎですけれども、そういうのがあります。さっきおっしゃっていただいたような商工会議所の青年部は、我々で言うと毛織物協同組合の青年部があります。青年は何歳のことを言うのかな、みたいな感じですけれども。

山谷:(笑)。

アトツギがやるべきことは、新規事業である

岩田:そういうのはやっぱりあって、僕もそれはそれで横のつながりとして、すごくいいなと思うんですけれども。そっちだけを見ていると、そっちの常識だけになってしまう。さっき鷲尾さんが言っていたような、「そういうことに時間を使っていていいのか?」みたいなところはあると思うので、バランスをみなきゃいけないかなとは思います。

鷲尾さんがさっき言ってくださった「社長になったらイヤなことがあるよね?」というような話は、最近僕も思っていて。

私は28歳のときに社長になっているんですけれども、たまにアトツギ系の話をするときに「社長は早くなったほうがいいと思う?」というような質問も聞いていて。結局いいところと悪いところがあるんですけれども、「『いいところは何か?』『悪いところは何か?』ということをちゃんと意識した上で、意思決定することが大事なんじゃないの?」と言っています。

Makuakeのセッションなのでアレなんですけれども。アトツギがやるべきことは、新規事業だと私は思うんですよ。みなさんだいたい社長の息子だったら、東京とかどこかの大学に行かせて、新しいものに触れてこさせて帰ってきた人に、「とりあえず30年やってきた仕事を一から覚えろ」というのは、もったいないんじゃないかなと思うんです。

そういう意味では、新規事業担当がいい。社長になってしまうとやりづらいところがあると思うので、新規事業担当ないし新規事業部長になる。もう少し言ってしまえば、お父さんが銀行と話して新しい会社を作ってあげて、「この資本金の限りでできるところまでやってみろ」と。「尽きたらお前が金融機関に行って交渉してこいよ」ぐらいの別会社を作らせて、「うまくいったら本業の会社を買い取ってね」みたいな(笑)。

(会場笑)

このくらいのことまでやったら、すごくロックだねって。自分はやっていないんですけれども、若いアトツギには他人事なので言っています(笑)。そういう意味では今、いいポジションにいらっしゃるなということは、すごく思います。

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