スポーツ政策と女性に関する初の公式文書

野口亜弥氏(以下、野口):それでは再開させていただきます。Q&Aのセッションにしようと思っていますが、その前に私から、今触れていなかったところも含めて山口先生にお聞きしたいと思います。

スポーツ政策とマーケティング、あとハラスメントについてまとめていますので、そこにお答えいただいてから、みなさんにその場で手を挙げて質問していただくかたちにしようかなと思っています。

まず日本のスポーツ政策と女性ということで、2017年の3月に新しく第2期スポーツ基本計画ができまして、4つの指針が掲げられております。

これはこれまでの「女性とスポーツ」の動きの中では大きな話です。新しいスポーツ基本計画の4つのテーマの中で「人生が変わる」というテーマに、初めて女性の活躍促進ということで、スポーツと女性についての施策が明記された政府の公式文書となりました。

これまでは女性という言葉が入ったりはしていたんですけれども、初めてちゃんとやりましょう、というかたちで項目立てされて入っています。どんなことが書かれているのかと言うと、まず現状の課題として20代と30代の女性のスポーツ実施率が低いですねということ、中学生の女の子が(スポーツを)やる子とやらない子の二極化が激しくなってしまっていること。

あと、スポーツ指導者。女性のコーチの割合は男性と比べて非常に少ないです。女性役員は当時9.4パーセント、今は10パーセントは超えているのですが、男性と比べて低いです。

現状はこういう課題がたくさんあるので、それを研究したり先進国の事例を学んだり、スポーツ施設で女性もフレンドリーに使いやすくしたり、ハラスメント防止をしたり。いろんなことをやっていきましょうと初めて書かれたものです。

“スポーツを通じた女性活躍”に感じる疑問

野口:そして、これは2019年にスポーツ団体ガバナンスコード<中央競技団体向け>について、スポーツ庁に提出された答申なんですけれど。女性理事の目標割合を40パーセントにしましょう、ということが明記されています。女性とスポーツに関する政策的な取り組みが進んできていることはとても画期的だとは思うんですけれども。

私の問題意識として、スポーツ庁でスポーツを通じた女性活躍が盛んに議論されるようになってきた中で、女の子もスポーツしましょうね、というスポーツ実施率の拡大とか。女性指導者を増やしましょうとか、女性アスリートにメダルをもっと取ってくださいということとか、今まで女性が大きく参画できていないところに、女性のみなさんどんどん入ってくださいという感じがしています。

私はそれが、「女性がんばってください!」というような方向性に見えていて、女性だけががんばれば解決する問題でもないのではないかと思うところもあります。山口先生はスポーツ庁の委員などもやられているので、そのあたりをどういうふうに考えられているのかをお聞きしたいです。

また現在このような現状がある中で、もっとジェンダー平等なスポーツ文化にしていくために政策のところにどんな視点を含めていったらいいのかという点も、もしご意見があればお伺いしたいなと思っています。よろしくお願いします。

問題の原因追求には議論が及ばない現状

山口理恵子氏(以下、山口):ありがとうございます。昨年度まで、スポーツ庁でスポーツを通じた女性活躍促進会議に参加しておりました。

その中では、野口さんが紹介してくれていたように、女性のスポーツ実施率は大きな課題となっています。とくに女子が第二次性徴を迎えるくらいの年齢のときにスポーツから離れていってしまうと言われています。

また選手の割合に比べると女性の役員やコーチがまだまだ少ないという課題もある。さらに、女性アスリート特有の身体問題をどうしていったらいいのかといった話が行われているんですが。

このスポーツ庁の会議に参加してきた中で私が感じたのは、「メダルを多く取るためにどうしていくか」「スポーツ産業を盛り上げるために女子もどういうふうに巻き込んでいくのか」という前提で話が進んでいる点でした。

つまり、「女性のスポーツ実施率を上げよう」と言うんですが、「(低い実施率の)原因はどこにあるのか」「どうして女の子たちはスポーツをやりたくないと思うんだろうか」という分析や議論を十分にせず、「どうしたらスポーツ実施率を高めることができるか」という話ばかりしているのが引っかかっていました。きっとその「なぜ」を追究したらスポーツの別の側面が見えてくると思うんですが。

スポーツを取り巻く貧困とジェンダーの問題

山口:とかくスポーツに関わっている人間の多くは、「スポーツをやることはいいことだ」と思っている。いいことはたくさんあると思うし、私もスポーツは大好きです。だからこそ、厳しく言っていかなきゃいけない部分もあると思っています。

貧困は今の日本社会で大きな問題になっています。私も大学にいて、「スポーツをやらない」「もう運動部には入らない」「サークルにも入らない」という学生に多く会います。

高校までにスポーツをやりすぎて、大学では自分の時間を自由に使いたいという学生もいますが、スポーツを続けていくにはお金がかかるんですよ。だから、スポーツができる人は、お金に余裕がある人とか、あるいは支援してもらえる人に限られてしまい、女子に限らずスポーツをやる人とやらない人の二極化がすごく進んでるような気がするんです。

さらに女子の場合は、女の子がスポーツをやったって、プロに進める種目は少ないし、賞金格差などもあって男子ほど稼げるわけでもない。稼ぐとしたら、自分がやりたい方向性ではないところで稼がなければいけないかもしれない。例えば、水着にならなきゃいけないといったことも含めてです。

そういう状況がある中で、じゃあなぜスポーツ実施率を高めていくべきなのかという根本的な問いに基づく議論が、スポーツ政策に携わっている人たちには欠けていると、委員として関わって思いました。

「女性活躍」とスポーツ政策の中でも言われるようになってきましたが、日本における家事時間の男女差を見てもわかるように、家事は、いまだ女性がメインで担っているような状況があるのに、「あれも(家事)これも(仕事)やらなきゃいけないなんて疲れるよ」という女性の悲鳴が聞こえる。それに加えて「さぁ、運動もしましょう」なんていうのはなかなか難しい話じゃないでしょうか。

日本のスポーツ政策に足りないもの

山口:野口さんの質問に答えていないかもしれませんけれども、どうも「スポーツを通じた女性の活躍」という政策視点に問題があるのかもしれない。これまで女性スポーツを研究テーマにしてきた私としては、スポーツ政策の中に、「女性」も1つのテーマになったことは、感慨深いことではあるのですが。

一方で、女性たち、あるいは男性たちも含めて大きな構造変革につながったり、人間のライフスタイルを刷新していくような議論になっているかというと、それは疑問です。

つまり、ただ「女性のコーチを増やせ」とか「役員を増やせ」という話ではない、ということなんです。私は、JOC(日本オリンピック委員会)のほうでも、プロジェクトリーダーをやらせていただきましたが、私たちは数の問題だけで語ってしまうところがあります。

今、「東京2020」に向けて、女性、LGBT、障がい者など、「スポーツの主流」にいなかった人たちに注目し、包摂していこうという動きはありますが、「いかにスポーツを文化として根付かせていくのか」というようなそもそもの議論が日本のスポーツ政策の中ではできていない気がします。

男子サッカーと女子サッカーのクロスマーケティング

野口:ありがとうございます。一応情報共有なんですが、内閣府が出している『男女共同参画白書』の平成30度版はスポーツの特集になっていて、50ページぐらいにわたって(記事が)書いてあるので、もしご興味ある方がいらっしゃいましたら、後ほどご覧ください。

2つ目に私がちょっと質問したかったのが、「女性スポーツとマーケティング」です。私はずっとサッカーをやっていたんですが、最近ヨーロッパで「男子サッカーと一緒にクロスマーケティングをしている」という例がとてもたくさんあって。

スペインのラ・リーガ(スペインのプロサッカーリーグ)が男子と女子。ラ・リーガという男子リーグがあったら、そこにちゃんと女子も乗っかって、男子と一緒にキャンペーンをして。6万739人という、過去最高の観客動員数を記録したそうです。

イタリア・セリエAも、男子チームの本拠地で開催した女子の大会で、これまでで最高の4万人近い観客動員数を記録したという。全体を通して各試合これほどの観客動員数を獲得しているのかといったら、そうじゃないんですけれども。男子とクロスマーケティングをしたときに、こういう結果になっている状況です。

世界的に盛り上がりを見せている女子サッカーの実情

野口:また、最近レアルマドリードが、女子のチームを買収して、女子(のチーム)も持つようになりました。これからどんどん、ヨーロッパの女子サッカーでお金が回るような側面が強くなってくるのかなと思っています。

そして、ついこの間、発表がありましたけれども、なでしこリーグもJFA(公益財団法人日本サッカー協会)内にプロリーグ化の設立準備室を設置して。女子サッカーのなでしこリーグもプロ化していきましょう、と。いう流れにあります。これはヨーロッパ勢になかなか勝てなくなってきてしまっているところも背景にあるようで、国内の女子サッカーのレベルを上げましょう、と始まっています。

女子サッカー(が盛り上がってきているのは)、自分がずっと(プレーを)してきた身としてはうれしいです。ただ、半面、「女子サッカーでもお金をどうにか回せるように」となればなるほど、本当に大切にしなきゃいけないものが置き去りになってしまうのではないかと不安にもなります。「お金を回す」という資本主義的なところに走っていきそうなのが怖くもあるなと思っていて。

この恐怖感がなんなのか、なかなか説明ができないのですが、怖いなと思っているところがあるんです。なので、女性スポーツの商業化にはいい面もあると思うんですけれど、女性スポーツが発展する上で「もっとここを考慮して、配慮していかなきゃいけない」「こんなところにも気を配ってやらないと、ある意味危ないんじゃないのかな」みたいなことがあれば教えていただけたらと思います。

山口:女性スポーツ、女性アスリートも、マーケットの中にもう巻き込まれざるを得ないことが現実だと思うんです。ただその価値観が固定的で偏見に満ちている。

野口:あ、はい。もう。

山口:FIFA元会長のゼップ・ブラッター氏が、女子サッカーのマーケットを広げていくには、「女子は男子と違って、もっとピタッとしたユニフォームにして、売っていくべきだ」と発言したことがありました。

つまり女子サッカーが男子と同じような人気を博すためには、性的なところを売りにしていかなければならないと。ちょっと物議をかもしたことがあるんですが、この発想は先ほどのLFLやメディアの話と似ています。

海外の女子サッカー選手の髪型に見る文化の違い

山口:一方で、女子サッカーは、白人・金髪文化が主流だと思うのですが、逆に、「なでしこ発信」ということができるような気がしているんですよね。

私が学生のときに、男子の日本代表の前座として日本とアメリカの女子の代表試合を見たときに、非常に印象的だったことが、アメリカの選手は、金髪白人のポニーテールがほとんどでショートヘアの選手は1人いたかいないかということでした。

一方で日本の選手は、ポニーテールが1人くらいしかおらず、他の選手はみなショートヘアでした。アメリカチームとは対照的だったことがとてもおもしろかったんです。これは何だろう、って。

アメリカの大学院の授業でもそのことを話題提供したんですが、社会学の先生も、あまりうまく答えを出してくれなかったんです。おそらく今の市場価値は欧米の国を中心に発信されて来ていると思うのですが、なでしこは、それに対抗していく「何か」を持っている気もします。今、写真を見せていただいてもやはりショートヘアの選手が多いですよね。

野口:全員じゃないですね。

山口:でも、ショートヘアが許されている。アメリカなどはショートヘアの女性イコールレズビアンというようなレッテル、ステレオタイプが強いんですよ。でも、それって日本でそのような見方はあまりないでしょう?

野口:ないですね。

山口:だから、ある意味、欧米の国々とは違う部分で、女子サッカーの価値を広げていく1つのヒントになるのではとは思っています。

野口:ありがとうございます。

山口:非常におもしろいテーマだとは思います。

野口:ありがとうございます。私は東南アジアを研究フィールドにしたいと思っているのですが、タイやベトナムの選手たちは(髪が)短い子たちもいて。アジアはやっぱり違うなと思ったりします。

セクハラ・パワハラが起こりやすいスポーツの世界

野口:最後に私から「スポーツとハラスメント」について。1~2年前に、アメリカの女子体操選手への性的虐待がすごくクローズアップされました。4回のオリンピックに帯同していたドクターなんですけど、ラリー・ナサールという方が、その間に体操選手150人以上に性的暴行をしたということで訴えられて、300年以上の刑を受けています。

当時の選手たちがそれを告発しているコメントもたくさん出ていたりします。

千葉県のなでしこのチームの監督が、選手に対してセクシュアルハラスメントをしてしまったり。つい最近では、中学生のコーチが女子のお風呂場の更衣室に隠しカメラを仕掛けていたこともありましたし。

柔道ではパワーハラスメントの事件が大きい問題となりました。女子の選手を指導していた男性のすごくパワーハラスメントがひどく、15人の女子柔道の代表選手が、一丸となってJOCや柔道連盟に訴えかけたこともありました。そして、一番大きく写真に出てしまっていますが、日大アメフト部のパワーハラスメントもすごく問題になりました。

最近「なでケア(一般社団法人なでしこケア)」というものが、女子サッカーの選手たちの自主的な団体として立ち上がりました。どうしたら女子サッカーのセクハラを撲滅できるのかという議論をしたりもしています。

スポーツは、パワーハラスメントやセクシュアルハラスメントなど、すごくハラスメントが起きやすい環境になっているのかなと思います。どうしてそういう環境になってしまうのかを教えていただけますでしょうか。

密室になりやすく、身体接触しやすい環境

山口:このハラスメントに関しても1時間ぐらい話をしたいんですけれども(笑)。1つは日本だけではないと思いますが、ラリー・ナサールの件はドクターの治療や診察ということで、密室で行われたように、スポーツ領域には密室化しやすい状況が多く出てきてしまうという点です。

例えば、学校にも、体育教官室といった体育教師の準備室があって学校の運動部のセクシュアルハラスメントも、教官室に(人が)いなくなったところに生徒が呼び出されて、「マッサージしてあげるから」と言われてセクシュアルハラスメントが起こってきました。被害者と加害者しかいない密室になる場面が多いんです。

結局、被害に遭った人が告発しない限りセクシュアルハラスメントの実態は浮かび上がってこない。とくに日本などでは合宿や遠征に行くときに、コーチングスタッフまで連れて行く予算がないとか、あるいは監督と選手たちだけといったこともあります。それから、力関係の中で起こるということかと思います。とくに日本の女子選手の場合はセクシュアルハラスメントと、体罰が両方同時に起こっていることがあります。

これは、力を持っている人がコントロールしやすい状況を体罰によって作り、そうやって恐怖をあおって、「俺の言うことが聞けないのか」と服を脱がせるケースも起きています。日本のスポーツ環境では、上下関係のような力関係が生まれやすかった。

それは何も監督と選手だけじゃなくて、選手の中の先輩後輩の関係だって同じだと思います。あとは、身体接触もスポーツ文脈では多くあります。例えばハイタッチも含めて、選手同士で鼓舞しあうために体を叩いたり、触ったりと身体接触の場面は多くあると思います。だから、どうしてもセクシュアルハラスメントに関してはスポーツ特有の問題はあるのかなと思います。

IOCがメディア向けに定めたガイドライン

野口:ありがとうございます。もうあと2分ぐらいで時間が終わってしまうんですが。

(会場笑)

山口:すみません(笑)。

野口:このあと何か(予定が)ある方には申し訳ありませんが、みなさんからも少しいただいている質問も含めて、お答えできたらなと思います。

山口:全部はお答えできないかと思うんですが……みなさんとぜひ共有できるかなと思ったご質問があります。「メディアと女性アスリート、スポーツ選手の関係は大変よく理解できました」、ありがとうございます。「逆に視聴者側の私たちがメディアに対してできることについて、山口さんはどう考えられていますか。このような報道は見たくないぞ、と否定する方法など、考えていることがおありでしたら教えてください」ということなんですが。

ありがとうございます。スポーツは気になるので、どうしてもスポーツニュースなどは見てしまいます(笑)。報道する側に対してのガイドラインが作られているんですよね。

野口:あっ、はい。IOCが2018年に、IOC Gender Equality Review Projectというものを発表しています。オリンピック関係で「女性」を扱う際に25個の提案をしています。そのうちの②は報道なんですけれど、提案13というところが、東京2020でも実施しなければならないと言われているところです。

「組織委員会による公正で平等なメディア露出」という項目があって、IOCが別のガイドラインとして、IOC Portrayal Guidelines for Gender Balanced Representationというものを発表しています。中身は、「女性スポーツが放送される時間(の長さ)や時間帯を男性と同等にする」だったりとか、「ジェンダーバイアスを生み出すような言葉を使用しない」とかです。

例えば「スポーツマンシップ」と言わずに、「スポーティングスピリット」と言ったり。「カメラマン」と言わないで「カメラオペレーター」と言ったり。あとは子どもがいる女性アスリートを「ママアスリートです」ということを前面に出すんじゃなくて、アスリートとしての彼女をきちんと前に出した上で「子どももいます」という書き方をしなさい、とか。

このガイドラインはすでに出ているので、2020年はおそらくメディアのみなさんは、組織委員会から、このガイドラインに沿って報道するようにと言われるようなかたちになるのかなと思っています。

女性らしさやカップルでいることが求められる、アメリカの文化

山口:ありがとうございます。「知らない」「知らなかった」と報道する側は言えない状況になっていますね。もうすでに報道する側がアクションを起こさなければいけないのかもしれません。また、視聴者側も、あるいはアスリートの側も、公正で平等な報道をと言える環境が今後もっと増えてくるといいですよね。

アメリカの例ばかりを比較対象として出して大変申し訳ないんですが、先ほどのアメリカ人選手のポニーテールではないですが、日本と比べてアメリカは、「女性らしさ」みたいなものを日本とは異なる形で、あるいは日本以上に求められたりしているのではないか。あるいは異性愛者だけでなく同性愛者も、「カップル」でいることが日本よりも求められているのではないかと思うことがありました。人種差別や性差別もたくさんあります。

一方で、自分の意見を言える媒体(テレビ番組)があったりもします。例えばアフリカン・アメリカンの女性たちが集まって自分たちの経験や意見をシェアする番組があったり、まだまだ人種差別は根強くあるんですが、当事者同士でつながっていく場や機会も存在している。

先日とある場所で、メディアの方とお話しする機会がありました。その方は記者の方で、この方から、ジェンダーに関して問題意識を持っているメディアの人間が非常に少なく、その中でもがいている様子がよくわかりました。

それで、「じゃあ私たちで、ネットワークを作りません?」という話になったんです。そういう問題意識を持っているんだったら、どういうふうに変革していったらいいのか考える場を、まず私たちで作ったらどうかと思っています。もしかしたらこれも、違う価値観を報道していく1つのきっかけになっていくかもしれませんし。

これからのスポーツとメディアの関わり方

山口:質問にもあるんですけど、ヌードをさらしていくのが悪い、とは思っていません。ずっとESPN(アメリカのスポーツ専門チャンネル)で、Body Issueという男性も女性もアスリートが筋肉隆起や健康的な体をさらしていく特集がずっと組まれているんです。

私はそれはそれで素晴らしいことだと思うんですが、それだけで終わってもいけないかな、と思っています。身体をさらしていくことだけがマーケットに乗っていくのではなく、違う価値観が作っていけるといいかな、と思っています。

メディアの方には非常に期待していますし、メディアに関わっている方たちが、自分の書いた記事がデスクに採用されるか、というところで葛藤されている方もたくさんいらっしゃることは重々承知しております。

ですから、ジェンダーに関してセンシティブな方が、もっと意思決定をする立場に就くようになると、メディアも変わってくるのかなと思っています。

野口:そうですね、これが終わったあと、次の回まで2時間ぐらい時間がありますので、もしご質問ある方は、個別に来ていただけたらと思います。

最後に、2015年に出た『現代スポーツ評論』というスポーツ社会学系の雑誌なんですけど。女性スポーツ特集になっています。そこでも山口先生が執筆されています。これをアイリスさんも置いてくださっているので、もしご興味ある方がいたらご覧ください。

司会者:では改めまして、山口さん、野口さん、ありがとうございました。

山口:ありがとうございます。

(会場拍手)