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荒川和久&中野信子「ソロ社会、どう生きる?」トークイベント(全7記事)

男性は恋愛、女性は仕事で自己肯定感が上がる 「有能な自分」しか愛せないソロ男・ソロ女の胸中

2019年6月17日、『ソロエコノミーの襲来』刊行記念として、独身研究家・荒川和久氏と脳科学者・中野信子氏が「ソロの生き方」についてトークイベントを行いました。孤独との向き合い方や本当の自分とは何か? 人口の5割が独身となる未来に、論理と感情、今後のコミュニティのあり方まで語り合います。本パートでは、既婚男女とソロ男女の幸福度の違いや、恋愛と仕事が及ぼす自己肯定感への影響力について意見を交わしました。

ソロの男女は40代に不幸度マックスを迎えている

荒川和久氏(以下、荒川):次はこれですね。ソロは不幸感が高い。年代別に既婚ソロ男女で見たデータで、既婚男女ってこんなに幸福度高いんですかね、と私もビックリしたくらいです。青いのが幸福で、赤いのが不幸。グレーがどちらでもないというところです。ほぼ、既婚の全年齢がブルー(幸福)じゃないですか。

中野信子氏(以下、中野):本当ですか!?

荒川:これは主観ですよ。自分は幸福か不幸かというのを主観で5段階評価してくださいという話の中です。

中野:ふーん、4人に3人が幸せって答えるんだ。

荒川:40代を超えたソロの男女って、不幸がマックスになる。むしろ、20代は既婚者とあまり変わらないんです。年齢を重ねるごとに不幸度が上がる。私は5年くらい同じ調査をずっとしているのですが、傾向はほぼ一緒です。

中野:そうですか。元30代だった人が40代になっても変わらず。

荒川:変わらず。40代が不幸度マックスな感じはあまり変わらないです。

中野:ああ、そうですか。

荒川:この間初めて60代も調べて、60代になると不幸度は下がります。40代がマックスで、年を取るとだんだん下がる。

中野:それもどこかで見た。こういうカテゴリー分けはしていないけれども、人生のどこのジェネレーションが一番不幸度が高いかというと46歳だと(笑)。

荒川:(笑)。

中野:それとリンクしている結果かなという感じはします。

世界的にも見てもほぼ独身のほうが不幸

荒川:そうですね。これはいろんな他の人の調査の結果などを見ても、だいたい40代。しかも独身がマックスになる。

中野:中年の危機の乗り越え方が変わってくるんですかね。

荒川:なんですかね。ちょうどその頃、体を壊すからじゃないですかね。

中野:そうそう。男女ともにホルモンバランスが変わってきて、男性も男性ホルモンが出なくなるし、女性も女性ホルモンが出てこなくなる。そうすると今まで精神的に調整できていたものが生理的に変わってきちゃうので、認知がどう調整していいかわかんないということになっちゃう。私、こうじゃなかったと。

荒川:世界価値観調査みたいなのを国別で見ても、ほぼどこの国も独身のほうが不幸なんです。

中野:ユニバーサルなんだ。

荒川:日本は最下位くらいの独身の不幸度で、既婚と独身の差分が開いているのは日本とドイツ。

中野:ドイツ。ドイツもすごく少子化ですよね。似た感じがします。

ソロ男・ソロ女は「有能な自分」しか肯定できない

荒川:今考えると、似た感じがしますよね。独身はそういう欠落感みたいなものがあるのかなと思っています。これは自己肯定感の自己有能感の差分を見たものです。

中野:うわー、すごく違うな。

荒川:おもしろいのは、既婚の男性と女性って、有能感がマイナスなんですよ。「俺・私は大して有能ではない」と思っているんですけれども、逆に自己肯定感はめっちゃ高いんですよ。ソロ男、ソロ女の人というのは、自己有能感はそこそこあるんですけれども、自己肯定感は有能感を超えないんです。何が言いたいかというと、有能である自分しか肯定できないんです。

中野:条件付き愛ですね。

荒川:既婚は、そんなの関係ないです。幸福度って、こういう落差の違いなんじゃないかなというところがあります。

中野:ああ、とってもおもしろいですね。インパクトのあるデータです。

荒川:結局、自分はどこの大学とか、どこの一流企業とか、年収何千万とか稼いでいなければ自分を肯定できないというロジックに入っちゃいます。

中野:そうですよね。条件付きの愛情って、その条件が消えれば、儚く消え去る砂の城の上にいるようなもので。

結婚で自分を変えようと思うか、誰といても自分は自分と思うか

荒川:「フォーカシング・イリュージョン(思い込みから生じる幻想)」と言われていますけれども、「結婚すれば幸せになれるはず」とか、「いい会社に入れば幸せになれるはず」と思ってしまうことと同じような感じがします。

中野:どっちなのかわからないんですけれど、結婚すれば自己肯定感が強まるかというと、そうでもない気がする。もともと自己肯定感が高い人が結婚しているかもしれないんですよね。

荒川:今はわからないですよね。

中野:ええ、わからないですよね。イメージで言いますから、違ったら指摘してほしいですけど、「この人と結婚すれば一発逆転が狙える」と思って婚活に行く女性も多いような気がするんです。

でも、私はそうじゃないと思う。誰と結婚しようが自分は自分から逃げられないし、自分のまま。結婚によって自分を変えようとかではなくて、彼は頭がよくて機転が利くから好きだなとか、穏やかな性格の人と一緒に楽しい生活を送りたいよね、という人のほうが、より結婚しやすいんじゃないかという気がしています。

要するに、もともと自己肯定感が高くて、「誰と一緒にいようが自分は自分だ」と思える人だけが結婚しているんじゃないか、という仮説です。

自撮りの数と自己肯定感には関係がある?

荒川:そうですよね。これ、自分で調査していてもおもしろいのが、何回やっても同じ結果が出るんです。ここの自己肯定感って、まさに幸福度とニアイコールじゃないですか。やはり、この自己肯定感という部分を上げていかないと、いつまで経っても不幸が変わらないよね。

インスタ映えって最近、言葉としてはアレになっちゃいましたけど、インスタ映えにけっこうおもしろい傾向があります。自己肯定感が高くて、幸せ度マックスの女の子のインスタってこんな感じなんですよ。

(スライド投影)

(会場笑)

(このインスタに)共通して言えるのが、どこかに自分が入っているんですよ。

中野:ああー!

荒川:後ろ姿だろうが、例えば手だろうが影だろうが、絶対に自分を入れている。「いいね」を押してもらいたいのは自分なんですよ。アイスじゃないんですよ。「このアイスを選んだ私」なんですよ。(会場の方が)めっちゃ笑っていますね。アイスとかは道具であって、これを選んだ私を「いいね」してもらうことを求めているんです。

中野:「いいね」を押してもらえるという、ある程度の自信があるから投稿しているということですよね。

荒川:一方、自己肯定感のない男のインスタは、こんな感じです。

(スライド投影)

中野:ああー!

(会場笑)

荒川:ラーメン二郎とか、風景とか、工場とかバイクとか、桜とか富士山とか。

中野:ええー! 私のこんなです。

(会場笑)

荒川:失礼しました(笑)。彼らは、自分自身の写真はあまり撮らないです。

中野:ああ、考えたことない。

荒川:インスタのタイムラインとか、スマホのタイムライン自体に自分の自撮りがないというのがけっこうおもしろい。

中野:番宣以外、まず撮りませんね。もっと載せよう。

荒川:(笑)。自撮りの数って、自己肯定感と数量化できるんじゃないのかと思う。

中野:いい尺度ですね。ユニークだし本質的だと思います。

容姿の良さと自己肯定感にはあまり関係がない

荒川:自己肯定感がない人は、自分のことが嫌いなんですよ。自分の顔とか声とか動きとか。あとはTikTokもやらないですよ。

中野:そうですね。すごく美人でも、自己肯定感が低い人って(自分の写真を)載せないのね。だから、それは容姿の良さはあまり関係ないんですね。

荒川:関係ないですし、自分は容姿が悪いからあげないとか思っている人も、実は、周りでずっと見ている人は、容姿の悪さとか関係なく、馴染みの顔じゃないですか。何が悪いとかこっち側はぜんぜんわからないんですよ。

中野:確かに。

荒川:本人の尺度なんです。

中野:おもしろいです。

荒川:自己肯定感のない独身の男性に私が講演で言っているのは、「こういう写真を撮りましょう」と。

(スライド投影)

(会場笑)

こういう写真(注:インスタ女子が撮るような「浜辺でみんな手を取り合ってジャンプしている写真」)をいっぱい撮っていれば、自己肯定感が上がるんじゃないでしょうか。

中野:なるほどなぁ。

男性は恋愛、女性は仕事が自己肯定感の判断基準

荒川:300問くらいのアンケートを取って、多変量解析したんですよ。アンケート調査って「主観で答えているから本当か?」というところがあるじゃないですか。共通項を出してみて、自己肯定感のない人の相関の因子が高いものだけ呼び出すと、けっこうおもしろいんです。男の場合、「恋愛に自信がない」とか、「容姿に自信がない」とか「異性に告られた経験がない」とかが出てくる。

女は「仕事の評価は能力主義がいい」とか、「負けず嫌いだ」とか「副業兼業したい」だとか、こういうのに答えた人ほど、自己肯定感がないんですね。

中野:あ、そうですか。

荒川:要するに、自己肯定感がない軸が、男は恋愛軸で、女は仕事軸。

中野:あらー、すごい!

荒川:これ、おもしろくないですか?

中野:おもしろい!!

荒川:こうやって答えている人は、他の質問で「恋愛とか別に興味ないよ」とか言っているんですよ。そう言っているんだけど、解析すると、こういうところが実はあるから自己肯定ができない。そういうことを言うと、めっちゃ「そういうこと言うなよ」と言われます。

中野:すごい。図星だからですね。

荒川:こっち(女性)もそうです。「仕事はちゃんと真面目にやっています」とか、「評価されています」とか言っておきながら、評価されていないことが自己肯定できないんです。

中野:「もっと仕事を褒めてよ」と。

荒川:「なんであたし、同期の男と給料とボーナスの差があるの?」みたいなことだったりするじゃないですか。

中野:きっと、「私のほうがもっとできるのに」って思ってるんですよね……。

荒川:みたいなことがあって、違うんだったらおもしろいなと思って、そういうところって、ちょっとの環境で変えられるじゃないですか。

中野:それ、私がもっと黒い人間だったらここを突きますよね。ここを埋めてやるひと言を狙って(笑)。

荒川:たぶん優秀な詐欺師とかはいろいろ突くんですよ。

中野:知っているんですね。

荒川:知ってるんです。

中野:男の人は恋愛で、女の人は仕事なのね。今日すごく勉強になりました。

(会場笑)

欠落感を埋めて幸せになるための「エモ消費」

荒川:あと、これもおもしろかったなと思っています。実は、彼らの欠落感を埋めているのが消費。消費というのはお金だけじゃなくて時間も消費じゃないですか。自らの幸せを手に入れているのは、エモ消費という見方をしている。

「エモい」ってみなさん、知ってます? エモいって知っているのが50パーセントで、使ったことあるのが10パーセントらしいですよ。

(会場笑)

「エモーショナルの略で、うまく説明できないけどよい」という意味。落合陽一さんはロジカルの対極にある「もののあわれ」と言っています。若い子ってヤバイの代用品で使っているんですけど、実は「ヤバイ」じゃないんですよね。

中野:心が動いたという意味ですよね。

荒川:そうそう。「なんかちょっとうまく説明できないけどいいよね。わかってもらえないかもしれないけどいいよね」というようなところだったりするんですよね。

中野:すごくハイコンテクストな感情だなという感じがしますね。

荒川:そうそう。本当は使うのが難しいんだと思うんです。このエモさみたいなことを、物を所有するとか体験するとかというんじゃなくて、根源的に心の充足のためにお金と時間を消費しないと、さっき言ったように自己肯定感との乖離が激しすぎて穴埋めができない。

アイドル消費をする人とか、インスタ映えのために遠くのレストランに一生懸命、交通費をかけていく女子なんか、みんなもったいなと思わないですもんね。

中野:そういうことですね。

荒川:心を埋めてるから。

中野:レアポケモンを集めるのに3万円くらいかけるということですよね。

荒川:そう。これもおもしろいのが、アイドルオタクっているじゃないですか。アイドルオタクの人って、アイドルのライブとかCDを買ったりとか応援グッズを買ったりとかめっちゃお金を使うんですけど、アイドルに直接お金をかけるよりも、もっとお金をかけているのは交通費と宿泊費なんです。むしろ、JRオタクとか航空会社オタクです。

中野:消費できるからかー。

荒川:そう。金額だけ見たら、めっちゃ旅費がかかっている。旅費がかかっているということは脳内から消えちゃってるんです。

中野:意識はされていない。

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