従来型の就活はもうダサい。変化する学生の価値観と就職活動

–– 先日開催された「採用イノベーションセミナー」、そして著書の「日本一学生が集まる中小企業の秘密」の中で『企業には、採用イノベーションが求められている』というメッセージが印象的でした。

近藤悦康氏(以下、近藤):当社で採用コンサルティング事業を営む現在まで、私は17年間新卒採用市場に関わってきました。その中で、「学生」「競合」「市場」「自社」の4つが常に変化し続けていることを目の当たりにし、企業の採用活動にはそれに対応するようにイノベーションが求められていると気づいたのです。

社内外の様々なものが変化し続けているのにもかかわらず、何年も同じ方法で採用活動をしていては優秀な人財は獲得できません。

––「学生」「市場」「競合」「自社」の4つが変化し続けている。こちらについて、より具体的に伺ってもよろしいでしょうか。

近藤:はい。まずお伝えしたいのが、「学生」に起きている変化。この3年ほどの間に、学生の就職活動に対する考え方や取り組み方が大きく変化しているように感じます。

私が知っていた従来の就職活動というのは、大手就職情報サイトにエントリーし、3月1日から始まる合同説明会にリクルートスーツを着て参加するといったイメージ。ところが、私が採用したいと思った優秀な学生たちに聞くと、こうした就職活動はしていないと言うのです。そうした従来型の就職活動は“ダサい”と認知されている。

–– それでは、今積極的に就職活動に取り組んでいる学生はどのようにして企業と出会い、就職を目指すのでしょうか。

近藤:就活が本格化する前から、スカウト型の就活情報サイトやOBOGに会えるマッチングサイトなどを活用したり、自分が興味を持った複数の企業のインターン企画に参加したりするようになってきています。実際には、全就活生のうち8割がインターンに参加しており、1人あたり4社くらいのインターン企画を受けています。

–– 従来型の就職活動と比べて、自分や時期、目標に合った方法を学生が自由選択し、行動できるようになってきているということでしょうか。

近藤:そうですね。こうした中には、周りよりも一足先に自分を必要としている企業を見つけることがステータスだと感じている学生も多い。

また、ほとんどの学生がスマホで就職活動をしているため、自社のHPや採用ページがスマホからどう見えているかも意識しなければなりません。コーポレートサイトを見るにも、会社説明会への申し込みをするにも、すべてスマホで完結。活用するアプリやツールも年々変わっていっています。

変化を敏感にとらえ、常にアップデートが求められる採用市場

–– 続いて、「市場」「競合」「自社」における変化について伺ってもよろしいでしょうか。

近藤:「市場」の動向に応じて戦略が変わるため、その時の市場の状態をしっかり捉えておく必要があります。市場の動向というのは、大きく分けると「売り手市場」と「買い手市場」。

例えば、(従業員が300人未満の中小企業において)1人の学生に対して約10社が内定を出すほどの現在の売り手市場においては、マス型の広告媒体よりも欲しい人財をピンポイントで集めることができるイベントやスカウト人材紹介を活用し、応募者数を増やすよりも説明会に来た学生の動機付けを高める施策に重点をおくほうが効果的と言えるでしょう。

–– 市場の流れに置いていかれないよう、常にアンテナを張っておかなければなりませんね。

近藤:こうした中で、ビジネスの世界でライバルとして意識するような同業界・同業種の企業は、採用市場においても「競合」。採用活動に注力している競合企業は、より学生を惹きつけ、選ばれる企業になるために、採用活動への投資や改善、工夫を怠りません。そうした競合企業の変化にも目を配っておく必要があります。

毎年改善や工夫を行っているA社と毎年同じ方法で採用活動を展開するB社。3年、5年、10年と経った時、その差はもう簡単には追いつけないほどのものになっているでしょう。

–– 「学生」「市場」「競合」、最後の1つに挙げられるのが「自社」ですね。

近藤:こうしたお話をさせていただいていると意外と忘れられがちになるのが、「自社」の変化。その時々の業績や経営戦略に応じて、必要となる人物像をアップデートし続けなければなりません。そうしなければ、いくら優秀な人財を獲得できても活躍できず、定着できず、お互いにとってミスマッチになってしまう。

ここまでお伝えした「学生」「市場」「競合」「自社」の4つは毎年変化を続けており、前例に倣っただけの現状維持や周りと足並みを揃えるやり方では差別化ができず、優秀な人財を確保できない時代になってきました。

いち早くこのことに気づいた経営者は、自らリーダーシップをとって新しい採用活動の形を模索し、採用市場におけるブランドの確立を目指しています。

デキる人財が集まる企業とそうでない企業、何が違う?

–– 常にイノベーションが求められる採用市場においては、優秀な人財を求める企業同士の競争率が高まってきていると思います。その上、売り手市場。そうした中でも、御社は学生を惹きつけ、誰もが知る大手企業の内定を蹴って御社へ入社する学生もいると伺いました。

優秀な人財が集まる企業とそうでない企業、その違いはどのようなところにあるのでしょうか。

近藤:1つには、採用活動のリーダーシップをとる経営者や採用担当者の考え方、接し方に違いがあると考えています。

まず、私たちには、「会社」「仕事」「商品・サービス」「自分自身」の4つへの確信があります。たとえ大手企業の関係者が隣にいたとしても、胸を張って言える。

「絶対にうちに入社したほうがいい」 「絶対にこの仕事に就いたほうがいい」 「絶対にうちの商品を買ったほうがいい」 「絶対に(他の誰よりも)自分たちと働いたほうがいい」

こうした確信を持って学生と向き合えているかどうかによって、採用活動の成果は大きく変わります。

–– 誰もがそうした想いを持って仕事や採用活動に向き合いたいと願いつつも、なかなかそうはいかないと肩を落とす方が少なくないと思います。大手と比べてしまうと、やはり…。

近藤:「うちに入ってくれたら嬉しいけど、大手に行けるならその方がいいよね。」

そんな風に思いながら学生と接していませんか?

このように考えてしまう原因は、現時点の自社と大手を比較しているためです。

現在は知らない人がいないほどの大手企業も、創業時は町工場やマンションの一室、ガレージなどからスタートしたところがいくつもある。その創業期から現在までの成長を成し遂げられたのは、まだ規模が小さな頃に志の高い優秀な人財が集まり、情熱を持って仕事に打ち込んだからです。

成長が先ではなく、人財が先。

当社もそうですが、まだまだ発展途上の企業が学生と接する時は、未来の自社の姿をもって訴えかけることが大切です。「今は小さい会社だが、将来はこんな規模の会社になる。一緒にそこを目指さないか?」というように。

自ら求め、吸収する人財。自ら考え、行動し、価値を創造する人財。こうした人財は、未来志向の言葉に惹かれ、その一員として活躍できる場を望んでいるのです。

–– 発展途上の企業は、その先の未来を自分たちの手で創っていけるというところに働き手としての1つのやりがいを提供できる。移り変わる市場の渦中にいると、意外にもそのようなシンプルな答えにたどり着けないことが少なくないと感じます。

その他、これまでに見かけた採用活動における陥りがちな落とし穴や誤った思い込みのパターンはありますか?

近藤:例えば、皆さんはどのような会社説明会を開いていらっしゃるでしょうか。終始、経営者や採用担当者が学生に向けてプレゼンをし、学生たちが真剣に聞き入る表情を見て満足してはいませんか?

–– 一方的に会社の説明をプレゼンする会社が多いように思いますが。

近藤:そうですね。ただ、会社説明会終了後、参加した学生にインタビューするとほとんどの学生は先ほど聞いたばかりの会社のことを何も説明できない。会社目線の説明会に受動的な脳の状態で参加しているためです。

このような学生にとって退屈な説明会が一般的に多い中では、学生目線になり、学生が知りたいことや学生に役立つこととは何かと考えることが大切です。具体的には、参加型の説明会やワーク形式のプログラムを行うことで、規模や知名度で大手に劣る中小企業でも良い口コミを生むことができ、優秀な学生を集めることができるでしょう。

–– かつて、前職の会社で新卒採用活動を担当された時、 参加した学生を驚かせ、満足させ、大きな反響を呼んだ説明会を一から創り上げたと伺いました。

近藤:その当時、予算が300万円という限られた中での採用活動だったため、予算が足りないならば知恵を絞るしかないと考えました。

市場・業界調査をしながら学生の知り合いへヒアリングをしていくと、会社と学生はお互いに目隠しをしたままお見合いをしているような状況であることに気づきました。学生側は仕事への理解を深められず、希望する仕事をアピールすることもできていない。一方で、会社側もどのような仕事をして欲しいかを伝えきれず、採用するまでその人財がどの仕事に向いているのかわからないまま採用活動をしているのです。

そこで、学生が仕事の楽しさや面白さを体験でき、発見や感動を持ち帰ることができる体験型の会社説明会や選考会を開催しました。そうしたところ、参加者から満足の声があがり、その意外性が噂を呼んだ結果、就活生40万人のうち20人に1人が応募するほどの会社に成長していきました。

–– 予算がない中でも、学生の生の声と向き合い、考え続けた結果、ヒントを掴まれたのですね。

近藤:「採用活動とはこうあるべきだ」といった枠内思考(制限的パラダイム)にとらわれない考え方を実践することが、この売り手市場の中で採用イノベーションを起こし、優秀な人財に選ばれる企業になるための第一歩となるでしょう。

年間1万人の応募が殺到する超・実践型インターンシップとは?

–– 御社が学生を惹きつけ、優秀な人財を獲得できている背景に「インターンシップ」の取り組みがあると思います。その取り組みについて、詳しく伺ってもよろしいでしょうか。

近藤:先ほども申し上げましたが、会社においては成長が先ではなく、人財が先です。そして、その人財が戦力となり、定着してこそ、その採用は成功したと言えると考えています。

そのため当社では、出会った優秀な人財の「定着化×戦力化」を実現するための1つとして独自のインターンシッププログラムを開発し、取り組んでいます。

–– 具体的には、どのようなインターンシップを行っていらっしゃるのでしょうか。

近藤:まず、丸1日オフィスを解放し、「はたらくを、しあわせに」を経営理念に掲げている当社が「しあわせ」を実現するために展開するサービスを自らの五感で体感できる場として「OPEN COMPANY」を開催しています。年間で3000人以上が参加しており、新卒・中途採用、インターンシップ、アルバイトなど、働き方にかかわらず当社に興味のある方全員に最初にご参加いただくイベント。

私が自ら事業やそこに込めた想い、ビジョンなどを語る「TOP LIVE」、社員が直面する実際の課題に取り組み、人事コンサルの思考を体感できる「WORK SHOP」、働きやすさを追及した工夫・こだわりが隠されたオフィスをめぐる「OFFICE TOUR」、日々現場で仕事に向き合う若手社員とドリンク片手に語り合う「BAR TALK」の4つのプログラムで構成されています。

–– 社長や社員の生の言葉に直接触れ、オフィスや仕事内容も覗き見ることができると、初めて御社を尋ねる学生でも魅力や特徴を肌で感じることができますね。

近藤:参加者の声を聞いていると、とてもいい機会として捉えていただけていると感じています。

「OPEN COMPANY」後、4つのステップ・プログラムで構成される超・実践型インターンシップ「REAL!」に参加いただくことができます。

–– こちらのインターンシップが、人材業界部門・中小企業部門で今もっとも人気と注目をを集めているプログラムですね。

近藤:3万人以上の大学生へのキャリアコンサル支援経験、350社以上の企業の人事コンサル経験を集結し、開発に取り組んできた結果、大変ありがたいことに今年は1万5千人を超える学生からの応募が集まるまでになりました。

具体的には、4つのステップによってプログラムが構成され、1つのプログラムをクリアするごとに次のステップへ進むことができる仕組みになっています。

①CHANGE (2日間) 当社の企業変革プロジェクトを2日間に凝縮したプログラムです。単なるケーススタディの課題解決提案ではなく、実際の当社のコンサルティングによって企業・働く人・学生がどのように変革されていくかを体感できます。

②GRIP(2日間) ビジネスフレームをもとに企業の本質的価値や存在意義を理解し、仕事の中にある真のやりがいを見出す時間。自身のやりたいこと、成長課題が浮き彫りになる2日間のプログラムです。

③LIMIT (3日間) 当社のビジネスモデルをもとに、当社スタッフの日常の仕事を遂行。クオリティやスピードによって評価される順位やポイントを考え、チームメンバーと力を合わせ、刻々と迫る制限時間の中で信頼を勝ち取りながら実際の業務に取り組むプログラムです。

④REAL(半年間) 実際の企業のコンサルティングチームに配属され、人事課題の解決によって企業変革を行う約半年間のインターンシップ。クライアントへの提案、設計、オペレーションまで一貫したコンサルティングを現場で体験することで、プロの人事コンサルタントの企画発想や課題解決を間近で吸収できます。

こうした長期インターンシップを取り入れている企業は全体の5%程度と言われますが、いち早く経験を積むために長期インターンシップに参加したいという学生は増加傾向にあります。

–– こうして内容を伺っただけでも、学生にとって驚きや成長実感が詰まった素晴らしい時間・空間であることが想像できますね。しかしながら、これほどのプログラムを採用担当者が企画・運営するのは相当大変なのではありませんか?

近藤:「採用活動は、人事や採用担当者が行うもの」。これもまた1つの枠内思考(制限的パラダイム)であると、私は考えています。

中小企業における新卒採用活動は、チームプレー。自社の魅力や未来に確信を持ったリーダーがあらゆる立場・キャリアの人たちをまとめ、チームとしての採用活動を行う必要があります。例えば、当社の「OPEN COMPANY」で言えば、社員の半数がその日は業務を止め、イベントに参加します。

新卒採用活動によってビジョンを共有し、新たな価値を創造し続けられる優秀な人財を迎え入れることは、商品力・サービス・技術の向上や営業力・販促力・マーケティング力の向上等の様々な経営課題の解決につながり、永続的に成長を続ける組織となるためには必要不可欠な取り組みですから。

–– 新卒採用活動は人を採用するだけの取り組みに止まらず、企業にイノベーションを起こすほどの可能性を持った取り組みなのですね。

近藤:そうです。もっと言えば、採用活動は企業を変え、社会を変え、ひいては世界をも変える。そう信じて、当社では人事コンサルティングサービスを展開しています。

成功する“採用の設計図”を共に描き、「はたらくを、しあわせに」

–– 改めまして、御社が展開するサービスとその特徴を伺ってもよろしいでしょうか。

近藤:一言で言うと、企業の人材採用、社員教育、人事制度構築など、人事面のコンサルティング事業を専門に行なっています。その中でも、最も重視しているのは採用。採用活動を通じて企業を変え、社会を変える活動をしています。

特徴としては、ただ単に優秀な人財を見極める採用活動ではなく、関わる学生や既存社員が成長を遂げる仕組みづくりをしている点が挙げられるでしょう。その過程では、まず自社を見つめ直すことから始まり、強みやビジョンを改めて明確にしていきます。そうすると、仕事に対する社員の姿勢や考え方、制度、環境などが変わり、会社が変革されていく。

実際に、コンサルティングを実施した企業からは「既存の社員の意識や仕事に対する取り組みが良い方向へ変わった。この採用活動なら、仮に採用できなくてもやった価値はあるね。」とお言葉をいただくことがあるほどです。もちろん、私たちは「必ず採用できるようサポートします!」とお返ししますが、大変ありがたいお言葉だと思っています。

–– 実際には、どのような企業の採用活動をサポートされてきたのですか?

近藤:特に、中小企業の経営者から採用支援の依頼をいただくことが多いです。具体的には社員5名未満の小規模な企業から地方の工務店、電気工事の会社、専門職採用の歯科や整骨院など。一般的に採用が困難とみられる企業であっても、何千人、何万人という学生を会社説明会に集め、その中から真に求める人材をマッチングすることができます。

–– そのような成果を実現できる理由は、どこにあるのでしょうか。

近藤:ほとんどの企業が描ききれていない「成功する採用の設計図」を一緒に描いていけるからでしょう。そのために、私たちができることはすべて提供してまいります。

・求める人材の明確化 ・費用対効果の高い媒体選定 ・広告効果を高める検索対策や原稿作成 ・優秀な学生と出会えるイベントの提供 ・学生視点に立った口コミが生まれる会社説明会や選考会の企画設計  など

こうした取り組みを行う中で、学生視点に立ち、成功する採用設計図を作り、学生の口コミを作り出すことで、数年後には中小企業でも数千人、数万人といった規模の応募者を集めることができるようになるのです。

–– 採用に悩む多くの企業にとって、御社は非常に心強いパートナーと言える存在ですね。

ここまで学生、そして企業の双方を惹きつけ、成長を続ける株式会社Legaseedの裏側を惜しみなくお話いただき、ありがとうございます。

現在躍進を続ける御社は、今後に向けてどのような展望・ビジョンを描いていらっしゃるのか。最後に伺ってもよろしいでしょうか。

近藤:もともと、人材に関わる事業をやろうと思ったきっかけは、働くことをより良いものにして働くことにやりがいや幸せを感じる環境づくり、社会づくりをしていきたいと考えたからでした。

というのも、1日24時間のうち、寝る時間を除くと半分が働く時間で、残りがプライベートや家族との時間。働く時間が充実すれば、人生の半分が幸せになりますよね。こうした考えから、私たちは「はたらくを、しあわせに」を理念に掲げ、人事面のコンサルティング事業を通して “はたらく時間革命”を遂げようとしてます。

今後、企業の新卒採用に対する意識や取り組み方が徐々に変わり、次世代を担う若者たちの生き方にも新たな変化が起こるでしょう。そうした中で、私たちは新卒採用活動は世界を変える活動であると信じ、新たな時代を切り拓いていく企業と人財のそばでご支援を続け、様々な企業の採用革命を実現していきたいと考えています。そして、より多くの人が幸せに働ける世界の実現に貢献してまいりたいと思っています。

最後に

本記事をご覧いただき、株式会社Legaseed、近藤氏にご興味を寄せていただけた方がいらっしゃれば、ぜひ一度「OPEN COMPANY」やHPを訪れてみてはいかがでしょうか。

ここでは語られきれなかった近藤氏の想いやさらなる未来構想、こだわりの詰まったオフィスに触れることができるでしょう。

執筆・編集=山崎 撮影=吉田